見出し画像

Kaya、Beardoにみるインドの美容新興ブランドのデジタルマーケティング

◆English version: Lessons from Indian beauty brands
New English article
◆新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

前回で紹介したように、長い時間をかけて人々の生活支援も行いつつインド市場に進出したユニリーバやP&Gなどの外資系大手のほかに、インドでは2000年代に登場した新興ブランドはデジタルマーケティングをも駆使して短期間に市場に浸透している。今回は総合スキンケアブランドのKaya、グルーミングブランドのBeardoを紹介したい。

インドでいま最も注目したい、テクノロジーを生かした施術と製品を提供する総合スキンケアブランドは、2002年に創業されたKayaだろう。ターゲットはインドの都市部に住む、忙しく仕事や家庭を切り盛りする女性たちで、プレミアムブランドのジャンルに入るいわばドクターズコスメだ。ブランドイメージと直結しているのが、専門の皮膚科医を擁するクリニックだ。全国27都市で約100の、米国FDA認可の施術を実践するクリニックとして展開されている。

画像1

出典:kaya

そこを起点に、スキンケア関連のあらゆる問題解決を提供するというのが同社の試みだ。最先端のテクノロジーを取り込み、一方で顧客ごとにカスタマイズされた丁寧な対応と具体的なスキンケアのソリューションが強みである。クリニックでは、ニキビ、シミ・ソバカス、老化への対応、レーザー脱毛、ボディケアなどが、いわゆる一般的なスキンケアのトリートメントに加えて行われている。

商品ラインナップは、顔、ヘア、ボディの分野で、毎日のスキンケアから特別なケア用品まで13以上のレンジを持つ。アイテムは、オンラインでも、全国に130店舗以上ある Kaya skin barというショップでも購入することができる。

画像2

出典:Kaya

問題解決型のサービスとアイテム

インド人には、現実的な問題解決を優先する(せざるを得ない)ことが多い。哲学的である一方で、目の前に混沌とした社会の課題が山積みになっていることも影響していると思われ、もともと実用的な課題解決にも長けているように思われる。

Kayaのスキンケアでは、悩みのソリューションを提供することに重きをおいている傾向がある。基礎化粧品、といったジャンルは見当たらず、トップページの「Skin Care」カテゴリーからはこのような「肌の悩み」「クリニックのサービス」そして最後に「商品のタイプ」が出てくる。

画像3

出典:Kaya

たとえば「肌の悩み」で「色素沈着」を選ぶと、下記のようなさらに詳しい肌の説明が表示される。kaya clinicのウェブサイトを通して、具体的な悩みやそれに対する解決方法を細かく説明しているのが特徴だ。商品を購入したい場合には、同社が運営するオンラインショップに飛ぶ仕組みだ。

画像4

出典:Kaya

オンラインショップでは、シンプルでわかりやすい作りで商品が紹介されている。

画像5

出典:Kaya

クリニックでの人気の施術アイテムは、こちらの記事(英語)に詳しいが、以下のトップ9が紹介されている。

1. 短時間クレンジング : 水や生理食塩水でのジェットスプレイをして、最後は藻のパックで終了
2. アクアのジェットピーリング:顔だけでなく、痩身や首や足の痛みを和らげるなど様々な悩みに対処
3. 目の下のクマをケア:ピーリングも取り入れながらホームケアも合わせた処方
4. ライトピーリング:日焼けや肌色をワントーン落とすための、軽いピーリングケア
5. ニキビ取り:後を残さないでニキビを取る、クレンジングからジェルによるピーリングなど
6. レーザー脱毛:米国のFDA認可のレーザー技術を使い、痛みのない最先端の処方
7. 毛根のケア:男女ともの抜け毛防止のための、2−3ヶ月のコース
8. ヒアルロン酸注入:30分ではりのある肌に仕上げる
9. 油分のコントロール:オイリー肌や毛穴が目立つ方向けの、植物エキスを使う処方

オンラインとオフラインでシームレスな対応

クリニックのサービスや清潔さなどについては、クオリティが高いと評判だという。施術や製品を販売するだけでなく、スキンケアの教育やコンサルテーションを行ったり、美についての本を出版して関心を盛り上げたり、とインドの女性たちの美容・スキンケアについての知識の底上げを行っている。

「Love What You See」という独自のブログでは、スキンケア、ヘアケアに関して、一般的な悩みに対しての回答を中心にした情報が提供され、一つのブランドとしてアピールを行う場を超えて、美容に対して皆が学べる場所となっている。

このように、オンラインでの活動では、IAMAI (Internet & Mobile Association of India) というインドの最も信頼できるインターネット・モバイル関係の協会から、2017年度のデジタル・マーケティング・アワードを受賞するほどきめこまやかだ。

kaya社のマーケティングVPがLinkedInでkaya社の考え方を語っているが、華やかさをアピールできるInstagramよりも、文章で説明ができるFacebookを重要視しているという。また、ゲーミフィケーションについても関心を持っている。少しサイトを見てみると、顧客エンゲージメントを高める施策を忠実に行なっている印象だ。奇抜な仕組みや派手なプロモーションはないが、シンプルで基本的な要素が組み込まれている。

kaya smiles」というロイヤルティプログラムでは、ポイントを貯めると旅行、ファッションなどのライフスタイル系企業のパートナーからの特典もある。ポイントは、クリニック、実店舗(kaya skin care bar)、オンラインショップとでシームレスに貯めることができ、囲い込みやリピーター増の施策のひとつとなっている。

画像6

インド男性の心をとらえたグルーミングのブランド「Beardo」

インドでは、1984年に創立されたインドのジレット社の前身を2005年に買収したP&Gが、インド男性の需要を調査し尽くして現地生産の「ジレット」ブランドで発売したカミソリが今でも人気だ。リバース・イノベーションの好例として、日本でも紹介されている

それに対してインドのアントレプレナーが2015年に始めた BeardoというブランドがECとオンラインマーケティングで消費者ニーズや時代の流れや意識変化を理解して、速いスピードで製品を世の中に送り出している。

画像7

出典:Beardo

そもそも、インドでは年齢、地域にかかわらずスタイリッシュな髭が大流行中だ。ボリウッドスター、国民的スポーツのクリケット選手は、髭のスタイルのお手本であり、モディ首相も白髪のヒゲがトレードマークだ。インドのオンラインファッションメディア、Outfit Trendでも「Beards(髭)」というカテゴリーがあり、「髭スタイルのベスト20」といった特集が組まれている。

画像8

出典:Outfit Trends

そのため、男性向けのグルーミング市場は2016年には前年17%の成長をみせている(Euromonitorの調査より)。なかでも同年に25%の成長を遂げたのがBeardoだ。

Beardoは、20〜35歳の若い男性をターゲットにしており、その中でもクリエイティブ層や学生を中心に、会社員男性にも支持されている。商品は、ヒゲ専用のワックス、シャンプー、オイル、フレグランスとから、スキンケア、ヘアケアなども揃う。

画像9

出典:Beardo

短期間で高価格帯の男性向けグルーミングのブランドを確立し、現在全売上のオンライン販売率はなんと75%。発売から2年経たない2017年春には大手消費財メーカーの資本が投入された。

画像10

出典:Beardo

Beardoも、ウェブサイトやアプリ、インスタグラムでコミュニティやファンづくりに積極的だ。たとえば、自分にどの髭が似合うのかチェックできるアプリBeardo Beard Boothを提供してスタイリングへのきっかけづくりをしたり、ポイントプログラムで購入だけでなく製品レビューとも紐付け、投稿をうながす仕組みづくりを行なっている。Facebookではライブショー「LiveFire」を配信し、エンゲージメントを高めている。

インド市場参入の足がかりとすべきものは?

前回で紹介したように、インドのすべての消費者のニーズや購買行動、生産から物流、販売、カスタマーケア、競合含めたマーケット環境までの全てをリサーチしたり、ゼロからそれらを自前で準備したりするのは、複雑なインド市場では大きな投資が必要だ。地元の販売代理店や、進出支援コンサルティング企業と組んでいくのもわかりやすい参入方法である。

一方で、今回紹介したKayaやBeardoは、大企業の一事業として育成されたり、あるいは投資を受けたりしつつ、デジタル・マーケティングもうまく使いこなして成長している。インドには、財閥やエネルギー企業などはじめとして、大企業も多い。消費財メーカーも含めて、そのような企業はオープンイノベーションと称して社内のアイデアコンテストはじめ、社外のテクノロジーやアイデアを求めてスタートアップや技術を持つ中小企業とのコラボレーションを積極的に行っている。そのような動きに参画することで、インド市場への第一歩へのきっかけになり、パートナー探しにもプラスになるはずだ。

Text: 望月奈津子(Natsuko Mochizuki)
Research: Shruti Sutwala
Top Image: Mila Supinskaya Glashchenko via Shutterstock


ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
7
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp