設立4年で海外2,000店舗に展開、韓国クリーンビューティを牽引する「laundryou」
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クリーンビューティブランド「laundryou」は、パンデミックを経た消費者の価値変化に着目。「抗菌コスメ」「防疫コスメ」という新たなコンセプトに加え、独自の成分、ユニークなデザインを武器に、韓国のクリーンビューティトレンドを牽引するプレイヤーとして成長を続けてきた。ローンチから5年でグローバルで約2,000店舗への展開を果たし勢いを増すlaundryouは、“第二の魔女工場”を目指すと宣言している。
ローンチから5年で急拡大の「laundryou」
laundryou(ランドリーユー)は、2020年に設立されたBVMTが、同年5月にローンチしたクリーンビューティブランドだ。レッドオーシャンとされるクレンジング市場で消費者から厚い支持を得ており、韓国ではその海外展開のスピードや人気の高さから、今後の成長が有望視されるブランドの筆頭として注目されている。
BVMTのファウンダーであるイ・ジアン氏は、韓国財閥企業コーロングループのブランド戦略チームに所属し、WISDERMA、CIZARなどのグローバルビューティブランドのプロジェクトマネジメント業務に15年間従事した経歴を持つ。イ氏は前職でブランドの立ち上げや成長には、組織や関係者のさまざまな利害関係が絡みあい、必ずしもベストの方向に持っていけないことを痛感し、悩み抜いた末、思い描く理想のビューティブランドを創りあげるために独立・起業を決心したという。
laundryouは、ローンチ以降、韓国国内では業界小売最大手オリーブヤングをはじめ、現代百貨店ザ・ヒュンダイ・ソウル店や、シコールなどのチャンネルで商品が販売されている。オリーブヤングでは、2023年にクレンジング部門売上1位を獲得する実績も残した。
韓国国内だけでなく、グローバル市場進出にも積極的なlaundryouは、2024年上半期時点で米国、日本、ロシア、タイ、台湾、香港、インドネシアなど20カ国に進出を果たしている。日本ではロフト、プラザなど約500店舗、アマゾンや@cosme SHOPPINGなどオンラインでも取り扱われ、急速に認知度を高めている。米国ではウォルマートのオンラインチャネルや米アマゾンを中心に市場攻略を図っている。ロシアでは“ロシアのセフォラ”とも呼ばれる化粧品小売チェーンL'Etoile への入店で一気に販路を拡大した。グローバル市場でlaundryouが扱われているオフラインチャネル数は合計約2,000店舗にのぼる。
国内・国外における順調な販路拡大に加え、業界大手企業から資金的なバックアップを受けている点もlaundryouが注目されている理由だ。2024年11月現在、コスマックスグループ、ロッテベンチャーズなどを含む全9社がBVMTの投資に参加している。
クリーンビューティのイメージを変えるブランディング戦略
laundryouの成長を理解するうえで、世界的なパンデミックという出来事は欠かすことができない。イ氏はブランド立ち上げから間もない2020年当時、コロナ禍によって消費者が化粧品に求める価値が変化していくと考えた。イ氏は、マスクを長期間にわたり着用することになれば肌は敏感になり、いくら優れた化粧品を使用しても消費者が抱える課題が根本的に解決することはないとして、スキンケアやメイクの前提となるクレンジングにフォーカスした商品づくりに注力を決める。また、ブランド立ち上げに際し、韓国で社会問題となっていた微小粒子の大気汚染物質PM2.5も強く意識したことを、イ氏はメディア取材に対して語っている。
だが、クレンジング市場は商品数が多く価格競争も激しいレッドオーシャンとされる。韓国ではコロナ禍以前は、スキンケアやメイクアップ製品と比較して、クレンジング製品にお金をかけるという感覚が一般的ではなかった。そこでlaundryouは「肌にも洗濯が必要だ」というスローガンとともに、「抗菌コスメ」「防疫コスメ」という新たなコンセプトを打ち出す。そして、価格競争に参加するのではなく、肌の清潔を保つ科学的な処方による「スキンクリーン」、安全性に配慮しユーザーが安心して使える「マインドクリーン」、地球環境を汚染しないサステナブルな設計による「アースクリーン」の「トリプルクリーン」をブランドメッセージとして発信し続けてきた。
一貫性のある世界観やブランド哲学に加え、laundryouは成分の独自性にも力を注いできた。ローンチ当時、多くのクリーンビューティブランドのクレンジング製品の成分は、肌への低刺激をうたうだけで、とくに目立った効果・効能をアピールするものはあまりなかった。一方、laundryouは「launderma water™」を独自開発し全製品に配合した。リンゴの42倍、ブルーベリーの4倍以上の抗酸化成分が含まれているlaunderma water™は、抗菌作用があるとして知られるオレガノ水、ミネラル豊富なアースマリンウォーター(海洋水)、ヒノキエキスを最適な比率で配合した天然成分処方で、肌を清潔に保つ作用や安全性、保湿・鎮静効果に優れているとされる。
抗菌に対するより深い洞察やユーザーのペインに寄り添った商品企画も、laundryouが支持を集める理由だ。たとえば、人体のなかで最も細菌が多く付着する手を使わずに肌に直接吹き付けることができるミストタイプのスージングジェルや、細菌が繁殖しやすいタオルの代わりに使用できるトナーパッド、抗菌パフと抗菌コンテナを使ったPM2.5吸着クッション、使い捨て可能なボディグローブなどのアイテムを相次いで発売し、「徹底した抗菌」というブランドアイデンティティを明確にしてきた。
また、パッケージから簡単にはがせる水分離ラベル、環境負荷の少ない接着剤、豆由来のインク、テーピング不要の宅配ボックスなどのエコパッケージを採用し、地球環境やサスティナビリティに配慮するクリーンビューティブランドとしてのイメージを構築した。
あわせて、デザイン性もlaundryouの人気の秘密だ。これまで韓国国内のクリーンビューティブランドは、白やニュアンスカラーをベースにしたシンプルなデザインが多かったなかで、laundryouはカラフルな容器やポップな広告クリエイティブで視覚的にも他社と一線を図り、消費者やメディアの視線を引きつけることに成功した。
現在、laundryouの人気商品としては、うがい液を思わせる見ためのクレンジングのクリーンフェイスガーグルシリーズや、モイスチャーサンクッション(紫外線軽減クッション)、スキンブレスマスク(美白マスク)などがある。なかでも人気なのが、クリーンフェイスガーグルシリーズのジェルタイプのクレンザー「ジェルトゥーフォームクレンザー」だ。専用の「ポアクリーニングブラシ」とのセットも人気で、まるで歯磨きをするようにブラシで肌の皮脂や老廃物を洗い流せる設計としている。
クリーンフェイスガーグルシリーズには、ボトルタイプ、パックに小分けされたタイプなど、商品パッケージも複数用意されている。
東南アジアや中東に進出、第二の魔女工場を目指す
このようにlaundryouは、コンセプト、商品企画、デザイン性など多様な面において、韓国でもユニークな存在だ。ほかのクリーンビューティブランドとは一線を画す「抗菌」というキーワードを前面に押し出し、消費者の好奇心を刺激し共感を呼ぶマーケティングで韓国クリーンビューティ市場をリードする存在とみられている。
laundryouは今後、東南アジアや中東市場に積極的に進出する計画とされる。2024年11月下旬には、マレーシアの化粧品小売大手ガーディアンと契約したことが報じられた。これにより、マレーシア国内で同ブランドを取り扱うオフライン店舗の数は約300店になると試算されている。また直近では、マレーシアの不動産大手企業R&F グループとともに、Kビューティセレクトショップ「BVMTモール」のオープンも計画中だ。加えて、シンガポールのワトソンズ、中東のラグジュアリーショッピングモールReem Mallへの入店も決定しており、海外展開のスピードはさらに増していくものと予想される。
財閥企業という安定した職場を辞め、スタートアップという環境で理想のブランドを追い求めてきたBVMTのイ代表は、laundryouの今後の成長についても野心的だ。韓国メディアの取材に対しては、「第二の魔女工場を目指す」と宣言している。ビューティスタートアップの魔女工場は、2023年6月に約8,000億ウォン(約880億円)の大型IPOを果たし韓国社会で大きな話題となった。韓国のクリーンビューティブランドをリードしつつ、有数のトップブランドに成長することがイ氏の次なる目標とみられる。
Text: 河鐘基(Jonggi HA)
Top image: laundryou公式サイト