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エスティ ローダーの熱いARトレーニング、日本でも美容部員をインフルエンサーへ

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エスティ ローダーのBA(ビューティアドバイザー)のトレーニングは、講師はYouTuberのような楽しい雰囲気、参加者たちはただただ笑顔でスマホをかざし、「エスティ最高」「♡」などのコメントが大量に画面に流れる。まるで美容フェスのようだが、これは研修の一環だ。社員のデジタル教育への投資に積極的なエスティ ローダーの取り組みを紹介する。

デジタルシフトに向けて、「人」の教育に注力する米エスティ ローダー。「ロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダー。2018年上半期デジタル施策総まとめ」でも取り上げたとおり、デジタル戦略のなかでも人材育成への投資を積極的に進めているが、本国の動きを受け日本でも同様の取り組みが始まっている。その現状と展望を、ELGC株式会社 エスティ ローダー事業部 営業本部トレーニング部トレーニングマネージャー江川みさ氏と、同事業部 デジタルマーケティングマネージャー宮下麻未氏に聞いた。

「大人が夢中になって学ぶのはなかなか難しい。皆さんが楽しんで学ぶことができれば、学習効果があがり、結果的にお客様へのサービス向上にもつながる」とは、同社トレーニングマネージャーの江川氏。「ビューティー アドバイザー ナショナル コンベンション」という美容部員向けの年1回のメイン行事では、さっそく“楽しい”をコンセプトに参加者が能動的に学べる企画を考えた。その実施風景はユーザーイベントのように、賑やかで、参加者の笑顔が印象的だ。

会場には季節のスイーツやかわいいディスプレイを準備し、参加者全員で記念撮影。思わず、「写真を撮りたくなる」「インスタにあげたくなる」ような仕掛けが用意してある。実は、この研修の目的のひとつは、インスタでの情報発信を身につけてもらうことだった。SNSで発信したいと手を挙げた美容部員のなかから選抜され、約30名が集まった。

「デジタルを利用するお客様が増えて客層が変わってきている。美容部員もそうした変化に対応していけるようにしたいと考えている」(江川氏)

講師が率先してデジタルでの発信を試す

2018年8月には、ARを用いたトレーニングツールによる研修もスタートさせた。ソフトは本国と同様、台湾のテクノロジー企業、パーフェクトのライブARトレーニングツールを採用している。全国に800人以上いる美容部員を対象としたスキンケアやメイクの研修をe-ラーニングで実施する。e-ラーニングの講師も務める江川氏は、“楽しめる”研修コンテンツの開発に率先して取り組んでいる。カメラを通じて視聴者に呼びかける姿はYouTuberに負けずとも劣らない。絵文字やエスティ ローダー商品のアイコンスタンプで受講者とやりとりを楽しむ。

新製品や成分など、それぞれの研修カテゴリーはチャンネルと呼ばれ、「AERIN(2018年発売のフラグランス) チャンネル」「Nutritious チャンネル」「FruitGATHERING チャンネル」(フルーツギャザリングとの提携で同店スタッフ向け)など、対象の業務に携わるスタッフが場所を問わず受講でき、当日参加できなくてもアーカイブされたチャンネルを後から視聴したり、復習のために複数回視聴したりすることも可能だ。

研修では、まるでYouTuberのように楽しげな雰囲気で慕われる江川氏

「研修のような大勢が集まる場所では手をあげづらいが、このスタイルになって活発にコメントが出るようになった。講義中は絵文字やスタンプなどで受講生の様子がわかり、リアルタイムでアンケートも収集できる。これまでのような一方通行の講義より、私自身も、より受講者とエンゲージメントできるようになったと感じる」と江川氏は話す。

ライブARトレーニングツールの導入は、年間を通じて数多く実施される研修の効率化にも一役買っている。例えば、これまで特定の百貨店限定のイベントを実施する際には、全国に散らばる美容部員を東京に集めて研修を行ってきた。ARトレーニングであれば、リモート対応が可能だ。移動時間や交通費もかからない。

実際に、動画配信を始めたばかりではあるが、データからは1本あたりの講義を4回視聴しているという結果も出ている。“楽しい”要素をコンテンツに含めることで、学習モチベーションも上がっているようだ。新たに10月から月1本のペースで合計5本、教育プログラムの配信を始めたという。

先行する米国を追い、美容部員のSNSインフルエンサーを育成

「グループ内の他ブランドに先駆けエスティ ローダーはSNSにフォーカスしている。BAがインフルエンサーとなって、お客様にお店に来ていただけるようにすることがゴールだ」というのが、デジタルマーケティングマネジャーの宮下氏だ。

江川氏との緊密な連携でデジタルトレーニングを支える宮下氏(左)

すでに米国では実施しているが、SNS発信力の強化に向け、今年3月から日本の美容部員によるSNS発信に着手した。インスタグラムで、「#エスティローダーBA」というハッシュタグで店舗アカウント、または、自分のアカウントから投稿してもらうようにした。ペースは月に1回程度だ。

「BAが発信するにあたって最低限のガイドラインは設けたが、細かくルールを決めることはしなかった。海外のお客様も意識し、中国の公式サイトに掲載されている中国語の商品説明を一緒に投稿したり、店舗独自のキャンペーン情報を発信したりするBAがでてくるなど、こちらが想定していなかったコンテンツも創り出してくれている。広告と同じビジュアルではなく、プロの手で作り込みすぎていないコンテンツがむしろユーザーには好評で、時には公式アカウントでも流用させてもらっているほど」(宮下氏)

現在の投稿数は約1000件(2018年10月時点)。定期的なモニタリングは必要だが、開始から今のところ炎上などのトラブルは起きていない。今年度の活動はトライアルの位置付けで、徐々に美容部員のSNS発信を浸透させていきたい考えだ。フェイスブック ジャパンにもインスタグラム研修に訪れるなど、モチベーションのあがる学びの場を多数もうけている。

el_ba_japanのアカウント 

#エスティローダーBA といった専用ハッシュタグでの発信では、プロ顔負けのストーリー性ある画像で支持を集めるアカウントも。「BAの働くモチベーションにもつながっている」(宮下氏)。

ARツールと美容部員の接客で購入機会を逃さない

研修で学んだことは店頭で実践される。前述したように、研修と並行して、YouCamのARツールも店頭への設置が進んでいる。ヴァーチャルメイクを試せるARツールを導入することで、以前は、機会を逃していたかもしれない顧客とも、コミュニケーションをとれるようになってきているという。

「BAによる接客をうけたいから店頭に来られる方と、接客はなるべくミニマムにしてほしいという方と、そして、その中間のお客様がいらっしゃることが美容部員へのヒアリングからわかった。美容部員がグイグイと話かけると後ずさりしてしまうお客様でも、ARツールで製品情報を見たり、リップの色を選んだりしているうちに、お客様ご自身から美容部員に話しかけるきっかけになっている」(宮下氏)

小田急新宿店に導入しているARツール(ELGC 提供)

「新色はすぐにARツールに登録して、トレーニングで実際に使えるようにしている。美容部員も自分たち自身がやって楽しいので、店頭での接客ツールとしても積極的に使っている。いままでは、店頭で何色も実際に唇にのせてタッチアップしていたが、結局、お客様が最後まで迷って買わずに帰られてしまうこともあった。ヴァーチャルメイクツールである程度色を試してからであれば、タッチアップの時間を短縮でき購入確度も高まる」(江川氏)

米国ではオンライン注力、日本ではリアル店舗への誘導

米国では、フェイスブックアプリ上で顧客との対話を仕掛けるなど、オンラインで接客から購入までを一貫して対応できる体制づくりに注力もしているが、日本国内では、店頭に来てもらうためのデジタル戦略にフォーカスして活用している。

「マーケット環境や顧客ニーズは米国と日本では異なっている。グローバル戦略の方針は出されるが、アジアパシフィックでは、その内容をフィルタリングし、改めて議論して、ローカライズしている。その地域の実情にあわせデジタルの取り組みを進める」(宮下氏) 

江川氏のスタッフやデジタルへの深い理解と環境に合わせたアレンジ、そしてデジタルマーケティングを率いる宮下氏との横連携で販売現場におとしていく流れを聞くかぎり、日本での人材教育へのARツール採用はいまのところ好調のようだ。施策を面で広げていることが奏功しており、BA自身が楽しみ、納得してデジタルツールを使うことは、ダイレクトに消費者にも伝わるはずだ。

Text: 清水美奈(Mina Shimizu)

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