コスモプロフ2

IFSCC受賞サイエンティストにGoogleアナリスト。満員の聴衆を魅了したコスモプロフ アジア2017 「コスモトーク」

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2017年11月に香港で開催されたコスモプロフ アジア2017。第1回目のレポートでは、K-Beautyやアプリなどアジアのみならず世界を席巻しているトレンドをとりあげた。今回は、世界各地から招かれたスピーカーによる「コスモトーク」から、資生堂江連氏のアンチエイジング最前線、Googleのアナリストによる検索ワードからみる世界のスキンケアトレンドの2つのトークを紹介する。

今回レポートするトークは2つ。1つめは、アンチエイジング美容の基礎研究分野で世界のトップランナーとして知られる、資生堂ライフサイエンス研究センター江連智暢氏の「化粧品研究開発の最前線:世界をリードするアンチエイジングスキンケア」

2つめは、ビューティに特化した世界のユーザー動向とトレンド分析について、Googleのトレンドスポッティング担当者Yarden Horwitz(ヤードン・ホルウィッツ)氏と、グローバルビューティ業界プリンシパルアナリストのFlynn Matthews(フリン・マシューズ)氏が語る「Think with Google」。

それぞれの興味深い内容をさっそく紹介する。

小じわ対策を超えた、最先端のアンチエイジングへ

レチノールを使った「エリクシール シュペリエル」シリーズが脚光を浴びた資生堂の基礎研究を牽引し、化粧品業界のオリンピック的存在であるIFSCCで2大会連続優勝という快挙を達成した江連智暢氏は、まさに日本が誇るアンチエイジングスキンケア研究の第一人者。その江連氏が語る最前線情報とあって、世界中の業界人が会場に集まり耳を傾けた。

今回の講演は、現在のアンチエイジング化粧品の主流である、前述のレチノールを始めとする肌表面の小じわへの対処から先を見据えた内容になっていた。

「大会への参加など華やかな面が取り上げられがちな基礎研究も、最初の一歩はごく素朴な疑問から始まるもの」と江連氏。彼が感じていたのは「遠くから見えにくい小じわよりも、お客様の実際の悩みは、ほうれい線や、あいまいになる輪郭なども含めた、加齢による顔の変形にあるのにそこに十分対処できていないのでは」という疑問だったという。

「たとえば従来、シワとして認識されていたほうれい線は、横たわると消える。そのことからもほうれい線の原因はシワではなく、顔の肌のたるみから生まれる境界線であることがわかる」

加齢による顔の変形のひとつである顔の肌のたるみへの対応を考えるためには、その発生原因を解明する必要があるというわけだ。

「意外に聞こえるかもしれないが、顔の肌のサンプルは、提供によって顔に傷がついてしまうため、その提供者を見つけるのはきわめて困難だった。今までは体の皮膚サンプルを使って研究が行われてきており、実は顔の肌自体の研究はほとんどされていなかった」と江連氏。

それを改めるべく江連氏が行ったのが「大学医学部との共同研究により、皮膚がんなどで顔にできた腫瘍を摘出する際、一緒にわずかに切除される正常な肌を患者から提供してもらうこと。約5年の歳月をかけ、顔のさまざまな部位約90カ所の肌を研究することができた」ということだった。

アンカー構造の減退と真皮の空洞化がたるみの原因

その結果、明らかになったのが、顔の肌だけに見られる「アンカー構造」というものだ。真皮層の底部から皮下脂肪層に向かって、突起状の構造があり(ここをアンカー構造と呼ぶ)、この構造内には、肌の他の部分と同様に、コラーゲン線維(肌に強度を与える)や弾力線維(肌に弾力を与える)が入っている。

これらの線維は、他の部分の線維は横向きなのに対して、アンカー構造内では縦に向かっていた。そのため、加齢とともにアンカー構造が細くなって減っていき、構造内の弾力繊維も弱まっていくことで、肌がたるんでいくのである。このたるみが顔の変形の元凶だった。

「アンカーを再生することでたるみが改善するはず、とさらに研究を進めた結果、表情筋を鍛えることで細胞が活性化、これによりアンカー構造が再生して肌の弾力が改善し、ほうれい線も薄くなることが明らかになった」。

さらには、リコリス抽出物がアンカー構造の再生に繋がる成分であることも判明した。

「アンカー構造が明らかになった後、顔の肌の内部構造の研究を進めたが、従来、肌の内部はX線に反応しないため、観察が非常に難しかった。そこでAsaxa-CT(アサクサ法)と名付けた特殊な処理を施して、三次元的な観察を可能にすることに成功した」と江連氏。

その観察結果から見えてきたのが、加齢により真皮層に欠損が生じてくぼみができ、たるみにつながる「肌の空洞化現象」だ。

「この空洞をアサクサ法で観察したところ、肌の欠損は必ず汗腺と同じ場所に起きていることが分かった。若い頃は皮下脂肪まで到達していた汗腺が、加齢とともに縮み上がって浅くなったところに空洞ができる。高齢者の汗腺から出るMMP1という物質が周囲を分解してしまうからだ」

江連氏は「汗腺の細胞を活性化することで、空洞化が改善される。つまり汗をかくことで活性化が高まり、空洞化が改善され、顔のたるみが軽減する」という結論を導いた。美容の世界で、今まで注目されていなかった汗腺が、実は非常に重要な存在であることがこれにより判明したのだった。

「アンカー構造」は2014年、「空洞化現象」は2016年のIFSCCで江連氏の優勝を導いた研究内容である。講演は、IFSCCでの優勝発表の瞬間をとらえた珍しい動画を披露して幕を閉じた。

資金力と歴史、そして先を見る目が研究を後押し

講演後、さらに江連氏に話をうかがった。

大学時代に、化粧品の研究開発を通して社会貢献しながら文化に影響を与えられることを夢見て、資生堂に入社したという江連氏は「従来、医療が中心であった基礎研究も、癌や痴呆などの終末医療の発達からクオリティ・オブ・ライフへの注目が集まったことで、美容の分野にも研究資金が集まるようになってきた。これにより各社の研究開発力も上がっていき、ますます競合も生まれるだろう」と業界の現状を分析する。

どのような研究の環境があれば、江連氏のような国際的にも高い評価を受ける研究者を輩出することできるのか、という疑問をぶつけてみた。

「基礎研究はとにかく成果を出すのに年月がかかるため、研究の積み重ねという歴史と、そこに資金投入できる会社の体力、そして数ある研究計画の中から、どれに投資していくかという選択眼と先読みする力。それらのすべてが揃っていること、つまり総合力が必要だ」

アンカー構造、汗腺に加えて、皮下脂肪も皮膚の状態をコントロールする重要な役割を担っていることが解明されている、と江連氏。「これらの研究成果を元に、実際の製品に応用する新しいソリューション開発が進んでいるところ」と語る江連氏の今後の動向に注目したい。

元美容業界マーケッターと、データアナリストが生んだ充実のレポートとは

2つめの注目コスモトークに登壇したのは、Googleのトレンドスポッティング担当者Yardon Horwitz氏(右)と、同社グローバルビューティ業界プリンシパルアナリストのFlynn Matthews氏(左)の二人。

Googleは、特定業界に焦点を当て、膨大な検索データを元にしたトレンド分析を公開している。このトークで紹介されたのは、美容業界の中でもスキンケアに特化して、2017年2月に公開されたレポート、「Google unmasks the skin care trends of 2017」。この内容紹介とともに、Googleが提供するツールを、いかにビジネスに活用するべきかという提言が含まれることから、満員の聴衆が熱心に耳を傾けた。

「何億人ものユーザーが、日々スキンケアについてGoogleで検索している。これはまるで巨大な匿名フォーカスグループのようなもの。しかも彼らは、親にも友人にもパートナーにも言えないような、心の底にある悩みや興味を検索キーワードとして打ち込んでいく。キーワードが正直であればあるほど満足のいく結果が得られるし、絞り込んで行けば結果を最適化できる。完全匿名でバイアスのないデータが手に入る」とMatthews氏。

「市場にあるものに対して、消費者がどんな態度を示しているかを、レポートを通じてマーケッターやブランドに紹介したい」と語るMatthews氏は、自身もロレアルなどのブランドでのマーケッターとしての10年間の業界経験を持つ。そこで培った美容のプロとしての視点を生かし、トレンド分析の専門家であるH氏や各国Horwitzの優秀なデータアナリストと協力してのレポート作成など、美容業界のプロフェッショナルたちにとって役に立つデータ提供に力を注いでいる。

「対象データにはYoutubeの動画やコメント欄も含まれているので、検索キーワードだけではなく、動画に描かれている内容とそれに関わるコメントによるコミュニケーションまでも分析できる」と説明するHorwitz氏は、このレポートの方法論をまず以下のように説明した。

「現在の美容業界では、アジアで起きていることが世界に波及するという大きな流れがあるので、日本、フランス、アメリカの3国にまずはフォーカスした。何十億人もの検索者からのデータを、各マーケットのアナリストが分析することで、使用言語の壁をなくし、文化的な洞察も加味してある」

各国のトレンドの動きを知れば、美容業界の未来が見える

今回のトレンド分析に非常に役立ったのが、Googleがマシンラーニングによって膨大なデータを解析して定義した、6つのトレンドパターンだ。

「安定したペースで上昇/下降していくという2つのトレンド(Sustained Risers/Decliners)は、ブランドにとってもっともわかりやすいもの。それに近いのが、季節によって上昇/下降するという2つのトレンド(Seasonal Risers/Decliners)。そして突然の急上昇/その後急下降(Rising Stars/Falling Stars)という残りの2つは、トレンド分析の中でも特に注目されるパターンだ」。あらゆるトレンドがこの6つのいずれかに当てはまるという。

出典:Google unmasks the skin care trends of 2017

「以前は量的に最大と最小しか計測できなかったのが、このパターンの分析により、リアルタイムでトレンドの状態が分かるようになった。ときには1日で特定のトレンドが絶大な支持を得るという場面を見ることもある。ブランドの製品開発や発表のタイミングを決める参考にするなどの活用ができるはず」

それでは気になるレポートの内容を見ていこう。

今回対象とした日本、フランス、アメリカの3国のデータからは、驚くほど個性が異なるマーケットの様子がうかがえた。

「アメリカで今、最も目を引くトレンドは、ビーガン・スキンケア。全体の検索量は多くないものの、毎年83%の成長を見せている。ビーガンが食生活だけでなくライフスタイル全体にまで浸透しようとしているのがうかがえる。日本ではまったく見られないトレンドで、フランスでは徐々に検索されつつあるものの、アメリカでの検索件数はフランスの13倍にもなる」とHorwitz氏。

飲食と美容のクロスオーバーは、マーケット全体で繰り返し現れ、勢いのある大きな流れで、「かつてはデトックスやココナッツオイルが食から始まり、世界に広がって、美容のカテゴリーに加わっていった例がある。以前に飲食業界に関するレポートを作成したことがあるので、美容業界のレポート作成中に、両業界で重複する内容が非常に多いことに驚いている。今後ますますこの傾向は強まるだろう」。

出典:Google unmasks the skin care trends of 2017

フランスでは、温暖な季節になるとセルライトに関する検索がアメリカの30倍、日本の170倍と顕著に高くなる。さらにスキンケア製品のフォーマットとして「オイル」が常にトレンドにあり、オイルの種類だけが入れ替わって行く傾向がある。

日本のトレンドとしてHorwitz氏とMatthews氏がピックアップしたのは「クレンジングだ。アメリカの6倍、フランスの13倍の件数の違いがあるだけでなく、酵素や炭酸による洗顔など、スキンケアへの科学的技術的アプローチや成分への強い関心を持つ、日本らしさが見えてくる」。

出典:Google unmasks the skin care trends of 2017

トレンドの主役はマスク-その国別傾向とは

今回のコスモプロフ香港2017でも出典された数、種類からも主役として存在感を発揮し、世界をまたがる大きなトレンドであるマスクは、国別に異なる傾向が顕著に現れる好例でもある。

「マスクは日本から始まったトレンドとして、世界に広まった。日本が長いことマーケットをリードしたが成熟期を迎えて落ち着きを見せ検索件数も下落に入った一方、アメリカやフランスでは成長が続いていて、2016年には急上昇を遂げたアメリが日本を抜いたことが、各国の人口で割り戻した平均検査量の比較グラフで分かる」とHorwitz氏。

出典:Google unmasks the skin care trends of 2017

各国のYoutubeで、友だちと、恋人と、家族と一緒にマスクを使う動画が多数投稿されていることから、「使用後の効果を動画内で見せやすいこと、使用している姿が面白いこと、周囲と共有・共感しやすい美容のアクティビティであることが、今までにない世界的トレンドになっている理由」と分析する。

またマスクの材料に着目した分析では、国別の特徴が浮き彫りになった。

「新しい流行をあれもこれも試したい、思い切った材料を試したいというアメリカでは、炭、クレイ、ターメリックなどハードな材料が多数並ぶ。一方フランスでは、マスクといえばとにかくピーリング。乾燥肌でも目の周りでも構わず、ピーリングマスクに関心がある。またフランスでありながら、英語キーワードが多用されていることから、米英の英語圏からの情報に影響を受けていることが分かる。日本では検索ワードの種類自体がミニマルで、酵素など化学成分とへの関心が高い。ここでも成熟期に入ったことを示しつつ、集中して深く極めようとする国柄が見える」

出典:Google unmasks the skin care trends of 2017

この他、多彩な比較と分析が3国のデータを使って行われているので、ぜひレポートを見て欲しい。

検索ワードトレンドは、見逃すのはあまりに惜しい情報の宝庫

「マーケッター時代に、こんなデータやレポートがあると知っていれば良かったのにつくづく思う。ここで入手できる情報の凄さがまだ業界で認知されていない」というのが、Matthews氏の弁。まさに手つかずの宝の山だ。

「たとえばマスク先進国の日本で浮かび上がり始めた、顔以外の体の部位用マスクは、これから欧米にも伝わっていくだろう。そんな情報やトレンドの先取り予測もできるし、今この製品は流行中か、すでに終わっているかというピンポイントの判断もできる」とMatthews氏は続けた。

「Googleでは主に広告主になっている大手ブランドとパートナーシップを結び、トレンド分析データを提供している。スタートアップや中小企業でも、Think with Google掲載のレポートとともに、Google Trendsなど検索動向を調べるツールを使いこなすことで、消費者の動向をよりリアルにとらえてビジネスに生かす手段はいくらでもあるので、ぜひ活用してほしい」とHorwitz氏がまとめた。

ともに活発な質疑応答を経て、終了したコスモプロフ香港2017のコスモトーク。ジャンルの異なる最先端の内容で、来場者の満足度も高かったようだ。第一回で紹介したとおり、アジアを中心とした世界美容トレンドを熱気あふれる会場での展示から体感し、美容業界の最前線で活躍するスピーカーのトークからは、資料を読むのとは違う深い気づきを得られる。足を運ぶ価値は高く、来年の開催も心待ちにしたい。

text: 甲斐美也子 (Miyako Kai)


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