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ポーラ、資生堂、コーセー、花王が先陣を切った「シワ改善」市場、あれから4年の進化

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2017年、厚生労働省の認可を受けたシワ改善有効成分を配合した医薬部外品の登場以来、日本では「シワ改善」カテゴリーが成長市場となっている。2020年4月に富士経済が発表した「薬事区分別のアンチエイジングスキンケア国内市場」によると、2020年のシワ改善医薬部外品市場の予測は410億円で、2018年と比較して2.1倍になっている。市場拡大を牽引してきた大手4社のこれまでと、最新アプローチをまとめた。

2017年のシワ改善市場元年から、ポーラ、資生堂、コーセー、花王とその他の動き

日本では、厚生労働省がシワ改善の効果効能を承認している成分が3つある。ポーラの独自成分である「ニールワン®」、資生堂が高いシワ改善効果と独自の製剤化技術を両立させ、医薬部外品・有効成分として国内で唯一製造・販売を可能としている「純粋レチノール」、汎用性の高い成分でシワ改善以外に肌荒れ、美白の有効成分としても医薬部外品の承認を得ている「ナイアシンアミド」だ。

成分的な見地からいえばシワ改善市場のパイオニアといえるのが、2017年1月に「リンクルショット メディカル セラム」を発売した株式会社ポーラだ。ポーラは、シワの発生に酵素・好中球エラスターゼが関わっており、紫外線ダメージや表情の動きによる刺激を皮膚が「勘違い傷」と誤認することで、好中球エラスターゼが分泌され、コラーゲンを分解して、その結果、シワができやすくなっていることに着目。好中球エラスターゼの働きを抑制して、コラーゲンなどの真皮成分の分解を抑える独自成分「ニールワン®」を開発した。

続く同年6月には、株式会社資生堂が純粋レチノールを配合した「エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリームS」を発売。それまで、肌あれの有効成分として医薬部外品に配合してきたレチノールには、表皮角化細胞でヒアルロン酸の産生を増加させ、皮膚に柔軟性を与えてシワを改善する効能効果があることを突き止め、厚生労働省から承認を取得した。

同社は、1989年よりレチノール研究に取り組んでおり、研究で培った製剤化技術を応用して、純粋レチノールを安定的に配合して製造することに成功した。承認時に平均シワグレード4の被験者集団で改善効果を示したのは純粋レチノールだけであり、優位な有効性が示されている。さらに同社はレチノール製剤の適用部位を首のシワに拡大し、8週間の連用で改善効果があることを示した。またレチノールはⅠ型コラーゲンの産生を有意に促進し、超音波による皮膚断層画像から真皮構造の再構築を促すことでシワを改善している可能性があることを見出している。

2018年9月にシワ改善市場に参入した株式会社コーセーは、ポーラが真皮、資生堂が表皮からのアプローチであるのに対し、真皮と表皮それぞれに働きかけてシワを改善するビタミンBの一種「ナイアシンアミド」に着目した。

ナイアシンアミドは、1990年代から化粧品および医薬部外品成分として広く使用されてきたが、2018年にシワ改善有効成分として改めて承認された。シワや美白などの効果に加えて、さまざまな剤型への展開が容易な成分であることから、ほかの有効成分と組み合わせることで独自性を出し、ニールワン®や純粋レチノールとは異なる商品戦略が描けるという狙いがあった。ナイアシンアミドは、汎用性が高い成分のため、その後、花王や、同グループのカネボウ化粧品も、ナイアシンアミドを採用したシワ改善化粧品を2019年に発表し、市場参入を果たした。

2017年のシワ改善市場誕生から4年たち、オルビスやディセンシア、ロート製薬など大手ブランドからHOTARU Personalizedといった新興ブランドまで、さまざまなブランドからナイアシンアミドを配合したシワ改善化粧品が次々とリリースされている。こうした状況で、市場をいち早く切り広げたポーラ、資生堂、コーセー、花王の大手4社のシワ改善アプローチは、成分のみにとどまらず進化を続けており、それぞれの現状をまとめた。

■ポーラ:
さらなる研究の進化で、ニールワン®と相性のよい新成分を発見し融合、既存製品をリニューアル

ポーラは独自のシワ研究を深化させ、2021年1月に「リンクルショット メディカル セラム」をリニューアルした。シワ改善に個人差がある理由のひとつに、シワの溝部分で、傷の治癒に欠かせない「コンドロイチン硫酸」が減少していることに着目。シワの溝部分のコンドロイチン硫酸を増やして集中治療室のような空間を形成することで、好中球エラスターゼの働きが弱まると同時に、コラーゲンやヒアルロン酸などを産生する線維芽細胞の働きを活性化してコラーゲンやヒアルロン酸の産生が増加し、肌が立体的に再生され、シワ改善につながる理論を確立させた。

この成果をもとに、ニールワン®との相性がよく、かつコンドロイチン硫酸を増やす働きに優れた新成分の探索が始まった。ニールワン®は長期間水分と接していると、わずかずつではあるが構造が変化してしまう性質があるため、ニールワン®を安定的に配合できる成分との組み合わせを見つける必要があった。

ポーラ研究所 リンクルショットプロジェクト 開発リーダーの楊一幸氏は、「机上理論も含めて数百パターンを試した。その結果、油溶性カモミラエキスと油溶性アルニカエキスを独自比率で配合した複合エキスに行きついた」と当時を振り返る。さらに、シワの溝にしっかりと定着するようテクスチャーを見直し、有用成分をシワの隅々まで行きわたるように、分子サイズが小さく、粘性が低いキャリアオイルを基剤として採用した。

楊氏は、「ポーラのニールワン®は、完全なオリジナル成分であり、シワという局所的な場所で何が起こっているかに向き合い、開発された成分であるという点で、ほかにはない優位性があると考えている。今後も、顧客の声を取り入れながら、さらに製品を進化させていきたい」と語る。

■資生堂:
「弾性」を初めて3Dイメージング、レチノールの効果を検証。未来の皮膚内のシワをモニタリング可能に

資生堂は、超音波技術を発展させ、これまでは不可能であった皮膚内部の弾性(押した際に反発する力)をμm(1mmの1000分の1)ごとに解析する「弾性イメージング技術」の開発に成功した。この技術により、皮膚内だけでなく、数10μmしかない角層の特性も正確に解析することができるようになった(特許取得済)。

20〜60代の日本人女性130名の肌内部をこの測定技術で解析したところ、角層が固くなり真皮層がやわらかくなる、つまり角層と真皮層の間で弾性バランスがかい離することが、シワの根本原因であることを突き止めた

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出典:株式会社資生堂

さらに、シワ有効成分のレチノールと保湿剤・柔軟化剤を配合したクリーム製剤を4週間連続で使用すると、シワの有無にかかわらず、弾性率のかい離が解消することを捉えた。角層の柔軟化と真皮層強化の両面からのケアで、皮膚内のシワケアは可能で、外見に現れる前から、シワを予防・改善できる可能性を示した。同社は、この最新の研究成果を第31回IFSCC(国際化粧品技術者会)横浜大会で発表するとともに、これまで外見からは知り得なかった皮膚内のシワをモニタリングすることにより、新たなスキンケアのアプローチにつなげていくとしている。

■コーセー:
4つの要素から、将来のシワを数理モデルで予測し、将来のシワリスク低減のケア提案につなげる

株式会社コーセーは、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所 医療健康データ科学研究センター 野間久史氏との共同研究で、年齢と肌の状態から将来のシワ状態を予測する(シワの変化を皮膚状態から直接定量的に予測する統計モデルとしては)世界初となる数理モデルを開発した(特許出願済)。

シワの発生や進行には、紫外線の曝露量や生活習慣、ホルモンの分泌量、肌状態など人によって大きく異なる複数の要因が関与していることが明らかになってきている。しかし、各個人の将来のシワを予測し、深くなる前にケアするシワ予防に関する技術は、これまでほとんど開発されていなかった。

そこで同社は、22~60歳のコーセー研究所に所属する日本人女性48人を対象に、目尻のシワの目視評価値(シワレベル)や、肌状態の指標となる測定値(水分量、経皮水分蒸散量、皮脂量、肌色の明るさ、肌色の赤み、肌色の黄み)を7年間にわたり毎年取得したデータを用いて、シワ予測モデル開発を行った。モデルの開発には、個人差による影響を調整することができるマルチレベルモデル(データのもつ階層構造の違いを表現することができる統計手法)を用いた分析法を採用。各測定値との関連を複合的に分析した結果、年齢、肌色の明るさ、肌の赤み、皮脂量の4つの要素で将来のシワレベルが予測できることがわかったという。

同社は、1人ひとりの年齢と肌状態から定量的にシワを予測することが可能になり、将来のシワリスク低減につながる美容提案につなげるとしている。

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出典:株式会社コーセー

■花王:
リフトアップフィルムの「メイクアップ技術」で頬のたるみを持ち上げる新アプローチ、数年後に製品化へ

花王株式会社 メイクアップ研究所、生物科学研究所、解析科学研究所は、塗るだけでほうれい線を目立たなくする新しいメイクアップ技術の開発に成功した。

見ため年齢を左右するシワのなかでも、とくにほうれい線はシワが深く、重力でたるんだ頬の肌が上から覆いかぶさり影が強調されるため、ファンデーションやコンシーラーなどを用いてカバーすることが難しい。そこで同社は、頬のたるみを手で持ち上げるとほうれい線が目立たなくなることに着目。特定のポリマーを含む液体の「乾燥すると収縮して膜をつくる」性質を利用して、頬のたるみを物理的に持ち上げることで、ほうれい線を目立たなくするリフトアップフィルムの開発に約4年前から取り組んだ。

まず、頬のたるみを持ち上げてほうれい線を目立たなくするには、約0.6ニュートンの力(手のひらに約61.2gのものを載せたときに感じる重さ)が必要で、そのためには塗膜の塗布範囲を考慮すると、乾燥時のリフトアップフィルムの収縮率が10%であることを計算。その条件を満たしつつ、乾燥した時に塗膜が割れないよう、高い収縮性に加え、肌への密着性が高く、適度な柔軟性をもったある特定のシリコーン系疎水性ポリマーを見出した。

さらに、肌に塗った時に自然な仕上がりになるためには、薄く塗布しても同様の収縮力を保つことが重要だ。そのために、揮発性の高い油剤を混ぜることで、リフトアップフィルムのモデル処方を完成させた。花王株式会社 メイクアップ研究所 飯田将行氏は、「薄さと収縮性、収縮性と柔軟性の2つのトレードオフを解決しなければならなかった点が非常に困難だった」と振り返る。

40~50代女性11名を対象にモデル処方を塗布し、塗布前後のほうれい線の最深部の変化を調べたところ、塗布後、ほうれい線の深さが平均で約1mm浅くなっていたことが確認できた。また同時に、3D形状解析によって、加齢とともに厚くなる傾向のある皮膚内部組織の厚みが、塗布時には0.2mm薄くなったことも確認された。今後は、皮膚の内部構造の変化を伴ってシワが目立ちやすくなっているのではないかという仮設を立て、シワ研究を進めていくという。

この技術を、2020年10月に横浜で開催された第31回IFSCCで発表したところ、研究発表会であるにもかかわらず「いつ製品化するのか?」といった質問が多く寄せられ、技術への期待の高さを実感したという。「まったく新しい技術なので、消費者にどのように伝えるか、そして多くの方に使っていただけるような商品を目指して検討を行っている。なるべく早く商品化を実現したい」(飯田氏)

Text: 小野梨奈(Lina Ono)
Top image: Girl with red hat via Unsplash



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