花王の新ヘアケアシリーズ、エッセンシャル flatがめざす、1つの技術でパーソナライゼーション

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世界でヘアケア製品のパーソナライゼーションがトレンドだ。その主な手法は、髪質や髪の悩み、香り、ライフスタイルなどの質問に答え、それらを掛け合わせたパターンの中から、その人に最適な処方を届けるというものだ。花王のアプローチはある意味真逆となる。処方を変えるのではなく独自の技術で、1人ひとりが望む髪のくせづけが楽にできるという意味でのパーソナライゼーションを提案する。

日本人の毛髪は一見、直毛に見えるが、2人に1人がくせ・うねりで悩んでいるというデータがある。くせ・うねり悩みのある人は、アイロンやヘアドライヤーなどの熱器具の使用率が高く、中には30分以上かけてスタイリングをしている人がいることが花王の調査から明らかになった。こうした実態に着目し、熱することで髪の毛を扱いやすく、形付けやすくする成分をつきとめ、ヘアケアアイテムとして開発されたのが、2019年7月に発表された花王の新ヘアケアシリーズ「エッセンシャル flat(フラット)」(以下flat)だ。

シャンプー・トリートメント 各900円
セラム(1200円)
提供:花王
※価格は編集部調べ

カギとなったのが、毛髪繊維の細胞間に存在するCMC(細胞膜複合体)だ。ここは、細胞が生きているときは細胞同士を接着する役目をしているが、髪が角化して死んだ細胞になると、その主な役割は物質の通り道となる。これが今まで一般的に知られているCMCの役割であったが、花王は独自の研究を通じて、CMCの流動性が髪の形付けやすさにも強く関わっていることを見出した。

そこで花王は、CMCと親和性が高く、毛髪内部まで拡散し、CMCの流動性を高める独自成分として、くせ・うねり髪に浸透する「ときほぐし成分(GE-IS)」を開発し、熱スタイリング時に毛髪内部を柔軟にして、形付けしやすくする手法を確立。さらに、水道水中のカルシウムが髪の表層に吸着・浸透して硬化することで生じる髪のゴワつきを軽減するために、毛髪中のカルシウムを除去するコハク酸を配合。くせ・うねり髪の扱いづらさを徹底的に排除する処方を編み出した。

提供:花王

くせやうねりが気になる人は、スタイリング時にヘアアイロンを何度も髪にあてる傾向があるが、flatで洗髪し乾かしたあとは、120℃の低温で、ヘアアイロンをあてる回数が少なくても髪をまっすぐ形づけることができ、その結果、熱ダメージをおさえることもできる。洗髪後も、「くせ・うねりときほぐし成分」の約70%が髪に残留することがわかっており、flatを使い続けることで、扱いやすい髪に整えていく。

flatのコア技術である「くせ・うねりの研究は、ツヤの研究が発端だった」と話すのは、花王株式会社ヘアケア研究所 主任研究員 渡邊俊一氏。ツヤ研究を進めるなかで、くせがある髪の毛は直毛に比べてツヤがなく、パサつきやすいことがわかり、1990年頃からくせ毛髪質研究が本格的にスタートした。研究を通して、毛髪内部に存在する2種類のコルテックス細胞の分布の偏りが毛髪の形に影響していることを花王が人毛では初めて解明。さらに、くせの出る部位や状態は人によってさまざまであり、それに合った適切なケア方法があることを突き止めた。

しかし、なぜ髪の毛にくせが出てしまうのかという根本的な原因はいまだにわかっていないという。2000年頃から始まった形状実態研究では、くせ毛がどのように遺伝するかを調べる「母・娘クセ毛実態」や「アジア人や欧米人での人種間比較研究」を進めているが、くせ毛に直接影響する遺伝子の特定にはまだ至っていない。思春期や妊娠、出産を機に髪のくせが変化するケースは多いが、これについてもホルモンの影響が大きいと考えられているが、詳細は解明されていない。

プレミアム価格帯攻略のための差別化戦略

このユニークなヘアケア製品は、「スモールマス」カテゴリーとしての販売になる。2018年におけるヘアケアインバス市場の規模は約2,000億円で、ミネラルウォーター(2,300億円)や衣料用洗剤(2,000億円)と同規模の市場に成長している。とくに近年伸びているのが、販売単価が800円以上のプレミアム、1,400円以上のハイプレミアムを合わせた「スモールマス」のカテゴリーであり、flatもここに含まれる。

提供:花王

「スモールマス」カテゴリー拡大の理由を、同社 ヘアケア事業部 横野涼子氏は、「『気に入ったものには対価を払いたい』という消費者の意識の変化や、インバス商品も家族で同じものを使うのではなく、家庭内点数が増えていることが大きく影響している。そのため、スモールマスが「マス化」しており、2020年には価格帯別構成比がボリュームマスを超えるという予測もある(上図参照)」と説明する。

その一方で、ノンシリコーンや天然成分をコンセプトとするプレミアム、ハイプレミアム価格帯の商品が同質化してきており、機能や成分の効果を実感しづらいという消費者の声も増えているという。

そこで花王は、機能や成分だけでなく、ヘアケアの先にある生活価値やマインドの向上を提案することで差別化をはかり、「“ヘアケア”から“ヘアライフマインド向上”へ」というキャッチフレーズを掲げた。2019年にはflat以外にも、シャンプーとトリートメントを自由に組み合わせることができる新ブランド「and and」を発表。地肌ケアとアロマの香りにこだわった「merit PYUAN」を刷新した。flatという製品名には、くせ・うねり髪に悩んでいる人の髪が扱いやすくなるだけでなく、気分がゆらがない“フラット”な毎日に変える、という思いが込められている。ボトルも、店頭での優位性を考慮し、最近多くみられる透明ボトルではなく、グレーのジェンダーレスなデザインを採用した。

良質なクチコミを引き出すための先行発売

flatは、10月の本発売に先駆けて、8月5日から一部のオンラインショップで先行発売を開始する。本発売まで期間をおいて先行で発売する理由は、ユーザーレビューだ。横野氏は「悩みが深い人ほど、自分で情報を調べて発信する傾向がある。くせ・うねりの悩みをもつマイクロインフルエンサー的なユーザーにflatの情報をいち早く届けて、リアルな感想を引き出したいと考えている。10月の本発売前には、弊社では異例だが雑誌への出稿なども予定している」。

8月から10月までの2ヶ月間で得られたリアルなユーザーレビューやクチコミは、10月以降の広告展開への活用はもちろん、ブランドサイト上でのコミュニケーション、将来的には商品改良にも役立てていきたい考えだ。

また同時にLINEを活用した「flatヘアサロン」を7月に開設。髪の長さ、くせ・うねりの部位、状態の組み合わせで、くせ・うねり髪を8,296通りに分析し、タイプ別にあったお手入れ方法の動画が見られるようになっているほか、プレゼントキャンペーンのお知らせなどが届くようになっている。「将来的には、LINE を通してお客様と密なコミュニケーションを行い、1人ひとりの髪悩みに寄り添ったケア方法や商品の提案につなげていきたい」(横野氏)。

提供:花王

くせのタイプ別におすすめの
お手入れ方法が提案される
撮影:筆者

flatの海外展開については、「アジア圏への進出は考えられるが、その他の地域では、たとえばドライヤーをほとんど使わない、洗髪頻度が1ヶ月に数回など、ヘアケア習慣が日本とは異なるため、熱で髪を伸ばすflatをそのまま展開するのは難しいと見込んでいる」と渡邊氏。

ドイツにある花王グループの研究所では、欧米に向けたくせ・うねりに対応する商品開発をすでにはじめており、将来的には、国内外を問わず、くせ・うねりをコルテックス(毛髪内部にあるタンパク質の繊維束を含む細胞)から直す技術といった根本的なケアも視野に入れて検討を進めている。渡邊氏は、「くせを直すだけでなく、くせをいかしたカールスタイルを楽しむなど、一人ひとりの髪の個性に合わせて、本人が望む美が最適化されるような技術を、製品を通して世に広めていきたい」とする。

花王株式会社ヘアケア研究所
主任研究員 渡邊俊一氏(左)
同 ヘアケア事業部 横野涼子氏(右)

さて、その使い心地だが、筆者も実際にflatを使ってみて、広がりやすい髪が1回の使用でも髪が素直になり、簡単にさらさらのストレート感を実感することができた。シャンプーで髪の毛がここまで変わるのかと驚いたのは事実だ。

くせ毛・うねりは、その原因などまだまだ解明されていないことが多いというが、そのなかで、熱をあてて髪を形付けしやすくすることで、ストレートにもカーリーにも、自分のなりたいヘアスタイルにしやすくするパーソナライゼーションのアプローチは、世界でもあまり例をみないといえよう。


Text: 小野梨奈 (Lina Ono)


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