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【CES2024】ウォルマートが示す「人間主導」のアダプティブ・リテール戦略

米ラスベガスで2024年1月9日〜12日に行われた「CES2024」では何が語られ、どんな未来像が提示されたのか。ビューティテックやリテールテックを含むイノベーションの方向性を占う意味でも重要ないくつかの基調講演を軸に、現地取材したBeautyTech.jp編集長の矢野貴久子が3回に分けてレポートする。2回目はウォルマートを取り上げ、彼らが実現しようとしているアダプティブ・リテールという概念と、未来の小売について紹介する。

オムニチャネルを超えた、アダプティブ・リテールという概念

10代の夏休みにウォルマートでトラックの荷下ろしの仕事をしたのがきっかけで入社したというエピソードとともに紹介された、ウォルマートCEOのダグ・マクミロン氏がCES基調講演のステージに登場し、いかにテクノロジーで顧客体験とそして同社で働く人々の体験を豊かにするか、さらには、人々の人生をも豊かにするかを考える姿勢と実例が披露された。

マクミロン氏が2023年第4四半期の決算声明で述べた「我々は、人間主導でテクノロジーを活用したオムニチャネル小売業者である(We're a people-led, tech-powered omnichannel retailer.)」との発言の「人間が主導する」には、組織や事業の方針が、従業員や顧客などによって導かれるという意味合いが込められている。

登壇したウォルマートCEO ダグ・マクミロン氏

ウォルマートはオンラインでもオフラインでも顧客がストレスなく“サクッと”買い物ができ、食料品や日用品においては、なくなる頃をAIが予測し、自動的にカートに入れ、自宅の冷蔵庫にまで運んでくれるサービスなど、かゆいところに手が届く設計とオムニチャネルで顧客のLTVを最大化することを目指してきた。

そして、今回同社が提示したのは、店舗とEコマースのオムニチャネルだけではなく、アプリ体験や需要予測などを含め、瞬時に変化する市場や顧客のニーズに柔軟に対応し、迅速かつ効果的に調整する「アダプティブ・リテール(adaptive retail)」というキーワードだ。壇上には協業パートナーとして、マイクロソフト CEOのサティア・ナデラ氏も登場し、生成AIをはじめとするテクノロジーが、アダプティブ・リテールをいかに実現して世界を変えていくのかという内容が語られた。

テクノロジーやイノベーションという点でよくウォルマートと比較されるアマゾンも、Amazon PrimeやAmazon Goなどの市場変化への柔軟なサービスや、在庫・サプライチェーンの最適化という点ではアダプティブ・リテールの要素をたくさんもち、徹底した顧客中心主義で知られる。ウォルマートの最大の違いは、顧客のみならず、従業員やサプライヤー、そして地球をも考慮したバリューチェーン全体を2005年ごろから大切に考える方向に舵をとり、包括的に発展させている点だ。「人間主導」はすでにこのころからスタートしていたといえる。

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