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韓国を代表するヴィーガンコスメ、7つのブランドにみるその哲学や海外展開

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動物由来の成分を使わず、動物実験も行わないことを特徴とするヴィーガンコスメは、近年、欧米を中心に着実に市民権を獲得しつつある。新興ブランドの競争が激しい韓国でも、差別化の1つとしてヴィーガンコスメは新たなトレンドだ。各ヴィーガンコスメブランドの詳細や業界プレーヤーたちの動きを解説する。

続々と登場するKヴィーガンコスメ

韓国メディアがヴィーガンコスメというキーワードを盛んに報じるようになったのは、2018年を前後した時期だ。その後、約3年が経過したが、コロナ禍の影響にもより、2021年以降もヴィーガンコスメのトレンドはさらに加速すると予測されている。他の国々と同じく、韓国社会でも健康、安全、環境、そして持続可能性に対する意識が高まっているからだ。では、現在どのようなヴィーガンコスメブランドが韓国で登場しているのか。各ブランドの特徴や最近の動向を俯瞰していく。

Bonajour

2010年にローンチされたBonajourは、1944年に世界で初めて設立されたとされるヴィーガン団体The Vegan Society(英国)などから認証を受けているブランドだ。代表のキム・ダヘ氏は、幼い頃からアトピーやアレルギーに悩まされ、天然の植物でパックや化粧品を自作していたという。キム氏はOEM/ODM企業を経営するファミリーの出身で、こうしたバックグラウンドを活かし、21歳の工学大学生の時に、韓国ではかなり早い段階でヴィーガンブランドを立ち上げている。

2021年には、韓国経済新聞社が主催する韓国ファストブランド大賞を天然化粧品部門で受賞。収益の一部を寄付にするなどエシカルで「健康なビューティ」を標榜し韓国消費者からの支持を得ている。


DEAR DAHLIA

韓国で最も有名なヴィーガンブランドの1つであるDEAR DAHLIA。運営するのは、スタイルナンダのコスメブランド3CEやユニリーバの中国販売代理店として、2014年に創業した流通企業Paran Internationalで、2017年に、自社ブランドとしてDEAR DAHLIA をリリースした。「庭園の女王」と称される花のダリアからインスピレーションを受けたとするラグジュアリー系のブランドコンセプトで、メイクアップ商品が主力ラインナップとなる。韓国発であることをあまり表に出さず、パッケージなどもヨーロピアンなデザインにして当初からグローバルな展開を図っているのも特徴だ。

2020年末には、ドイツで最大規模の化粧品リテーラーDouglasのオンラインモールに入店を果たした。ドイツ国内のオフラインショップ435店舗をはじめ、欧州内に2,000カ所以上の売り場を確保している。2021年2月には、グローバルラグジャリーブランドが集まるソウル・島山公園エリアに韓国初のフラグシップストアをオープンした。Paran Internationalは旺盛な資金調達を行っており、2025年にIPOを目指すとしている。

Melixir

元MEMEBOXの女性創業者が立ち上げたMelixirは2018年にローンチされた。米国の動物愛護団体PETAの認証や、米環境・健康関連の非営利組織EWGの安全認証を受けたヴィーガンスキンケアブランドで、韓国と米国を中心に販売展開している。製品に使用されている主な植物性原料はサトウキビや緑茶だ。化粧品だけでなく、パッケージにも木材を利用するなど、持続可能な天然素材を可能な限り必要な量だけ使用することで、環境に配慮しているのが特徴だ。

Melixirは成分もさることながら、ブランドの哲学を非常に重要視している。ミレニアル&Z世代への訴求力を高めるためには、単に良い製品だけでなく、このブランドを選ぶ理由となる文化的背景を示す必要があるとの認識からだ。2020年10月には、日本円にして約1億円規模のシリーズA投資の誘致にも成功。米アマゾン、サブスクリプションサービス米IPSY、ECのMarket Kurlyのほか、国内大手小売オリーブヤングなどを通じて商品を流通させている。

Unleashia

PETA認証を受けたグリッダー専門のヴィーガンメイクブランドUnleashiaは、再生パルプなどからなる生分解性の各種グリッダーと、環境にやさしいパッケージ素材を使用した商品を多数取り揃えている。運営会社が設立されたのは2018年。中国、日本、台湾、米国、アラブ首長国連邦などに進出を果たしており、2020年7月にはCHICORのオンラインとオフライン店舗での取り扱いも開始した。

報道されている情報はまだ多くないが、ヴィーガン=シンプルで植物的なビジュアルという先入観や固定化したイメージを払拭する、見た目のキラキラ感を実現し、多様なヴィーガンコスメを楽しめるよう商品開発を進めている点が、韓国版Vogueなどから評価されている。

athe

大手アパレルメーカーLFが、2019年10月にリリースしたヴィーガンブランドatheは、韓国で初めてフランスの権威あるヴィーガン認証EVE(Expertise Végane Europe)を取得している。スイスの大手化粧品研究所Mibelleと共同研究を行い、同国の花の酵母など自生原料をベースにした高品質のスキンケア、メイクアップ製品を生産。ヴィーガン認証された日焼け止めクリームやリップバームなどの製品を韓国で初めてつくったブランドでもある。

LFにとってatheは、自社初となる女性用コスメブランドで、流通は同社が運営しているECモールやロッテ免税店など国内チャネルがメインとなっている。

Klairs

Klairsは敏感肌のためのヴィーガンスキンケアを展開するブランドで、主力商品である「サプルプリパレーションフェイシャルトナー」「フレッシュリジューシドビタミンドロップ」などは、2020年10月の段階で累計販売数がそれぞれ100万個を突破している。薬品を思わせるようなボトルデザインも特徴的だ。昨年末には、CHICORが主催するベストアワード2020のトナー・クリーム部門1位に選出された。サプルプリパレーションフェイシャルトナーは海外各国でも人気を得ており、米国、欧州、東南アジアなど40カ国に輸出されている。

Klairsを運営するのは、Wishcompanyで、ブランド事業のほかにもコンテンツコマース事業を展開しており、双方を絡めたビジネスモデルで競争力を確保する。

ENOUGH PROJECT

ENOUGH PROJECTは国内最大手アモーレパシフィックが運営するヴィーガンブランドで、立ち上げは2020年6月だ。アモーレパシフィックでは、デジタルを使った消費者とのコミュニケーション、また販売チャネル拡大をひとつの戦略として打ち出しているが、ENOUGH PROJECTはこの「デジタル集中モデル」を実践したブランドの1つである。

一例としては、販売開始当時、オフライン店舗ではなく、韓国EC最大手のクーパンで単独ローンチして話題となった。3ヵ月後の9月には、米アマゾンで正式に販売を開始。本格的に米国での展開を開始している。

そのほかにも認知度が高まっている韓国ヴィーガンコスメブランドとしては、BEIGICowndoSERUMKINDAROMATICAなどがある。

韓国コスメ業界とヴィーガンコスメ

増加傾向にある韓国発のヴィーガンコスメブランドだが、韓国のビューティ業界の事情に絡み、ヴィーガンコスメにはいくつかの課題も指摘されている。その1つが中国市場との関係だ。

韓国ブランドにとって、中国市場は大規模なセールスが期待できる“お得意さま”であり続けている。しかしながら、ことヴィーガンコスメとなると話は異なる。越境EC以外で、中国国内で化粧品を流通させるためには、動物実験を行うことで安全性を確保した製品である必要があるからだ。

中国では2021年1月1日より新たな条例が施行され、各国の化粧品監督部署が商品の安全性を十全に確認し認証を与えた場合、一部、化粧品の動物実験を行わなくてもよくなった。たとえばフランスはこの機会を捉え、中国当局と交渉を進めながら、仏国家薬品安全局が主体となり承認のためのプラットフォームを用意したとされる。

しかしながら、韓国では当局が積極的な動きをみせているとの報道は今のところ出ていない。世界の主要なヴィーガンブランド同様、DEAR DAHLIA、Melixirなど韓国の人気ブランドも、中国市場へは進出しないとの立場を取ってきたが、とりあえずは条例施行後もその状況に変化はないようだ。

さらに事情が複雑なのがアモーレパシフィックやLG生活健康ら大手メーカーである。両社ともヴィーガンコスメには関心を示しつつ、新ブランドの創設を模索するなどの動きをみせているものの、グループの親会社が中国ビジネスにおいて多面的で深い関わりがあるため、韓国内の消費者感情も含めて、慎重にならざるを得ない。今後、中国当局と韓国当局が連携し動物実験義務を免除できるか否かは、韓国ヴィーガンコスメの未来にとって大きな鍵となるだろう。

また韓国では新興の化粧品ブランドの数が非常に多く、ヴィーガンコスメについてここ数年の競争が激しくなっている。そうなると、「動物実験を行わない」「環境にやさしい植物性」だけでは差別化が難しくなり、頭ひとつ抜け出るためには「ヴィーガン+α」の要素が必要になってくる。

一方、韓国ではOEM業者がヴィーガン認証の取得に次々と乗り出しているとのレポートもある。2020年9月には、国内大手の韓国コルマがクッションファンデ、UVクリーム、マスカラなど主要コスメ商品10種類に関して、フランスEVEから認証を受けた。その前年には、基礎化粧品10品目のヴィーガン認証も取得している。

次回は、新興ヴィーガンブランド「owndo」へのインタビューを通じて、韓国国内市場やグローバル展開の可能性などについてさらに掘り下げていく。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: paulynn via Shutterstock

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