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生分解性パッケージからリサイクルまで、海外ブランドの化粧品容器エコ化最前線

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これまで、化粧品の容器やパッケージの素材としては石油系プラスチックが主流だった。だが近年は、SDGsやESG経営の流れ、ユーザーニーズの高まりから、生物資源から作られた合成樹脂のバイオプラスチック、土中で分解する生分解性プラスチックや、プラスチック以外の生分解性素材を代替として使う動きやリサイクルへの取組みが国内外で進んでいる。まずは、大手からスタートアップまで海外の最新事例を含めてみていきたい。

P&Gでは、グローバル全体で2030年までにプラスチック包装材の海への流出をゼロにすることを目指し、長期ビジョン「アンビション2030」で容器や包装に使われるプラスチックのリサイクル化について言及している。また、ロレアルは2025年までに、全製品のプラスチックを詰め替え式またはリユース、リサイクル、たい肥化可能なものにするとの目標を掲げている

こうした例が示すように、化粧品業界全体でクリーンビューティのムーブメントが盛んになり、大手メーカーはもちろん、D2Cブランドでも、環境にやさしい容器やパッケージを採用するケースが増え、「クリーンビューティ、クリーンパッケージ」の潮流が加速している。海外の化粧品企業が取り組んでいるサステナブルな容器について、最新事例を交えながら紹介する。

使用後は土に還る生分解性のパッケージ

動物実験を行わないクルエルティフリーや、エコフレンドリーなポリシーを掲げる英国のナチュラルコスメブランド「Wildsmith」では、セラムとクリームのセット商品のパッケージに菌糸体を採用した。菌糸体とは、カビやキノコなど菌類の体を構成する糸状の「菌糸」の集合体のことだ。同ブランドでは、オーガニックマッシュルームの根にトウモロコシや麦の殻などの農業廃棄物をミックスして自然界と同じように菌糸を成長させることで、緩衝材の役割も果たす“箱”を作成した

花壇やコンポストに埋めれば30~90日で完全に土に還り、マイクロプラスチックが残る心配もない。二酸化炭素排出量も最大90%削減可能と、環境汚染のリスクを大きく軽減している。

また米国とカナダを中心に展開する「Elate Cosmetics」では、「エシカル」であることをブランド理念に掲げ、とくに廃棄物削減の取り組みを進めている。パッケージに再利用可能なプラスチックなどを積極的に活用し、現在はおよそ75%の商品がゼロ・ウェイストで、今後100%にすることを目標としている

同ブランドで採用している生分解性パッケージのひとつが、古紙に花の種を混ぜたシードペーパーだ。ファンデーションやチーク、アイカラーなどのリフィル製品のパッケージとして使われており、水に1時間ほど浸してから土に埋めると、数週間のあいだに芽が出て花が咲く。化粧品を購入すると同時に、花を育てる楽しみをユーザーに届けるもので、同ブランドのSNSには「素敵!」「なんていいアイディア」などの好意的な意見が多数寄せられている。

同様に、発芽する容器を提案するのが、オーガニックシャンプーなどのヘアケア製品をグローバルに展開する、台湾発の「オーライト」だ。シャンプーボトルは野菜や果物から抽出したデンプンで作った生分解性プラスチックでできており、こちらもボトルにあらかじめ種子が含まれている。使用後のボトルを土に埋めると、1年ほどの時間をかけて分解され、やがて植物が育つのだ。ボトルのキャップは竹製で、細かい部分にも自然や環境への配慮がある。

リサイクル可能や再利用できるプラスチック

環境へのインパクトという意味では、完全に自然に還る生分解性パッケージはベストな選択のひとつといえる。一方で、これ以上のプラスチックを生み出さないことを念頭に、リサイクル可能なプラスチックや再生プラスチック、生物資源からつくられたバイオプラスチックへと段階的に移行する動きもある。

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出典:イドラ リソース シリーズ

LVMH傘下のジバンシイは、5月末に日本で発売する保湿ケアの「イドラ リソース」シリーズの容器にリサイクル可能なガラスとプラスチックを採用した。製品使用後はガラスの容器からプラスチックを取り外して分別できる。箱は持続可能な森林から生産され、FSC(森林管理協議会)認証のバイオソースのインクを使用し、過剰包装を避けるためにインナーカートンは用いない。

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Image: monticello via shutterstock

米国大手消費財メーカーのコルゲートは、高密度ポリエチレン(HDPE)製のリサイクル可能な歯磨き粉チューブを2020年1月に発表した。従来のチューブの多くはプラスチックとアルミニウムで作られているためリサイクルが難しく、環境への負荷を軽減することが困難とされていた。しかし、このチューブの開発によって、使用済みチューブがリサイクル可能となり、使い捨てプラスチック製品で占められていたオーラルケア業界の大きな転換点となり得る。

しかも同社では、5年の期間をかけて開発したこのリサイクル技術を広く公開して、他社の利用を促している

またセフォラのオンラインショップで販売されている、ヴィーガンコスメのD2Cブランド「Aether-Beauty」も使用済みプラスチックを再利用している。リップの容器にはバージンプラスチック(新品のプラスチック)は一切使わず、100%再生プラスチックを採用。業界初のリサイクル素材100%のリップ容器として注目されている。

同ブランドを創業したティラ・アビット(Tiila Abbitt)氏は、セフォラの製品開発部に勤務していた経歴を持ち、当時から数多くのリサイクル施設や容器開発現場に足を運び、リサイクル事業や廃棄物問題に高い関心を持っていたという。Aether-Beauty では、テラサイクルのリサイクルプログラムに参加するなどの取組みも行っている

デオドラントとフレグランスを中心に扱う「Each & Every」は、サトウキビを原料に使用したバイオプラスチック容器をデオドラント製品に採用している
サトウキビは成育段階で空気中の二酸化炭素を吸収する働きを持ち、二酸化炭素の排出量より除去する量が多い「カーボンネガティブ」な植物でもある。同ブランドでは商品配送で使用する封筒も、植物由来で100%リサイクル可能なものとしている。


中国に工場を持ちグローバルに展開する包装資材メーカーIdealpakは、化粧品業界向けに、使用済みプラスチックを再生した「ポストコンシューマーレジン(PCR)」を利用したパッケージの生産ラインをローンチした。これにより、バージンプラスチックの使用量を減らして再利用を推進する。また原料がPCR100%の場合、容器製造時の二酸化炭素排出量は、バージンプラスチックの60%に抑えられるという。

再生プラスチックはバージンプラスチックに比べると品質が劣ることが最大の課題だったが、多くの企業が技術開発を進めており、今では新品のプラスチックと遜色のない再生プラスチックの製造も可能になってきている。この点も、再生プラスチックの利用を後押しする要因となる。

加えて、再生プラスチックを積極的に使うことは、プラスチックのリサイクルシステムを潤滑にまわすメリットにもつながる。

オーガニックコスメブランド「ZAO」は竹に含まれる有機シリカをほぼ全てのアイテムに配合しており、容器にも天然の竹を採用している。環境への配慮から、リップ、ファンデーション、マスカラまでほぼ全製品がリフィル可能な設計とし、リフィル製品の容器に使われるプラスチック素材はリサイクル可能なものを採用。現在はリフィル未対応のリップグロスやアイライナーも近々、対応可能に移行していく予定だ。

NOパッケージへの動きも加速

容器のエコ化を突き詰めていくと、容器やパッケージ自体を排除する選択肢も出てくる。「ラッシュ」では以前から、パッケージゼロを目指してバスボムやシャンプーなどの固形アイテムを無包装にする「ネイキッド販売」をグローバルで進めている。さらに、店内の全製品が無包装の「ネイキッドストア」の出店を英国やドイツなどで拡大している。

あわせて、英国のラッシュでは、製品の配送時にはジャガイモのデンプンから作られた生分解性ボックスを使用し、固形製品の包装は行わない。液体やクリームは再生プラスチック100%の容器に入っており、使用後の空き容器は再利用できるよう店舗に戻すことをユーザーに呼びかけている

同じく化粧品の固形化を進めているブランドに、ニュージーランド発の「Ethique」がある。ヘアケア製品のボトルが世界で大量に廃棄されている現状の改善を目指し、同ブランドではシャンプーやコンディショナー、モイスチャー、セラム、ボディウォッシュ、デオドラントなど、多様な製品を固形化しバーの状態で販売している。これにより340万本のプラスチックボトルを削減し、2020年までに1,000万本の削減につながると同社では予測する。さらにバーを包む包装紙にはベジタブルインクが使われ、土に埋めると印刷部分もたい肥化されるとしている

サステナブルな容器・パッケージのネットワーク

また、大手化粧品企業のユニリーバやP&G、ロレアル、ロクシタン、コルゲートなどは、リサイクル事業のスタートアップ、テラサイクルが行うリユースシステムの「Loop」にも参加している。Loopでは取り扱うすべての製品を、各企業が自社製品向けに作ったガラス製やステンレス製などの耐久性の高い容器に詰めてユーザーの元に配達する。中身を使い切った空の容器は回収し、中身を詰めなおして繰り返し使う。配達や回収の際に容器を入れて運ぶバッグも繰り返し使用できるものだ。

全米の梱包工場をネットワークし、ECやサブスクリプションビジネスの梱包アウトソースサービスを提供して成長中のスタートアップ Lumiは、Slash Packagingというサイトの運営をアースデーの50周年にあたる2020年4月22日にスタートさせた。

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出典:Slash Packaging

環境に配慮したパッケージングに取り組む企業の公式サイトのディレクトリ情報をまとめたサイトで、化粧品関係では、BeautycounterFunction of Beautyなどが掲載されている。「化粧品容器はリサイクル」「廃棄物をゼロに」という方向性は今後も加速しそうだ。次回は日本での取組みについてまとめていく。

Text:佐藤まきこ(Makiko Sato)
Top image: ARTFULLY PHOTOGRAPHER via Shutterstock

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