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中国でM・A・Cが仕掛けるニューリテール店舗やゲームとのコラボは「体験」重視

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2019年1月17日、中国・上海に「M・A・C淮海路人民坊(ワイハイルーレンミンファン)店」がオープンした。中国ではすでにニューリテールやOMOが広く浸透し、それが小売りの「当たり前」になりつつある。M・A・Cが上海でオープンした新店舗や、ゲームとのコラボキャンペーンなど、その体験の中身をレポートする。

エスティ ローダーのメイクアップブランドM・A・Cは、1994年創設以来、世界105カ国以上で販売されている。中国市場においては、大都市を中心に百貨店、路面店などで店舗展開を行うほか、直販ECサイト、Tmall(天猫)におけるブランドのストアフロントなどEコマースにも積極的だ。

トライアルを主体とした空間設計

「M・A・C淮海路人民坊店」がオープンした淮海中路は、フランス租界エリアを東西に走る、上海でも有数のにぎやかな高級ショッピングストリートだ。多くのハイブランドの路面店やデパート、高級料理店やブティックが立ち並び、道行く人々のファッションもあか抜けている流行発信エリアである。

店舗に足を踏み入れてまず気づくのが、特徴的な空間デザインだ。中国でのM・A・Cの店舗は黒を基調としたクールなデザインが多くみられるが、M・A・C淮海路人民坊店では、スタイリッシュなイラストやデジタルサイネージを配し、カラフルな色使いや照明により、店内全体に華やかで活気に満ちた演出がされている。

同店の特徴は、思う存分トライアルができることを打ち出した設計で、たとえば、口紅のコーナーにはさまざまな色の口紅が200本以上配置され、自由に試すことができる。沢山の口紅がずらりと並んでいるのは壮観で、見た目にも楽しい。実際、多くの顧客が次から次へと商品を手に取っていた。

キャッシュレス決済を導入

もうひとつの特徴は、レジカウンターがないことだ。会計は、顧客自身のスマートフォンでキャッシュレス決済を行う。

やり方は簡単で、まず、購入したい商品に付けられたQRコードをスマホでスキャンする。

各商品にQRコードがついている

するとスマホ上のカートに商品が入り、決済へと進む。基本的にWeChat決済だが、店員に依頼すればAlipayや銀行系デビットカードによる決済も可能だ。

スマホの購入画面

支払いが完了すると発行される
QRコードと番号の例

支払いが完了すると、QRコードと引き換え番号が発行され、商品の準備ができると受け取り口の脇のディスプレイに、この引き換え番号が表示される。

商品受け取り口のディスプレイ

店員がQRコードを照合したのち、商品が受け取れる方式だ。現時点では店舗での購入のみで、宅配等の選択肢はない。

顧客体験向上と店舗運営の効率化に寄与

こうした店舗設計によって、顧客は自分のペースで好きなものを好きなだけお試しできるという、より充実したショッピング体験が得られる。一方、店舗側には、商品の陳列や補充といった棚の管理やレジなどの販売スタッフの業務を大幅にカットできる利点がある。これにより、スタッフは顧客の質問に答えたり、アドバイスをするなど、より専門性を生かした接客業務に集中できるだろう。

このようにOMO型の店舗にすることで、より良い顧客体験を導き出し、かつ業務の効率化や、少人数のスタッフで質の高いサービスの提供が可能になるのだ。

スムーズな顧客体験を促すデジタル活用

また、バーチャルメイクが試せるスマートミラーを導入しているコーナーもある。Meituなどスマホアプリを通じて中国では馴染みのあるAR技術だが、意外にも店頭にARミラーを導入するブランドはまだ少数派だ。

ARミラーの画面下の口紅名をタップすると、
瞬時に唇に色がのせられる

カスタマイズ注文も可能

デジタルスクリーンを操作して行うカスタマイズサービスもある。タッチパネルから好きな色のアイシャドウを選んで組み合わせ、オリジナルパレットの作成・購入が可能だ。

アイシャドウの色を選択する画面

画面上で色数とアイシャドウの色を選択し、セットが完成したら画面上にQRコードが出現。こちらも前述の口紅と同じくスマホ上で決済をすませ、受け取り口から完成品が出てくるという仕組みだ。わざわざ店員を呼んで欲しい色を伝える手間がなく、タイムコストや取り違いなどのリスクも減る。

加えて、タッチパネル上の商品選択の画面では、メイク方法の解説ビデオが流れている(音声はなく中国語字幕のみ)。

メイク方法の解説動画

また、2階にはメイクアップカウンターのスペースが用意され、M・A・Cのプロのメイクアップアーティストによる、60分間の無料フルメイクサービスを受けることができる。WeChatの公式アカウント上で予約すればいいだけで、商品を購入する義務はない。

ショッピングに関わるさまざまなことがデジタルで完結しつつある昨今では、逆にリアルの体験価値は向上している。顧客がわざわざ店舗まで足を運びたくなるような体験をどのように提供できるのかが、カギとなってきているのだ。

人気ゲームとのコラボレーションも

M・A・Cが提案する「体験」は店舗だけにとどまらない。ユニークなところでは、ネットゲームとのコラボレーションもその1つだ。

2019年1月、M・A・Cは大手ネットサービス企業「テンセント(騰訊)」が運営する人気モバイルゲーム「王者荣耀」とコラボし、ゲームキャラクターのイメージに合わせたリップ5色を限定発売した。TmallとM・A・Cの公式サイト、そしてWeChatで予約を受け付けたところ、1万4,000件を超える注文が入り、24時間以内に完売したという。同ゲームのファンの女性をターゲットにしたマーケティングが予想以上に功を奏した例である。

ちょうどM・A・C淮海路人民坊店の開店時期にあたり、期間限定で「王者荣耀」をテーマにした店内ディスプレイを設けたことでも話題を集めた。

M・A・C ×「王者荣耀」のコラボ
出典:sohu.com

「M・A・C淮海路人民坊店」における
「王者荣耀」とのコラボ空間
出典:sina

デジタルを活用し、いかに楽しく、快適にショッピングを楽しんでもらうか。消費者とのデジタルコミュニケーションという意味では、いわゆる百貨店ブランドでも、さまざまな試みを重ねているのが中国の美容市場の面白いところでもある。

Text: 滝沢 頼子(Yoriko Takizawa)

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