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韓国でマタニティコスメ市場を強力なR&Dで切り開く新ブランド「LALUCELL」

BeautyTech.jp

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化粧品開発のほか、ブランドコンサルティングを手がける韓国ビューティ企業BIOCOS(バイオコス)は、妊婦ユーザーに特化したコンセプトの化粧品ブランドLALUCELL(ラルーセル)をローンチした。日本をはじめとする海外展開にも意欲をみせるマタニティスキンケアブランドの成り立ちや詳細、今後の展望についてレポートする。

胎児への影響を排除したとするクリーンビューティブランド

韓国ではこれまで、妊娠中の女性にターゲットを絞った化粧品にそれほど目立ったものはなかった背景もあり、2021年1月にローンチしたLALUCELLには大きな注目が集まっている。

出典:LALUCELL公式サイト

LALUCELLを運営するBIOCOSは、2019年11月に現代表カン・ユジ氏らによって設立された化粧品開発企業だ。同社は翌2020年に、政府省庁・中小ベンチャー企業部の傘下組織である創業振興院の支援対象企業に選定され、事業化資金支援や政府系研究所からの技術移転を受けながら、独自のR&Dを展開。2021年1月にLALUCELLのローンチにいたっている。

LALUCELLは、PETA認証EVE VEGAN認証をはじめ、ドイツDermatest認証におけるEXCELLENT等級、全成分EWGグリーン等級などの世界各国の認証や、独自技術の特許を次々と取得している。製品に含まれる成分は、妊娠・出産時に起きやすい肌トラブルに効果的でありながら、胎児に害をおよぼさない処方というのが同社の説明だ。

BIOCOSが保有する特許
出典:LALUCELL公式サイト

韓国メディアの取材に対し、カン氏は自社製品について次のように話している。

「妊娠するとホルモンバランスが崩れ、約73%の女性が妊娠性の肌トラブルを経験する。しかし、胎児に影響がおよぶことを恐れて、市販の軟膏などでも使うことをためらうケースが多い。LALUCELLの製品は200人の妊婦に肌の悩みを直接ヒアリングし、その内容を分析した結果をベースに開発されたものだ。とくに妊婦の使用には適さない成分を徹底的に排除し、安全な成分、自然由来の成分を中心に肌の悩みを解決できるようにした」(カン氏)

LALUCELLは「米国の赤十字社が新生児の臍帯血(へその緒に含まれる血液)を分析した結果、およそ600種類の化学物質が検出されている」とし、市場に流通している化粧品が抱える課題について指摘している。

カン氏はまた、妊婦が避けるのが望ましい成分として、ビタミンA、ジエタノールアミン、ヒドロキノン、イソフラボン、アルブチン、サリチル酸、アロマオイル類などを挙げるが、消費者自身がパッケージに記載された成分名をすべてチェックするのは簡単ではない。

韓国統計庁が2022年8月に発表した「2021年の出生統計」によると、韓国の出生率は0.8人と過去最低を記録している。この数字はOECD加盟国のなかで最も低い。「肌トラブルなど、妊娠・出産による身体的不都合や悩みを最小限に抑えることで、出生率の増加にささやかながら寄与したい」というのもブランドが掲げる目標だ。

LALUCELLの商品ラインナップは、スキンケアローション、クリーム、マスクパック、また、それらを組み合わせたデイリーケアセットなどで構成されており、一部、新生児の熟睡をサポートするヴィーガンローションなども展開している。商品単品の価格帯は日本円にして約1,500円から4,000円程度の設定で、ユーザーブログによれば「Plant Extract Intensive Facial Cream」「Collagen Firming Serum」「Vitamin12 Brightening Serum」などが人気商品となっている。

人気商品「Vitamin12 Brightening Serum」
出典:LALUCELL公式サイト

今、LALUCELLが注目を集める背景のひとつに、韓国ではもともと妊娠・出産や子どもの健康に関わる場面で、食べ物や肌に直接つけるものに細かく気をつかう文化がある。妊婦の肌の悩みに応えるコスメの需要は確実に高まってきており、たとえば、育児アプリ「CryingBeBe(クライングベベ)」が2021年に妊娠中の女性を対象に行なったアンケートでは「もらいたい妊娠・出産祝い」という質問に対し「妊婦に特化したスキンケア商品」という回答が最も多かったという。理由としては、「妊娠と出産で肌が敏感になりがちだが、胎児に影響をおよぼす可能性を考えると、普段通りに化粧品を使えない」という趣旨の回答が多数を占めた。

特許技術など科学の力でマタニティ市場にアプローチ

市場の潜在需要を汲み取るマーケティング力を備えたLALUCELLは、R&Dにおいても政府機関から移転を受けた技術や特許技術を複数保有しており、その面においても競争力が高いと評価されている。韓国メディアはそのブランドイメージについて、「科学的自然主義」と表現する。

詳細が公開されている技術としては、タンポポと麦からの混合抽出物である「TARAX-II」がある。一般的な化粧品処方では精製水がおよそ70%含まれているとされるが、LALUCELLでは代わりにTARAX-IIを使用し、妊娠時の肌トラブルを緩和する抗炎作用を高めている。もともとTARAX-IIは、韓国原子力研究院が皮膚疾患治療のために開発し特許を取得した成分だったが、BIOCOSは技術移転を受けて自社製品の原料として使用している。

一方、「ELASOME技術」はBIOCOSが独自に開発し特許を取得した技術だ。これは美容成分を閉じ込めて人体内に届けるリポソーム技術のひとつで、「有効成分を損なわずに皮下組織に運ぶことで、効果を4倍以上に高める」(カン氏)とされている。皮膚吸収が難しい天然成分の有効性を高める効果が評価され、韓国内では化粧品新技術と関連した賞も受賞している。

LALUCELLは「今年の優秀ブランド大賞2022」(主催:JYネットワーク)や「韓国消費者ベストブランド大賞2022」(主催:韓国消費者ベストブランド)などにおいて、マタニティ関連の化粧品/ビューティ部門で1位を総なめしている。妊婦の肌の課題を解決するというブランドミッションは広く受け入れられ始めており、それに比例して認知度も高まっている。

化粧品市場のホワイトスペースとなる可能性をもつマタニティコスメ

妊婦の肌に特化した化粧品で市場の評価を受けるLALUCELLは、この特定のユーザーに特化した商品を展開するという戦略で市場へのアプローチを強めている。2022年8月には30代の肌の悩みにフォーカスし、皮膚バリア形成を促進するガラクトミセス発酵ろ過物を使用したヴィーガン化粧品の販売を開始している。

一方、2023年2月にはJWマリオット・ホテル・ソウルとの提携を発表。「Nice to meet you Baby」という胎教パッケージ商品を販売するとした。胎教パッケージ商品とは、妊婦や夫婦を対象にした宿泊キャンペーン商品で、韓国の多くのホテル・宿泊施設で提供されている。キャンペーン期間中、JWマリオット・ホテルソウルのパッケージ利用客には、LALUCELLのコスメ商品が提供される予定だ。

LALUCELLの30代用ヴィーガン商品
出典:SSG.com

興味深い点として、韓国では出生率が低下し続けているものの、マタニティや育児関連の市場規模はむしろ拡大しているという統計がある。コンテンツ産業や食品産業においては、マタニティ関連の製品を増やすことで、LALUCELL同様に売上を伸ばしている企業も散見される。LALUCELLはいわば、他のブランドが気づけなかった市場の“穴場”を見抜き、戦略的にイメージ構築や商品開発を行うことで成功した事例といえる。

また、グローバル規模でみれば人口は増加の一途をたどっており、市場規模の拡大は確実になっている。昨今のクリーンビューティトレンドと考えあわせれば、将来的にマタニティ×ヴィーガンという新たな市場が大きく成長していく可能性もある。韓国国内で確立した評価をベースに、LALUCELLが海外市場に積極的に進出していく可能性もありそうだ。

実際、LALUCELLはこれまで韓国国内での認知度向上に注力してきたが、2022年後半からは北米、東南アジア、日本などの海外ECにも出店を開始している。とりわけ米国ユーザーの反応には確かな手ごたえを感じているといい、今後はさらなる海外展開や製品ラインナップの拡充に努めていくとする。

「LALUCELLは真摯なコミュニケーション、信頼できる製品力で顧客との信頼を築いている。それらを土台に本格的な輸出拡大に努める予定だ。今後、妊婦のための基礎化粧品やボディケア化粧品、ヘアケア製品、インナービューティや健康機能食品など、マタニティ期間というライフサイクルに合わせて、安全な製品を開発していく計画だ。全世界のすべての女性が、妊娠したときに真っ先に思い浮かべるブランドになりたい」(カン氏

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image : LALUCELL公式サイト

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