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欧州美容ブランドの知恵が結集、2019年に「売れるため」の3大トレンド

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欧州美容業界の最新トレンドと、デジタル時代の波にのり急速に進む革新の分析から見えてきた、2019年売れるブランドとなるためのキーワードが、「コンテンツ」「クリーンビューティ」「メンズコスメ」だ。

2018年9月26日、英国ロンドンで開催された「Beauty Trends & Innovations」カンファレンスには、ロレアルや資生堂など大手から、人気上昇中のBenefit Cosmeticsなど急成長組を含む、40以上のビューティブランドと老舗デパートなどリテイラーの部門責任者や専門家が登壇。「マーケティング・キャンペーンや改革プランに、業界の最新トレンドをいかに取り入れてマネタイズを実現するか」を基本テーマに、多彩な内容の講演やパネルディスカッションが行われた。そこから浮かび上がってきたのは、2019年のカギとなりうる3つの潮流である。

1. デジタル・マーケティング - コンテンツが成功の鍵を握る

ソーシャルメディアの巨大化と普及は、消費者の興味や嗜好が移り変わるスピードがさらに高まることを意味する。毎日、いや、毎時間、毎分、次々と新しいことが呟かれ、投稿され、拡散しているのである。企業にとって大切なのは、いかに素早くその変化をキャッチして対応し、先取りできるかという点だ。この意味においてデジタル・マーケティングの重要性はこれまで以上に増すだろう。

デジタル・マーケティングを成功に導くためには、何よりもまず優れたコンテンツをつくることが第1条件だ。では、数多のデジタルソースのなかから消費者の注意を引きつけ、なおかつブランドへのロイヤルティを高める、顧客の心をつかむ“受ける”コンテンツとは具体的にどのようなものなのか?

資生堂のEMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ地域本社)のイザベル・ロジャース(Isabella Rogers)氏は6つのポイントをあげる。

1つには「共有性」があること。いわゆるシェアしたくなる内容である。わかりやすい例としては、大きなイベントをめがけてのカウントダウンなど、ユーザーが一体化し、みんなでともに盛り上がっていける空気をつくる工夫だ。

2番目に「一貫性」。ブランドとしての土台にブレがないこと。新しい手法やアイディアを試すのはいい。しかし、基本姿勢やブランド哲学が迷走することになっては元も子もない。

3番目に「アクセシビリティー」。これは、サイトやアプリの物理的な使いやすさや親しみやすさはもちろん、心理的な近さ、ユーザーが共感や感情移入できるかという、個人に対しパーソナルにコネクトする側面がより重要となる。

次にあげられたのが「対象設定」。どんなユーザーをターゲットにするのか、どんな人に自社のブランドを支持して欲しいのかを明確にして、彼らのツボを直撃する方法を考慮するのも必要だ。

同時に全体としての「持続性」も忘れるべきではない。一貫性とも関わることだが、ブランドの根幹、時を経ても色褪せない価値を築いてこそ、冒険はできるのである。

そして最後に「ディスカバービリティ」。いくら充実したコンテンツでも、消費者の目に留まらなければ意味はない。SEO対策を含め、見つけやすさへの配慮も忘れてはならない。

受け手である顧客の意識や購買行動の変化は?

ここまではメッセージを発信する企業側にたった視点からのアドバイスだが、では受け手である顧客の意識やショッピング行動は今どのようになっているのか。コティやP&Gのイノベーション・インサイト部門でマネージャー経験を持つエイヴィーン・レッドジェップ(Aveen Redjep)氏は、デジタルツールが増大した今、商品情報が多すぎて混乱している消費者も少なからずいると指摘する。

登壇したAveen Redjep氏

そのうえで同氏は、化粧品類のショッピングにあたり積極的に情報収集をする「価値追求」タイプと、身近なところから得た評判で満足する「受け身」タイプ、それぞれの10年前との行動の変化を紹介した。

基本的には、どちらも気になる商品の存在を知り、品定めをしたのち、購入という一連の流れに変わりはない。違いは、現在の「価値追求」タイプは、商品情報を信頼するブロガーやインフルエンサーなどソーシャルメディアや、企業の原料表示サイトなど、もっぱらオンラインを利用し、SNSに投稿される使用感のコメントなどオンラインでの評価を買うか否かの判断材料にしている。購入後も、チュートリアル動画を見たり、自分でもレビューを投稿するなどアクティブだ。それに対し「受け身」タイプは10年前と同様に、友人や家族あるいは長くフォローしているブログが情報元で、商品の実物を店舗で見て内容や価格を確認したり、店員の話を聞いてから購入を考えるケースが多い。

だが、ここで興味深いのは、現在ではどちらのタイプも実際の商品の購入場所は「最も便利なところ」であり、「受け身」タイプが必ずしも店舗で買うとは限らない点だ。特典やセールなど、オンラインの方が価格が安い場合や、店舗を訪れる機会がないときはオンラインを選ぶ。これはつまり、ECを利用する顧客のなかには、極端に異なるショッピング行動をする人々とその間の無数の中間層が存在していることを意味する。

それゆえに、マーケティングにあたっては、オンライン上にはタイプの違う消費者がいることを理解し、自社のブランドや特定の商品を誰に向けて売り込みたいのかを見定め、それに適したチャネルやアプローチをとるべきだとレッドジェップ氏は強調する。やみくもに、有名インフルエンサーを起用するだけがデジタル・マーケティングではないというわけだ。

2. クリーンビューティ - ミレニアルやZ世代が高めるエシカルな機運

身体や環境に悪影響がない製品や、倫理的で情報を開示することに積極的な企業を評価する消費者が、かつてないほど増えている。有害な化学物質を含まず、天然由来成分を使用した、クルエルティフリーのパーソナルケア製品やコスメを総称する「クリーンビューティ」という言葉も定着してきた。

大手化学原料会社が天然素材原料会社を買収したり、生分解性物質の研究開発を進める動きも出ており、美容業界全体でクリーンビューティに向けた対応が始まっている。今後、さらにその傾向は強まるだろう。

世界的にみると、ミレニアル世代の26%はすでにヴィーガン(動物由来品を含まない絶対菜食主義)で、2025年には、グローバルなヴィーガン・コスメ市場は200億ドルを超えるまでに拡大するという予測もある。

Noughty 97% Naturalの創業者
左からLorna Mitchell氏、Rachel Parsonage氏

パラベン、シリコンフリーで、クルエルティフリーとヴィーガン認定も得ているヘアケア・プロダクツのNoughty 97% Natural は、幼なじみの女性2人組が2016年に立ち上げた英国ブランド。揃って登壇した2人の創業者は、ヘアケア製品に対する意識調査として自社で行った独自サーベイの結果を披露した。

それによると「ナチュラルな製品を買うことは重要だと思う」と回答した消費者は全体の74%にのぼるのに対し、実際に購入した理由を「ナチュラルな製品だから」とする人はわずか8%にとどまった。購入の決め手として一番多いのは「自分のヘアケアの悩みに応える製品を買う」という53%、「価格」とした人は13%だった。

ここからわかることは何か? 人々はできるだけ自然な素材を用いた製品を使いたいと思っているが、ナチュラル製品は結果を出すという効果の面で劣っていると感じている現状だ。

しかし、逆にいえば、品質やパフォーマンス、使い心地など総合的に優れたナチュラル製品であれば、より幅広い層に受け入られる、伸びしろが大きいことを示しているといえる。消費者がいだいているのはあくまでイメージであり、たとえば、髪のタイプにあわせて適した植物原料を丁寧に選びぬき、なおかつ有害な化学物質を使用しないNoughtyのシャンプーは、髪と地肌へのダメージが少なく、実はより健康で美しい髪を手にできる近道である場合もある。

また、近年のテクノロジーの進歩は、より有効な天然由来成分の抽出や調合を可能にしており、従来以上に高機能な「クリーンビューティ」プロダクツはすでに市場に出回りはじめている。ブランド側には消費者にいかに周知させていくかの努力が求められる。

ラグジュアリー・コスメ&スキンケアブランド専門セレクトショップのSpace NK Apothecary のグローバル・ブランド・コミュニケーション・ダイレクターであるエマ・シンプソン・スコット(Emma Simpson Scott)氏も、スーパーフードやキノコ類が有効で新しい化粧品材料として注目を集め、クリーンビューティがトレンド・キーワードになっていることを認める。

その反面で、“オーガニック”や“エコ”という言葉そのものには、法的な根拠や使用条件の規制はなく、そこにつけ込み、商品名や包装デザインを、いかにも環境配慮をしているかのように装いうわべだけを取り繕う「グリーンウォッシング」な製品も少なからず見受けられるとして、消費者に対し何が真の意味で“ナチュラル”と呼べるのか、正しい知識を啓蒙していく必要性を訴えた。

環境問題への取り組みという点で一歩先をゆくのが、新鮮な野菜や果物を原料に手作りしたパーソナルケア製品やバスボムで知られるLush である。先ごろ、ミラノとベルリンに相次いでオープンした店舗 Lush Naked Shopはプラスチック、紙に関わらず、包装パッケージを全廃したことで話題になった。店内にはAI による商品認識ツールを装備しており、買い物客が固形シャンプーなど商品にスマホを向けるだけで、原材料や価格などの情報がすべて画面上に表示される仕組みだ。

Lush のパッケージフリーの店舗

Lushではこのほか、海洋のプラスチックゴミを減らすため、ギフトボックスやリボンはリサイクル製品や生分解性のものを使用し、海岸の清掃ボランティアなどの活動も行っている。

3. メンズグルーミング&スキンケア – 拡大する市場規模に熱視線が注がれる

欧米がけん引するかたちで、男性用グルーミング&スキンケア・プロダクツの売り上げが伸びをみせている。ユーロモニターによれば、2020年にはグローバルなメンズグルーミング製品市場は600億ドル規模に到達する見込みで、この5年間の年平均成長率は5.2%との予想になっている。

先頭を走るのは、デビッド・ベッカムをパートナーに迎え、メンズ用21アイテムを揃えたグルーミング・コレクションHOUSE 99をスタートして話題を呼んだロレアルである。

出典:HOUSE 99

パネリストとして登場した同社のメン・エキスパート・ビジネスリーダーのトム・ストーン(Tom Stone)氏は、ベッカムと組んだ理由は、彼がInstagramやFacebookで5千万人以上のフォロワーを持つからだけではないと語る。「元フットボールのスター選手というだけではない。父としてや夫として、さまざまなスポーツ振興の活動家としてなど、デビッドは多様な立場からコミットができる。幅広いチャネルにつながっているのが魅力だ」として、ロレアルがメンズ製品のブランド・アンバサダーを選ぶ際には、マルチな視点からアプローチできる人物を意識していると明かした。

ストーン氏はまた、フレグランスも含め、メンズ製品の約60%は女性が購入しているとして、父の日やクリスマスなどに大きく消費が伸びる現実を示した。男性に自分自身で商品をチェックし買ってもらうようにするためにはどうすべきか。その答えを探して行われたのが、ヨーロッパの男性のヒゲ度調査である。

その結果、49%の男性が顔になんらかのヒゲをたくわえていると判明。ここから、ヒゲのケアをしながら同時にスキンケアができることをコンセプトにしたBarber Clubが生まれた。ヒゲと顔と髪を同時に洗える3 in 1ウォッシュをメインに、シダーウッドなど天然のエッセンシャルオイルを配合したスキンオイルやモイスチャー、スタイリングクリームをラインナップ。一般のスーパーやドラッグストアの棚に置き、価格も10ポンド(約1,400円)以下に抑えて売り上げを伸ばしている。

一方で、自分が使いたいと思うような確かな品質の男性用ケア製品がないと創業者が感じたのが、ブランドを創始したきっかけだったのがBulldog Skincare For Men。セールス部門のトップであるマット・ガーディン(Matt Gourdin)氏は、スタートアップとして始まった同社が、消費者から認知されるために行った施策や工夫の数々を紹介した。

たくさんの製品がずらりと並ぶ剃刀売り場で埋もれないようにと開発したのが、持ち手に竹を採用したオリジナル・バンブーレザー。ワンアクションですぐに開けられるパッケージなど、細かな部分でもユーザーの使いやすさにこだわったという。同時に、竹という自然素材は、グリーンティーやアロエベラなど天然成分を使用した同社のスキンケア・プロダクツとのイメージの親和性も高い。

社会意識の高い男性顧客を念頭に、サステナビリティーに配慮する同社は、紙箱パッケージ入りのボディシャンプーやリフィルの配達システムなども検討中だという。

こうしたメンズケア・ブランドが口を揃えるのは、これまであまり耳を傾けられてはこなかった男性消費者の要望や本音を知ることの重要性だ。つまりユーザー・ファーストであることだが、それはもはやジェンダーを超えて、企業がまず第一に取るべき姿勢かもしれない。

セッションの議長役を務めた、英国を代表するヘルスフードショップ・チェーンHolland & Barrettのヒラリー・リーム(Hillary Leam)氏もまた「課題解決への糸口はいつもカスタマーの声にある」として会議を締めくくった。

Text: そごうあやこ(Ayako Sogo)


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