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顔認証も音声認識も。リテールにおけるパーソナライゼーションの深化を牽引【NRF 2020】

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米国のリテール業界の今年のキーワードのひとつが、「ヒューマン・コネクション」だ。全米小売業協会(NRF)の年次展覧会と会議(2020年1月12日〜14日開催)では、テクノロジーを活かし人と人とのつながりを重視する興味深い取組みがあちこちでみられた。そのなかでも、美容業界の参考になりうる技術やトレンドを3回に分けて紹介する。1回目は、店頭での、顔認証や音声認識によるパーソナライゼーションへの試みだ。

全米小売業協会(National Retail Federation、以下NRF)が開催する世界最大級のリテール業界向け年次展示会と会議「NRF Retail’s Big Show」が2020年1月12日から14日まで、ニューヨーク市のジェイコブ・ジャビッツ・コンベンションセンターで開催された。当初はリテール企業向けのローカルな勉強会だった同展だが、近年は最新のデジタル技術が披露されるグローバルな技術系イベントとして知られるようになっている。今年は世界から800社強が出展し、約200のセッションには400人を超える業界関係者が登壇。会期中100カ国から約4万人が来場した。

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店頭のデータ活用能力で分かれる事業の明暗

2020年の会議は、マイクロソフト CEOのサティア・ナデラ(Satya Nadella)氏の基調講演で幕を開けた。講演開始1時間前には開場を待つ人の列ができはじめ、来場者の関心の高さがうかがわれた。ナデラ氏は冒頭で、「リテール業界では1時間ごとに40テラバイトのデータが生成されている」と指摘。リテール企業の課題として、これらのデータを活用し、顧客への理解を深め、従業員の可能性を最大限に引き出すこと、そしてそのために、特定の技術ベンダーや技術に依存するのではなく、それぞれの事業や課題、顧客特性を分析し、目的に応じた「デジタル能力(Digital capability)」を独自に構築することの重要性を強調した。

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基調講演を行った
マイクロソフトのナデラCEO

またナデラ氏は、リテール業界のトップトレンドの一つとしてパーソナライゼーションに言及。「Eコマース売上高の約30%はレコメンデーションによって発生しており、今後も増加傾向にある。消費者の80%はパーソナライズされたサービスを期待しているからだ」と話し、「(それに応えるためにリテール企業やブランドは)サプライチェーンのなかの1つのシステムのデータだけでなく、サプライチェーンから販売にいたるすべてのシステムのデータを活用する必要がある」と述べた。ほかにも同氏は、顧客にシームレスな体験を提供する「オムニチャネル・コマース」や、従業員の潜在的ポテンシャルを引き出すための「従業員エンパワメント」などをトレンドとして挙げた。

顔認識で顧客を特定、VIP待遇で接客

イスラエルの企業でニューヨーク市にもオフィスを持つPreciate社は、店内に設置したカメラで来店客の顔情報を取得し、あらかじめ登録された顔情報に参照して本人を特定、パーソナライズされたサービスを提供する「次世代ロイヤルティプログラム」を出展した。顔認識技術自体は本人確認とレジ無し決済、万引き防止、セキュリティ強化などを目的に複数企業がすでに提供し、店舗への導入も進んでいる。Preciate社の場合、来店客を特定し、オンライン店舗での行動データを取得。それをもとに、シームレスでパーソナライズされた購買体験を実店舗で提供する点に特徴がある。

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Preciate社は顔認証技術を応用した
「次世代ロイヤルティ・プログラム」
を実演

仕組みは次の通りだ。まず、顧客はスマートフォン、自宅または店内のコンピューターからこのプログラムに参加し、自身のセルフィーやその他個人情報を登録、その使用を許諾する。登録済みの顧客が来店すると店内カメラと顔認識技術で特定し、その顧客のデータを販売スタッフのモバイル端末にリアルアイムでプッシュ送信する。

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