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生理、妊娠、セックス…etc. フェムテックがもたらす女性への恩恵と、大きな市場性

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女性たちの課題を解決するためのテクノロジー、それが「フェムテック(FemTech)」。「Female + Technology」を組み合わせた造語である。ここ数年、女性に特化したヘルスケア分野としてのフェムテックが盛り上がりをみせている。BeautyTechとも近しい領域であり、今後、大きな成長が見込める分野として注目しておきたい。

昨年後半から今年にかけて、フェムテック分野での資金調達のニュースが多くなっている。たとえば、女性の膣や尿失禁のトラブルに関係の深い骨盤底筋を鍛えるための画期的なデバイス「vSculpt」とアプリを開発した、米・シアトルのJoylux。2018年1月に500万ドルの資金調達を行なったばかりだ。

その背景には、世界中の女性の3人にひとりが、尿失禁や性交痛などの膣トラブルを抱えている事実がある。これらが、出産や閉経に伴う骨盤底筋の筋力低下によるものであることは広く知られていたにもかかわらず、それに対する画期的かつ簡便なソリューションはこれまでほとんどなかった。(過去70年ものあいだ対策として行われていたのはケーゲル体操であった)

フェムテックへの投資熱も高まっている

こういった、いままで人前で語るべきではないとタブー視されてきた女性特有の問題をテクノロジーとビジネスで解決しようと起業する女性、あるいは男性も増え、それを応援するVC(ベンチャーキャピタル)などの投資家も増えてきたことがフェムテックが活発化してきたひとつの理由だ。Medical Insightでは、こういったフェムテックに、米国では2021年までに22億ドルの資金が調達されると予測している。

Joyluxの投資家のひとりであるSeavest Investment GroupのCEO、Rick Segal(リック・シーゲル)氏は、次のように述べている。

「女性と密接に関わるヘルスケアのサービスに対する需要が急速に高まっており、Joyluxがこのジャンルで成功を収めたことで、2018年は女性と女性のヘルスケア産業にとって素晴らしい年になると考えている。私たちは、コレット(JoyluxのCEO、Colette Courtionのこと)と彼女のチームと協力して、引き続きトップ企業を築くことを楽しみにしている」

このJoyluxをはじめとするフェムテックの盛り上がりがひとめでわかるのがこちらのマップだ。

出典:cbinsights

フェムテックのスタートアップのジャンルはおおまかに分けると、不妊対策、生理周期&排卵日測定アプリ、家庭用排卵日検査器、妊産婦のサポートケア(妊娠合併症の危険度などの診断サービスや先端技術を利用した搾乳機など)、骨盤ヘルスケア、総合的な女性の臨床ヘルスケア(オンデマンドの遠隔治療サービスなど)、生理用品、セクシャルウエルネス(潤滑オイルや女性用セックストイなど)多岐にわたっている。

そして、それらのスタートアップが調達する資金も前述したように多額になる傾向がある。卵子の凍結、不妊治療、卵子ドナーなどを行うPreludeが開示した資金調達額は2億ドル。生理のトラッキングアプリを開発した北京のDaYiMaは、これまでに7050万ドルを、オーガニッコットンなどの生理用品をサブスクリプションで発売しているLolaは、1,100万ドル、また女性のセクシャルウェルネスの向上を手助けするNuelle(現Fiera)は、2,300万ドルの資金調達にそれぞれ成功している。

また、米国で最強のVCとも言われるAndreesen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)と、SpaceXやAirbnbにも出資しているFounders Fund(ファウンダーズ・ファンド)は、ビッグデータを活かした測定に強みを持つ月経トラッキングアプリのGlowに出資している。

フェムテック市場は、2025年までに500億ドル(約5兆円)規模にまで成長するとの予測もある。国連の統計によると、世界総人口の男女の割合は、男性が50.4%、女性は49.6%(2015年時点)と約半々。この人口割合を見れば、そして未解決の課題を解決するプロダクトやサービスが生まれるのがフェムテックだとすると、この市場がどれだけ成長余力があるかは容易に想像がつく。

そのほかの注目フェムテック企業

米国ビジネス誌「Fast Company」の2017年におけるもっともイノベーティブな会社のひとつとして選出されたのが、Celmatix。女性医療系のスタートアップだ。遺伝子のデータから、妊娠しやすい時期などを見分けるサービスを提供している。

また同社が、妊娠も出産もしたことのない25歳から33歳の女性1,000人を対象にした調査によると、46%が自身の生殖能力になにかしらの不安があり、10%はとても不安だと答えている。さらに、70%の女性がストレスが不妊の原因のひとつになりうる、と考えていることが明らかになった。Celmatixがそういった不安にある指針をもたらしてくれるのは間違いない。

スウェーデン人女性によってベルリンで誕生した「フェムテック」

月経もほとんどの女性にとっては、毎月のように体験することでもありとても身近なこと。ドイツ・ベルリンで誕生したスタートアップClueは、女性の生理をデータに基づきトラッキングしてくれるサービスだ。次にくる生理日や妊娠しやすい日、PMS(月経前症候群)をデータに基づき予測してくれる。CEOでスウェーデン人のアイダ・ティン(Ida Tin)は、フェムテックという言葉の生みの親でもある。

女性にとってタブー視されてきた最たるものといえば、セクシャルな話題についてだ。セックスを通じてよろこびを感じたいと願うのは、男性だけではなく女性も同じである。そんな女性たちに向けたスタートアップがセックストイ・メーカーのDame Products。セックスは男性のものだけではなく、女性の性的体験をオープンにしたいという想いが、根底にはある

妊娠や生理、セックスなどの話題は、なかなか人に話しにくいとてもパーソナルなトピックであることから、自宅など安心な場所で、スマホを使って自分だけが受けられる、あるいは行えるフェムテックのサービスは、女性にとってとてもありがたい存在となっている。

このフェムテックが、欧米でこれだけ盛り上がってきているもうひとつの背景として、世界的にブームともなっているフェミニズムの動きとも密接な関係がある。女性たちのエンパワメントが、まだまだ男女格差のある世の中を変え、ビジネスを変え、男性も女性も生きていきやすい世界をつくろうという動きだ。次回はその動きを紹介しつつ、日本でもフェムテックが根づくのかを考えてみたいと思う。

Text:篠田 慶子(Keiko Shinoda
バナー画像:志谷のぞみ(Nozomi Shiya / BuzzFeed)
Top Image: Bich Ngoc Le via Unsplash

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