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アマゾン初のPBスキンケアBELEI、「ちょうどよさ」とあえての「没個性」が狙うもの

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膨大な購買データを握るアマゾンが満を持して開発した同社初のPBスキンケアライン「BELEI」は、トレンドであるパーソナライゼーションやスモールマスとは真逆をいくコンセプトだ。誰にも合わせられる、ちょうどよさ。実際の使用感とあわせて、その背景にあるアマゾンの思惑を探る。

「BELEI」は2019年3月、米アマゾンがローンチした、アマゾン初のプライベートブランド(PB)・スキンケアシリーズである。クレンジングワイプ、美容液、モイスチャライザー、マスク、UVケアの12品からなるラインナップで、価格帯は9~40ドル(約970〜4,300円)。いずれも皮膚科医による品質テスト済みで、動物実験はしておらず、無香料、さらに、パラベン、フタル酸エステル、サルフェートは不使用。また、パッケージや外装にはすべてリサイクルが可能な素材を使用している。

BELEIは中間価格帯に位置づけられた製品で、ブランド名は「Beauty」と「Believe」からの造語であり、「過剰な付加価値や無駄な飾りを排除した、質実で信頼できるもの」という意味が込められている。ビタミンC、レチノール、ヒアルロン酸など、配合されている美容成分が製品名として表記されており、一目でわかりやすく、ユーザーがあれこれ迷わずに必要なものを選べるように作られていることがわかる。

パッケージもシンプルでスタイリッシュな印象だ。年齢、性別、人種を問わず手に取りやすいものを目指したと思われる。また、製品に満足できなかった場合は、いかなる理由であれ、1年間の返金保証を明示しており、品質への自信とともに、カスタマーサービスの充実をアピールする。

成分名を冠したわかりやすい製品アイテム

今回はアマゾンの商品ページ上でユーザーからコメントが多く寄せられている4つのアイテムを選び、実際の使用感を試してみた。以下が製品レビューである。

Micellar facial Cleansing Wipes
(ミセラー・フェイシャル・クレンジングワイプ)

18.7cm×18.5cmの大判シートに、クレンジングローションをたっぷり含ませた拭き取り化粧水シート。メイクや肌の汚れとともに、肌のくすみや毛穴をふさぐ原因となる不純物も肌に負担をかけず拭きとれるとうたう。ミセラーウォーターの働きで汚れ落ちが早く、シートの肌あたりもなめらか。アルコールフリーで刺激もなく、クオリティは高いと感じた。25枚入り×2パックのセット販売で9ドルというコストパフォーマンスも魅力である。

Ferulic Acid+Vitamins C and E Serum
(フェルラ酸+ビタミンC&Eセラム)

ビタミンCとEに、高い抗酸化効果をもつフェルラ酸を配合した美容液で、肌なじみがよいのも特徴。同様の成分を使用した製品としては、スキンシューティカルズの「CE Ferulic」が高い評価を得ており、他ブランドでも似たコンセプトの美容液が多くみられる。CE Ferulicが157ドル(約1万7,000円)するのに対して、BELEIは40ドル(約4,300円)と、コストパフォーマンスの高さを評価するユーザーレビューも多いが、低コストを実現するためにビタミンCに相当する成分の質を下げている点に批判的なコメントも目立つ。

余談だが、スキンシューティカルズを傘下に持つロレアルは、2018年、米国の新進ブランドDrunk Elephantを相手取り、CE Ferulicの処方を模倣したという理由で訴訟を起こしている。

Retinol Refining Moisturizer
(レチノール・リファイニング・モイスチャライザー)

「体内でのビタミンAへの変換を促進し肌に届ける最新テクノロジー」を活用したレチノール配合モイスチャライザーとの記述があるが、具体的な技術については説明されていない。天面を押すと中央の穴からクリームが出てくる容器は、酸化しやすいレチノールを保護する目的と使いやすさの両面でメリットがある。軽めのクリームで、皮膜感は少なめであり日中の使用にも向いていそうだ。

ただし、一般的なレチノール配合製品と同じく、同時にサンスクリーンを使用することが必須である。スクワランやシアバター、アロエエキス、茶葉エキス、センナエキスなどの保湿成分も配合。スクワランに関しては、サメ由来の成分であることに疑義をはさむレビューもみられたが、近年は植物性スクワランも多用されている。ここでは、動物性・植物性のどちらを使用しているかは表示されていない。

Oil-Free Face Moisturizer
(オイルフリー・フェイス・モイスチャライザー)

スマートなポンプ式チューブ容器で、携帯にも便利なUVA/UVBプロテクション。ウォータープルーフタイプではないので、デイクリームの感覚で使うのが良いだろう。オイルフリーながら乳液のようなみずみずしいテクスチャーで、適度な保湿感がある。甘草エキスやローズマリーエキス、ホウレンソウエキスなど抗酸化効果のある植物エキスも配合している。SPF50の高い日焼け止め効果をもつが、白浮きもなく季節を問わず使えそうだ。日本ではすでに当たり前になりつつある、PM2.5などの大気汚染物質、近赤外線やブルーライトへの対応は特記されておらず、ケミカルフリー処方ではない。このあたりはヨーロッパよりも米国市場のニーズに沿った処方になっているようだ。

基本に忠実な処方とあえての没個性

このようにBELEIはブランド名ではなく、成分名を前面に押し出し、配合されたポピュラーな美容成分から検索して商品を見つけてもらうアプローチをとっている。あわせて、環境への配慮やパラベンフリーなど、今どきの消費者の方向性を意識した処方で、ひとことでいうなら、基本に忠実で一般受けする「ちょうどいい」商品だ。ラグジュアリーさや最先端のサイエンス、開発者のストーリーやコンセプトなどブランドの「個性」をあえて出さず、ロジックだけで化粧品を作ったらどうなるかというお手本のような製品なのである。

スター製品の位置づけとなるレチノール、ヒアルロン酸、フェルラ酸+ビタミンC・Eの3種の美容液とアイクリームの4品からなる、トライアルとして入りやすいセットも用意。定期購入や返品も可能で、間口が広い印象である。

アマゾンのPB戦略はパーソナライズではなくローカライズ

アマゾンは2017年以降PB戦略を進めており、アパレルやインテリア、日用品など幅広いカテゴリーで自社ブランドを展開している。ビューティの分野においても、アマゾンのプラットフォームに出店する各ブランドの商品の購入履歴や売れ筋情報など、溜め込んだ顧客データをもとに、「確実にヒットが狙える」PB化粧品の開発に着手するのは間違いないとみられていた 。実際、BELEIに先がけ、今年初めには英アマゾンの持つレディースアパレル「Find.」からメイクアップライン「FIND BEAUTY」がローンチしている。

Find.はZARAのようなファストファッションであるため、FIND BEAUTY もプチプライスの価格設定だ。単品売りはせず、基本的に関連製品のコーディネート販売となっており、スティックハイライターとチークの2色セットが12.46ポンド(約1,600円)、リップスティックとリップライナーのセットが8.30ポンド(約1,100円)で、比較的ベーシックな使いやすいカラーを揃えている。パッケージなどのつくりは日本のプチプラコスメより少々粗いが、「リップとライナーの色合わせを考えなくていい」という声もあり、クオリティよりも、使い勝手のいいカラーレンジで評価されているようだ。

出典:FIND BEAUTY

オーダーメイドのファンデーションやアプリと連動したスキンケアなど、ビューティブランドがさまざまな形で推し進める「パーソナライズ」戦略は、いずれも高付加価値を求める層に向けたものである。これに対してBELEIやFIND BEAUTYは、「これを使っていれば、まず間違いない」製品をリーズナブルな価格で提供するという、マス層のニーズに応えるブランドとなっている。

アマゾンはもはやいうまでもなく、「ネット通販」という分野を超えた世界一の小売業であり、すべてのカテゴリーでユーザーの購買行動を把握・分析できる圧倒的強みをもつ。たとえるなら、学術書とエイジングケア美容液、洗濯ばさみを同時に買うことができるチャネルはアマゾン以外にはない。アマゾンにとってのPBブランドとは、年齢、性別、国や地域の異なるユーザーが各カテゴリーで求めるものの「標準」を探る、一種のローカライズの試みなのではないだろうか。

Text: 弓気田みずほ(Mizuho Yugeta)
Top image: Hadrian via shutterstock

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