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オーガニックやハラル認証の「取得戦略」、グローバル市場で求められる信頼性とは

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今や世界全体で110億ドル(約1兆2,010億円)に達する規模になった、ナチュラル&オーガニック化粧品市場。その成長に伴い、オーガニック認証マークをはじめ、国際的な認証制度の数も過去10年で6倍の30種類に増えている。2019年11月に香港で開催されたコスモプロフアジアのコスモトークのセミナーレポートを通して、最新の認証事情をみていこう。

クリーンビューティへの消費者志向がグローバルで高まっているなか、製品の品質を第三者機関が担保する「エシカル・ラベル(=倫理的認証マーク)」の取得は、ナチュラル&オーガニック化粧品ブランドにとって重要な意味を持つ。

2019年11月に香港で開催された化粧品国際見本市「コスモプロフ・アジア2019」では「Ethical Labels in the Cosmetics Industry(化粧品業界でのエシカル・ラベル)」と題するセミナーが行われた。認証に関する最新情報や、ブランドが取得手続きをする際の注意点、そもそもどの認証を選ぶべきかなど、このセミナーで取り上げられた認証を取り巻く現状と具体的な課題について検証していく。

ブランド価値を高める認証取得とは

セミナーは2部構成でキーノート・プレゼンテーションとパネルディスカッションが開かれた。

最初に、サステナビリティに関するリサーチを専門とするEcovia Intelligence 創業者で、認証を含めた業界事情のエキスパートであるアマリジット・サホータ(Amarjit Sahota)が登壇。大きく変化する認証の今について解説した。

アマリジット・サホータ氏

アマリジット・サホータ氏

エシカル・ラベルとは、化粧品の安全性はもとより、「ナチュラル」「オーガニック」「フェアトレード」など、倫理的、社会的な属性を表現するものであるとサホータ氏はまず定義する。あわせて「(認証マークは)10年前には5種類ほどだったのが、現在は30種類にも増加している。グローバルでの展開を考えるなら、どこの国や地域でプレゼンスを発揮したいか、どのような属性を強調したいかによって、選ぶべき認証は変わってくる」とする。

現在、インターナショナルに認知される主流のエシカル・ラベルは、ヨーロッパはいずれもブリュッセルに本拠を置く「NATRUE」と「COSMOS」。北米では「Natural Products Association(NPA)」「NSF/ANSI 305」「USDA Organic 」。南米ではブラジルの「IBD」やアルゼンチンの「OIA」などがあげられる。

オーガニック化粧品の国際的基準としては「ISO 16128」も制定されているが、サホータ氏は「世界に広がりつつあるものの、ほかの認証と比べて基準が緩いため、しっかり製品や品質のアピールをするには物足りない」と述べる。

なぜなら、ナチュラル&オーガニック化粧品の認証には、「製品に有害物質や化学物質が入っていないことを明確にする」という健康リスクへの対応に加えて、製品のライフサイクルの各段階での環境への影響を分析し、全プロセスが適切に行われていることを示すタイプのものがあるからだ。(例として「EU Ecolabel」「Green Tag」「Nordic Ecolabel」「Green Seal Certified」「Der Blaue Engel」「Cradle to Cradle」など)。

ここでライフサイクルとして考慮されるのは、「エシカルな原料の入手」「オーガニックでサステナブルな製造方法」「グリーンなフォーミュラ」「サステナブルなパッケージング」「カーボンフットプリントの削減」「運用の効率性」「廃棄物管理」と、原料から廃棄までの各段階をカバーする。

すなわち、こうした認証の取得準備をする過程において、自社のプロセスを洗い出し、強みや弱みを知り、アピールポイントの発見や改善のきっかけがつかめることを意味している。これは認証そのものの価値以上に、ブランドにとって大きなメリットになりうる。

ハラルに代表される「食」とのオーバーラップ

サホータ氏は続いて、今後もっとも大きな潜在性を持つのが、世界で15億人のイスラム教徒に向け、ムスリムの戒律に従った成分と製法のみで作られていることを証明する「Haral(ハラル)」をあげた。そして、新たに登場した認証には、化粧品業界全体のトレンドと同じく、「食」の業界とオーバーラップするものが多いと指摘する。

その代表格が、「Vegan Society 」のような「Vegan(ヴィーガン対応)」のほか、「Allergen Free(アレルゲンなし)」、「Cruelty Free(動物実験なし)」「Gluten Free(小麦粉なし)」を証明する各認証マークや、北米で広がる「NO GMO(遺伝子組み換えなし)」、そして、熱帯雨林保護につながる「Palm Oil Free(パームオイルなし)」の認証マークだ。いずれも“口に入れるモノ”に着目し、化粧品においても不使用を推進するものである。

同様に食の戒律が化粧品にも及ぶハラル認証では、インドネシアの動きが注目される。インドネシア政府は2019年10月16日、7年間の猶予をもって市場流通する化粧品はすべてハラル認証が必須になることを発表。原材料、加工材料、添加剤、補助材料のすべてがハラルであることが求められる。当然、他国で生産された輸入品であっても、インドネシアでの販売にはハラル認証が不可欠だ。

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インドネシアのハラル認証マーク例 
出典:AMCHAM INDONESIA

一方でサホータ氏は、「インドネシア政府は主要産業の1つであるパームオイル生産への打撃を避けるために、Palm Oil Freeの認証入り製品の国内販売を禁じている」ことを明かし、政策と認証が複雑に絡み合う例とする。

さらに「米国のセフォラやホールフーズなど、リテール側が独自の基準にもとづく認証を作るケースも出てきた。ホールフーズでは自社の認証を取得した製品でなければ店頭に置かないという、保護主義的な側面もみえはじめている」と付け加えた。

3人のパネリストが語る認証効果

セミナーの2部には、国際的オーガニック認証である「NATRUE」を発行するThe International Natural and Organic Cosmetic Association事務局長のマーク・スミス(Mark Smith)博士、オーストラリア発のオーガニックスキンケアブランドVliss Organic 創業者のバネッサ・ロソリーニ(Vanessa Rosolini)氏、モロッコでアルガンオイルを製造するArgane Aouzacのサステナブル担当ファティマ・レフハイリ(Fatima Lefhaili)氏という3人の業界関係者がパネリストとして登壇し、各々の実体験を語った。

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左からモデレーターの
アマリジット・サホータ氏、
マーク・スミス博士、
ファティマ・レフハイリ氏、
バネッサ・ロスリーニ氏

「ヨーロッパ認証の価値は高い」とするのは、ヘアサロンチェーンを経営する美容師から、マンゴスチンを主原料にしたオリジナル化粧品を開発してブランドオーナーになったロソリーニ氏だ。

地元オーストラリアに約9種類の認証があるのにも関わらず、ヨーロッパのオーガニック認証である「ECOCERT/COSMOS ORGANIC」を取得したのは、創業時にオーストラリアで最も信頼の高いオーガニック生産者と提携した際に、彼らから推薦されたのがきっかけという。現在のオーストラリアの制度では、オーガニック原料をわずかしか使用していなくてもオーガニックと名乗ることができる。真正な製品であることを消費者に理解してもらうためにも認証が必要だった。

原材料はもちろん、製造過程もエシカルであることを保証する認証を得たことで、ヨーロッパだけでなく、カナダ、台湾、韓国、日本などでの販売に弾みがついた。ただ、米国Amazonでの販売では、複数の製品を申請したがモイスチャライザーしか承認されなかったとして、米国向けには別途対応が求められるとする。

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バネッサ・ロソリーニ氏

Argane Aouzacは、フェアトレードの認証である「Fair for Life (FFL)」を取得している。これはスイスのエコロジー団体が2006年に制定した環境と人権を守るための基準に、フェアトレード基準が加わった総合的な認証システムだ。すべての人に「尊厳のある生活」をスローガンに、生産者と企業の従業員と雇用者、販売者と購入者の間でフェアな関係の確立を目指している。

ほかの国際的なフェアトレード認証より包括的な内容で、小規模生産者でも参加が可能な反面、仕様が複雑で、専門用語も多く難解で、社内に認証関連の監査を行う専任担当者をおいたほどであるとレフハイリ氏は打ち明ける。実際のところ中小企業にはコスト的な負担が少なくないようだ。とはいえ、厳格な審査基準の適切な認証を獲得したことで信用度が高まり、マーケティングに大いに役立っていると効果を語る。

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出典:FFL公式サイト

これに対して、複数の認証を並立的に取得する、いわば「コンパニオン認証」の意義を説くのがスミス博士である。認証は単なるアイコンではないから、数種類を並べるとしたら意味のある組み合わせにするべきだとして、内容が重なっていても新たな認証を取ることが有益なケースも多いとする。

たとえば、動物実験を行わないことを証明するCruelty Free表示の場合、ヨーロッパではもともと動物実験が禁止されているので、COSMOSなどヨーロッパのオーガニック認証を取っていれば、つまりは動物実験もしていないことを意味するが、米国で販売する場合などは、消費者に「動物実験なし」であることを伝えるコミュニケーションツールとしての役割を果たす。あるいは、オーガニック認証と重複することになってもヴィーガンの認証を取ることで、製品の属性を強調することができると話した。

スミス博士は今後の課題として「複数のスタンダードが混在しているので、消費者の理解を助ける努力をしていかなくてはならない」とする。加えて、国や地域による規制の違いや幅が大きく、改定もひんぱんに行われる現状があることを指摘した。

たとえば中国では、動物実験に代わる代替試験法受け入れの動きはあるもの、まだ輸入化粧品には動物実験を義務付けている。だが、その輸入化粧品も、ECでの販売、歯磨き粉やハンドクリームは対象にならないといった煩雑な規定がある。これらを含め、メーカー側とユーザー側双方に向けた認証制度と周辺情報のアップデートの重要性が示された。

Text: 甲斐美也子 (Miyako Kai)
Top image: paulynn via Shutterstock


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