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日本のGlossierはどこか。熱量あるものづくり、発信するファンによるD2Cのありかた

◆ English version: How homegrown D2C brands are shaking up the Japanese market
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米国では、Glossierに代表される既存大手ブランドを脅かす存在のD2Cブランドが活躍している。彼らの成長を後押ししているのが多角的なデジタル活用と、リアルな場での豊かなユーザー体験だ。その裏には、伝えたい熱量のあるブランド側と、その熱量を受け取り伝播してくれるユーザーの存在がある。日本でGlossierのようなディスラプターは現れるのか。

「日本でもGlossierのような事例が出てきてもおかしくない」と語るのは、大手アパレル企業のデジタルマーケティングやR&D事業支援など2010年からファッションテックに携わる株式会社TO NINEの吉岡芳明氏だ。同氏はアパレル業界が抱える課題の解決策としてD2Cに着目し、コンサルティングと自らもD2Cブランドを手がけるTO NINEの取締役を務める。現在は自社のファッションブランドに加え、大手企業のブランドから時計の「Knot」のようなスタートアップまで約20社のD2C支援を手がける。吉岡氏に、日本のD2Cを取り巻く現状と成功事例を作るために必要なことを聞いた。

D2Cと直販の大きな違いは、「デジタルの使い方」

D2CとはDirect to Consumerの略で、消費者に直接商品を届ける販売手法のことをさす。それだけ聞くと既存の直販との違いがわかりにくいが、D2Cに詳しいマーケターの共通見解は、直販との違いは「デジタルの有効的な使い方」にあるとしている。D2Cと呼ばれるブランドのほとんどはオンライン通販からスタートし、デジタルマーケティングで成長。ポップアップショップ、常設店舗、あるいは卸などに業態を広げていくケースもある。

日本の美容業界では通販コスメと呼ばれるカタログ通販からスタートし、デジタルシフトするブランドが多い。オンライン販売のみで伸びてきた例といえば、10年間、売り上げを前年比130%で更新し続けているエトヴォスや、直近で初のヘアケアアイテム発表5億円の資金調達のニュースが相次いだメンズスキンケアのBULK HOMME(バルク オム)があげられるだろう。

米国の美容D2Cスタートアップ代表格Glossier

世界でもっとも急成長をとげたD2Cブランドの筆頭格としてあげられるのが、Glossierだ。なぜ同社がここまで成功したのかをここで少し振り返りたい。同社は2014年創業と若い企業ながら、直近の売上高は4,000万ドル(約45億円)近いと噂されており、今年2月にはシリーズCで5,200万ドル(約58億円)を調達。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を遂げている。同社の成功を語る上で欠かせないのが、巧妙なソーシャルメディア活用だ。創業者のエミリー・ウェイス(Emily Weiss)氏はもともとVogueのスタイルディレクターの元でアシスタントをしており、モデルやスタイリストに囲まれているうちに、もっとこうした女性のことを知りたいとブログメディア「Into the Gloss」を立ち上げた。同ブログで、セレブの美容に対する考え方や普段の美容法、新商品情報、メイクのハウツーなどを紹介していくと、それらの内容が受け一躍人気ブログへと踊り出る。

その後、オリジナルコスメブランドGlossierを発売。健康的な美をうたい、ユーザーニーズを拾い上げた商品力、誰もが手を出しやすい価格帯も相まって、すぐに人気ブランドとなった。ブログの愛読者という多くの「理解者」を抱えていたことが出発点ではあるが、Glossierを使ったユーザーが自らSNSや口頭でその魅力を語り、そのファンの口コミで爆発的に広まっていったのも大きな特徴だ。今年3月にラスベガスで開催されたSHOPTALKで登壇したウェイス氏は、「新規顧客の80%は、人からの紹介である」ことを明かしている。

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