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アドインテのIoT自動販売機「AIICO」活用の韓国コスメ販売ショップ「aiicosme」

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リテールテック企業のアドインテが運営する韓国コスメの自動販売機ショップ「aiicosme」は、サイネージ型IoT自動販売機「AIICO」を活用した新しい化粧品の販売スタイルを提案している。2024年7月に原宿、続いて大阪で出店。AIICOの概要や、ショップ展開の狙い、同社のリテールメディア事業についてアドインテの担当者に聞いた。


韓国コスメを試せて自動販売機で購入できるショップ展開の狙い

aiicosme(アイコスメ)」は、アドインテが運営する韓国コスメの自動販売機が設置された化粧品専門店で、同社開発のサイネージ型IoT自動販売機「AIICO(アイコ)」で商品販売を行うとともに、テスターコーナーやセルフ型のタッチアップスペースを備えた店舗形態となっている。

2024年7月に東京のラフォーレ原宿に1号店を出店し、その後も大阪のディアモール大阪、クリスタ長堀に相次いで出店し、2024年10月現在6店舗を運営中だ。韓国コスメに興味・関心のある層をターゲットに、rom&nd やAMUSE、colorgramなど人気の韓国コスメを、自動販売機を通じてより身近に、手軽に手に入れられるという新たな購入体験を提供している。

aiicosme
出典:ラフォーレ原宿公式サイト

株式会社アドインテ AIICO 事業本部 AIICO企画Div. AIICO企画ユニット シニアマネージャー 石井航氏は、「aiicosmeでは、日本人にとって身近な自動販売機を活用し、韓国コスメという消費者に求められてはいるが、まだ身近とはいえない商材のマーケットを共創したい」と説明する。化粧品販売は通常は人が介在することが多いが、省人化を実現することも目指し、まずは自社で事例を作るためにaiicosmeを立ち上げ、新興の韓国コスメブランドなど、気軽に手に入れにくい商材にフォーカスしたという。

将来的には、サイネージ型IoT自動販売機のAIICOにARバーチャルメイクのトライオンやアバター接客などの機能を実装し、さらなる省人化を実現するとともに、アドインテとして、韓国コスメに限らず、さまざまな化粧品ブランドや、そのほかの商材の無人あるいは省人店舗のサポート事業の展開を構想しているとする。

株式会社アドインテ AIICO事業本部
AIICO企画Div. AIICO企画ユニット シニアマネージャー 石井航氏

プロフィール/文化服装学院を卒業後、アパレルデザイナーとしてキャリアをスタート。その後、広告プロダクションで営業兼ディレクターを務め、現在は株式会社アドインテのAIICO事業本部に所属。AIICOというサイネージ型IoT自動販売機を活用した店舗「aiicosme」事業の責任者として、事業の立ち上げから店舗開発・運営に従事し、現在6店舗を運営中。 趣味は コスメに関する情報収集や試用。AIICOの多様な可能性に日々魅了され、その面白さと「aiicosme」事業のコンセプトや未来について語ることを楽しみにしている

AIICOでは化粧品サンプル配布のみの活用も可能

AIICOは、静止画・動画の広告配信、現金・QR決済、保冷、さまざまなサイズの商品に対応するためサイズ変更可能な排出機構などの各種機能を備え、化粧品や雑貨、飲料や食品など、さまざまな商品の販売やサンプル配布に利用できるサイネージ型IoT自動販売機だ。

もともとデータ収集と分析に強みがあるアドインテでは、サンプルを受け取るためにユーザーがAIICOに提供した年代・性別・居住地の情報を活用し、AIICOで配信した広告がブランドの意図したターゲットに確かに刺さっているかの効果分析など、サービス利用企業に対する詳細レポートの提供も可能だ。

aiicosmeは韓国コスメに特化したスペースだが、AIICO単独で任意のスペースに設置し、販売を行ったり無料サンプルを配布することもできる。2024年10月現在、化粧品などのサンプル配布に活用されているAIICOは約80台あり、東京23区内では新宿ミロードや東京ソラマチなどの商業施設、大阪市では地下鉄駅や私鉄駅など、人通りの多い場所に設置されている。

AIICOでのサンプルの受け取り方としてはまず、AIICOに表示されているQRコードをスマホで読み取る。初回のみAIICO公式LINEアカウントの友だち追加とアンケート(年齢、性別、居住地)回答が必要だ。LINEでユーザー自身のQRコードを表示、AIICOに表示されているサンプルの画像と受け取りボタンをタップしたうえで、このQRコードをAIICOにかざして受け取るという流れだ。AIICO公式LINEアカウントの友だちになると、クチコミコミュニティにアクセスでき、受け取ったサンプルのクチコミをしたり、ほかの人のクチコミを閲覧できる。

AIICOでのサンプルの受け取り方

化粧品サンプルの無料配布の場合、アドインテでは、AIICOを設置している場所に応じて、1カ月でおおむね配布可能なサンプル数を通常1,350~2,700個、少ない場合で900個ほどに設定しており、この数量を配布し終わるまでをAIICOの基本の契約期間としている。つまりブランドは、おおむね1カ月単位でAIICOの利用が可能だ。サンプルが1カ月未満で配布し終った場合は、そのマシンの予約状況によって、契約中の企業が追加でサンプルを配布するか、次にAIICOの使用が決まっているブランドのサンプルに移行するという。サンプルの補充は、アドインテによって行われている。

ブランドがAIICO一台を購入し、好きな場所に長期的に設置することも可能だ。筐体のラッピングはマグネット式で、ブランドの世界観や商材にあわせたデザインに簡単に張り替え可能な仕様としている。石井氏によるとAIICOは毎月100〜120台を新たに設置・提供可能だという。

ブランドの世界観や商材にあわせ、筐体のラッピングは張り替え可能

AIICOを使った販売に関しては、「“特定のエリアで販売したいが小売店の棚取りが難しい”といったブランド向けに、ポップアップショップ的な使い方も提案していきたい」と石井氏は話す。これには、現在はサンプリングサービスで運用しているLINE公式アカウントのクチコミコミュニティ機能も活用していきたい考えだ。「クチコミの書き込みに対してポイントを付与したり、現品のクーポンを配布するような運用が考えられる」(石井氏)

AIICOのクチコミコミュニティ機能

今後は、たとえば中国に進出を検討しているブランドのテストマーケティングにもAIICOを活用して、中国の都市の商業施設などに現地のチャットアプリなどを組み合わせたAIICOを設置しサンプルを配布することで、中国語のクチコミを収集・分析しレポート化することも構想しているという。

リテールメディアともからめて広がるAIICOの活用可能性

aiicosmeの運営元でありAIICOの開発元である京都市に本社を置くアドインテは2009年に設立され、AIビーコンやAIICOなどによる流通小売DX支援やリテールメディアの開発・運用などを行う企業だ。リテールメディア事業では、全国3万2,000店舗のコンビニやドラッグストアと連携することで、1億4,000万超の分析可能ID(ID-POSデータ)をもつ国内最大規模のリテールメディア広告配信ネットワーク「BRAND LOOP Ads」を展開する。

BRAND LOOP Adsでは、オン/オフライン両方の顧客接点とGoogleや各種SNS、またCTV(インターネットと接続しているテレビ)やOTT(インターネットを通じてコンテンツを配信するストリーミングサービス)などのデジタル広告を掛け合わせることで、消費行動に合わせたデジタル広告配信や一人ひとりに合わせて個別化したコミュニケーションが可能だ。

たとえば、店舗での購買データにもとづいて顧客をグループ分けし、それぞれのグループに最適化された広告を配信できる。具体的には、以前は自社商品を購入していたが、最近は購入していない顧客に再び商品を購入してもらうための広告を配信したり、特定の属性を持つ新たな顧客層にアプローチすることが可能だ。さらに、配信後の購買行動変化が数値化されて提示されるので、PDCAサイクルによるマーケティング戦略の改善に役立てられる。

AIICOを利用するブランドは、こうしたBRAND LOOP Adsなどアドインテのリテールメディア事業とAIICOをかけあわせ、ID-POSデータからわかる購入履歴などのデータとAIICOのサンプル取得歴から、最適な文面をプッシュ通知するなどの使い方も今後は可能になるとする。

Text: 大塚愛(Megumi Otsuka)
Top image & photo: 株式会社アドインテ