見出し画像

英ブーツ vs 米セフォラ、デジタル時代の信頼の勝ちとり方

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

ひとりひとりに寄り添うのか、場としてのコミュニティか。一見真逆のアプローチで、それぞれ顧客の信頼を勝ち得ているブーツとセフォラ。それぞれの哲学を貫いた結果は?

デジタルで情報をいくらでも取得できる時代、最終的に、顧客の消費行動をどのように促していくのか。各社が知恵をしぼるなかで、一歩先行くのが、イギリスの国民的ドラッグストアであり、英国内で約2,500店舗(2017年8月現在)を展開する Boots UK(以下、ブーツ)と、LVMH傘下でアメリカ国内で最大手の430店舗を持つコスメショップ SEPHORA(以下、セフォラ)だ。その手法は対照的でありながら、どちらもしっかりとユーザーからの信頼を得ている。

徹底的に ユーザー 一個人の需要に応えるブーツ

画像1

まずは、ブーツ。ブーツのデジタル戦略から見えてくるのは、徹底的に1個人としてのユーザーの需要に応えるという姿勢だ。


そもそものはじまりがハーブを扱う薬店だったブーツは、スキンケアアイテムやコスメだけではなく、調剤薬局としても多くのユーザーが利用しているのが特徴。つまり、美しくなるためのアイテムと同時に、健康に関する分野でも信頼が厚い。

ブーツが展開している Healthy and Beauty というオウンドメディアを見てみても、美容だけでなく、健康に関するコンテンツも充実している。もちろん各コンテンツには、ブーツで取り扱っているアイテムをそのままオンラインで購入することが可能だ。

画像2

出典:http://www.bootshealthandbeauty.com/

さらに、薬を購入したいが自分では判断できないユーザーに対して「Ask Boots」というサービスを行っている。これは、ユーザーからの質問に対して応えるサービスだ。単に薬を処方するにはとどまらず、避妊用のアフターピルから、がん患者のスキンケア方法まで、扱う項目が多岐にわたっている。

メールでの返答はもちろんだが、オンラインで予約をすると、担当者から20分以内で電話がかかってくる。ブーツが調剤薬局としての自覚を持っていることが感じられるサービスだ。ブーツはこの「Ask Boots」によって、ユーザーからのクレームが大幅に削減され、売り上げの増加につながった、としており、ユーザーの満足度も高い。

もちろん、美容についてのアドバイスも行なっている。充実しているのが、公式サイトでオリジナルに展開しているコンテンツだ。inspiration & advice と題され、細かくカテゴライズされている。

画像3

出典:http://www.boots.com/skincare-beauty-advice/skincare-advice

夏やハロウィン、クリスマスなど時期に合わせたカテゴリーや、スキンケア、フレグランス、ティーン向け、メンズギフトなど、美容に関するあらゆるコンテンツが揃っている。それぞれの内容もきめ細かい。フェイスマスクの選び方から、トレンドのネイル情報など、さながら美容メディアのポータルサイトのような様相を呈している。ここさえ見ておけば美容情報は十分と納得させるほどだ。

また、ブーツのオリジナルコスメ「No7」については、店頭にて1対1のアドバイスを受けることが可能だ。ファンデーションの色選びから、スキンケア方法、アイメイク、トレンドメイクと細分化したアドバイスを行なっている。リアル店舗でアドバイザーに質問したいときには、オンラインで予約が可能となっている。

このサービスは、ユーザーの姿勢も変化させた。買い物ついでにアドバイスを聞くという受け身の姿勢から、自分の知りたい情報を得たいという能動的な気持ちをユーザー自身に喚起させるのだ。

ブーツのオンラインストアでは、コスメや薬だけではなく、洗濯機や食洗機、冷蔵庫、テレビ、スピーカーなどの家電も扱っている。ここでもひとりの顧客に寄り添う姿勢は鮮明で、家電製品を購入すると、2名体制で配送し、古い家電はそのままリサイクルへ出してくれるという充実ぶりである。

こういったいたれりつくせりのサービスのほかに、Advantage Card というポイントカードの評価も高い。購入金額1ポンドにつき、4ポイントが付与され、1ポイントを1ペンスとして利用が可能と、還元率が比較的高いうえに、オンラインでも実店舗でもどちらでも利用可能で、デジタル上でポイント数をいつでも確認することができる。

ブーツによると、Advantage Cardユーザーの90%が女性だと公表している。つまり、ブーツが徹底しているのは、ヘビーユーザーである女性との1対1の信頼構築だ。ユーザーの需要をきめ細やかに汲み取り、それに真摯に応える姿勢がブーツのデジタル戦略を成功たらしめてるといえよう。

インフルエンサー不在のコミュニティ作りに成功したセフォラ

画像4


一方で、アメリカの最大手コスメショップのセフォラは、ブーツとは異なる方向のデジタル戦略で成功している。


セフォラのデジタル戦略のキーワードのひとつが、「コミュニティ」だ。それも、共通の強い興味をもったユーザーたちの集まりである。“強い興味をもった”というのはイコール、マスを狙っていないということでもある。

セフォラが展開するコミュニティは全6種類。そのうちのひとつ、Join Groups というコミュニティでは、スキンケアやアイメイクといったテーマごとのコミュニティがあり、ユーザーが気軽に話し合える場所になっている。Get Inspiredでは、ユーザーのメイクアップ画像や動画がポストされている。メイクに使用したアイテムは、ひとめでわかるので、真似したいと感じたら即購入可能だ。

画像5

出典:https://www.sephora.com/community/gallery?icid2=community_getinspired_hotspot

それぞれのコミュニティには、いわゆる著名なインフルエンサーの起用はしていない。あくまでユーザーの自発的な発言によって成り立っているのである。“やらせ”感を感じさせずに、本音で語り合える場所として認知されていることが、セフォラのコミュニティの強みになっている。インフルエンサーをあえて起用しないことが、一般のユーザーが気兼ねなく参加できる場所として成立した。「同じコスメ好きの人が集まっている」安心感もまた、コミュニティの活性化に一役かっているといえる。

その一方で、セフォラはメイクアップーティストやコスメブランド担当者によるライブ動画も実施している。ここでも、起用するのはセレブではなく、ユーザーの知りたいことに応えてくれるプロフェッショナルな人たちだ。コスメブランド「Too Faced」のチーフクリエイティブオフィサーである、Jerrod Blandino氏や、「Make Up Forever」のアーティスティックパートナーであるJessie J氏、メイクアップアーティストのKaren Sarah Gonzales氏など、いわば「中の人」である。

ユーザーの視点にたつと、自分の知りたいことに応えてくれるのであれば、それが著名人であろうがそうでなかろうが関係ない。自分にとって、有益な情報になり得るかだけが視聴を決め、よいと思えば購入する。着実に購買につながる「場」を作れたことが、セフォラのデジタル戦略の成功の要因と考えられる。

目先の数字だけでなく、ユーザーと本音で語り合える覚悟があるか

両社の戦略をみていると、リアルなニーズに地道に応え、企業がいかに本音を大事にしているかがわかる。ネットで真摯にユーザーとの信頼関係を築くのは、一朝一夕では難しく、すぐに売上数字に結びつくわけでもない。確実に言えるのは、自社の良いところのみを喧伝しているだけでは、信頼関係は成り立たない。個人にたちかえって、良好な人間関係の築き方を考えれば自明であろう。

デジタル上でユーザーとの良好な関係をつくるためにしていくべきは、ユーザーが能動的に使いたくなる、あるいは本音を言いたくなる仕組み作りと、それを吸い上げて応えていく姿勢だ。ことに女性たちは、自分にとって大事なブランドかどうかの判断についてはことほど左様に手厳しいのだから。

text: 篠田慶子(Keiko Shinoda)


ありがとうございます!メルマガで隔週で更新情報配信中。ぜひご登録を!
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディア。2021年7月19日より月・水・金の週3回配信となり、9月1日にリニューアルを予定しております。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf