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AI、光ID、無人レジ。リテールテックがもたらすのは、”すぐそこにある未来”

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2018年3月6日から9日まで、東京ビッグサイトで開催された第34回流通情報システム総合展「リテールテックJAPAN 2018」。最新テクノロジーで消費者の買い物体験はどう変わるのか。化粧品業界にも影響を与えることは必至の注目サービスを紹介する。

光IDや電子棚札、圧倒的存在感のパナソニック

同展示会で圧倒的存在感を放っていたのがパナソニック(本社:大阪府門真市)。ローソンによる実証実験で話題を呼んだ、精算から袋詰め作業までを完全自動化したセルフレジ機「レジロボ」をはじめ、光IDソリューション「LinkRay」や電子棚札ソリューションなど、ユニークかつ具体的な利用が想像できるサービスが紹介されていた。ここではLinkRayと電子棚札ソリューションについてみていこう。

LinkRayはパナソニックの独自技術「光ID」を活用した情報配信システム。街中のいたるところで使われているLEDを光源としたライトやディスプレイから送信されたID信号をスマートフォンの専用アプリで読み取ることで、商品に関する詳細や、スマートフォン所有者の使用言語に応じたコンテンツなど、さまざまな情報の入手が可能になる。スマートフォンに搭載されたカメラが光ID信号を読み取り、IDをLinkRayサービスプラットフォームに照会。受け取ったURLからサーバーにアクセスし、コンテンツを表示させる仕組みだ。

上記の動画はアシックスの店舗だが、展示会場ではバーガーショップでの利用イメージのデモがあった。たとえば、店内に掲出されたポスターにアプリを起動した状態のスマートフォンをかざすと、すぐに数秒程度のCMが流れ始める。天井に設置したスポットライト形のLinkRayからポスターに光を当てることで、コンテンツの表示を可能にしているという。

LinkRayスポットライト形

ポスターのわきには、「不思議な拡張現実/ARマーカーが無いのに動くCM映像」と書かれていたが、まさにAR技術を使用しているのでは? と思いたくなる光景だった。

スマホをかざすとCMが流れる

パナソニックのスタッフによると、「CMを放映するためのデジタルサイネージを置けない小規模店舗でも、LinkRayを活用することで限られたスペースで情報提供が可能になる」という。アレルギー表示やクーポンの配信、今月のおすすめ商品紹介など様々な使い方が考えられる。

また別の実用例として、ライトが当たっている商品ディスプレイやメニューにスマートフォンをかざすと注文画面が表示されるサービスも紹介。スマートフォンから直接注文と決済を済ませることで、混雑時のレジ待ち行列を回避する狙いだ。

スマートフォンから商品のオーダーと決済も可能

同時にLinkRayは、スマートフォンユーザーの使用言語に合わせた情報提供にも対応しており、海外からの旅行客へのホスピタリティ向上も期待できる。導入企業は、光ID送信機にスマートフォンをかざした履歴情報が参照でき、来店客の動線や行動といったマーケティングデータの収集も可能だ。

スーパーの棚札がリアルタイムで変わる

一方の電子棚札(ESL)ソリューションは、電子ペーパーを採用した棚札。室内の明るさを選ばず、クラウド経由で商品名や価格、産地などの情報を更新し掲載する。NFC内蔵型の電子棚札もあり、内蔵NFC、または表示のQRコードを使い、クーポン配信やレシピ、購入者のクチコミなど多くの情報をスマートフォン経由で提供する。また店舗ごと、エリアごと、商品ごとなど細かく更新ができるほか、タイムセールなどの価格表示にもすばやく対応。

レジを通らなくてもスマートフォンで顧客自らが決済を済ませるセルフレジにも応用できる。2018年夏には、LEDライトを搭載した薄型デザインの新モデル「G2シリーズ」をリリースする。冷凍室から常温、ホットショーケースにまで利用でき、従来のように、常温用、冷蔵・冷凍用など温度によって棚札を使い分ける必要がなくなるという。

電子棚札の一例

QRコードを読み込み即時購入

ほかの企業からも興味深い技術提案があった。凸版印刷(本社:東京都千代田区)は、チラシやポスター、雑誌、店頭のサイネージといった販促媒体上のQRコードを専用アプリで読み込むだけで、簡単に買い物ができる「TOPPAN ExOrder」を展示。あらかじめクレジットカードや住所といった個人情報を登録しておけば、対象商品のQRコードをスマートフォンで読み込むだけで購入できる。

スマホからQRコードを読み込む

デモでは自販機に見立てたサイネージ上に、商品画像とQRコードを表示。購入までのプロセスをわずか2ステップで終える様子を実演した。TOPPAN ExOrderを導入することで、スペースに限りがある店舗でも多くの商品が販売できるとする。また従来の販促媒体では難しかった、「どの販促媒体から」「どの商品が」「どれだけ」販売されたかといったデータを把握でき、マーケティングに活かせる。

QRコードから2ステップで購入が完了

Amazon Goに続け!目立った「無人レジ」

米国シアトルでスタートした、無人レジコンビニ「Amazon Go」を彷彿とさせる展示も目立っていた。その中の一社、サインポスト株式会社(本社:東京都中央区)の「Super Wonder Register(スーパーワンダーレジ)」を体験してみた。

スーパーワンダーレジのデモ風景

サインポストは、金融機関や行政機関にシステムソリューションを提供するベンチャー企業で、数年前からAIのディープラーニングを応用した製品開発を行ってきた。2016年、「ワンダーレジ」と呼ばれる、AIを搭載した箱型のレジを開発。これは、来店客をレジ搭載されたカメラが読み取り、AIが商品を自動識別して商品点数と合計金額を瞬時に計算するというものだ。バーコードなどのICタグを用いず、複数の商品を素早く一括精算できるため、精算時間を格段に短縮できる。今回のスーパーワンダーレジは、このワンダーレジ技術をさらに発展させたものだ。

店内に入り、棚から好きな商品を取ると、サインポストが独自に開発したAI「SPAI」が商品を認識するとともに、買い物客の動きもあわせて認識。それらの情報を紐づけて、客が決済ゲートに到着する前に精算を完了させる。客は画面上で会計結果を確認し電子マネーなどで決済して店を出る。

画面上で会計確認が終わるとレシートが発行される

今回は麦茶と果汁グミを購入してみたが、果汁グミは認識されず、麦茶代金のみが加算されていた。担当スタッフによれば、商品が2つ重なったことで一方が認識されなかった可能性があるという。

他社連携、売上分析など活用範囲が広い電子レシート

米国ではすでに実用化が始まっている電子レシートにも注目だ。紙のレシートを発行せず、Eメールやアプリを通じてレシートを受け取るサービスで、日本でも2018年2月3日から経済産業省が、東京都町田市で電子レシートの標準仕様を検証するための実証実験を行った。同実験には、町田市にある飲食店、コンビニ、スーパーマーケット、ドラッグストア、日用雑貨店(合計27店)と、複数のシステムベンダーが参画し、対象店舗は実験的に標準仕様の電子レシートシステムを導入するもの。

リテールテックJAPANに出展したログノート(本社:東京都品川区)は、「iReceipt」を紹介。同社は、電子レシートを受け取り一元管理するためのアプリを開発している。

電子レシートの画面例

電子レシートのメリットは、紙のレシートと違い紛失の心配がないだけでなく、過去の購入情報を検索しやすいところにある。導入店舗側としては、購入商品や客層に合わせて、クーポンの配信やキャンペーン情報、新商品のリコメンドなどができ、マーケティングに活かしやすい。また電子レシートは、家計簿アプリやレシピアプリ、コーディネートアプリなどの外部サービスとの連携が容易なため、購入した洋服や化粧品の情報をもとに連携アプリ内でコーディネートやメイク提案をしたり、購入した食材情報からレシピアプリ経由でおすすめレシピをリコメンドしたりといった使い方もできる。他社サービスと連携していくことで、ユーザーごとにカスタマイズされた、利便性の高いサービスへと発展する可能性を秘めている。

他社サービスとの連携イメージ

日本語を理解し対話するAI

また、NTTコミュニケーションズ(本社:東京都千代田区)は、日本語を高精度で理解し、スムーズな会話を実現するコミュニケーションエンジン「COTOHA(ことは)」を開発した。同社によると、言語解析のなかでも日本語はとくに難しいというが、COTOHAは顧客が発する言葉を、動作の主体、対象、時間など、概念や関係性をラベリングすることで意味を解析。さらに顧客ごとにデータを蓄積して記憶し、的確に対話する。展示会では、大日本印刷株式会社(本社:東京都新宿区)との共同企画として、AI活用シェルフの実演デモを行っていた。

商品展示ケースを使用した実例

客が商品展示ケースに向かって欲しい品の条件を音声で伝えると、ケースに組み込まれたAIが音声と映像で回答する。たとえば「人気商品を教えて」と伝えると、「もうすぐ桜の季節なので桜色の商品が人気なようです」という回答とともに、該当商品がスポットで照らされるという具合だ。

客から指定された条件に応じた回答を示す例

客との会話内容や日時、人気商品といった情報は蓄積され、マーケティングデータとして活用できるほか、「人気商品を教えて」以外にも多数のシナリオをAIに教えることで、求めに応じた適切な答えが設定できる。声がけされるのが苦手な客への応対や、選択肢が多い商品を絞り込む場合など、おもに無人店舗での接客への利用を想定している。

最新テクノロジーをどう活かすか

今回出展されたサービスのなかには、すぐにも実用化できそうなものもあれば、もう少し時間がかかりそうに思えるものも見受けられた。だが、いずれにしろ、そのほとんどは数年後には当たり前のように私たちの生活に浸透しているに違いない。

そして、展示会全体を通して感じたのは、「無人接客」が今後、重要なキーワードの1つになるであろうことだ。化粧品はこれまで、ビューティーアドバイザーとの対話や、実際に商品を店頭で試すことで購入につなげるビジネスモデルが主流だった。しかし、今回紹介したような新しいテクノロジーに加え、すでに一般化が始まっている各種バーチャルコスメサービスなどを組み合わせることで、これまでの対面販売の常識がくつがえる可能性がある。

究極的には、人間が熱心に接客しなくても、(むしろしないほうが)商品が売れる時代が訪れるかもしれない。AIやARといったテクノロジーが“ショッピング革命”を起こす日は、意外に近い。

Text&Photos: 公文紫都(Shidu Kumon)


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