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パーソナライズ化とZ世代アプローチ。スタートアップが先ゆく日本のBeautyTech

◆ English version: BeautyTech MeetUp Tokyo: Best foot forward for beauty startups
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世界の各都市に支部を持つスタートアップと支援者のコミュニティBeautyTech MeetUp SF。その一員であるTokyo支部は、4月に引き続き第2回目となるミートアップ・イベントを2018年11月30日に原宿のスマートニュース本社ホールで開催。急速にプレゼンスを高めている旬のスタートアップ9社が登壇し、ユニークなアイディアの披露や意見交換が行われた。

本家のシリコンバレーや、急成長する市場を抱えるアジア各国にくらべ、数が少ないといわれる日本のスタートアップ。だが、ここにきて、大企業には対応が難しい細やかな顧客ニーズを掘り起こし、テクノロジーとマッチさせることで、ビジネスチャンスと事業規模を拡大している企業が現れている。

本部であるサンフランシスコの様子を紹介するTokyo代表、Cosme Hunt Inc. の高橋クロエCEO

今回のミートアップでは、パネル#1に「パーソナライゼーション」、パネル#2は「Z世代に向けたコミュニケーション」、パネル#3が「美容サロンビジネスの改革」として美容関連サービスを手がけるスタートアップが集い、ベンチャーキャピタリスト、投資家のモデレーターを進行役に、ビジネスの現在と未来について語り合った。

今回は前編としてパネル#1と#2の模様をレポートする。

パーソナライズで新しい市場を生む

多民族国家の米国などとは異なり、肌色や髪色、嗜好性といった差異の幅が比較的少ない日本におけるパーソナライズとはどのようなものなのか? 現場で起きていることが知りたいと、パネル#1のモデレーターでiSGSインベストメントワークス取締役 代表パートナーの佐藤真希子氏は問いかける。

iSGSインベストメントワークス佐藤真希子氏

口火を切って「100人のうちの80人に受ける香りをつくるのが、従来のフレグランス業界」と語るのは、顧客一人ひとりにあわせて専用の香りを調合したアロマミストをサブスクリプションで提供するCODE Meeeの代表取締役CEO 太田賢司氏だ。国内最大手の香料会社に勤務した経験を踏まえ、すでに成熟して、“成長は終わっている”とまでいわれるフレグランスの分野に、パーソナライゼーションで風穴をあけられるのではないかと起業に踏み切った。そこには「大多数向けの香りには興味がない人も、One to Oneの香りなら興味を持つ。つまり、新しい市場がつくれる」との信念があった。

髪質や希望の仕上がりについて答える専用サイトのアンケートをもとに、個々にカスタムメイドされたシャンプーとコンディショナーが定期的に届けられるサービスMEDULLAを運営するSpartyの代表取締役社長の深山陽介氏も、「CRM(Customer Relationship Management)をきちんと行い、コアユーザーの要望に応えていくことで継続率を高める。それが新しい市場をつくることにつながる」とする。そして、この時に鍵となるのはユーザーのフィードバックであると強調した。

左より、CODE Meee 太田賢司氏、ドリコス 竹康宏氏、Sparty 深山陽介氏

フィードバックこそパーソナライゼーションの要であるとは、太田氏も同意見だ。とくに、香りという個人の感性によってたつ製品を扱うCODE Meeeは、AIによる「最適な香り提案アルゴリズム」で香りを数値データ化し、ユーザーにふさわしいレコメンドをする一方で、実際に使用したユーザーからの声を反映させて、次回以降の製品を調整し、顧客によりあった香りへと進化させている。

MEDULLAも同様のサイクルを回すことで、シャンプーを使い続けるうちにおこる髪質の変化や新たに出てきた要望に都度沿った配合の、常に顧客に最適最善な1本を提案できるとする。「処方数を増やすよりフィードバックに応える」ことに注力していると語るゆえんだ。

これに対して、「顧客の手元で最終商品が完成するのが特徴」と話すのは、パネル#1の登壇者のひとり、オーダーメイドのサプリメントを調合するIoTサーバーhealthServerを開発したドリコスの代表取締役 竹康宏氏だ。healthServerは、脈拍などの生体情報をはじめ、1日のスケジュールやその日の気分、天候といった入力データをもとに、心理的、肉体的なストレスをスコア化。サーバーに事前にセットされた「ビタミンB1」など5種類の栄養素から、不足しているものを必要な分量だけ自動で配合し粉末状のサプリにする。

ヘルスケア系のIoTとしては、ウェアラブルデバイスもあるが、その場合は各自の生体情報を取得したあとにどうすればいいのかはユーザー自身が考える必要がある。つまり、課題解決には、①自分のことを知る ②改善のための行動をとる という2つのステップが必要だが、healthServerが画期的なのは、改善のためのソリューションを提供できるので、この①と②を同時にクリアできるところにある。

佐藤氏よりパーソナライズ・ビジネスの難しさ、苦労している点を尋ねられたなかで、竹氏はまた、パーソナライズ・ビジネスが抱える、多品種、小ロット、それにかかるコストという問題を「手元でつくる」IoTモデルで解決する意義を示した。従来の工場での大量生産方式では製造や在庫管理が困難な個別処方の製品は、IoT機器が最も得意とするところだからだ。

3人のパネリストが口を揃えるのは、現代の消費者はアンチ大量消費の方向に向いているということだ。つまり、自分にぴったりあったものを必要な量だけ欲しており、それが、パーソナライゼーションという提供スタイルが昨今、脚光を浴びる理由である。だが、大企業にはその実現は難しい。実は、この3社はいずれも事業会社から出資を受けており、CODE MeeeはIBM、ドリコスは資生堂、そして、Spartyはサティス製薬とそれぞれ提携している。ビジネスモデルのマインドセットが異なるスタートアップだからこそできることに、大手も注目している現れといえるだろう。

Z世代はコミュニティ・ファースト

ここ数年、次のビューティ業界をけん引する消費者クラスターとして重要な存在となっているZ世代。1990年代後半〜2000年代初めに生まれた年齢層を指し、物心がついたときからインターネットがあるデジタルネイティブで、SNSを自在に使いこなすのが特徴と、モデレーターを務めるD4V ポートフォリオディレクターの井上加奈子氏は定義する。井上氏がいうところの、多様性がありソーシャルグッドに関心が高い米国に対して、保守的で人とのつながりを重要視する日本のZ世代にはどのようなアプローチをすべきなのだろうか。

ダウンロード数170万を突破し、美容特化SNSアプリとして国内ナンバー1のLIPSを運営するAppBrewの取締役・共同創業者の松井友里氏は、Z世代はコミュニティを中心に交流し、自分と興味や感性が似ている人や共感できる人を見つけ出すのがうまいと指摘する。実際、自分がフォローしている人が勧めているものを買いにいくという消費行動パターンができあがっており、AppBrewの調べでは、93%のユーザーがLIPSを閲覧後にコスメを購入した経験があると回答している。

自身もTwitterのいわゆる美容垢やコスメ垢にはまって、そこで紹介される製品を購入していたという松井氏。コミュニティのメンバーが「Twitterの140文字では想いを共有しきれない」「せっかく感想レポートを書いてもすぐ流れてしまう」というのを聞き、また、購入リンクがないことを不便に感じた経験から、画像やコメントを共有できショッピングにまで進めるクチコミアプリの開発を思いついたという。

2018年6月にはUI(ユーザー・インターフェース)を大きくリニューアル。10代の女性を意識したデザインから、より広い層に受け入れてもらえる少し大人っぽいスタイルに変更した。これには、年内に数百万規模のダウンロード数を目指すにあたり、20代を取りこぼさないようにする意図があった。

AppBrew 松井友里氏

井上氏からの「逆に10代が離れてしまうのではないか?」という質問に、松井氏は「自分の未来というか、憧れというか、多くの人は自分よりちょっと年上の人をみる傾向にある」ので問題はないと答える。そして、リニューアルの一番の目的は投稿へのハードルを下げることにあると明かし、投稿までのステップを簡単にするとともに、商品の画像が映えるすっきり見やすい画面を心がけたという。

ユーザーの投稿を促す施策を重視するのは、美容整形の写真クチコミアプリトリビューも同様だ。開発元のトリビュー代表取締役の毛迪氏は、美容整形をした自分の姿のビフォー&アフターという、センシティブな画像をSNSにアップする心理的ハードルを越えてもらうため、顔の一部を隠す加工の仕方や、きれいにみせる撮影のポイントを丁寧に伝えていると話す。

LIPSと同じく、トリビューも商品サービスやカテゴリーのくくりではなく、人を軸にしたコミュニティを形成するプラットフォームだ。ユーザーは自分の悩みや感じ方に近い人をみつけてフォローし、「受けてみたい治療法のことがよくわかった」「良いクリニックを教えてくれてありがとう」といったコメントを寄せる。投稿者もまた、可愛くなったと褒められる以上に、自分の施術経験が誰かの役に立ったことに喜びを覚え、投稿してよかったと満足するようだ。

では、人気ユーチューバーなど、動画の世界のインフルエンサーとZ世代の関係はどのようになっているのだろう。

中央・BitStar 渡邉拓氏、右・トリビュー 毛迪氏

企業とインフルエンサーをマッチングするプラットフォームの運営をはじめ、インフルエンサーマーケティングのトータルソリューションを提供するBitStarは、「インフルエンサーが活躍できるインフラをつくる」というビジョンを掲げる。代表取締役の渡邉拓氏は、人々が情報収集やエンターテイメントのために視聴する主要メディアが、テレビからスマホに変わりつつある現在、インフルエンサーがテレビにおける芸能人やタレントの役割を果たす動きはますます加速すると考えている。

LIPSやトリビューの例でもわかるように、Z世代は企業の広告やブランドイメージに頼らず、SNSのクチコミやストリーミング動画を活用して自分に合う商品を見つけることに長けている。世代や感覚が似ている人の意見や言動によって消費行動を起こすわけだ。カリスマ的な魅力があっても、基本的には自分と同じ一般人という立ち位置のインフルエンサーは彼らの共感を呼びやすい。

では、インフルエンサーの質や信頼性はどのようにして保つのか? 会場からの質問に答え、渡邉氏は「ユーチューバーなど動画投稿をするインフルエンサーは顔や声を出しているため、基本的に嘘をつきにくい構造にある。また自社に所属するインフルエンサーであれば教育もする」として、広告に登場する際も自身のポリシーと合わない製品やブランドの場合は断ると話す。インフルエンサーは支持してくれる視聴者の志向や好みをよく理解しており、視聴者のためになるコンテンツづくりや活動をしたいと思っている。そのことが、インフルエンサーの信頼性と影響力の双方を担保していると渡邉氏は示唆した。

最後に井上氏より、Z世代向けサービスを企画する際のアドバイスを求められたパネル#2の登壇者からは、「意外にできていないことだが、コンプライアンス、組織まわりをまずしっかり固めたほうがいい」「差別化のポイントを見つけること」「感覚だけでなく、ユーザーを(科学的に)きちんと分析するべき」といった意見が出された。

D4V  井上加奈子氏

美容サロンとユーザーに新しい視点をもたらし、ビジネスモデルの転換を図ることをテーマにしたパネル#3については、後編(12/17公開予定)で紹介する。

Text:そごうあやこ(Ayako Sogo)
Photo:溝口拓(Taku Mizoguchi)


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