資生堂「パーソナルビューティープラン」が担うのは、地域に根ざすリアル重視のDX
新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症やコロナワクチンについては、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

資生堂「パーソナルビューティープラン」が担うのは、地域に根ざすリアル重視のDX

BeautyTech.jp

◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

資生堂は、2022年2月14日より、全国の化粧品専門店、デパート、GMS、ドラッグストアにおいて、ビューティーコンサルタント(以下、BC)が作成したビューティープランを、顧客がデジタルで自宅に持ち帰り、いつでも、どこでも振り返ることができる「パーソナルビューティープラン(以下、PBP)」の提供を始めた。この新サービスの狙いと真価について、開発に関わった同社美容戦略部のチームメンバーに話を聞いた。

資生堂がPBPを開発した3つの理由

資生堂のBCの源流となる「ミス・シセイドウ」が誕生したのは、1934年のことだ。当時から、一人ひとりの顧客に合わせたカウンセリングを行い、美の処方箋「ビューティープラン」を手渡してきた。

そこから時代とともにサービスは進化し続け、2014年からはすべてのBCに「ビューティー・タブレット(以下B-TAB)」と呼ばれるiPadを配布。メイクシミュレーションや肌測定など、資生堂が開発したさまざまな応対ツールを使用しながら、店頭における顧客体験を提供してきた。

ビューティー・タブレット(B-TAB)

一方でビューティープランは従来と同じく、手書きしたものを紙で提供してきた。今回、提供を開始したPBPは、このビューティープランを作成する過程も含めた体験までをデジタル化したものだ。店頭で発行されたQRコードを顧客自身のスマートフォンで読み取ることで、自分だけのために作成されたビューティープランにアクセスできるようになる。単に紙からデジタルへとシフトしただけではなく、店頭における“オンリーワン”の応対を支援する点こそが、PBPの真の価値だ。

株式会社資生堂 エグゼクティブオフィサー チーフビューティーストラテジーオフィサー兼美容戦略部長 横田由香氏は、PBPが生まれた3つの理由と背景を次のように説明する。

株式会社資生堂 エグゼクティブオフィサー チーフビューティーストラテジーオフィサー
兼美容戦略部長 横田由香氏
プロフィール/店頭活動やブランドマーケティングを経て、2020年美容戦略部長に就任。以来、ビューティーコンサルタントの制度・応対の改革を進め、マーケットに合わせた美容サービスの進化を推進

1つめの理由は、BCが顧客の期待に応えにくくなってしまう時代が来るという危機感だ。PBPの起案が始まったのはパンデミックの直前だったというが、コロナ禍によって非接触の応対を求める顧客が増え、肌を直接触ることが難しくなったことで、この懸念は現実のものとなった。そうした状況のなかでBCの存在意義の向上について考えるスピードが加速した。

2つめは、これまでブランドが独占してきた情報価値の変化だ。商品情報をはじめとしたブランドが保有する情報は、今や店頭に行かずともインターネット上で簡単に見ることができる。加えて、YouTuberからSNS上の一般消費者まで、誰もが情報発信することが可能になり、今までは店頭からでしか顧客に伝えられなかった情報に、特別感を持たせるのが難しくなってしまった。

3つめは、顧客との新たなリレーションづくりの必要性である。顧客がBCに求めるものは、製品の購買だけではなく、数ある商品のなかから、自分に最適なものを選択するためのサポートだ。パーソナライズを極めた顧客との一連の応対をデジタル化することで、データにもとづいた効果的な関係づくりへと発展させたいと考えたのだ。

「私たちはツールを進化させるだけではなく、お客さまとBCの間のハートフルなリレーションづくりを大切にしていきたい。よりパーソナルな応対をつくっていくためのスタート地点に、ようやく立てたと考えている」(横田氏)

出典:PBP案内資料

顧客を包括的にとらえ、手書き文字も。PBPの顧客体験

PBPには「スキンケアプラン」と「メイクアッププラン」の2種類がある。このサービス開発に携わったのは、資生堂ジャパン株式会社 美容戦略部 BC事業連携グループの小林陽平氏と志村侑紀氏だ。

資生堂ジャパン株式会社 美容戦略部BC事業連携グループ PBPプロジェクトリーダー 
小林陽平氏
プロフィール/営業や経営戦略企画を経て、
2020年から美容戦略部にて店頭のDX推進を中心に業務を担当している

小林氏は、営業経験があり現場に詳しく、志村氏はBCとして顧客対応に精通している。百貨店から化粧品専門店まで資生堂が持つどの販売チャネルでも使いやすく、顧客体験を高めるもの、という視点で開発が進められたという。

「スキンケアプラン」と「メイクアッププラン」の2種類がある
出典:資生堂ニュースリリース

BC一人ひとりが持つB-TABには、顧客の要望や悩みを記入する「問診」、カメラで撮影すると肌の水分量などが測定できる「肌パシャ」、商品カタログの「SC(スキンケア)」と「FD(ファンデーション)」と「HC(ヘルスケア)」、パーソナルカラー診断やメイクシミュレーションができる「MS(メイクアップシミュレーター)」、そして「PBP」などのアプリケーションが入っており、それらのアプリを通じてデータがPBPに集約される仕組みになっている。

PBPの仕組み
出典:資生堂ニュースリリース

メイクアッププランでは、パーソナルカラー診断を行う際、BCが顧客にいくつかの質問を投げかけるとともに、B-TABで顧客の顔写真を撮影する。資生堂独自の解析方法で、「イエベ春」「ブルベ夏」「イエベ秋」「ブルベ冬」の4パターンのうち、自分に調和するカラーグループがどれなのかが示される。

資生堂ジャパン株式会社 美容戦略部BC事業連携グループ 志村侑紀氏
プロフィール/店頭活動や資生堂のおもてなし講座やメイク講座をはじめとする企画を経て、
2019年より美容戦略部で店頭におけるDX推進や教育などを担当

実際の接客では、撮影した顔写真に、カラー診断などをもとに似合う色味のアイシャドウをタブレット上でのせながら、どこにどのカラーをどの順番で塗っていくかのステップもタブレットへの手入力で記入していく。ここまで一連の流れのすべてがPBPの履歴として残り、顧客があとで確認できるようになっている。

次にスキンケアプランでは、顧客が普段どの順番で何を使ってどのようにスキンケアをしているのか、詳細にヒアリングを行ないB-TABで入力していく。顧客は資生堂の製品だけですべてのスキンケアステップを行っているわけではないので、その情報も入力する。

たとえば、資生堂の美容液と他社の美容液をあわせて使っている顧客の場合には「こちらの商品を使用するなら、先に資生堂の美容液をお使いいただくとより良い」といった、トータルなアドバイスをBCは提案できる。

ヒアリング終了後は、B-TAB上の肌測定アプリの「肌パシャ」で、顔写真を撮影していく。潤いやハリ、透明度といった肌の状態から、顧客の悩みを改善するためのアイテムを紹介できるようになっている。

メイクアップとスキンケア、どちらのパーソナルプランにも共通しているのが「おすすめ情報のURLを追加する機能」だ。新製品の情報や資生堂公式YouTube動画はもちろん、資生堂以外の製品や情報であっても、顧客にとって有益なものは提供可能なように設計されている。

加えて、PBPにはBCが手書き文字をメッセージとして書き込める。顧客の反応としても「手書き入力は自分のために発行してくれていると感じる」「手書きだと、自分だけのプランとして温もりも感じる」といった声があがっているという。

顧客のスマートフォンからアクセスした場合のPBPのメイクアッププラン。
BCの手書きメッセージとおすすめのWebサイトへのリンクも表示される

「PBPでできることはたくさんあるが、すべてを一度の来店時に行なっていく必要はない。その時々のお客さまのお悩みやご都合に応じて、必要なものをBCが選択しながら作成させていただく」(志村氏)

顧客とのコミュニケーションが時系列でもたまっていき、そのデータがさらなるパーソナライズを可能にすると同時に、BC同士でもどんな顧客にどのようなコミュニケーションが大切かなどの知見が蓄積できる。

“リアル重視のDX” が顧客との関係性をより濃くする

PBPは、BCがいる全国の化粧品専門店、デパート、GMS、ドラッグストアなどの幅広いチャンネルで作成され、そのデータは、資生堂が独自開発した顧客管理のための次世代店頭情報システム「S-CORE(エスコア)」に2年間保存される。

S-COREで顧客情報が作成されていない場合(匿名データ)や、S-COREと連動していない店舗で作成した場合は100日間の保存となり、この期間中は顧客は自分のスマートフォンに保存したURLからアクセスして閲覧できる。

S-CORE

同一店舗でS-COREに顧客情報が保管されていれば、再訪した際に過去のPBPの履歴をみながらのカウンセリングができ、また店舗ごとに都度新しいPBPが発行される。

資生堂がこれまで築いてきた複数の販売チャネルは、いずれも地域に密着してきた。自宅や勤務先の近く、あるいはその途中など顧客が立ち寄りやすい場所で顧客のニーズや生活に寄り添ってきたのだ。それを間近でみてきた小林氏と志村氏が目指すのは、その関係性を守ったまま、顧客とBCの関係性をデジタルでさらに濃いものにしていくことだ。

その先には、1人の顧客に1個のIDを発行してすべての情報を紐づける1 ID構想も、重要視すべきゴールの1つであるかもしれない。だが現状、EC化率の低い日本では、こうした店舗ごとに使いやすいデジタルツールの貢献度は高いと考えられる。

資生堂ジャパン株式会社 BC事業連携グループ グループマネージャー 戸並知大氏
営業や事業戦略企画経て、2019年より美容戦略部でグループマネージャーとして
BC領域の戦略立案、DX推進を中心に担当

「どんなにDXが進んでも、店頭でしか提供できない価値が必ずある。BCという人の価値を最大限に高めたいという想いで、今回PBPの開発を進めてきた。PBPを活用することで、お客さまにとって一番記憶に残る、満足度の高いサービスを提供することが目標だ」(小林氏)

「店舗における顧客体験の向上に向けて“リアル重視のDX”を志向しているPBPは、店づくりを支援するための強力なツールになり得る」とBC事業連携グループ グループマネージャーの戸並知大氏はいう。

「基本的にはお客さまが足を運べる範囲としてのリアル店舗、つまり地域を大事にしていきたい。PBPを通して、お得意先さまとBCと営業が一緒になって、お客さまとの関係性をつくっていくイメージをもっている」(戸並氏)

Text: 野本纏花(Madoka Nomoto)
Top image: 資生堂ニュースリリース
画像提供: 資生堂ジャパン株式会社

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!
ありがとうございます!メルマガで隔週で更新情報配信中。ぜひご登録を!
BeautyTech.jp
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディア。最新記事から過去1ヶ月分は無料でお読みいただけます。それ以降の記事は「バックナンバー読み放題プラン」をご利用ください。詳しくはこちらから→ https://goo.gl/7cDpmf