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ファーメンステーションの化粧品原料「プレミアムエタノール」は循環経済をも生み出す

◆ English version: The story behind this rare 100% circular bioethanol from Japan
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クリーンビューティ全盛のいま、化粧品原料として、トレーサビリティかつオーガニックな「プレミアムエタノール」の生産に挑むスタートアップがある。それが株式会社ファーメンステーションだ。同社の挑戦は化粧品原料にとどまらない。その過程で生まれる蒸留残渣を飼料として使い、それが高付加価値製品を生み出す地域循環型モデルをもつくりだしている。

エタノールは、滅菌や防腐効果、溶媒機能や揮発性といった特性があり、清浄や殺菌のほか、さまざまな成分を溶かすための化粧品原料となる。そのなかでも「プレミアムエタノール」とはどういうものなのか。それを知るにはまず、世界のバイオエタノール(再生可能な生物由来の原料からつくられるエタノール)市場を俯瞰するところからみてみよう。

バイオエタノールの大部分を占める第一世代のエタノールは、でんぷんや糖を豊富に含むさとうきびやトウモロコシ、米などの穀物を原料として生産される。第一世代エタノール先進国は米国とブラジルで、その約8割は燃料用で、残りの2割は工業用エタノールとして日用品や化粧品などに使われている。日本では燃料用も工業用も、ほぼ全量を輸入に頼っているのが現状だ。

新興国の生活が豊かになるのにともない、消毒、消臭から、シャンプーやコンディショナーといった日用品に使われるエタノールの消費量は世界的に増加しており、日本でもエタノールの確保が差し迫った課題となっている。

そのため、植物の糖質を利用せず、食料と競合しない植物繊維質「セルロース」をおもな原料とした「第二世代のバイオエタノール」の開発が日本では進められている。竹など短期間で収穫できる木質系や水草などの藻類、シュレッターダストや古紙などのさまざまな素材を発酵させてつくる第二世代のバイオエタノールは、広大な土地が不要で、食物や飼料価格の高騰の影響を受けなくて済む。しかし、技術的な難しさや、前処理にかかるコストが高いなどの問題点もあり、実証実験は行ったものの事業化を断念する企業も多い。

そうした状況のなか、第一世代エタノールとして、休耕田を活用し栽培したオーガニック米を原料としたエタノールの生産に粘り強く取り組み、付加価値のあるプレミアムエタノール販売の事業化に成功しているのが株式会社ファーメンステーションだ。代表取締役の酒井里奈氏は、国際基督教大学卒業後、みずほ銀行やドイツ証券といった金融業界で働いたのち、31歳で東京農業大学に入学して発酵を学んだ異色の経歴をもつ。東京農業大学在学中に、応用生物科学部醸造科学科で米を発酵させてバイオ燃料化する実証実験事業に携わったのがきっかけとなり、卒業後、その事業を引き継いだ。

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