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セフォラのアクセラレータプログラムが目指す、女性起業家のソーシャルインパクト

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化粧品小売大手のセフォラが2016年に始めたSephora Accelerateは、女性起業家のスタートアップに対象を絞り、教育とネットワーキングにより重点を置いたサポートをしている。そこには一貫した企業姿勢に裏打ちされたセフォラの意志が見えてくる。

アクセラレータプログラムとは、大企業がオープンイノベーションの一環として、新興企業や起業家とともに事業創出を加速させるためのプロジェクトを指す。スタートアップがアクセラレータプログラムに参加する主目的は、大企業から資金やリソース、ノウハウなどを支援してもらうことにより成長スピードを速める点にあり、出資を受けるためだけではない。

女性を大胆にインスパイアするアクセラレータプログラム

世界で広く愛される美容コミュニティを創り、オムニリテールとしてのリーダーの地位を確立したセフォラが、アクセラレータプログラム Sephora Accelerateを設立したのは2016年。その背景には「Sephora Stands」と名づけられたCSR(Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任)施策の存在がある。

Sephora Standsは「美の世界、ひいては人生における大胆な選択を応援する」ことをうたい、セフォラの社内外の女性を広く支援し、刺激することで、社会的インパクトを生み出すことを狙う。女性が自信をつけ、自己実現に向けて恐怖心に打ち勝つためのアクションとして、4つの柱を設け、セフォラ従業員に経済的支援を提供するファンドや、女性が自分に自信を持つための特別な美容ワークショップの提供、サステナブルな社会を共創する取り組みがあるのだが、それらに先駆けて、第一弾として最初にローンチされたのが、Sephora Accelerateである。

その意味で、Sephora Accelerateは、女性をインスパイアすることで社会をより良いものにしようというセフォラの理念の要ともいえるもので、2020年までに、50人以上の女性起業家のビューティビジネスをサポートするエコシステムをつくりあげるという目標を掲げている。

アクセラレータプログラム紹介動画

Sephora Accelerateの企画は、同社のソーシャルインパクト部門の責任者であるコリー・コンラッド(Corrie Conrad)氏によって生み出された。

コンラッド氏は、ベンチャー企業への投資のうち実に85%が男性に対しなされていると知り、社会全体のリーダーシップにおいて男女に大きな差があることを強く認識、問題に感じていた。エンドユーザーの多くが女性で占められる化粧品業界ですら、女性によるベンチャーやスタートアップは少ない。こうした男性優位の流れを変えるべく、コンラッド氏は女性起業家をサポートするSephora Accelerateを立ち上げた。資金面の支援だけではなく、小売店をはじめとしたパートナーシップ企業へのアクセスを提示し、初期段階にある女性起業家のビジネスを次の段階にステップアップさせることを意図している。

初期段階のビジネスを軌道にのせる手厚いサポート

Sephora Accelerateの対象者は、美容業界の女性起業家(複数名での共同起業の場合は、創業者に女性が含まれるのが条件)に限られる。選出された参加者が、このプログラムを通して受け取る助成金は、一説によれば、1人あたり5,000ドル(約55万円)と報じられている。後述するブートキャンプやデモ・デーに参加するための航空運賃や滞在費はセフォラが負担するものの、資金それ自体としては決して高額ではない。

しかし、このSephora Accelerateが資金面のサポート以上に力を入れていることがある。それは、各スタートアップのビジネスモデルを徹底的に検証し、進化させるためのプロセスづくりだ。


ブートキャンプの様子

このプログラムに選ばれた参加者は、サンフランシスコにある米セフォラの本部に招待され、1週間にわたるブートキャンプに参加するところから、具体的な支援が始まる。ブートキャンプでは、それぞれのビジネスモデルの精査に加えて、マーケットの分析や成長プラン、在庫管理、資金計画まで細やかかつ手厚いサポートが受けられる。同時に、グーグルやFacebookへの企業訪問研修や、参加者同士で互いのビジネスプランの課題を指摘しあい、ブレインストーミングするハードなワークショップなども行われる。その内容の充実ぶりから、「7日間なのに、まるで数カ月のように濃厚に感じた」と感想をもらしたメンバーもいたほどだ。

またキャンプ終了後も、一人ひとりの参加者に対し、セフォラのエグゼクティブメンバーなど、各自のテーマに沿った美容業界の専門家が、専任の個別メンターとしてつき、1対1の指導をしていく。オンラインセミナーや進捗状況のチェック、トラブル相談をはじめ、必要に応じて面談も組まれる。そのため、ビジネスを進める際にぶつかる様々な問題にも、随時、適格なアドバイスや最適な方法を選択する手助けが受けられるのだ。

そして、約7カ月に及ぶプログラムのフィナーレを飾るのが、毎年秋にサンフランシスコで開催されるデモ・デーだ。参加者は、プログラム期間中を通して熟考を重ね、綿密に構築した各々のビジネスプランについてプレゼンテーションを行う。会場では、セフォラの経営陣のほか、美容関連企業や先輩のベンチャー企業の面々が傍聴しており、参加者と企業の間に新たな人脈が生まれ、ビジネスがさらに前進する可能性を秘めている。

また、参加者同士のつながりが、モチベーションアップやアイディアソースになっている点も特筆すべき特徴だ。セフォラでは、このプログラムの価値は資金調達や1人の優勝者として選ばれることではなく、ここから得た学びと経験、出会いとネットワーキングにあると位置づけている。

ブートキャンプの様子

つまり、Sephora Accelerateは、女性が起こしたスタートアップを、確固たるビジネスとして成立させるまでのステップをサポートするプログラムで、参加者が自身のビジネスを明確なビジョンのもとに成長させてゆくための教育と、セフォラ・コミュニティの一員となって、様々なつながりを広げることに重きを置いている。ビジネスを育む過程では、進むべき道を見失ったり、思わぬ障害に屈してしまうことも考えられる。専門家やメンター、そして同じ志を持つ同士がサポートし合うことで、成功に導く役割を担っている。これは、お金だけではカバーできない。

多様な国籍&ビジネスモデルの参加者

ビューティ関連のスタートアップとはいっても、商品開発からテクノロジー、サービスまで、参加各社が取り組む分野の幅はとても広い。プログラムが始まった2016年には、ハードウェア/ソフトウェア開発の「テクノロジー」と、商品やサービス開発の「マーチャンダイジング」の、2つのカテゴリーが設けられていたが、翌年には原料、パッケージ、サプライチェーン等も対象に含まれる「サステナビリティ」のカテゴリーが追加された。

2019年に選出された参加者

米国やフランスのほか、ブラジル、メキシコ、オーストラリア、中国と8カ国に及ぶ国籍の、過去最多15名が選出された2019年のプログラム参加者のビジネスをみてみると、ホワイトマッシュルームから抽出した食物繊維が主原料の天然由来の防腐剤を提案する「Chinova Bioworks」 、オイルや乳化剤など、いずれも化学化合物を含まないナチュラルなコスメ原材料が一式揃ったキットを購入して、自宅でフェイスクリームやボディクリームをDIYできる「Green Barbès」 。あるいは、使用済み段ボールと古新聞の100%リサイクル品で作られたアウターボトルに、ゴミの量を軽減できる設計のプラスチックボトルを組み合わせた「Ecologic」 の容器など多岐にわたる。

2020年までに50名以上の女性起業家を支援するとうたっているが、2019年までで合計46名となっており、この目標達成は確実とみられ、彼女たちのビジネスによってすでに2,000人以上の雇用が創出されたと、セフォラは成果を紹介している。

また、ハイチ産ブラックキャスターオイルを使用した、エシカル&ナチュラルなヘアケア製品ブランドのKreyol Essenceのように、プログラム修了後にオーガニックスーパー大手のホールフーズと販売契約を結び、さらにセフォラが仲介してつながった投資家から2万ドル(約220万円)の出資を受けた例もある。

セフォラが目指すソーシャルインパクト


では、このアクセラレータプログラムは、セフォラにどんなメリットをもたらすのだろうか。

1つには、セフォラのイメージ向上だ。セフォラのメインターゲットであるミレニアル世代とZ世代は、ソーシャルグッドネスへの関心が高い。より公正でダイバーシティに富んだ社会の実現に向けて、Sephora Accelerateを通じて女性起業家を支援する姿勢は、彼らの共感を呼び、セフォラ・ファンを増やすことにつながる。支援を受けた起業家もセフォラ・コミュニティの一員として、セフォラを支える土壌を豊かにしてくれるだろう。

そして2つめのメリットは、コミュニティの企業から良い製品が生み出されたときだ。そこにいち早くセフォラがアクセスできることを意味する。

さらに、3つめにあげられるのは、Sephora Accelerateのメンター役やオブザーバーとして関与する、セフォラのエグゼクティブ層に与える好影響だ。自分たちが持たない、あるいは自分たちとは異なる視点を備えるとともに、消費者という顧客でもある女性起業家と緊密な接点を持つことは、ともすれば内に閉じこもりがちな企業に新鮮な刺激を与えてくれる。これは、セフォラが進化し続けるためには欠かせない因子である。

本文の冒頭で述べたように、Sephora Accelerateは、Sephora Standsと呼ぶCSRの一環として定義されて始まっている。企業と従業員、パートナー企業、そしてユーザーが手を携えて良き社会を目指す、その推進エンジンとしての役割にこのSephora Accelerateの真髄がある。

Text: 佐藤まきこ(Makiko Sato)、編集部
Top image: Jordan McDonald via Unsplash

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