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FIVEISM×THREEが開けた風穴。日本で男性のメイクアップが普通になる日

◆ English version: Makeup gets manly in Japan with FIVEISM x THREE
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2018年、FIVEISM × THREEやシャネルが相次いで、メンズメイクラインを発表し大きな話題となった。その衝撃は、2chでも話題になるほどだ。前回紹介した男性向けスキンケアは日本でも浸透する土壌があるが、メンズメイクアップも静かに広がりつつある。「男らしさ」の強調から、ジェンダーレスな「自分らしさ」まで、それぞれメイクにこめる表現も違う。

男性化粧品市場の拡大は、こちらの記事でも触れたように世界的なトレンドになっている。アジアに目を向けると、中国では、SNSの普及やECなど購入手段の選択肢が増えていることが影響し、男性化粧品市場が毎年2倍の割合で拡大しているという。そこに着目したロレアルがアリババ傘下のTmallと戦略的パートナーシップを結ぶなど、大手企業の動きも活発になってきている。

男性メイクアップ市場も少しずつ拡大。牽引するのは韓国

韓国では、スキンケア、メイクともに若い男性たちの日常にすっかり溶け込んでいる。韓国の男性化粧品市場は2016年のデータで約1500億円、日本のメンズフェイスケア市場の2018年の売上見込が231億円であることを考えると、その差は少なくとも6.5倍以上だ。SNSに投稿された動画がきっかけとなって人気に火がつくケースが多く、メンズコスメブランド「ブラックモンスター」もそのひとつだ。

もともと動画が得意なマーケターたちが「動画受けするメンズコスメを作ったら売れるのでは」という発想で誕生。ごく普通の一般男性がファンデーションを塗り、ほんのり赤く色づくリップクリームで唇を艶やかにし、ヘアスタイルを整えてイケメン風になった様子をビフォー・アフター動画にしてfacebookなどのSNSで拡散させることで急成長した。創業2年にして、2018年は1500億ウォン(約150億円)の売上が見込まれている。

ブラックモンスターのビフォー・アフター動画

日本のメンズコスメ市場は、とくにメイクに関しては各国に遅れをとるかたちだったが、2018年後半はエポックメイキングだったといってもいいだろう。日本発ブランドとして風穴を大きく開けたのが、「FIVEISM × THREE」。本気のフルラインナップでの登場だったからだ。

日本でのメンズメイクはどう浸透するのか。FIVEISM × THREEを手がけるアクロ代表取締役社長 御後章氏、ミレニアルズメンズのためのファッション&ビューティメディア「his&」を運営するNEL Inc.の西田陸氏、男性美容研究家 藤村岳氏にそれぞれ話を聞いた。

男性が求めるのは、身だしなみを整えるマナーとしてのメイク

「FIVEISM × THREE」は、ポーラ・オルビスホールディングス傘下でTHREEを展開するアクロが立ち上げたメンズ総合コスメブランドだ。創業10周年にむけて「時代の一歩先をゆく新しい価値を提供したい」と、2017年秋頃からプロジェクトが立ち上がり、約1年の準備期間を経て2018年9月に販売を開始した。

「歴史を振り返れば、昔から、音楽家、貴族、公家など、男性が化粧をして装う文化はあった。ユニセックス化が進んでいる今、“男性も美しくてよい”という新しい価値感を世の中に提供したい」とアクロ代表取締役社長 御後章氏はいう。

アクロ代表取締役社長 御後章氏

ただし、男性がメイクで求める「美しさ」とは、女性のように飾るメイクではなく、見だしなみ、センスアップが目的との前提だ。男性ならではの骨格を目立たせ、立体感を出し、眉毛を整える。ヘアセットの延長と考えれば、メンズメイクも男性の日常に自然に入りこめるのではと考えたという。

そのため、日常における男性の行動心理に合わせて男性らしい所作にはまるように、たとえばファンデーションなどはスティックタイプの形状を採用。皮脂の分泌が多い男性特有の肌質に合わせて、つけたときにサラッとするテクスチャーに仕上げた。カラーバリエーションも豊富で、白めの肌色から日焼けした肌にまで合うようにファンデーションは15色で展開。夜の会食前にアイシャドウを塗ったり、パーティで髪に色をつけたり、遊べるポイントメイクアイテムも充実しており、立ち上げから61SKUを発表し、圧倒的な本気度を見せつけた(現在は80SKUに拡大)。

メインのターゲットは、25〜35歳のトレンドに敏感な男性とエグゼクティブ層で、伊勢丹新宿店メンズ館および阪急メンズ東京、阪急メンズ大阪、丸の内に昨年11月にオープンしたコンセプトショップ「SENSORIUM THREE」で販売されている。

メイクとの相乗効果で、スキンケアの売上が好調

発売から3ヶ月が経ち、「確かな手応えを感じている」と御後氏。最も人気なのは「ネイキッドコンプレクション バー」(ファンデーション)。シミやくまを隠したい、顔を小さく見せたい、彫りを深く見せたいというニーズが多いという。また「Individuality(個性)を活かす」というブランドコンセプトに共感する、といった声も多い。FIVEISM × THREEの発売による相乗効果か、昨年12月に一新したTHREEのメンズスキンケアラインの売上も好調だという。今後は、ハウツー動画やパンフレットを充実させて、使いはじめのハードルを下げる施策を強化する予定だ。

「ネイキッドコンプレクション バー」

御後氏は、「日本の男性たちが変わってきているのを感じている。FIVEISM × THREEの世界観を伝え、男性のあり方、男性が身だしなみを整えるマナーとしてのメイク文化を浸透させたい。外資系大手ブランドの参入によって、2019年はメンズメイク市場がさらに広がっていくことを期待したい」と意気込みを語った。

デジタルマーケを駆使したメンズメイクスタートアップの登場

一方で、日本のスタートアップの動きも見逃せない。前編でも紹介したミレニアルズメンズのためのファッション&ビューティメディア「his&」を運営するNEL.INCは、5月発売に向けてメンズスキンケア、メイクアップアイテムを開発中である。米国ミレニアル世代に人気のD2CブランドGlossierを参考に、開発時点からコミュニティ育成にも注力。日常的にメイクを楽しむ男性をインスタグラムでスカウトし、ミレニアル世代の男性が集まるコミュニティを運営している。

コミュニティメンバーは、美容師などもいるが、ごく一般の会社員や学生がほとんどだという。彼らは、「メイクも、ファッションと同じく自分を表現するツールのひとつ」という感覚で、日常的にコスメポーチを持ち歩いている。よく使用するのは、クッションファンデ、リップ、ハンドクリーム、アイブロウ。最も多い肌悩みは「毛穴」で、毛穴を隠すためにカバー力が高いBBクリームを使用する男性も多い。毎月、美容やファッションに2万円くらいお金をかけ、気合を入れるときのメイク、時短メイクなど、シーンに合わせてラグジュアリーブランドのアイテムとプチプラアイテムを使い分けているという。

スキンケアやメイクの情報源はおもにYouTubeで、美容について気軽に聞ける女友達が多いのも特徴だ。

his&のコミュニティメンバーの多くが参考にしている
英国のメンズコスメブランド
MMUK MANのYouTubeチャンネル

そんな彼らにとっては、“メンズ用”とうたったアイテムは「少し男性的すぎる」とうつるようだ。ミレニアルズには、中性的、ジェンダーフリーなアイテムの方が受け入れやすいという声が多い。これは世界の男性化粧品市場の動きの中でみえるジェンダーレス化と同じ傾向といえそうだ。

現在、「his&」のオフィシャルメンバーは70名程度。彼らは発売後、ブランドのインフルエンサーにもなりうる貴重な存在だ。そのうち30名はコアメンバーとして商品開発に関わり、slackでニーズを聞いたり活発に意見のやりとりをしているという。NEL.INC代表取締役 西田陸氏は「まずは日本のみで販売し、売れ行きを見ながらメイクラインや通常サイズの製品化を検討していく。将来的には、カスタマーサービスの一環として男子の肌やメイクに関する悩みをサポートするサービスも展開したい」という。

日本人YouTuberこんどうようぢさんのメイク動画も人気

男性美容研究家 藤村岳氏は、「実は、スキンケアよりもメイクの方が肌悩みに対する即効性があり、男性向きかもしれない。メイクによって自分が抱えていた悩みが解決でき、なりたい顔に近づいた成功体験を得た男性たちは、メイクのノリがよくなるように、ベースとなる肌を健康に保つスキンケアをより一層、重視してくるのではないか」と予測する。

メンズコスメブレイクの鍵は、女性の意識変化か

メイクアイテムを含むメンズコスメが今後、日常的に広まっていくために必要なことは何かと、今回取材した各氏に投げかけたところ、「女性の容認」という回答が非常に多かった。「男性がスキンケアやメイクをするなんておかしい」という女性の既成概念が、男性の心のブレーキになっているというのだ。

韓国では、女性がパートナーに積極的に肌ケアやメイクを薦めている。日本でも「スキンケアをして肌がきれいな男性、メイクで身だしなみを整える男性がかっこいい」という価値観が広がれば、日本の男性化粧品市場も一気に広がっていきそうだ。FIVEISM × THREEは、エグゼクティブ層などへのメイクのハードルを下げるアプローチ、NEL.Incはすでにメイクを自然に取り込む若い世代へのアプローチで歩みを進めている。2019年は、さらにメイクアイテムが登場してくると予想される。やはりメイクについても普及元年といえる年になるのではないだろうか。

Text: 小野梨奈 (Lina Ono)

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