メディカルスキンケア

異業種からスキンケア領域へ、スイス・ネスレの愚直なまでの挑戦

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2017年1月、ネスカフェなどのブランドで知られる食品世界最大手のネスレが、子会社を通じて日本で化粧品通販に乗り出すというニュースが流れた。ネスレの歴史を知らなければ、少し唐突にも思える異業種からのスキンケア分野への参入とうつっただろう。しかし、ここまでの道のりを丹念にみていくと、ヘルスケアサイエンス分野への執念と周到な戦略が見えてくる。日本の美容企業にとって将来の大きな脅威となりかねない歩みだ。

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ビジョンを確実に実現させるために、愚直なまでの長い道のりを歩いているネスレ。自分たちの専門外であるヘルスケアサイエンス領域に参入するにあたり、何をしているのかをまずは簡単に紹介したい。たとえば、以下のようなものだ。

■ 向かっている未来は何か。明確なビジョンを掲げ、社員へ浸透させている
■ 食品とシナジーのあるメディカルフードやスキンケアなど、複合領域を増やすことで、企業全体の成長を促す
■ 実現に必要なスキルは何かを明確に定義し、足りない能力-今回のケースは、知見のない領域で事業を立ち上げる事業開発スキルを時間をかけて習得する
■ 小規模のリソースを投資しながら、リスクテイクできる仕組みを作り、社内のノウハウを貯めながら、自社事業として取り込む方法も含め、時間をかけて進化させている

こうまとめてしまうと当たり前のことかもしれないが、これらを5年も10年もかけて辛抱強くやり続け、かつ自分たちのDNAに足りない能力をじわじわとしみ込ませていく方法は、M&Aで比較的短時間に異業種参入する方法とは大きく異なる。そして、先日の記事、「仏ロレアルに学ぶ、戦略的CVCのつくり方」でも書いたように、ネスレもCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を非常にうまく使っている。詳細を解説していこう。

ネスレの食品会社としての苦い経験が大きな転換点

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創業者アンリ・ネスレが、母乳が飲めずに亡くなる赤ちゃんのために人工乳を開発したところからネスレの歴史はスタートした。人間の存続に欠かせない栄養供給を使命に掲げたことが、経営理念である。創業から150年以上を経た現在、「生活の質を高め、健康な未来づくりに貢献する」というビジョンを掲げ、ヘルスケアサイエンス企業へと舵をきっている。

いまや世界190か国で30万人以上の従業員がいる大企業だが、経営理念やビジョンを徹底的に浸透させていることでも有名だ。その背景には、1970年代に起きた乳幼児死亡事件がある。ネスレ製品の不買運動に発展したことから、日本円にして1000億円以上の損失を被った苦い経験だ。

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