
急成長中の美容プラットフォーム「osina」、UGC生成と小売店の棚を動かす影響力
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デジタル広告やインフルエンサーの単価が上がり、費用対効果の高いマーケティング施策の需要が増すなかで、美容に特化したいわばコンテンツマーケティングサービスとして注目を集めているのが「osina(オシナ)」だ。投稿者は自身のフォロワー数に左右されずに成果報酬が得られ、ブランド側は投稿によるコンテンツが増えると同時に小売店での売上増、運用広告以上の費用対効果のメリットがある。小売店の棚を動かす力も持つ同サービスの詳細を、NEL株式会社 代表取締役社長 西田陸氏に聞いた。
投稿者にとってのメリットも大きい仕組みで大量のUGCが生成される
2023年1月にベータ版がスタートし、同8月に正式リリースしたosinaは、投稿者、化粧品ブランド、小売店と各ステークホルダーすべてにメリットがある仕組みとして、急激に成長しているサービスだ。同9月現在までに、総再生回数2億回、総投稿数3,000本、総報酬金額1億円を突破している。
ビューティブランドなど企業側がosinaプラットフォーム上にPRしたい化粧品などのアイテムを掲載すると、それを見たosinaユーザーが小売店でその商品を購入し、使用感や特徴を紹介するショート動画をTikTokやInstagramのリールに投稿する。ブランド側はこうした動画の再生回数に応じた金額をosinaに支払い、osinaから投稿者に成果報酬が支払われるという仕組みのサービスだ。
加えて、ブランド側はosinaで生まれたコンテンツをリポストしたり、サイネージや運用型広告などに二次利用できる。投稿者への報酬は再生1回につき0.2〜0.4円で、投稿後7日間(2023年9月より適用)の再生回数に応じて、商品ごとに設定された再生単価で支払われる。また、商品を購入してosinaに投稿したユーザーには商品代がキャッシュバックされる。

興味深いのは、osinaのメインの投稿者となっているのが、いわゆるインフルエンサーではなく、フォロワーが数百ほどの一般の生活者である点だ。osinaを運営するNEL株式会社 代表取締役社長 西田陸氏はこう話す。
「投稿のクリエイティブはもちろん重要だが、TikTokやInstagramリールの仕組み上、どんな投稿でもフォロワー数に関係なく最低でも100〜300回のインプレッションがある。そのため、投稿を続けさえすれば、誰にでもバズってその分の報酬を得るチャンスがある。そこが投稿者側からみたときの一番の特徴だ」(西田氏)

プロフィール/関西学院大学在学時より約3年間、EC運営に携わる。国内大手、ベンチャー企業、シリコンバレーでのインターンを経て、大学卒業後は広告代理店に入社し、マーケティング戦略及び施策提案、進行・品質管理を担当。2017年12月にNEL株式会社を創業し、2021年よりショート動画に特化した広告代理店事業を開始。広告代理店事業に加えて、2022年からショート動画キャッシュバックサービス「osina」などプロダクト事業を展開
投稿者には「動画の尺のなかで商品の紹介を3分の1以上する」といった基本ルールが課せられるものの、それ以外は自由で、osinaのプラットフォームに掲載の商品から好きなものを選び、ブランドからプラットフォーム上に提供されている商品情報をもとに、自分の好きな形で投稿を作成できる。ユーザーの投稿は、事前にosina側で薬機法チェックやコミュニティガイドラインに反していないかの確認をしてから投稿承認が出される。投稿には「#PR」「#osina」などのハッシュタグがつく。「再生数の多い投稿者は月に5〜6回の投稿で、2〜300万を稼いでいる。毎日投稿しているユーザーもいる」(西田氏)

新・コンテンツマーケティングとして、ブランド側が享受する3つのメリット
一方、化粧品ブランドにとってのosinaの利用メリットとしては大きく3つあると西田氏はいう。
1つめは、さまざまな投稿者によるUGC(ユーザー生成コンテンツ)が大量に作れる点だ。さらに再生数に応じた成果報酬を支払う仕組みであるため、近年、費用が高騰している運用型広告に近い。たとえば150万円の予算から消化具合をみながら利用でき、一度に数百万円を投じながらも効果が測りにくいインフルエンサータイアップよりも費用対効果が高いとの評価があるという。
2つめは業務効率化に寄与する点だ。従来であれば、UGCを大量に作りたい場合にはインフルエンサーに対してギフティングやサンプリングを実施するケースが多いが、メーカー側からインフルエンサーへのコンタクトや商品の発送作業など一人ひとりとのやりとりにどうしても手間がかかってしまう。その点、osinaではプラットフォームに商品を掲載すればよいだけだ。
そして3つめは「投稿者が店舗で自らアイテムを購入するステップを踏むこと」と西田氏はいう。投稿者が自分でアイテムを購入することで、小売店のPOS(店頭在庫)が動くほどの影響力があり、ブランド側にとっては棚取りにも寄与する。
こうした点から、osinaは予算の限られた新規ブランドの認知拡大はもとより、大手ブランドからも、UGCによる潜在顧客へのアプローチをねらった活用がされている。「無名のブランドであっても、投稿ユーザーはまずはその商品の購入をするため、シンプルに小売店での販売率のパーセンテージが目にみえて高まる。一方、すでにマス認知があるブランドは細かいUGCをたくさん作ることで、SNS上の検索にかかりやすくなり、潜在顧客を掘り起こすことにつながる」(西田氏)
小売店の棚が動くメリットと連動したキャンペーンも展開中
osinaの仕組みは小売店にとっても売上増につながるメリットがあるため、osina経由で投稿されたコンテンツを小売店のサイネージや公式アプリに二次利用するなどの連携も行っているという。たとえば、あるバラエティショップやドラッグストアとの取り組みにおいては、店頭で該当アイテムを購入して投稿後、購入レシートをosina公式LINEに送った投稿者に対し、商品代に数百円をプラスしてキャッシュバックするというキャンペーンを実施した。
このキャンペーンを新商品発売時に利用したあるメイクアップブランドでは、osinaで作成されたコンテンツが3カ月弱で487本となり、合計再生数が2,600万再生(TikTokとInstagramリール合計)となり、店頭配荷の商品が一時全欠品になる時期もあった。
「osinaの最もインパクトのある点は、ユーザー、ブランドだけではなく、小売店頭でも『osinaをやるとPOSが動く』という認識されているところで、小売店も含めたソリューションになっていると考えている」(西田氏)
ユーザー側でもいい連鎖が生まれている。osinaによる投稿を見た人が商品を購入して、その人もまたosinaで投稿するというかたちで投稿者が増加しており、ローンチから8カ月目の2023年8月単月の再生数は1億回を超えた。

各ステークホルダーのペインを解決しようと生まれたosina
osina誕生の背景には、NELが2021年末から開始した美容特化のTikTokやYouTubeのインフルエンサーエージェンシーの経験がある。NELでは現在も同事業を主軸としており、西田氏はブランドの課題と向き合うなかでosinaの仕組みを思いついた。
「インフルエンサーとのタイアップによりブランドが求めているのは、動画の再生回数はもちろんだが、その先の『POSを動かす』、つまり売上が上がることが最も大きな部分だ。しかし、メーカーから数千万円規模の予算をお預かりするなかで、再生回数こそ伸びても、POSに関しては成果が出せない、成果にばらつきが出てしまう時期があった。それを解決できないかというところがまずあった」と西田氏は振り返る。
一方で、インフルエンサーや投稿者側のニーズとしても「フォロワーが多くないと案件が来ない」「来ても自分が心からやりたいと思う仕事ではないことも多い」といった声があった。また、固定報酬型はフォロワー数に報酬額が比例することが多く、フォロワー以外の再生数が伸びた場合には「もっと報酬が増えてもいいのではないか」との不満の声もあったといい、各ステークホルダーが抱える課題を解決するために成果報酬型のテストを始めたと西田氏は話す。
とはいえ、成果報酬型の案件はフォロワー数の多い有名インフルエンサーには敬遠されがちだ。そこで、osinaはあくまで一般の生活者や、ナノやマイクロレベルのインフルエンサーをターゲットに「誰の投稿でも大きく跳ねるチャンスがあるTikTokやInstagramリールで、コンテンツマーケティングに近い形を作ろうと考えた」(西田氏)。
もともとNELではマイクロインフルエンサーとのタイアップの実績が豊富で、人材のリストを持っていたこともあり、プラットフォームの仕組みを整えてすぐに事業をスタートできたという。同時にこれは同社にとっての課題解決にもなった。
「一時期、50名ほどのマイクロインフルエンサーを必要とする案件を抱えていた時期があり、各インフルエンサーと細かに連絡を取り合う必要があった担当者がみるみる疲弊していった。osinaの仕組みを使えば、担当者が属人的なやりとりを行わなくても、プラットフォームで自動化してコンテンツを生成していくことができる。今はまだ、案件によっては属人的な部分も残っているが、今後さらなる自動化を進めていく」(西田氏)
現在NELは自社を、インフルエンサーマーケティングというよりも、「リテールプロモーションの会社」と標榜しており、「中長期的には、小売企業のアプリとの連携など、リテールメディアの領域に進出し、POSが動く施策に特化していきたい」と西田氏は話す。
あわせて今後は、osinaとして美容をメインにしつつ、食品やウエルネス系、健康食品など、徐々に領域を広げていくとする。
Text: 大塚愛(Megumi Otsuka)
Top image: NEL株式会社プレスリリース
画像提供:NEL株式会社