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miraとAILL、 注目のAIサービスは「レコメンド」と「コミュニケーション」の大きな変革

◆ English version: Japanese AI services mira and AILL help users to reveal their hidden charm
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美容業界では、商品の製造、広報、販売など各プロセスにおいてAIの利活用がめざましい。そのなかで、顔の特徴解析をもとに美容やファッション業界におけるレコメンド&パーソナライゼーションを行う「mira」、コミュニケーションの「気持ち」の部分をアシストする「AILL」が、日本のAIスタートアップによって開発されている。大きな可能性を秘めるそれぞれのサービスについて開発会社2社のCEOに話を聞いた。

AI顔タイプ診断アプリmira を運営するKINDLER株式会社の門脇明日香代表取締役CEOは、大学および大学院在学中から、画像認識やロボティクスの知能などを研究してきた経歴を持つ。mira開発に際しては、エンジニア、デザイナーとしても参画している。

AI顔タイプ診断アプリ「mira」
出典:mira公式サイト

まずは自分を知る手助け、そのうえでレコメンド

miraは顔のパーツのバランスや大きさ、形などの特徴を抽出しAIで解析。各ユーザーの顔のタイプや「似ている有名人」を診断する。またその診断結果にもとづいて、コスメやファッションアイテム、関連記事など、各ユーザーに最適化された多彩なコンテンツをレコメンドするというサービス全体像となっている。

miraはもともと自分が欲しいと思っていたサービスだったという門脇氏が、友人に意見を聞いてみると「仕事や生活が忙しく、なかなかコスメや服を選ぶ時間がない」という声がやはり多くあった。そこで、顔のタイプを即座に診断してくれるサービスを構想し、2019年1月にLINEで顔写真を送ってくれたら診断カードを返信するというプレサービスを展開したところ、すぐに300人ほどの応募があったという。

当時、スタッフも少なく人力で対応していたが、応募が増えたため急いで診断を自動化するAIシステムを実装した。

「その結果、1カ月半で10万回使用され、ユーザーのみなさんが共通の課題を抱えているのを実感した。アンケートを実施したところ、10~20代に同じような悩みが多かった」と門脇氏は振り返る。

KINDLERの
門脇明日香CEO

美容業界では、オフライン店舗、ECを問わず、ARなど新技術を使ったバーチャルメイクがマーケティングツールとして徐々に普及しはじめている。これは主にトライアルする時間の削減やECにおける買物体験の向上など、顧客の利便性を高めるのが狙いだ。

「なりたい自分」を実現するためのAIサービス

一方で、miraはより「パーソナライズ」が主要なコンセプトとなっている。顧客が自分にとって最適な商品を選ぶためには、まず自分自身を知らなければならない。その自分を知る作業をAIやコンテンツがサポートするというわけだ。門脇氏は、「似合うもの」だけでなく「なりたい自分」を実現するうえでも、自分の顔がどのようなタイプかを理解することが非常に重要だとする。miraは、自分の顔のタイプの現在地をまず知ってもらうことからスタートし、そこから多様なサービスを提案するビジネスモデルを目指す。

「レコメンドの第一世代が雑誌やショップだとすると、第二世代はSNSなどを使用するインフルエンサー、第三世代がAIなどを用いたパーソナライズだと考えている。miraの差別化要因と競争力は、パーソナライズを行う独自のアルゴリズムがあること。また、コスメのみならず洋服のコーディネイトまでトータルに行うところだ。ファッションの場合、顔のタイプによって似合う素材、形、柄の大きさが違ってくるというデータも集まってきた。miraでは、フォーマル、カジュアルなどTPOに合わせた、おしゃれかつユーザーに似合うアイテムもレコメンドできると思う」(門脇氏)。

ユーザーターゲットを、年齢で区切っていないのもmiraの特徴だ。少数の高額商品を買う人であれ、安価なアイテムを多数購入する人であれ、「美容に興味があり常に自分に似合う商品を求める顧客」はいずれもターゲットとして想定している。「美容好きなユーザーのライフタイムバリューを獲得すること」、もしくは「年齢よりも価値観中心で顧客を獲得すること」が、miraのサービス目標といえる。

AIシステムのレコメンドの先に「人」がいるのも、もうひとつ特筆すべき点だ。ユーザーはmiraの顔診断結果をもとに、提携している美容コンサルタントやファッションスタイリストに相談することができる。今後はブランドとの提携による商品のレコメンドや販売にも注力していきたいとする。

miraは「美容の専門家が常駐しているデパートブースのサービスを、手元で気軽に体験できるイメージ」と門脇氏は話し、今後は、日本以外のアジア地域のメイク、ファッション関連のブランドをキャッチアップしつつ、さまざまな方向からパーソナライズされたレコメンドを実現できるようにしていき、2019年内に10~50万ダウンロードを達成するのが数値的な目標だと明かした。

人と人のコミュニケーションを繋ぐAI「AILL」

オンライン、オフラインを問わず、マーケティング領域においては、顧客の満足度や納得を引き出し、結果的に購入単価の引き上げに繋がるコミュニケーションの重要性が改めて注目されている。こうした文脈において、コミュニケーションをアシストするAIとして開発された「AILL(エイル)」は、将来の可能性も含め、非常に興味深いケースといえる。

Photo by aslysun via shutterstock

AILLは、恋愛をアシストするAIサービスだ。運営する株式会社AILLの代表取締役 豊嶋千奈氏が、恋愛におけるコミュニケーションサポートにAIを活用することを思いついたのは、前職の大手製薬メーカー勤務時代である。

女性活躍推進法の施行など社会環境の変化により、仕事の面で活躍する女性が増える一方、恋愛や結婚というようなプライベートな側面においては、企業が踏み込んだサポートをすることがなかなかできない課題があると感じていたという。

「一見、仕事でバリバリ働いて満足しているようにみえる女性の大多数は、実は恋愛・結婚などプライベートも充実させたいと思っている」と豊嶋氏は指摘する。とはいえ、多忙な毎日のなかで、出会いや恋愛関係をはぐくむことはなかなか実現が難しい。そこで、仕事と生活の相乗効果である「ワークライフシナジー」を生み出すサービスを作りたいと考え、辿りついた答えがAIサービスだった。

ふたりのチャットをAIが「アシスト」する

AILLはチャットなどのバックエンドで動作するAIエンジンで、まずは生活サイクルやキャリアプランなどのデータをもとに、毎日1~3名の異性を紹介してくれる。ただし、ほかのAIマッチングサービスのように、紹介して終わりではない。

このサービスの新規性は、紹介された相手とのチャット内会話をAIがアシストしてくれるところにある。相手の反応をうかがいながら、デートに誘うタイミングや盛り上がる話題をAIが提供するのだ。自然言語(チャット内で使われる言葉)はもちろん、会話の相手がほかの紹介者とどのような態度でコミュニケーションをしているかという行動データも蓄積しており、「自分に対して本気なのか」、「興味がないのか」なども判別したうえで最適なアシストができるという。

しかも、ただ単に相手の好感を引き出すような会話や話題を教えてくれるだけではない。「付き合う」「結婚を前提に恋愛する」など、ふたりのストーリーを進展させることを前提としたアドバイスがなされる。なお、ここでサポートではなく「アシスト」という言葉を使うのは、男女の関係性にゴールがあることを前提にしているからだ。手伝うのではなく、決めるか決ないかの決定的なシュートの機会をAIが提供してくれるという意味において“アシスト”なのである。

現在、AILL はBtoBとして企業向け福利厚生サービスの一環での導入を推進している。職場では女性たちの活躍の機会が増えたとはいえ、仕事での承認欲求と、異性に対する承認欲求は別もの。両立できないと、心のバランスが取りにくい事実もある。ひるがえって、そのバランスは仕事の成果にも影響を与える。

豊嶋氏は、昨今、働き方改革などの影響で、労働時間を短縮しつつ、従来以上の成果を生まなければならない環境が生まれていると前置きし、「働き手のエンゲージメントを高める要素のひとつは、ワークライフシナジー。日本の場合は特にその傾向が強いことが、調査や統計から明らかにされており、その部分でのサービスの提供を開始したのがAILLだ」と話す。

AILLの豊嶋千奈代表取締役

AILLは現在、恋愛を前提としたサービスとしているが、豊嶋氏は「上司・部下」「嫁・姑」「夫婦」など、あらゆる人間関係に応用が可能だと考えている。そのなかには、もちろん顧客と企業のコミュニケーションも含まれる。

豊嶋氏は、恋愛をAIで解析することで、ユーザーの気持ちがどのタイミングで盛り上がるのか、さらに一歩進んで「女性が求める幸福」とは何かがみえてくるという。

「コミュニケーションのデータからは、なぜ女性たちが美しくありたいか、コスメやファッションなどになぜ時間を費やすのか、究極的にどのような感情にある時に幸せだと感じているのかなど、購買行動にいたるまでの欲求の流れが見えてくると思う。女性がお金を出すという行為は幸せになる自分を買っていることであるはずだ。商品を購入するまでの心の在り方を可視化することができるという意味で、恋愛AIはマーケティングにも効果的に応用していける」(豊嶋氏)。

補足までに、AIが持つある種の秘匿性あるいは安心感も、美容関連企業と顧客のコミュニケーションを促すひとつの原動力になるかもしれない。AIはさまざまなケースの学習を行うため、そのアドバイスは客観的で信頼性が高いと豊嶋氏はいう。

しかも、美に関する悩みは親友や家族であっても意外と相談しづらいものだが、AIだとその心理的障壁がぐっと下がり、相談にのってもらったお礼を考えなければといった煩わしさもない。もちろん各自の悩みはデータとして収集されているものの、利用には法的な厳しい縛りがある。この“秘密を保持しつつ相談”という利点を上手く使うことができれば、企業はさらに顧客に近づくことが可能になるはずだ。

日本はコミュニケーション分野のAIで勝ち目がある

「画像認識技術などに関しては、ビックデータをいち早く大量に集めた米中の競争力が高い。しかし、AI×コミュニケーションという分野であれば、日本は世界で戦えるポテンシャルがある。コミュニケーションにおいては欧米によくみられる説得型とは異なり、日本はそこに相手の感情を読むような機微や配慮を用いる文化がある。その文化がAIシステムとして組み込まれても、海外の文化とはハレーションが起きず、受け入れてもらえる可能性が高い。コミュニケーションの本質は、収集する情報の勘所と言い方、伝え方、伝えるタイミング。恋愛だけでなく、さまざまな人間関係をアシストできるAIにAILLを拡張していきたい」と豊嶋氏は意気込む。

AILLに使われているAI技術は東京大学や北海道大学のAIエキスパートたちが支え、国際特許も申請済みだ。幸せを実現するAIとして、美容やファッション分野とも積極的にコラボしていきたいと豊嶋氏。コミュニケーション、しかも思いやりやストーリー、ゴールという目標を想定したAIというのは世界でもあまり例をみないだけに、接客ツールとしての活用は多いに考えられるだろう。

miraやAILLは、個性や気持ちの動きまで独自のアルゴリズムでひもとき、最適解を見つけ出していく独自性の高いサービスだ。それだけでなく、スタートアップそしてAIサービスというどちらも女性が少ない分野で、門脇氏、豊嶋氏の活躍は後進たちにも大きな刺激となるはずである。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)


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