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添い寝ロボットにIoT、10兆円市場へ熱が高まるスリープテック最前線

◆ English version: Sleep tech to scale up to an $80B market in less than 5 years
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今、スリープテック市場が熱い。ラスベガスで毎年開催される世界最大規模の家電見本市CES(Consumer Electronics Show)2018でも、睡眠に関わるテクノロジー家電コーナーには大手寝具メーカーからスタートアップまで多くの企業がブースを出展し、会場内でかなりのスペースを占めていた。質の高い睡眠のために必要なものはもはや、人間工学にもとづいたマットレスや枕だけではない。スマートベッドから睡眠パターン分析アプリまで、注目の新製品やサービスを厳選して紹介する。

CES2018 のスリープテックのブース(撮影:公文紫都)

2022年に市場規模は798億ドルに

日本で「睡眠負債」という言葉が流行ったのも記憶に新しい。日々の少しの睡眠不足が積もり積もっていくと、がんや心筋梗塞など命に関わる病気のリスクも含め、心身にさまざまな悪影響を与えることがわかり、睡眠リズムを整える重要性が叫ばれた。もちろん、美容にも質と量のバランスのとれた睡眠は欠かせない。

ライフスタイルの変化のスピードが増している現代では、先進国のいずれの国でも睡眠時間は減少傾向にあり、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の調査によれば、アメリカ人の35%が翌日仕事をする日の睡眠時間は7時間以下で、23.2%は日中の集中力に影響が出ていると回答。さらに、睡眠不足が仕事のパフォーマンスを下げていると感じる人は8.6%にのぼる。快適で“正しい量”の睡眠をとることは、今や社会的課題といえる。

こうした睡眠不足を危ぶむ世界的な認識が、スリープテック業界の活況を後押ししており、睡眠関連製品のグローバルマーケットは、2016年の495億ドル(5兆4,000億円)から、2022年までに798億ドル(8兆7,000億円)規模にまで成長すると見込まれている。

スリープテック分野には大きく分けて2つのスペックがある。就寝時の脳の状態や寝がえりなどの身体の動きといった、睡眠そのものを分析するアプリやデバイスと、そこからのデータにもとづいた、より良い睡眠を実現するためのガジェット、たとえばスマートベッドやヘッドセットである。

添い寝ロボットとスマートベッドでみる夢は?

出典:Sleep Number

ガジェットの最たるものといえば、大きさの点でもスマートベッドだろう。このベッドに寝るだけで、個人の状態にあった理想の睡眠をかなえてくれるという代物だ。ミネアポリスに本社を置くSleep NumberのスマートベッドSleep Number 360®︎はバイオメトリック睡眠測定機能を備え、寝返りをうつなど寝ている人の身体の動きに反応して、部分的にマットの硬さや圧力を自動調整する。就寝中にベッドがどのように動いたのか、それによる睡眠の質の変化などのデータは、翌朝アプリで確認できる。

出典:NuCalm

一方、20分から60分の集中したうたた寝で、ストレスの軽減と疲労回復、夜寝る時の深い眠りを創出するとうたうのが、NuCalm Power Napである。リラックスを促すcalm(沈静)クリームと、神経伝達物質の働きを正常に導くクラニカル・エレクトロセラピー・スティミュレーション(CES)デバイス、専用スマホアプリ、アイマスクの4アイテムで構成されており、CESデバイスとスマホにつないだヘッドホンを装着し、アイマスクをつけてスタートボタンを起動。気分をリフレッシュするパワーナップと呼ばれる短い眠りに誘引される。手軽に持ち運べるので、旅先などでも利用できる点も便利だ。

出典:Dreem

フランス発のスタートアップ企業が提供しているDreemは、睡眠中に身につけるヘッドセット。呼吸や心拍数を測る心拍計、骨伝導スピーカー、身体の動きや傾きを感知する加速度計に加え、特殊センサーにより脳波も測定できる睡眠分析モニターであり、ユーザーの睡眠時の脳の活動とシンクロすることで睡眠の質を高めるとしている。なかなか寝付けないという悩みにも対応し、メディテーションや認知トレーニングにヒントを得た入眠を容易にするサウンドを発する機能もあり、眠りに落ちるまでの時間が平均30%短くなったというデータもある。

出典:Somnox

また、発表当初、「ロボットが添い寝してくれる?」と大きな反響を集めたのが、デルフト工科大学の学生が中心となってオランダで創業したスタートアップSomnoxが開発したスリープロボットだ。ロボットというと金属的なイメージをもつが、ピーナッツを思わせる丸い形状のこのロボットはふかふかの素材で包まれていて柔らかく、睡眠時に抱き枕のように抱えて使用する。

ユーザーがSomnoxロボを抱きしめると、呼吸をする人間のお腹のような運動でゆっくりと動きはじめ、このロボットの「呼吸」とユーザーの呼吸のタイミングがしだいに一致してくるとリラックスした状態で眠りにつけるという。ユーザーが眠っているか起きているかも理解でき、起きているユーザーには感覚をくすぐる(tickling)ことで眠りに導く。

ロボットの「呼吸」はテンプレートから選んだり、カスタムメイドもできる。また、子守唄やオーディオブックなど音声を流し、眠りに落ちたら自動的に停止する機能や、温度の調節、ライトをつけて起床を促すといったことも可能。なかなか優れもののスリープパートナーといえそうだ。

眠りを計測しIoTで環境を整えるトータルな睡眠改善

日本では、医療機関と連携して開発した睡眠テクノロジーと睡眠ビッグデータを活かした睡眠改善プログラムを提供しているベンチャー企業のニューロスペースが、2018年4月、KDDIと共同で睡眠の質をよりよくするスリープテクノロジーの実証実験を開始したと発表。

AI搭載の睡眠解析プラットフォームを構築し、そこにアクセスする睡眠計測デバイス、モバイルアプリをKDDI社員に配布。各個人の睡眠を数値として可視化することで、それぞれに適した日中の行動や睡眠テクニックを実践できるようになり、仕事の生産性の向上が期待できる仕組みだ。企業側も自社従業員の睡眠状態を把握することができるようになり、健康に配慮した労務管理が可能になる。あわせて、計測した睡眠データをKDDIのホームIoTサービスと連携させ、寝る際の温度や湿度、明るさを調整することで、さらなる睡眠改善をはかるトライアルも行うとしている。

Image: Simon Matzinger via Unsplash

掃除ロボットからスマートスピーカーまで、日常生活を劇的に変えるテクノロジーの一般家庭への浸透はすでにはじまっている現状で、睡眠管理が次にくるステップであるのは間違いない。

ヘルスケアにおいても美容の面でも「眠り」がいかに重要かということを人々は熟知しているし、医学的にも証明されているのだが、では、実際にどうすれば良い睡眠が得られるのか、具体的な手段はこれまでほとんど提示されてこなかった。

就寝時の身体の状態をトラッキングし、収集したデータにふさわしいソリューションを提案するスリープテックは、いまだ多くの部分が解明されていない睡眠の科学に深く切り込むものであり、働き方などライフスタイルはもとより、社会制度や人間の寿命にまで影響を及ぼすだろう。ヒトの未来は眠っているあいだに創られるというわけだ。

Text: そごうあやこ(Ayako Sogo)


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