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「イセタンビューティ」もメタバース化、三越伊勢丹のREV WORLDSがめざすコミュニティ

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2021年3月にローンチした三越伊勢丹によるメタバース「REV WORLDS(レヴワールズ)」は、イセタンビューティなど実店舗を再現した仮想伊勢丹新宿店でのショッピングはもとより、新宿東口の「街歩き」をアバターで楽しむ仮想空間設計が特徴だ。オープンから約1年半が経った今、偶然の出会いと仮想空間ならではの新しい体験を提案するREV WORLDSの現状と、とくに美容分野における今後の可能性についてレポートする。

バーチャル店舗ではなく、「街」を創るという発想

近年、注目が高まるメタバース。テクノロジー企業などが開発を手がけるケースが多いなか、やや異色ともいえるのが、三越伊勢丹が2021年から展開する独自の仮想空間アプリ「REV WORLDS」だ。

株式会社三越伊勢丹 営業本部 オンラインストアグループ デジタル事業運営部 レヴワールズ マネージャーの池田英生氏と、同アシスタントマネージャーの浅賀遼太氏に、事業スタートの経緯やメタバース化したイセタンビューティの現在、目指している世界などを聞いた。

REV WORLDS
著者撮影

REV WORLDSは、スマホアプリからメタバース空間にある仮想の新宿の街にアクセスする。ユーザーは、自分の分身である「アバター」を使って空間内を自由に移動できる。たとえば、現実世界の伊勢丹新宿店を再現した「仮想伊勢丹新宿店」を訪れると、実際の売り場のように商品が並び、近づくと商品の説明や価格が記載されたタグが表示される。タグをタップするとECサイトに移動し、その商品を購入することが可能だ。

現在は、ビューティアイテムが揃う「イセタンビューティ」や「ビューティアポセカリー」をはじめ、デパ地下やReStyleの婦人服ショップ、伊勢丹バイヤーがセレクトしたブランドやアイテムを展開する「イセタンシード」、ギフトオンラインストアなどが売り場として常設され、期間限定のショップも随時登場する。

仮想伊勢丹新宿店のほか、REV WORLDS内には、イベントなどを行う「バーチャル東京ドーム」や「バーチャル地下闘技場」、トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」を展示するバーチャルショールームなども展開している。さらに、東京ガールズコレクションと連携したブースを期間限定で設置したり、スポーツイベントの開催時期に合わせてミニチュアのマラソンコースを設置したりといった取り組みも行ってきた。

百貨店が制作した仮想空間と聞くと、商品購入のための場を想定したECの延長のような用途をイメージしがちだが、REV WORLDSが目指しているのは、仮想の伊勢丹新宿店の店舗を作ることにとどまらず、さまざまな出会いやコミュニケーション、体験ができる「街」を創造していくことだ。

株式会社三越伊勢丹 営業本部 オンラインストアグループ
デジタル事業運営部 レヴワールズ
マネージャー
池田英生氏
プロフィール/2007年株式会社伊勢丹(現三越伊勢丹)に入社。子供服、紳士服領域を中心に、12年間の店頭業務にて販売やマネージャーを経験。2019年に初めて3DCG制作に触れ、2020年10月より「REV WORLDS」の立ち上げメンバーとして当事業に従事。現在は「REV WORLDS」チームにおいてCG制作、コンテンツデザインリーダーを担当

「バーチャルの店舗で買い物ができるだけの場所では、面白さが続かないと思っている。たとえば、バーチャル伊勢丹で買ったアバター用のデジタルウェアを着て新宿の街を歩き、そこで出会った誰かと『そのコーデ、いいね!』などと会話をしたり、そこでファッションの楽しさを感じてもらい、リアルな服を購入するきっかけになるといった、自己実現、自己超越につながるようなアプリにしたいと考えている」(池田氏)

そこで、アプリ内には、同じタイミングでログインしている他のユーザーと交流できるボイスチャットやテキストチャットの機能も用意されている。実際に、友人同士がそれぞれアバターで仮想伊勢丹新宿店の店舗を訪れ、共通の友人の出産祝いをチャットで相談しながら一緒に選んだというユーザーからのフィードバックも届いているという。

さらに、SNSのように他のユーザーを自分の「フレンド」として登録できる機能も備えているため、REV WORLDS内で初めて知り合った人と仲良くなるといったことも起こりうる。

「トヨタのショールームでは、同じタイミングでその場に居合わせた、年齢も住む場所も離れているユーザー同士が車の話で盛り上がっている様子がみられたことがある。リアルな空間ではなかなか起こらない世代や地域を越えた交流が自然に行えることは、バーチャルだからこその強みだと感じている」(池田氏)

このように、REV WORLDSは、いつでもどこからでもアクセスでき、クリック1つでさまざまなアクションができるECの便利な点と、ヒトやモノとの偶然の出会いがある現実世界の楽しさをドッキングさせ、単にショッピングをするだけではない、新しい体験とコミュニケーションが広がる場所として設計されている。

3DCG未経験からのメタバース開発

REV WORLDSの3DCGの制作を担当する池田氏だが、伊勢丹に入社してから12年間は主に店頭での業務に従事していた。2019年にデジタルとリアルの融合を推進する「シームレス推進部」に異動。REV WORLDS発起人である仲田朝彦氏(現 株式会社三越伊勢丹 営業本部オンラインストアグループ デジタル事業運営部 レヴワールズ マネージャー)と出会ってその構想を聞き、もともとゲームが好きだったこともあり「すごく面白そう」とすぐに賛同。そこからCGを学び始めた。

その後、2020年4月に世界最大規模のVRイベント「バーチャルマーケット」に伊勢丹新宿店を再現した仮想店舗を出店。同時進行で、社内起業制度を使って事業の答申をしていた。バーチャルマーケットの実績が認められたことに加え、コロナ禍で社会全体がデジタルを活用した新しい取り組みの必要性を意識し始めた時期だったことも後押しをして、事業としてスタートできることが決定。2020年の10月から、自ら参加したいと手を挙げたスタッフによるチームで開発を開始し、2021年3月にアプリをローンチした。また、制作は一部を除いて基本的に内製している。

「イセタンビューティ」も仮想空間で展開

ローンチ直後に展開された、2021年の「ISETAN MAKE UP PARTY」では、REV WORLDSの仮想会場に36ブランドが参加。並行して開催されたリアルイベントでは展開されなかったブランドも10ブランドほど参加した。

2021年の「ISETAN MAKE UP PARTY」のバーチャル会場
出典:REV WORLDS 公式note

若い男性の来場が予想よりも多かったことも意外な成果だったという。スキンケアに関心があるものの、リアルの百貨店の化粧品コーナーには行きづらいという層も、バーチャルなら気兼ねなく訪れて商品を見ることができるのは大きなメリットだ。

現在は、常設の化粧品売り場としてイセタンビューティを展開。11ブランドが出店している。ここでは、商品を展示するだけでなく、情報発信の場として活用しているところも特徴だ。壁面のディスプレイにはメイクに関連したトピックなどが表示され、リンクからは商品やメイクに関するコンテンツを読むことができる。さらに、アバターの顔のメイクルックを選べるようにするなど、店頭ではできない体験を意識したサービスを提供している。

「REV WORLDSは、まだメイクの経験がない小学生や10代の若い世代も使っている。アバターの顔が変化する体験を通して、メイクの効果を感じるきっかけを与えられたらと考えている」(浅賀氏)

イセタンビューティのもうひとつのポイントが、美容部員のアバターだ。これは実際に店頭に立っているスタッフを3Dスキャンして作られている。ユーザーからは「店舗でよく接客してもらうスタッフのアバターに会えた」などと好評で、親近感がわくためか滞在時間も長い傾向にあるという。

現在は、ユーザーのアバターが近づくと自動でお辞儀をしたり、決まったセリフが吹き出しで表示されたりといった、ゲームでいうノンプレイアブルキャラクター(NPC)のような形で運用しているが、過去には、ほかのフロアで実際に店頭に立つスタイリストがアバターを操作してリアルタイムの接客を行ったこともあり、今後はイベントなどを中心に同様の活用も積極的に行っていきたい考えだ。

「たとえば、インフルエンサーがフロアに立ち、実際に話ができるような場があれば、その人のファンが足を運ぶきっかけになる。アバターを使ったコミュニケーションは、化粧品ブランドには親和性の高い方法だと考えている」(浅賀氏)

株式会社三越伊勢丹 営業本部 オンラインストアグループ
デジタル事業運営部 レヴワールズ アシスタントマネージャー
浅賀遼太氏

プロフィール/2016年株式会社三越伊勢丹に入社。婦人服担当として店頭業務・バイヤー業務を経験。デジタルウェアを通して、アパレル業界に変革を起こしたいという想いから、社内公募制度を活用して2021年4月より「REV WORLDS」事業に参加、現在に至る

このほかに、実店舗地下2階の売り場を再現したビューティアポセカリーでは約60ブランドの商品が並ぶ。こちらは商品点数が多いため、3DCGではなく2Dの画像での展示となっているが、販売員が情報発信しているInstagramアカウントを商品と一緒に紹介したり、ジャンルごとのランキングを展示したりといった工夫をこらし、単調にならない売り場作りを行っている。

クリック率は通常のサイトの3倍

一般的なゲーム要素の強いスマホアプリの場合、男性ユーザーの比率が多くなる傾向が強いが、REV WORLDSではユーザーの約4割を女性が占めているという。また、年齢層でみると、リアルな伊勢丹新宿店は50代が中心となっているのに対して、REV WORLDSは30代が多く、実際の百貨店は敷居が高くて足を運びにくいと感じる層との接点にもなっている。

ECへの誘導という面でも一定の効果が表れているという。REV WORLDS内の商品リンクは、通常のメルマガやWebサイトのバナーに比べてCTRが3倍ほど高い傾向にある。特徴的なのは、それだけの高い効果を見込めるにも関わらず、クリック時の誘導先を三越伊勢丹公式のECサイトに限定しておらず、出店ブランドが自社ECサイトなどを設定することも可能になっている点だ。

さらに、伊勢丹新宿店の実店舗では展開していないブランドでも出店できるなど、出店にあたっての制約はかなり少ない。これには、参入障壁をできるだけ低くし、外部のサイトなどとも積極的につなげていくことで、コンテンツ数を増やしていきたいとの意図がある。

「出店サイドの選択の幅を増やすことで多様性が生まれ、結果的にユーザーに喜んでもらえる場を作ることができ、コンテンツがさらに増えていくという好循環が生まれるので、あえて厳しい制限は設けていない」(池田氏)

ユニークな取り組みとしては、三鷹市の小学校の児童がデザインした服をアバターに着せたバーチャルファッションショーも開催された。実店舗にも児童のデザイン画などを展示するコーナーを設けたことで、参加した小学生が家族と一緒に来店するなど、バーチャル(REV WORLDS)とリアル(伊勢丹新宿店)の新たなつながりが生まれるきっかけにもなっている。

日常的に訪れるコミュニケーションの場へ

REV WORLDSは、ほかのメタバースプラットフォームに比べると、ゲームを含めたバーチャルな空間に慣れていないユーザーのアクセスが多いという。そのため、あえて高精細すぎない親しみやすいビジュアルにしたり、横画面ではなく縦画面で利用する仕様や、アバターを簡単に作れるようにしたりと、バーチャルに馴染みがないユーザーでも入りやすい工夫をしている。

今後はここからさらに機能を追加し、より多彩な楽しみ方のできるアプリにしていきたいと池田氏は話す。たとえば、現在はアプリ内で貯まるポイントを使ってアバターの服などのアイテムを入手できる仕組みだが、今後は有料でアバターの服を購入するシステムの導入も検討している。

さらに、ブランドや商品の背景を知ることのできるクイズを楽しむ場所を設けるなど、ゲーム性を追加したり、音楽やお笑いのライブを開催したりといった企画も検討中だ。

「電車内などで、新着メッセージがなくてもなんとなくLINEのアプリを開くという方は多いと思う。そんな感覚で、特別なことがなくても日常的にREV WORLDSに入り、新しい情報はないかな、面白いものはないかな、誰かいないかなと気軽にコミュニケーションを楽しんでもらえるようなツールにしていきたい」(池田氏)

Text: 酒井麻里子(Mariko Sakai)
Top image & photo: 株式会社 三越伊勢丹

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