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ヘアサロンの経営支援から新たなビジネス創出まで、進化するサービス

◆ English version: A cut above: How digital services are helping Japanese hair salons
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ヘアサロンの増加が著しい。2018年10月末に厚生労働省が発表したところによれば、日本全国の美容室の数は24万7,578店で過去最高を記録した。美容師の数も約50万人を突破している。一方で、2018年1〜11月の美容室の倒産数は86件。こちらも過去10年で最多となった。原因別では、「販売不振」が最も多く9割以上。レッドオーシャン化した市場のなかで、効果的な集客方法の模索やサービスの質向上および差別化は急務だ。加えて、属人的な作業が多かったバックエンド業務をなるべく効率化することで、経営を合理化することも早急の課題となっている。

Photo by LiME HP

ヘアサロンの業務管理を円滑化するサービスが続々登場

ヘアサロンの顧客管理や売上管理といったバックエンド業務を効率化してくれるソリューションおよびサービスの代表格としては「カルテ管理システム」がある。そのなかでも、スマホで簡単に操作ができるサービスが「LiME」だ。従来、顧客の髪質・髪形などのデータは、美容師が紙に書いて管理することが一般的だったが、LiMEはデジタル上でそれらの作業を完結できる。スマートフォンで写真を撮影・アップロードすることでデータを管理しつつ、顧客情報を素早く検索することが可能だ。さらに予約管理ツールとしても利用できる点もLiMEの強みだ。受付用のPCなどから予約データを入力することで、美容師のアプリ内カレンダーに予定が共有される仕組みとなっている。

LiMEの代表取締役である古木数馬氏は現役の美容師でもあり、現場の課題を良く知るメンバーが開発を続ける同社は資金調達も進んでおり、今後の展開が楽しみなソリューションのひとつだ。

クラウドで顧客カルテ管理、予約管理、売り上げ管理、集計分析などが可能な日本のサービスには「Bionly」、「Salon Answer」、「Coming-soon」などがある。いずれも、初期費用に加えて月々1万円前後の料金で利用できるが、ヘアサロンとしては、自社の実情に適したサービスを選別したいところだ。LiMEは売上に合せて月額利用料が変化するうえ、他のサービスと比べて安価なため、使いやすさという点で際立っているようにみえる。

海外では、ヘアサロン用の予約管理、POS、顧客記録、在庫管理、財務報告システムを複合的に、なおかつ無料で提供するサービスも登場している。

ドバイとワルシャワに拠点を構える「Shedul」がそのひとつだ。同社のサービスは120ヶ国で4万店舗以上が利用しており、今年4月のBシリーズの資金調達を経て、企業価値は1億5,000万ドルにまで達している。いわゆる「SaaS(=Software as a Service)」のひとつだが、ShedulのアプリやウェブサイトはInstagram、FacebookなどSNSとも連動しているのがひとつのポイントとなっており、各店舗のマーケティングからオンライン予約までをサポートする。そのうえで予約成立の手数料が、Shedulの収入源となる。

同社は、2019年までに約60億ドル(6,700億円)分の予約を処理できる見込みとしており、手数料の内訳は公表されていないものの、その収益はかなりの額になると推定できる。何より、ヘアサロン側にとっては予約成立までは無料で、かつマーケティングも支援してくれるとなれば、かなり心強い存在といえる。

Photo by requpo HP

資金調達や空き時間をマッチングするツールも登場

ヘアサロンを開業するにあたっては、他のビジネス同様に「資金調達」も大きな課題となる。個人がヘアサロンを経営しようと決意しても、物件の契約や内装・設備費、人件費、広告費などを潤沢に捻出するのは簡単ではない。

そんな課題に対応するため、2019年2月、美容商材通販のビューティーガレージが美容サロン出店時の賃貸借契約時の敷金・保証金を不要にする資金調達支援サービス「保証金フリープラン」の提供を開始している。ビューティーガレージの子会社・BGパートナーズが、店舗物件オーナーから物件を借り受け、それを美容サロン経営者にサブリースする形を取る。美容サロンは、月額賃料に+αの手数料を支払うことで契約時に敷金や保証金を支払う必要がない。この手のサービスについては、どの程度のタイムスパンで経営を考えているかで使い勝手は変わってくるだろうが、美容サロン開業に向けたスピードを担保するという面においてはメリットがありそうだ。

一方で、集客を効率化するという意味では、美容師の空き時間をマッチングする「requpo」にも注目したい。こちらは、希望のヘアスタイルやエリア、料金設定、自分のこだわりといった「おねだり」などを送信すると、登録している美容師から返信がくる、ユーザーメリットを中心に構想されたアプリだ。ユーザーは寄せられた提案を比べて誰の施術を受けるかを決める。美容師側にとっても、これまで接点がなかった顧客とつながれるという意味では、営業ツールとしても活用できる可能性が高い。

ファッション領域では、ユーザーがショップのスタッフに自由に質問およびリクエストを送って、好みの服を探すことができる「FACY」というサービスがあるが、運営関係者によると「店舗への誘致にも効果が高い」という。同様に、Requpoも「知っているものしか探すことができない」という検索の限界を克服するサービスであり、ヘアサロン側と顧客との新たな接点になりうる。問題は、提案やコミュニケーションにかかる時間的コストだ。ヘアサロン経営者としては、効果的な集客が可能な時間とリソース範囲内で利用することが望ましい。

Photo by Stas Walenga (via shutterstock.com)

効率化の余地が多数残るヘアサロン業界

ヘアサロンの店舗には必ず大型の鏡が備え付けられているが、ARや立体画像を投影できるデジタルサイネージも、今後、新たな収益源として経営を支援する注目のアイテムとなりそうだ。

たとえば、ルリアンジャパンリミテッドが提供する「ネクストミラー」は、デジタルサイネージを超えて、顧客とのコミュニケーションを円滑に進めることができる機能が数多く用意されている。ネクストミラーでは、顧客がヘアスタイル、カラーなどを一覧でき、カットしている間にショッピングや動画を楽しめる。また、デジタルサイネージは広告枠としても利用することができ、施術料金以外の方法で収益を得る新たなプラットフォームにもなる。ヘアサロン業界が抱える課題のひとつに、クーポンや検索サイトを通じた「価格訴求=収益の低下」があるが、新たな収益源を検討する際に、広告収入はひとつの選択肢になるかもしれない。

小売業界の「OMO化」の流れを参考にするならば、今後、ヘアサロンを支えるテクノロジーやサービス、ソリューションも、デジタルと店舗を相互に行き来する形になりえる。一例では、Shedulやrequpoなどのアプリ、そしてデジタルサイネージなどが連動すればどうだろう。デジタル上に集められた顧客のカルテや趣味嗜好などのデータを、顧客とともに一緒に確認する環境が整えば、より円滑かつ満足度が高いサービスを提供することができる。あわせて、接客後にわざわざバックエンド業務を行う手間が省け、時間・労力の無駄を避けることもできよう。いわば、接客と顧客管理業務の融合を叶える。

人間による作業が多いヘアサロン業界だけに、効率化の余地は多分に残されている。課題が山積しているからこそ、新たなサービスの登場とともにリープフロッグ型の発展を遂げられる可能性も充分にあるはずだ。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)


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