美容特化MCN、istyle meがブランドとクリエイターをつないで狙う最大効果の中身
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美容特化MCN、istyle meがブランドとクリエイターをつないで狙う最大効果の中身

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アイスタイルとサムライパートナーズとのJVで美容業界に特化したMCNであるistyle me。大きな特徴は、クリエイター事務所ではなくエージェントであることだ。その設立の経緯や、美容領域のインフルエンサーマーケティングで結果を出すために必要な要素とは何か、株式会社istyle me 代表取締役 遠田健氏と取締役 野田昌嗣氏に話を聞いた。

立ち上げ支援した「ReZARD Beauty」は1日で2万セットを販売

美容ブランドにとって、インフルエンサーマーケティングは消費者とのエンゲージメントを確立する手法として欠かせない要素になっている。サイバー・バズとデジタルインファクトが2020年10月に発表した「国内ソーシャルメディアマーケティングの市場動向」調査によると、2020年のインフルエンサーマーケティング市場規模は前年比105%の317億円で、2025年にはその2倍以上の723億円に達すると予測される。

そのなかで、影響力を持つ媒体自体も変わってきた。とくに美容分野では、instagram一強だった時代から、YouTubeやTikTokなど動画メディアの勢いが強まっている。アイスタイルは2020年12月、人気YouTuberを多数サポートするサムライパートナーズとのジョイントベンチャー(JV)、istyle meを設立した。

サムライパートナーズはYouTuber事務所ではなく、YouTuberやクリエイターをサポートするエージェントという立ち位置だ。そのため一般的なタレント事務所のような「専属」「所属」という関係ではなく、クリエイターの要望や課題に沿って足りない部分だけを支援している。業務提携の形で、プロジェクトごとにさまざまなクリエイターを起用するスタイルだ。また、テレビに出演しているような芸能人やタレントモデルのYouTubeチャンネルの運営サポートも請け負うなど、手がける業務内容も幅広い。

istyle meはサムライパートナーズと同じく、エージェントとして、美容ブランド向けに、サムライパートナーズがサポートするインフルエンサーを中心に起用し、動画コンテンツ制作、商品開発タイアップなどの企画・運営を行う。アイスタイルグループの一員として、美容分野に特化していることが最大の特徴であり強みだ。

「この仕事で強く感じるのは、再生数×登録者数×リーチといった数字だけでははかれない部分が多いということだ」と株式会社 istyle me代表取締役 遠田健氏はいう。各クリエイターの動画再生数やフォロワーという数字もさることながら、そのクリエイター自身のもつ勢いや、どういう仲間がいるのか、今、何に関心を持っているのかといった数値化できない部分が多いからだ。そこに、単純にビジネスロジックをはめてしまった途端に勢いを失い、結果、視聴者に伝わらないことにもなる。

株式会社istyle me 代表取締役 遠田健氏

istyle meは2021年9月、登録者458万人の人気YouTuber・ヒカル氏のプロデュースコスメ「ReZARD Beauty」の立ち上げプロジェクトに参画。発売開始からおよそ1日で、スキンケア3点セットの販売数は2万セットを突破する人気だ。

「ヒカルさん自身がアトピー肌に悩み、美容に投資して肌状態を改善した経験を持っている。その影響で毎日の生活や気持ちにいい変化があったという実体験から、より良いものを安く提供したいというのが商品発売のきっかけだった」(遠田氏)

出典:ReZARD Beauty公式サイト

ヒカル氏はライフスタイルやバラエティ系コンテンツを配信しており、美容系YouTuberではない。しかし普段のヒカル氏の発信内容やスタンスに合致した、“美容知識がない代わりに、お金を出して、一番いいOEMでいいものを作り、安く視聴者に届けたい”という、納得感のあるストーリーで消費者から支持を得た。個人発信のブランドだからこそのヒット要因だ。

istyle me では、販売における企画運営をすべてサポートした。クリエイターの突然の“ひらめき”で企画が変更することも多いが、そのひらめきは「ユーザーにとってどうなのか」との発想で一貫しているため、どうそれを実行するかが問われる。そのため、こうしたクリエイター起用は「再現性」が難しい、と遠田氏は指摘する。

@cosme TOKYOにおけるReZARD Beautyのポップアップ

デジタルマーケティングでは成功事例をもとにKPIを定め、その数字を目指して再現性を高めていく手法がとられることも多い。しかし、ストーリーや勢いといったものは再現性が難しく、また数値化できない要素でもあり、これまでの企業側のロジックでは判断がつきにくい。そのため、勢いやトレンドを見分けられるエージェントが必要になってくるのだ。

「我々がブランドに提案する際は、タイアップにおいて、製品やサービスの認知をとりにいきたいのか、売上をとりたいのかという目標と、クリエイターの勢いやその時の条件、過去の投稿の検証などを加味して企画提案している」(遠田氏)

これはもしかしたら競馬の予想にも似ているのかもしれないと、遠田氏は次のように説明する。「競馬では、手堅くいきたいのか、リスクをとって大穴を狙うのかに加えて、馬の性格やコンディション、騎手が誰なのか、天候や場所なども判断材料になる。それと似たような判断力がエージェントに求められている」

クリエイティブに口は出さない。クリエイター起用の成功の秘訣

誰に依頼するかと同様に、コンテンツ内容も成果を左右する。メディアとのタイアップ広告であれば、企業側から細かい要望や指示、修正を出すことができる。しかしYouTuberやTikTokerなどクリエイターの起用にあたっては、そうした制約がマイナスとなるケースも多い。

遠田氏は「基本的にクリエイティブには口出しせず、NG事項などポイントだけ伝える。クリエイターは演者であると同時に、テレビ局でいえば局長でもある。視聴者層の喜ぶコンテンツ、視聴時間帯、属性などを誰よりも把握しているからだ。任せたほうが面白いコンテンツができあがる」と語る。クリエイターがやりたいことを決め、エージェントはその企画を実現するサポートを行うわけだ。

美容コンテンツの場合、薬機法に関わる表現のチェックや修正なども課題だが、過去に薬機法を理由に撮り直しが発生した例はないという。「その意味では、我々がアイスタイルグループにいる点もメリットと考えており、内容の細かい指定や表現のチェックなど、コントロールすべき要素が多い場合は、@cosme体験型コンテンツなどのタイアップのほうをおすすめしている。(企業側は)まずはYouTuberタイアップの目的を明確にすべきだと考えている」(遠田氏)

前月比44倍を販売、「アクネオ」の動画コンテンツ

コーセーのグループ会社ドクターフィル コスメティクスの「アクネオ」のタイアップでは、率直な物言いに定評のあるYouTuber、門りょう氏を起用。アクネオシリーズのなかで、同氏がひときわ気に入ったという「アクネオ 薬用 スキンケアパウダー」のみを紹介する内容だ。

動画では門氏がこの商品を良いと思った点や便利さなどを伝えており、成分や機能性に関する情報量は多くない。しかし遠田氏はむしろそこを狙ったという。

「最初に話をいただいたときに、アクネオの場合は『コーセーのグループ会社のドクターズコスメ』というワードだけで、品質や信頼が伝わるはずだと思った。であれば多くを語る必要はなく、専門知識を持つ美容YouTuberよりも、さらに幅広い層に届けられるYouTuberを起用し、なぜ魅力的に感じたかを最大限伝える方向性がよいと考えた」と話す。同じタイアップではバラエティ系YouTuberのエミリンこと大松絵美氏も起用されている。

動画では、視聴者に響く、その製品がもつ最大のポイントが伝われば、成分の詳細など必要情報は動画内のテロップや概要欄で確認してもらえる。この手法で薬事チェックなどの撮り直しリスクを下げ、視聴者側も広告色の薄いエンタメとして楽しめる。アクネオのこれら2本のタイアップにより、公開から1カ月でスキンケアパウダーの売上は前月比44倍を記録、3カ月半分の目標を達成する結果となった。また、その後も反響がSNSやクチコミなどに波及し、売上は公開前の25%増で推移しているという。

台本のあるテレビ番組制作的な手法をとった「ハリウッド化粧品」

このように現在のインフルエンサー起用は、データのみで判断することが難しく、コンテンツ内容も企業側のコントロール範囲が狭くなる。その課題解決として、istyle meでは、あえてテレビ番組のようにきっちり制作するという手法もとっている。

ハリウッド化粧品の「オーキッド酵素パック」では、YouTube番組「Beauty Class@nicoroom」の中でTV番組のような撮影を実施した。

                                                「Beauty Class@nicoroom」

「このタイアッププランでは台本を決め、ブランド担当者が現場に立ち会うなかでテレビ番組制作と同じような機材で撮影を実施した。美容領域では画質や薬事など、質や表現を気にするポイントも多く、その懸念を取り除くプランとして展開した」(遠田氏)

企画のなかで自由にアイテムを紹介するのではなく、別途商品紹介コーナーを設けるため、一般的なYouTubeコンテンツと比較するとより広告的な表現になる。一方でタレントの出演する番組内の紹介によって認知度は高まり、小売店での取扱いや棚取りなど流通での引き合いにも影響を与えられる。まさにテレビ番組さながらの効果であり、アーカイブとして残る利点もある。

クリエイター中心のマーケティングにおけるブランド側の考え方

では、美容ブランドがYouTuberやクリエイターを起用する場合はどこに着目すべきなのか。株式会社istyle me 取締役 野田昌嗣氏は「誰を選ぶか以上に、企業がどういったタイアップをしたいのかを、先に明確にすることが大切だ」という。

「登録者数や再生回数といった数字からは、リーチ数は予測できるが、その先の購入につながるかは判断できない。(数字の)次にみるべきは、クリエイター個人が持つストーリーと商品がしっかりマッチするのか、そのクリエイターが投稿する最近のコンテンツ内容や、どんなクリエイターと仲がいいかといった数値化できない部分だ」(野田氏)

株式会社istyle me 取締役 野田昌嗣氏

その意味で、重要となってくるのがエージェントの立ち位置だ。誰を起用するかの前段階として、プロモーションやタイアップの目標に対して、YouTubeやTikTokなど、どのプラットフォームがふさわしいか、どんなインフルエンサーがファンとの相性がいいのかなどを判断できる人が必要だからだ。

「先に起用すべき人とプラットフォームが決まっても、実際にオファーを受けてもらうためのキャスティング能力や、企画実行に関して、ブランド側とクリエイターの間にたって細かな調整を行える立ち位置のスタッフが重要だ。それがエージェントもしくはコミュニケーションプランナーの役割だ」(野田氏)

クリエイターにとっても、ユーザーとどう信頼関係を築いているのか、自身の信念や、いま表現したい世界観がどういうものなのかを深く理解してくれる人と仕事をしたいと思うのは自然なことだ。そこに、これまでのビジネスセオリーが通用しないことも多々ある。こうした調整も含めて、ブランドや商品とプラットフォームの相性、インフルエンサーのマッチング、その実力を引き出すサポート体制、どれが欠けても中途半端なタイアップにつながる原因になるという。

インフルエンサーやクリエイターの影響力を数字ではかるだけでなく、その時々のクリエイターのコンディションと、トレンドをつかみ、ブランド側の目的にどうフィットさせるか。再現性が難しい世界だけに、数字に表れない部分をどう担保していくのかが求められる時代になっている。

Text: 臼井杏奈(Anna Usui)
Top image & Photo: 株式会社アイスタイル、株式会社istyle me

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