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日本発、100%合法のCBDブランド登場。「WALALA」が示す、美容とウエルネス

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日本でもCBDを配合したスキンケアや多目的オイルが注目されはじめている。そのなかで、非大麻由来の成分で日本で製造され、100%合法なCBDブランドが登場した。「WALALA」の創業者へのインタビューから、日本市場の可能性と消費者意識の変化を探るとともに、カンナビス製品の一般化が進む米国の今の状況をレポートする。

大麻に含まれるCBD(カンナビジオール)を配合した化粧品やサプリメントは、世界各地の大麻合法化に伴い、大きなブームを巻き起こしている。数年前から始まったこの動きは現在も続き、世界のCBD市場は2024年までに200億ドル(約2兆1,400億円)に達すると見込まれている

2020年3月中旬以降、「best CBD for anxiety 2020(不安に効くベストなCBD 2020)」などをキーワードにした検索ボリュームが250%アップ。新型コロナウイルスの感染拡大によって仕事や生活に不安を覚えた人々の間で、精神的ストレスを軽減する効果があるとされるCBDオイルへの関心が高まったためとみられる。

一方、日本では大麻取締法にもとづきCBD製品について厳しく規制されていることもあり、流行と呼べるほどの波はまだきていないが、CBD配合製品のローンチは増えており、日本でも注目は着実に高まりつつあるようだ。

今回は、2020年8月に非大麻由来で100%合法の日本製CBDスキンケアブランド「WALALA 」を立ち上げた、株式会社バランスド 代表取締役 柴田マイケル空也(Mike Eidlin)氏に、WALALAの製品開発の舞台裏と日米のCBD市場の現状について話を聞いた。

ウエルネス文化の広まりとともに大麻が一般化

柴田氏は米国人の父と日本人の母を持ち、生まれは東京だが米国カリフォルニア州で育ち、20年以上を過ごしてきた。柴田氏によると、カリフォルニアの人々の大麻の捉え方は、日本とはまったく異なり、そのギャップに驚かされたという。

カリフォルニアでは、ジャズミュージシャンが大麻をテーマにした音楽を歌い、ヒップホップ界と大麻が密接につながるなど、大麻はひとつのカルチャーとして受け入れられてきた土壌があると柴田氏は説明する。そして2018年に21歳以上の大麻使用が合法化されて、リラクゼーションを目的とした大麻の購入が、ライセンスショップやオンラインで可能になると、大麻由来成分CBDを配合した製品についても広く一般に普及した。カリフォルニア州では、大麻に「悪いもの」「怖いもの」といったネガティブなイメージはなく、むしろ身近な植物であり、体や心の健康を増進してくれる天然由来の「良いもの」として、広く受け入れられていると柴田氏は話す。

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株式会社バランスド 代表取締役 
柴田マイケル空也氏

柴田氏自身、スポーツによる関節や筋肉の痛みや腫れに、炎症を抑える目的でCBD製品を使用し、その効果を身をもって実感してきた。

同時に、カリフォルニアの大麻合法化のタイミングと重なるように、健康を心と体の両面から包括的に捉える「ウエルネス」や「ホリスティック」の概念が一気に広まっていったムーブメントを現地で体験したことで、日本でも同じような未来が描けるのではないかと、CBD製品の立ち上げを決めた。WALALAというブランド名にも、「和(WA)」と「ロサンゼルス(LA)」、日米の架け橋の意味が込められている。

こうして、2020年8月20日、WALALAの第一弾商品として発売したのが、顔からボディまで全身に使用できるCBDクリーム「CBD POINT CREAM」(税込8,250円)だ。化学合成したカンナビジオール成分を加え、ビタミンC誘導体やヒアルロン酸などの成分をバランスよく配合している。

日本での製品開発のネックはCBDの製造法とナノ化

しかし、販売に至るまでの製品開発の道のりは決して平坦ではなかった。厚生労働省の管轄にある大麻取締法のもとで合法となるためには、CBD成分が、織布や食用のために日本で麻の使用が例外的に認められている茎と種から抽出したものであり、かつ、向精神作用のあるTHC(テトラヒドロカンナビノール)が0%であることを証明しなければならない。

「そこで米国の原料メーカー10社に問い合わせたところ、茎と種からCBDを抽出するメーカーは1社もなく、すべて麻の花穂や葉から抽出していることがわかった。自分でもさまざまな論文を調べてみたところ、茎と種からはCBDをほとんど抽出できないと判明。どのメーカーも“茎と種は捨てている”と口を揃えていたのは、それが理由だった」(柴田氏)

CBD市場をリードする米国からCBD成分を輸入しての製造を考えていた柴田氏だったが、その道は閉ざされてしまった。日本国産CBD製品の開発はもはや不可能とあきらめかけたが、さらに論文を読み漁るなかで、酵母菌遺伝子組み換え製法と化学合成法の2つの選択肢が残されていることがわかった。

前者の方法による産生量の少なさを考えると利用は難しい。だが、後者ならビタミンC誘導体やトコフェノールなど、ほかの化粧品原料でも一般的な製法であり、化学合成CBDの歴史も50年以上ある。そして辿り着いたのが、チェコでCBDの有機合成を手がけるCBDepot というメーカーだった。

ただし、化学合成のCBDは、麻から抽出する場合に比べて3~5倍のコストがかかり、米国ではほとんど使われていない技術だ。柴田氏も初めは懐疑的だったが、試験の結果99.95%のCBD成分が合成できるとわかり、成分の品質や安全性を確認したことで、これを原料として使用すると決断し、日本での独占代理店契約も結んだ。

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CBDepotのスタッフ

こうして日本で合法となるCBDを確保できたが、実際にクリームを制作する段階でも困難に直面した。CBDを配合した試作品クリームと配合しないクリームを用意し、ブラインドテストを行ったところ、治験者の使用感や効果の実感にほとんど差がないとわかったのだ。

人の体の多くは水分でできており、水溶性の成分は肌になじみやすい。しかしCBDは水には溶けにくい性質で、実際に塗ったとき肌への浸透がしにくいことが原因だった。「整形外科医や化学メーカーなどに相談して、CBDを乳化剤とするナノ化の技術を取り入れることにした。そして完成した試作品で改めてブラインドテストしたところ、CBD入りのクリームとそうでないものには、明らかな差が生まれた」(柴田氏)

資金調達面でも高いハードル

原料の調達や製造法以外にも、日本でのCBD製品開発で高いハードルとなったのが、資金調達だ。世界各国で大麻が合法化され、CBD製品がグローバルで人気を博していることは知られていても、日本ではいまだに「CBD=大麻」との誤解が根強く、「違法な薬物で危険な大麻が使われている」製品とイメージされるのが実情だ。

「出資を呼び掛けたファンドには日本の大手企業もあり、“大麻ビジネスを支援している”と消費者に思われることを危惧して、出資を断念されたケースもあった。日本の原料メーカーやOEM企業に問い合わせても、CBD製品だという理由で協力を断られたこともあった」と柴田氏は明かす。

このような背景もあり、資金を集めるためには、「日本の法律に則り、安全かつ合法のCBD製品を作る」という、コンプライアンスを重視したブランド姿勢を示すことを最優先した。最終的に、国内の上場企業2社からおよそ5,000万円の資金を調達することができた。

日本のカルチャーを踏まえた独自のマーケティング戦略

数々のハードルを超えて、日本で「CBD POINT CREAM」の製造販売にこぎつけた柴田氏にとって、次なる課題はマーケティングだ。

米国では、上述したように大麻に対して「怖い」という印象はない。昨今の米国では、一歩進んでオーガニックのCBDを使用するなど、原料のクオリティにフォーカスすることで差別化を図るブランドが増えている。一方、日本のマーケットでは「大麻」を前面に打ち出すことは、今のところは得策ではないと柴田氏はみている。WALALAでは、CBDはビタミンCやコラーゲンなどと同様に、あくまでも原料のひとつとして捉え、成分の有効性や機能性に焦点を当ててPRしていく方向をとる。

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商品の配送パッケージ

またWALALAは、D2Cブランドとして、消費者の手元にダイレクトに届く商品の配送パッケージには細部までこだわった。ヤマト運輸と共同制作した外箱はそのまま包装なしで配送可能にすることで紙の使用量を減らした。また緩衝材を使わなくて済むよう内側のデザインを工夫し、開けた時に同梱するブランドブックが正面に目に入るよう蓋の内側に折り返しをつけて挟める形とした。これには、前職のアプリ開発を通してUIやUXに携わった柴田氏の経験が活きている。

今回のWALALAの立ち上げを通して、柴田氏はCBD製品の製造ノウハウや知識に日米で大きな差があると改めて気づかされたと語る。そして、日本の消費者にCBDに関する正しい情報を提供し、CBDへの理解を促すことの重要性を痛感し、科学的に効果を実証するレポートの発表やウェビナーの開催なども行っていきたいとする。

日本と米国の双方で求められる消費者の啓発

この“消費者を育てる”ことは世界のCBD市場を牽引する米国でも重要な課題である。ファッションと美容業界の起業家と投資家のコミュニティFaBが主催し、2020年9月8日にカリフォルニアをベースにオンライン開催された「Cannabis in beauty, wellness, and beyond(美容とウエルネス、さらにその先におけるカンナビス)」がテーマのウェビナーでも、同様の話題がトピックスとしてあがった。

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出典:FaB公式サイト

登壇者の1人で、CBDスキンケアから大麻吸引セットまで幅広いカンナビス製品を取り扱うECサイト「Miss Grass」を運営するケイト・ミラー(Kate Miller)氏は、米国の消費者は「CBDは良いもの、THCは悪いもの」と一般的に認知しているが、CBDもTHCも100種類以上存在するカンナビノイドのひとつにすぎず、それほど単純な話ではないとする。それぞれのカンナビノイドに適した使い道があるはずだが、研究は途上にあり解明されていない部分も多い。

また、どのような製品を選べばいいのかわからない消費者も多いとして、Miss Grassではユーザーが質問に答えていく“クイズ”ページを設けたり、カンナビスによって改善したいことを、睡眠、ストレス、痛み、生理などのジャンル別にして製品をラインナップし、各自の目的にあった製品にスムーズにたどりつける工夫をしていると明かす。

7月に創業したばかりの新ブランドで、頭皮と肌向けの2つのCBDオイルを提案する「Frigg 」の創業者のキンバリー・ディロン(Kimberly Dillon)氏は、CBD関連のトップブランドのCMOを務めていた経験から、科学的な裏付けをもとにカンナビスの効能や製品の効果を明示することが大切だとする。あわせて、製造過程を透明化し、どのように製品が作られているのか、どれだけ製造に重きをおき品質の向上に務めているかを消費者に伝えることが、ブランドと業界そのものの成長につながるとの見方も示された。

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出典:FaBウェビナー
「Cannabis in beauty, wellness, and beyond」

2019年11月、米国食品医薬品局(FDA)はCBDについて、十分な研究データが揃っておらず安全性を裏付ける確証はないと発表。盛り上がりをみせていた米国CBD市場に水を差す形となった。さらに最近は、米国でCBDの価格の低下もみられる。Hemp Benchmarksのレポートによると、2019年6月は1ポンドあたり約4ドルだったCBDバイオマスの価格が、2019年10月には2.32ドルに、2020年1月には1.31ドルまで下がった。ブームにのってCBD製品が過剰供給になり、さらにFDAの発表が追い打ちをかけ、加熱していた米国のCBDブームが落ち着きつつあるのかもしれない。

日本では「大麻=悪」とする概念が定着しているのが原因で、米国では急激な人気沸騰のために、消費者の知識が追い付いていない。まだ研究の歴史の浅いCBDについて、メーカーと消費者の双方が正しく理解していくことが、今後のCBD市場発展の鍵を握っている。

Text: 佐藤まきこ(Makiko Sato)
画像提供:株式会社バランスド

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