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Z世代をつかむならTikTokへ。NYXなどの米国ブランドに舵を切らせた破壊力

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TikTok人気が世界規模で拡大するなか、米国の化粧品ブランドがターゲット層にリーチするためのマーケティングツールとしてTikTokを採用する例が増えている。ハッシュタグチャレンジやインフルエンサーの起用など、具体的なキャンペーン施策を紹介する。英国ではTikTokで人気のインフルエンサーが独自の化粧品ブランドをスタートさせた。

TikTokの本家である中国では、Perfect Diary(完美日記)などの人気化粧品ブランドがDouyin(中国版TikTok)に公式アカウントを持ったり、3,800万人を超えるDouyinフォロワーを持つ美容系インフルエンサーがロレアル製品の販売に多大な貢献をしたりと、美容業界での活用例は枚挙にいとまがない。ここにきて、これまでは若年層向けプロモーションとしてInstagramやYouTubeを主に使用してきた欧米の化粧品ブランドが、TikTok上でキャンペーンを行う動きが広がりつつあるようだ。

Z世代をメインターゲットに、クルエルティフリー&ヴィーガンの処方をうたい、単品で2ドル(約220円)から12ドル(約1,300円)の低価格帯化粧品アイテムを幅広くラインナップするe.l.f. Cosmeticsもそのひとつである。

50億ビューに到達したハッシュタグチャレンジ

2020年5月5日、e.l.f.はオリジナルのTikTokソング「Vanishing Act」を発表し、この歌にあわせた口パクやダンスを「#elfvanishingact」を付けて投稿するハッシュタグチャレンジへの参加を呼びかけた。これは同ブランドの売上ナンバーワン商品である毛穴隠し下地クリーム「Poreless Putty Primer」の宣伝を目的とするものだ。2019年10月に開催され、300万のTikTok動画の投稿があり累計で50億ビューを達成した「#eyeslipsface」チャレンジにおける大成功の再来を目指している。

図1

出典:TikTokアプリ

# eyeslipsfaceの際は、俳優やモデルなど有名人が自主的に参加して拡散し、本来なら競合であるはずの自分自身のブランドを持つセレブまでが、自社商品をあわせてアピールしつつとはいえ、タグを付けた動画を投稿したことでも話題になった。これほどまでにバイラルした理由としては、グラミー賞受賞歴を持つプロデューサーを起用し、人気上昇中の新進アーティストが歌うなど、曲そのもののクオリティが高かったことが挙げられた。また、TikTokの有料広告キャンペーンだったため、アルゴリズムが有利にはたらき表出率が高かったとも推測されている。

今回の#elfvanishingactは自主拡散であり、開始後10日間経過の時点でのビューは350万と、前回ほどの伸びは期待できないかもしれない。だが、e.l.f.のCEOのコリー・マーチソット(Kory Marchisotto)氏は米メディアのインタビューに答えて、TikTokのプラットフォームを利用することは「(バットマンを召喚する)バットマークを夜空に投影するのと同じ」として、多くの人々の目を釘付けにし、そのなかにはe.l.f.を知らなかった人がたくさん含まれていると、その意義を語っている

6日間のキャンペーンでNYXブランド認知は42%増

TikTokのマーケティングプラットフォームとしての可能性を評価し、活用法を模索しているのがNYX Professional Makeupである。

NYXは米国でもコロナ禍の影響が深刻になり始めた3月中旬、6日間のTikTok ハッシュタグチャレンジ「#ButterGlossPop」を開催した。5人の提携TikTokインフルエンサーが「pop your gloss(あなたのグロスを見せて)」をテーマに、歌い踊りながら同ブランドのリップグロスをトライすることを呼びかけるもので、投稿者のなかから抽選で1名に1,200ドル(約13万円)相当のNYX製品がプレゼントされた。このキャンペーンでは200万のユーザー動画が作られ、累計ビューは1兆と驚異的な数字を記録している。

@mahoganylox

My lipgloss is poppin 😍 which was your fav ✨ @nyxcosmetics #sponsored #butterglosspop

♬ Butter Gloss Pop - NYX Cosmetics

NYXではキャンペーンの効果を検証するため、市場調査会社Kantarにモバイルサーベイを依頼し、期間中にブランド認知が42%アップしたとの結果を得たという。購入率などそのほかの鍵となる数字は明らかにしていないが、デジタルマーケティング部門のシニアバイスプレジデントのヤスミン・ダストマルチ(Yasmin Dastmalchi)氏はいくつかの学びがあったと話す

1つには、コンテンツの方向性はブランドが主導するより、TikTokをよく知るインフルエンサーに任せたほうがいいことや、Instagramなどに比べて、インフルエンサーは商品そのものよりも音楽とダンスにフォーカスする傾向があるなどの、プラットフォームへの理解が深まった点だ。そして、TikTokはすさまじい勢いで進化している段階にあり、ブランドはさまざまな実験に挑戦していくべきだとしている。

TikTok経由でギフトを贈るSmall Gestures

COVID-19感染防止のため、外出の制限や自粛、ソーシャルディスタンスへの配慮が続くなか、TikTokではブランドパートナーと協力して、TikTokのプラットフォームを通して家族や友人に小さなプレゼントを贈ることができる「Small Gestures」という新サービスを4月27日にスタートした

これは、美容業界をはじめ、音楽、ゲーム、フィットネスなど、さまざまな業界の企業がスポンサーとなり、割引クーポンや1ヶ月のメンバーシップ無料、フリーサブスクリプションなどの “ギフト” を提供。TikTokユーザーは相手を想っている証し(ジェスチャー)として、このギフトを1アカウントにつき3回まで誰かに送ることができる。

図1

出典:TikTok

化粧品ブランドとしては、ロレアル傘下からエッシーと前述のNYX が参画しており、ネイルブランドのエッシーはベストセラーの「Speed Setter」のトップコートを8,000個、NYXは5ドルバウチャーをそれぞれ用意した。

エッシーの消費者コミュニケーション部門の担当者は、Small Gesturesに参加した理由として、米国の若い世代の間でTikTokの認知度が伸びている今、TikTokユーザーコミュニティに自然なかたちでリーチする良い機会だと捉えたこと、そして、人々が自宅にこもることを余儀なくされた結果、ネイルのホームケア需要が増加している状況で、露出を増やすためTikTokとの関係を強化する重要性を挙げている

スキンポジティビティを広めるアンバサダー

Z世代とそれよりさらに下の年代へのアプローチを試みるブランドを中心に、TikTok上で活躍するインフルエンサーをマーケティングに起用する例も増えている。

米Dermalogicaは、ティーンズ向けのニキビケア化粧品ライン「Clear Start」のブランドアンバサダーとして、2,120万フォロワーを誇るTikTokスターで、現在18歳のディクシー・ダミリオ(Dixie D’Amelio)を選んだ。その背景には、米国の10代からの支持が広がる「スキンポジティビティ(skin positivity)」ムーブメントがある。

ソーシャルメディアに投稿する自分の顔画像に、メイクアップやフィルターは一切ほどこさず、ニキビやそばかすもそのままのすっぴんを見せることを奨励するこの動きは、世の中に蔓延する「シミひとつない完璧な肌が美しい」という呪縛からの解放を促すものだ。つまり、さまざまなスキントラブルを抱えた“完璧ではない”自分の肌を恥ずべきものだと思いこみ、隠したり、取り繕ったりするのではなく、今のありのままの自分として認めるところから、自分がなりたい自分を目指す、前向きな一歩を踏み出そうというメッセージといえる。

Dermalogicaから4月末に出た新製品「Clear Start FrashFoliant」のPRキャンペーンも、スキンポジティビティをテーマに「Candid Conversations(率直な会話)」と名付けられ、ディクシーが自身のスキンケアについてありのままを正直に発信するものだ。

@dixiedamelio

my nightly routine using @clear.start flashfoliant so I can go to bed and wake up with glowy skin 🧡 #LetMeBeClear #ClearStartPartner ad”

♬ original sound - dixiedamelio

DermalogicaのClear Start事業部門の責任者のキャリー・ロジャース(Carly Rogers)氏も、一人ひとり異なるのが当たり前と考えるZ世代は、自分自身の肌を受け入れはじめているとして、「加工していない素の自撮りを投稿し、自分の肌の悩みをオープンに話してシェアする。数年前にはソーシャルメディアのトレンドだった“ピクチャーパーフェクト(完璧に絵になる)”なライフスタイルはもはや過去のもので、自分たちには必要ないと感じている」と述べている

マッサージとスキンケアの全米フランチャイズMassage Envyも「#MySkinandME」のハッシュタグのもと、契約インフルエンサーたちがTikTokにニキビを隠さない動画を公開し、累計で57億ビューに到達した。

一方、ひとつ屋根の下で一緒に暮らすLAのインフルエンサー集団Hype Houseの一員で、ディクシーの15歳の妹のチャーリー・ダミリオ(Charli D’Amelio)が、2019年9月創業のスタートアップStarfaceの鮮やかな黄色のアクネパッチを貼っている動画も大きな話題となった。全部で5本ある動画はいずれも1,900万〜3,400万ビューをはじき出し、ブランドの名前を周知させるのに大きく貢献をした。

図1

出典:Glossy

StarfaceではTikTokインフルエンサーをマーケティングの柱に位置付けているが、キャンペーンは有償ではなく、あくまで商品を無料で提供するだけで、投稿や拡散は基本的に自然発生的なものだとしている。

世界初のTikTokインフルエンサーコスメ

膨大な数のフォロワーを持つ美容ブロガーやユーチューバーが、自分自身の化粧品ブランドを立ち上げる例はもはや珍しいことではない。当然、TikTokインフルエンサーにもその流れがきている。

TikTokで活躍するクリエイターによるコスメラインの第一号として、華々しく報じられたのが、英国がベースの20歳の双子の姉妹、シャネ&レネ・ネル(Shanae & Renae Nel)の「GLOSS TWIN」だ。ネル姉妹は2人の共通アカウントに1,200万フォロワーがおり、Z世代のインフルエンサーに特化したタレントエージェンシーFanbyteに所属している。

図1

シャネ&レネ・ネル
出典:GLOSS TWIN

GLOSS TWINは最初の製品として3種類のリップグロスを3月29日に発表した。開発にあたっては、Fanbyteのリテールパートナー部門のトップで、自身も化粧品ブランドを立ち上げているフローレンス・アデポジュー(Florence Adepoju)氏がサポートした。

COVID-19感染拡大に伴い、英国でも都市封鎖が行われるなかでのローンチはさまざまな困難があったようだ。とくに、ロンドンで予定していたポップアップストアがキャンセルになり、フォロワーのファンたちと直接会い、製品をリアルで試してもらう機会が失われた。

しかし一方で、最大のTikTokユーザーであるZ世代がスマートフォーンを手に自宅にこもり、暇を持て余している状況で、プラットフォームへの注目度とエンゲージメント率はこれまでにない高い水準に達しているという。実際、Sensor Towerの調べによると、2020年3月時点で、世界で最もダウンロードされたアプリはTikTok だった。同月のインストール数は1億1,500万を数え、前年比98.4%増を記録している。

ネル姉妹は目下のところ、TikTokらしいコミカルでポップな動画の投稿により、ブランドのストーリーを伝え、ファンコミュニティを築くことに注力している。フォロワーからは多くの好意的なコメントが寄せられているが、同時に「こんな事態だから、両親から買い物をするのを止められている」との嘆きも少なくない。

アデポジュー氏は、少なくともほかに2名のTikTokインフルエンサーと美容関連ブランドの創設プロジェクトを進めていると明かす。ロックダウンが解除され、小売り店舗が全面再開してからの正式ローンチとなる見込みだが、TikTok発のビューティブランドの誕生ラッシュという波が、すぐそこまで迫っているのは間違いない。

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image: Amanda Vick via Unsplash

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