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ついにTouTiaoも参入。美容ブランドも活用する中国ミニプログラム事情

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中国Eコマースの業界で今、「ミニプログラム」と呼ばれるプラットフォームが注目を集めている。多くの中国大手IT企業が参入し、先日、TikTokで日本でも知名度が上がりはじめたByteDanceも導入を発表した。ミニプログラムとは、そしてByteDanceの狙いはどこにあるのかを探る。

2018年9月17日、中国ByteDanceは同社の柱であるニュース配信アプリTouTiao(今日頭条)で、ミニプログラムのベータ版を公開すると正式に発表した。同社は日本の若者にも人気のショート動画投稿アプリTikTokの開発元でもある。発表では「より豊富で価値のあるサービスを様々な利用者に届けたい」とアナウンス。TouTiaoのミニプログラム導入は、WeChat(テンセント)、アリペイ(アリババ)、バイドゥの大手3社に次いで4社目となった。

ちなみに、ByteDanceは2018年10月下旬に、750億ドルの評価額で30億ドルの資金調達を終えたという報道があり、創業6年にして現段階でウーバーを抜いて世界最大のスタートアップである。TikTokに似た仕組みをFacebookが、GoogleはTouTiaoのようなニュースアプリを中国ユーザー向けに開発中だという。

ミニプログラムとはどういうものか

ミニプログラムとは、WeChatなどプラットフォームのアプリ内で他社も含めた各種サービスのプログラムが利用できるもので、いわば「アプリ内アプリ」のことだ。もともと2017年にWeChatがスタートさせたもので、その便利さから一気に利用する企業が増えた。

これまでスマホユーザーは、ネットショッピング、ネット決済、ゲーム、メディア閲覧などをする際、それぞれのアプリやブラウザを起動させる必要があった。しかし、WeChatのミニプログラムは、WeChatアプリ内で上記のサービスをすべて享受し完結することが可能で、ユーザーにとっては容量の節約、ホーム上のアプリの整理、時間の短縮など多くのメリットがもたらされた。ミニプログラムを提供する企業にとっても、WeChatユーザーであれば、誰もが潜在的な顧客になりうるため、顧客の新規開拓に大きなチャンスが生まれることとなった。

ユーザーからの見え方としては、下記のようになる。

WeChatのトップページを開くと、
上部に自分が使用しているミニプログラムが表示され、
すぐにアクセスできる

ミニプログラムの検索画面。
企業名やブランド名を入れると表示される

We Chat上で公開されているミニプログラム数はすでに100万を超えており、飲食・小売分野ではマクドナルド、KFC、スターバックス、ワトソンズ、MINISOなどの大手も参入。割引情報や配送サービスなどをミニプログラム上で展開している。メディアの分野では「人民日報」などの国営メディアもミニプログラムに参入しており、今後こうした流れは加速していくものと考えられている。美容では仏ロレアル・グループや、LVMHからディオールが5月に公式ミニプログラムをリリースするなど、海外企業も続々と参入している。

仏ロレアルが提供するWechatのミニプログラム

WeChatミニプログラムはユーザー数が1年で60倍に

次にミニプログラムの利用者の状況についてみていこう。

中国電子商務研究センターが7月に発表したデータによると、WeChatの利用者はすでに世界で10億人を超えており、そのなかでWeChatミニプログラムの利用者数は約6億人である(6月時点)。中国では利用者の約半数がミニプログラムを利用していることになる。前年同時期の利用者が1,000万人だったことを考えると、わずか1年で利用者が60倍に増加した。

ミニプログラムの利用者の半数は24歳~35歳の世代で、平均使用時間は1日13分。利用者の平均消費額は1ヶ月200元(約3,300円)で、ミニプログラムを通じてネットショッピングや飲食、ゲームなどに費やされているという。

実際にWeChatミニプログラムを利用している中国人の20代女性ユーザーに聞くと、ネットショッピングはもちろん、フードデリバリーやゲームなど、これまで複数のアプリで利用してきたサービスを、すべて一括してWeChat上のミニプログラムで利用するようになったという。また、女性ユーザーの間ではとくに占いのミニプログラムが人気で、種類も充実しているそうだ。若い女性を中心に、暇つぶしの手段としてもやはりミニプログラムが使用されているのだ。

では、TouTiaoはなぜミニプログラムに参入したのか。その前に、TouTiaoの概要を説明しよう。

同アプリは2012年8月にByteDanceがリリースしたニュース配信・メディアアプリで、現在の利用者は約7億人、MAU(月間アクティブユーザー数)は2.6億人を突破している。TouTiaoでは、これまでに国営メディアを含む約1万以上の中国メディア、ブログ、情報サイトが、同プラットフォームを利用して情報を配信している。

TouTiaoが革新的だったのは、AI(人工知能)がユーザーの嗜好を分析し、個人個人にその人が読みたいであろうコンテンツを的確に配信する仕組みにある。TouTiaoの収益源は今のところ広告収入のみに頼っている状況で、今後のさらなる成長のため、ミニプログラムを通じてオンライン決済や教育ビジネス、ゲームビジネスなどの分野に進出し、広告という単一的な収益モデルからの脱却を図る狙いがあるとみられている。

TouTiaoミニプログラムはベータ版として運用されているため、まだミニプログラムの数はわずか数個に限られている。現在、同アプリ内で実験的にミニプログラムの提供を行っているのが、映画情報やチケットの予約サービスを展開している「Maoyan(猫眼電影)」だ。TouTiaoアプリ内から同ミニプログラムにアクセスすると、現在公開中の映画作品の情報を閲覧することができ、利用者はそのまま映画のチケットを購入できる。ネット決済に関してはアリペイしか受け付けておらず、WeChatなど支払いの選択肢を広げてほしいという声もあがっているようだ。

TouTiao内のMaoyanミニプログラム
映画の予告編動画、興行成績、レビュー投稿・閲覧、
チケット購入まですべてこのなかで操作できる

その利用者数から、WeChatミニプログラムの最大のライバルとなることが目されているTouTiaoミニプログラムだが、後発として今後どのように先行組と差別化し、利用者拡大を図っていくのだろうか。

WeChatとTouTiaoの大きな違いはそのサービス内容だ。WeChatが中国最大のメッセンジャーアプリであるのに対し、TouTiaoは中国最大のメディアアプリだ。加えて中国国内1.5億人のユーザーを有するTikTokとも連動している。ByteDanceが得意とする10代~30代の若い世代に向け、エンタメやゲーム、教育に特化したミニプログラムを提供していくのではないか。また、高水準の自社AI技術を活かし、TouTiaoユーザーへのミニプログラムのレコメンド精度の高さで勝負をかける可能性もあるだろう。

アリババのミニプログラムは公共サービスも提供

一方、WeChatやTouTiao以外のミニプログラムはどうか。まず7月に正式に運用を開始したバイドゥは、ベータ版として実験的に「bilibili動画(哔哩哔哩)」、「58同城(中国最大手のクラシファイド広告サービス)」「愛説唱(ラップ動画作成アプリ)」のミニプログラムをはじめ100以上を提供している。中国最大手の検索エンジンとして、6億人のユーザー数を誇るバイドゥだけに、運用開始から2ヶ月でミニプログラムのMAUが1億人を超えた。幅広いユーザーのニーズに対応するため、ゲーム関連のミニプログラムを筆頭に、動画閲覧、旅行、物流、医療など多彩な分野で運用されている。

中国最大のキャッシュレス決済プラットフォームであるアリペイも、アリババグループ全体で研究開発を進める、AIを前面に打ち出したミニプログラムの提供をはじめている。

こちらは7月にサービスを開始し、第1弾としてシェア自転車サービスの「Hellobike(哈罗単車)」と提携したミニプログラムをリリース。アリババはAIを用いた個人信用スコアリングシステム「芝麻信用」を開発しており、同システムによって経済的に信用度が高い人物と判断された市民は、デポジット金を支払わずにHellobikeのミニプログラム経由で、シェア自転車が利用できるというサービスだ。また、地方政府と提携し、電子婚姻証明書をミニプログラムを通じて発行する行政サービスも行っていくという。

今後、アリペイは自社のAIシステムと連携したミニプログラムの運用や、行政サービスの代理機能としての役割を強化し、他者との差別化をしていくことが予想されている。

アリペイのミニプログラムの紹介ページには、
広州市と江蘇省の公共サービスをミニプログラム上で受けられるとある
出典:アリペイミニプログラム公式ページ

中国IT界に大きな変革をもたらしているミニプログラムだが、今後、スマホアプリとミニプログラムのバランスはどのようになっていくのだろう。あくまで推測だが、中国企業や外国企業は、中国国内向けサービスはミニプログラム、海外向けにはアプリと棲み分けができてくるのではないか。

WeChatやTouTiaoをプラットフォームとしてミニプログラムを提供する中国企業にとっては、自社のアプリでサービスを展開するよりメリットが大きい。ミニプログラムプラットフォームを使えば、ユーザーのさまざまな履歴をもとに各自に適したミニプログラムを自動レコメンドするので、企業が個別にプロモーションをする必要はない。数億人のユーザーを有するプラットフォーム上でサービスを展開したほうが、新規顧客の獲得に結び付きやすいのである。

一方で、中国以外の国ではこうしたミニプログラムという概念がまだ浸透しておらず、海外ユーザーに対するサービス展開は、今後もアプリでの提供を継続していくと考えられる。同時に、日本をはじめ多くの国々の企業が、今後、中国のミニプログラム市場へ進出する動きが加速するのは想像にかたくない。

では、日本で、日本国内ユーザー向けにミニプログラムを提供する企業は出現するのだろうか。WeChatの例から考えて、同じメッセンジャーアプリのLINEが実現する可能性はあるだろう。LINEはメッセンジャー機能を核として、決済、ゲーム、ニュース配信なども手がけており、若年層ユーザーへ浸透させやすいようにも思える。

中国ユーザーに向けて、日本企業が中国ミニプログラムへ参入するのは時間の問題として、このミニプログラムという考え方やサービスは、日本や海外でもはじまるのか。スマホアプリをめぐるビジネス環境が激変する可能性を秘めているだけに、その成り行きを注視している企業も多いはずだ。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)

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