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大賞はメナードの革新的な「三次元培養皮膚モデル」【第2回Japan BeautyTech Awards 2021 前編】

◆ English version: Menard’s 3D cultured epidermis models clinch a top spot at Japan BeautyTech Awards 2021
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株式会社アイスタイルは2021年3月5日、第2回Japan BeautyTech Awards 2021の大賞、準大賞、および特別賞を発表し、東京・虎ノ門ヒルズ内CIC Tokyo にて授賞式を開催した。式の模様はライブ配信されたほか、第二部では受賞企業とファイナリスト企業によるトークセッションも行われた。


美容とヘルスケアの融合も。Japan BeautyTech Awards 2021の受賞企業

授賞式の冒頭、アイスタイルの吉松徹郎代表取締役社長兼CEOは、ビューティはもとより、ヘルスケアやファッションなど幅広い領域にまたがる多彩なテクノロジーの応募があり、その総数は前回を上回る65件にのぼったことを明かした。そして、ユーザーの利便性の向上のみならず、働き方やジェンダーのあり方を変えていくテクノロジーが次々と登場していることを実感できたとして、「ビューティテックの新しい可能性がみえた。アワードを通じて、さらなる前進に向けた力になりたい」と述べた。

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株式会社アイスタイル
代表取締役社長兼CEO 吉松徹郎氏

Japan BeautyTech Awards 2021では、ベンチャーキャピタルやメディアなどさまざまな分野のプロフェッショナル5名が審査委員を務めた。

審査委員長 
A.T.カーニー日本法人会長、CIC Japan会長 梅澤高明氏

審査委員
一橋大学大学院 経営管理研究科 教授 七丈直弘氏
ストライプインターナショナル 広報チーム マネージャー 都築千佳氏
WWDJAPAN.com編集長 村上要氏
Coral Capital シニアアソシエイト 吉澤美弥子氏

受賞企業とプロジェクトの発表に先立ち、梅澤氏は審査を振り返り「素晴らしいテクノロジーとの出会いがたくさんあり、楽しい意味での大激戦だった」と話し、当初予定していた大賞・準大賞に加えて、2社に特別賞を授与することになった経緯を説明した。

大賞と準大賞、特別賞を受賞した企業は以下のとおりである。

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受賞企業4社の代表(前列)と審査委員

大賞 
日本メナード化粧品株式会社 
「刺激に敏感な肌を再現した新たな皮膚モデルの開発」

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日本メナード化粧品株式会社 総合研究所
研究技術部門長 長谷川靖司氏(右)と
梅澤高明審査委員長

大賞に輝いたのは、メナードによる最先端の幹細胞とゲノム編集の技術を応用した三次元培養皮膚(人工皮膚モデル)の作製技術だ。

多様化する肌の悩み、そのなかで肌には乾燥や外部刺激から肌を守るバリア機能があり、これは肌状態を左右する重要な要素として肌研究や化粧品評価の正確性において鍵となる。だが、研究開発時に一般的に用いられるこれまでの三次元培養皮膚モデルでは、敏感肌やバリア機能が高い肌、低い肌といった異なる肌状態を安定して再現することは困難だった。

この課題を解決したのが、メナードが開発した人工皮膚モデルだ。メナードがこれまで高めてきた幹細胞の技術と最新のゲノム編集技術を融合させ、肌のバリア機能に関連するフィラグリン遺伝子をゲノムレベルで編集することで、幹細胞の段階からバリア機能が低下した人工皮膚モデルを作製する技術である。加えて、正常な幹細胞とゲノム編集した幹細胞を組み合わせることで、さまざまな段階のバリア機能を再現することにも成功した。これらのモデルは、段階的な肌荒れや敏感肌のモデル、また従来は検出が難しかった低刺激性物質の評価モデルなどへの応用も期待されている。

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出典:日本メナード化粧品

授賞式に出席したメナード総合研究所 研究技術部門長 長谷川靖司氏は、この開発の成功には、よりヒトに近い皮膚のモデルを目指し、メナードが2003年から培ってきた幹細胞の培養技術が活かされていると話す。メナードはこれまで、幹細胞の技術を応用することで、さまざまな肌に生じる悩みや現象を試験管レベルで再現する「人工皮膚モデル」の開発に取り組んできた。そして今後は、各自の肌状態や肌質の違いにも対応した商品や美容サービスへ応用していきたいと意欲をみせる。

たとえば、一人ひとりの肌のバリア機能の状態など個別の肌を再現したモデルを培養・作製し、それを用いてテストすることで、その人の肌に合う、あるいは合わない成分や、効果のある化粧品を導き出すといった“究極のパーソナライズ”も考えられる。

梅澤審査委員長は、美容業界にとって大きな意味を持つ技術であると同時に、今後医療の分野でも極めて役に立つと予想されると、大賞授与の理由を述べた。あわせて七丈氏も、この皮膚モデルが持つさまざまな領域での可能性を考えると「世界を変革する力のある技術といえる」との賛辞をおくった。

準大賞 
株式会社TRULY
「TRULYチャット相談 for Business」

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株式会社TRULY CEO 二宮未摩子氏

2020年6月創業のTRULYでは、女性の更年期の悩みに寄り添い、オウンドメディアで現実に即した正しい情報を発信するとともに、健康状態のセルフチェックができたり、さらにチャットで女性医師チームに相談ができるオンラインサービスを展開してきた。これを、福利厚生の一環として導入できる法人向け月額定額パッケージとして設計したのが「TRULYチャット相談 for Business」だ。対象の女性社員は自己負担ゼロで、心理的にハードルが高い更年期の悩み相談を匿名のまま受けることが可能で、会社に気をつかわずに、いつでもどこでも医師とチャットで会話ができ、女性が働きやすい職場づくりに貢献することをうたう。

TRULYのCEO 二宮未摩子氏は、日本の働く女性の2人に1人が50歳以上で、更年期症状などの健康不安のため、昇進や経営マネジメントに参画することをためらいがちな現状があり、女性管理職が増えない一因となっていると、同サービスを立ち上げた背景を説明。「更年期に対して男女ともに理解が進み、働く人に優しい社会の実現の一助になれたら」と話す。

審査委員からも「更年期という扱いにくい話題を取り上げて企業を巻き込んでいく」姿勢に共感する声や、「フェムテックに真剣に取り組む時代であることを気づかせてくれた点でも意味深い」とのコメントが寄せられた。また、「企業とユーザー双方の課題を解決するサービスを、短期間で事業化」したところも高く評価された。

特別賞 
パーフェクト株式会社
「AR(拡張現実)技術やAI(人工知能)技術を活用した美容業界におけるソリューションサービス」

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パーフェクト株式会社
代表取締役社長 磯崎順信氏

「前回、大賞に輝いたパーフェクトが、さらにパワーアップしたソリューションを提示している。これはもう“殿堂入り”といってもよいと考え、特別賞を授与することに決めた」との、梅澤審査委員長の言葉が、同社の技術が美容業界のDXの核とも呼ぶべき突出した内容であることを物語る。

パーフェクトでは現在、あらゆるタッチポイントでの消費者エンゲージメントを創出・維持することに注力し、AR/AI技術により全方向さまざまなシーンでビューティSaaSを展開している。具体的には、「AR/AIバーチャルメイク」「AI肌チェック」や、ユーザーはその場でバーチャルメイクも受けられる美容部員とのオンラインカウンセリング「BA 1 on 1」、ライブ動画配信中のバーチャルトライオン機能を備えた「ウェブ&モバイルアプリ用ARライブキャスト」、肌トーンに適したファンデーションカラーを提案する「AIスマートシェードファウンダー」などだ。

パーフェクト様.pptx

画像提供:パーフェクト

世界で300以上のビューティブランドパートナーを持つとともに、YouTubeやSnapchat、Shopifyなどのプラットフォームとの連携が進んでおり、美容領域の接客や購買において、いわばインフラともいうべきデジタルツールとなっている。

だが、パーフェクト 代表取締役社長 磯崎順信氏は「AR/AI業界は移り変わりが激しい。新しいアイディアがどんどん出てくる。ユーザーの要望に応えて、今あるものをどう前進させるか、常に考えている」として、トップをゆくその走りを緩めない姿勢を示した。

特別賞 
オルビス株式会社
「通販向け出荷ラインに無人搬送ロボット(AGV)を導入し自動化促進」

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オルビス株式会社 QCD統括部
SCM推進担当部長 小川洋之氏

近年ニーズが高まる物流のオートメーション化に取り組んだのは、オルビスだ。通販向け出荷作業の主要拠点であるオルビス東日本流通センターの出荷ラインを刷新し、小型AGV(自動搬送ロボット)330台を配置して、集荷から従来は手作業だった方面仕分けまで自動化した。1オーダーに対して1台のAGVを割り当て、AIを活用した制御システムから指示を受けたAGVが、集荷から検査・梱包作業場所まで最適なルートを走行し、循環する仕組みだ。

旧ラインに比べて、出荷能力は1.3倍となり、人員は27%削減、1件あたりの作業コストは18%削減、消費電力も40%削減できるとしている。

オルビス東日本流通センターのAGV
動画提供:オルビス

オルビスは第二次審査のプレゼンテーションを同流通センターからのライブ配信で行い、審査委員からは、正面から見ると顔のようなデザインのAGVがかいがいしく働く姿が“カワイイ”“エモい”との感想も出たという。スタッフとロボットが協調し、ヒューマンタッチが感じられるテクノロジーであることも高評価につながった。

オルビス QCD統括部 SCM推進担当部長 小川洋之氏は授賞式で、「こんなことができたらいい」という未来志向での“ワクワク”をチーム全員が共有しながらプロジェクトを推進したことが成功したポイントであると語った。

次回 の後編では、授賞式後に第二部として開催された、受賞企業4社とファイナリストの企業の代表が登壇する3つのトークセッションの模様をレポートする。

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image & 画像 : 中山実華(Mika Nakayama)


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