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オルビスのリアルとデジタルの融合は次のステージへ。OMOや新ビジネスへ挑む

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通販化粧品売上高3位のオルビスが、2018年からオルビスユーを中心にブランドの再構築を始めた。その中核に据えるのが、リアルとデジタルをつなぐORBISアプリだ。ブランド再構築にあたり、どのように社内を改革し、ユーザーとの接点をつくりだしていったのか。その指揮を執ったオルビス株式会社執行役員ICT・新ビジネス開発管掌 大川真樹氏に話を聞いた。

オルビスは、1987年にポーラの新規事業としてスタートした通信販売を主要チャネルとする化粧品事業で、業界初の100%オイルカットスキンケアを生み出し、バブルに沸く日本市場で通販事業は難しいともいわれるなかで着実に売上げを伸ばし、創業10年目に100億円の売上げを突破した。また、パッケージなどの豪華さを競い合うような時代において、早くから環境面に配慮した簡易包装を実施するなど、確固たる信念を貫く企業姿勢に共感する顧客を獲得していった。

インターネット販売の開始も業界内では早く、1999年にECサイトをオープンし、2001年には日経ネットビジネスの「ECグランプリ B部門賞」を受賞している。2000年にリアル店舗も立ち上げるなど、マルチチャネル販売で成長をしてきており、2018年の売上高は510億円である。

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グラフ:決算説明資料より作成

2007年の方向転換、顧客との関係性を深め、再成長へ

創業から20年経った2007年には売上高497億円にまで成長。売上げ500億円突破のために打ち出した戦略は「新規顧客を増やすのではなく、一人ひとりの顧客との関係性を深めるという方針だった」とオルビス株式会社執行役員ICT・新ビジネス開発担当 大川真樹氏は話す。

「KPIは、LTV(Life Time Value、顧客の生涯価値)をそれまでよりも重点的にみるようにした。また、顧客がなぜオルビス商品を購入するのかの調査を実施した結果、手ごろな価格という側面が大きいことがわかり、価格だけでなく、オルビスの良さをしっかりと伝えることで、リピート購入してもらえるように工夫を重ねていった」(大川氏)。

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オルビス株式会社 執行役員
ICT・新ビジネス開発管掌 
大川真樹氏

その「オルビスの良さの訴求」はメディアや時代の特性にあわせて、多方面で行われている。たとえば、2000年代当時は商品を知ってもらうきっかけは女性誌が多かったことから、「ニキビ対策」などの特集が組まれた際にわかりやすい商品をメインに力を入れてきた結果、若年層向けのブランドとして認知されるようになっていった。

また、スマホが急速に普及し、商品の認知のきっかけが女性誌からネットに移り変わると、顧客が年齢を重ねる過程に沿って使える商品を提供し続けられることを念頭にブランドを再検討し、2014年にオルビスユーをローンチした。HSP含有酵母エキスを配合し、肌本来がもつ力に注目したエイジングケアを全面に打ち出した。

現在のオルビスユーシリーズ

それが奏功し、2015年までは堅調に売上げが伸びるものの、2016年以降ブランドプレゼンスが低下傾向にあることに危機感を持ち、2018年に大胆な組織変更とブランドを象徴するアイテムのリニューアルを実施した。BeautyTech.jpでも以前「オルビスの『一貫』のメディアミックス戦略など、COSME Techからの学び」でその変革についてレポートしたように、リニューアル後はすべての広告の入り口をオルビスユーに集約するだけでなく、リアルとバーチャルの融合を意識的に行ったという。

リアルとバーチャルの融合をアプリで進める

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出典:オルビス公式サイトより

2018年からは、通販と店舗で分かれていた組織を統合した。それは、顧客の買い物の仕方が大きく変わったことが背景にある。「『スマホで調べて、店舗で見て、スマホで買う』という買い物の仕方をしているお客様が増えてきているなかで、一貫してマーケティングができる組織に進化させる必要があった。『僕の部署は…僕の事業は…』と社内で言わせないためにも組織の統合は不可欠だった」(大川氏)。

この抜本的な組織変更に、「当然、社内では混乱が起きた」と大川氏は当時を振り返る。しかし、モノからコトへの消費に変わっていくなかで、顧客に店舗ではリアルな体験をしてもらい、結果としての売上げは、店舗とスマホのどちらでもよいと社内の意識が変わっていかなければ、顧客に本来の価値を伝えることができない。そこで、売上以外のKPIを導入した。

「たとえば、店舗ではパーソナルスキンチェックをしてくれる顧客の売上げ単価が高くなる。スマホアプリでは、パーソナルカラー診断などでその人のメイクに似合うものを体験してもらう。ウェブの問診を含む体験系は購入単価があがるため、売上げ以外に、パーソナルスキンチェックなどの体験数をKPIに加えた」と大川氏は明らかにする。

2018年6月にリリースした「ORBISアプリ」は200万ダウンロードを超え、ポイントカード、EC、パーソナルカラー診断、情報発信など、オルビスが提供するサービスすべてをカバーする、OMOを想定した多機能アプリである。オルビスではEC購入率は50%を超えているが、うち1/2がスマホサイト、1/4がアプリ、1/4がPCサイト経由で、現在はアプリが非常に伸びており、月によってはPCサイトよりアプリが上回ることもあるという。

オルビスでは、アプリの使用を増やすことに現在も注力している。アイコンが常に顧客のスマホにあれば、オルビスから情報をプッシュ提供できるようになるからだ。それを店舗との企画につなげることで、「オルビスの体験を増やす」機会をつくるのだ。

また、コンテンツをトップに持ってくることで、「買うときだけアプリを立ち上げるのではなく、常にオルビスを見てもらえるようにする」ように工夫も重ねている。このように経験を中心にアプリを作りこむことで、オルビスブランドの継続率が高くなり、LTVがあがる。「リアルとバーチャルの複合的な体験にアプリを使う」というまさにOMOを見据えての施策がオルビス流だ。

積極的な社内意識改革で、未来志向を創り出す

「2018年のブランド改革と同じタイミングで、組織を結合しただけでなくさらに社内のコミュニケーションも積極的に変えていった」と大川氏はいう。今までは社内のほぼ全員が一同に会してのコミュニケーションの機会はほとんどなかったが、「Oneオルビスフォーラム」という新たな形で年2回ほど実施され、社長や経営陣自らの言葉で会社の戦略や競争環境について説明するようにした。

また、社長が役職別などに社員を集めて講義を行う時間が新たに設けられ、会社がどのような環境に置かれているのか社員一人ひとりがはっきりと認識するようになったという。「今までのオルビスは、カタログ通販を主流にしていたこともあり、ダイレクトメールを打てば一定のレスポンスがあり、どこにどのようなメッセージを出せばどうなるのかという過去の分析を強みに伸びてきたが、社長の話を聞くことで、未来を見ながらいま何をすべきか?を強く意識するようになっていった」(大川氏)。

こういった一連の施策も寄与し、自社ブランド型の通販として5年連続の顧客満足度1位を誇る。未来を創っていくうえでは、それを起こす社員の存在が不可欠だ。「既存の枠組みにとらわれず、各自が自分らしくいられることを大切にしたい」そんな思いから、服装規定も自由にした。

それまでは、一般的なオフィスカジュアルという服装規定に則っていたが、「自分らしくいられる服装とは何か」をそれぞれ自由に考えられるよう、規定そのものをなくした。そして、店舗でBAが着用する制服も、「一人ひとりの本来の力を引き出す」を主眼に2014年に創業したアパレルスタートアップ、シタテルと協業してリニューアル。襟や裾などを着方によってアレンジすることで、自分らしさを出せるデザインを採用した。

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シタテル以外のスタートアップやIT企業とも積極的にコラボや協業をしている。2012年に創業したヘルスケア・フィットネスアプリのFiNCと一緒にイベントを企画したり、ITコンサルティングのフューチャーアーキテクトの深層学習の技術を活用し、プロのカラースタイリストの関口まゆみ氏の協力でパーソナルカラー診断サービスをORBISアプリ上でローンチしたりしている。「ベンチャーやIT企業はスピードが違う。協業でそのスピードが実体験できる」(大川氏)と、ベンチャーとともに仕事をすることで、社内の空気を変えていく狙いもある。

社内のコミュニケーションツールもOutlookからSlackに変えたという。基本的にはメール禁止、すべてのコミュニケーションをSlackにしていく意識で全社員が取り組んでいる。「コラボレーション」を考えたときに、より活発なコミュニケーションを推進していくためのSlackという位置づけだ。

「プロジェクト以外の外部とのやりとりもあるのでメールがなくなるということはないかもしれないが、自発的にオープンなコミュニケーションの場として活用しており、それが全社の議論を活性化させるきっかけになっている」と大川氏はいう。

ORBISアプリを中心にリアルとデジタルの融合をはかるオルビスは、その裏で社員の意識改革を徹底して行ってきた。さらに、大川氏の新しいミッションには、新ビジネスの検討も含まれる。2020年には、日本の美容業界を驚かせる斬新なビジネスが生まれる気配が濃厚だ。

Text: 秋山ゆかり(Yukari Akiyama)
Top image: Beautyimage via Shutterstock

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