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サティス製薬、アジャイル手法でD2C企業を支えOEMプラットフォームの構築へ

◆ English version: Saticine Medical uses agile methods to support D2C companies and build OEM platforms
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日本のメンズコスメ業界を牽引する「バルクオム」や、日本初のパーソナライズヘアケアブランド「MEDULLA」など、いま注目のD2Cスタートアップを陰で支えるのが、サティス製薬だ。D2Cに特化したOEM企業として600を超えるパートナー企業に寄り添いながら、三方良しのモノづくりを貫く企業姿勢はどう誕生したのか。株式会社サティス製薬 代表取締役 山崎智士氏に話を聞いた。

株式会社サティス製薬
代表取締役社長 山崎智士氏

サティス製薬は、化粧品製造にあたり評価試験を綿密に行うことでも知られる。その理由のひとつが、ブランド経営者の意思決定スピードを高められる点にある。開発された製品のユニークさ、エンドユーザーに提供される価値が、客観的なエビデンスにより判断できるからだ。

それがなぜ可能なのか。1999年の創業時に遡ると、当時のサティス製薬は、製薬会社や化粧品会社から技術開発の一部を請け負うバイオベンチャーだった。企業が自社内で解決できないような難易度の高い案件に取り組んだ結果、高い開発技術と、日本の天然素材にこだわる70種類以上の原料開発技術、それを使って開発された製品のエビデンス(有効性・機能性・安全性)を客観的に可視化する高い評価試験技術がサティス製薬の3つの強みとなった。

OEM事業をはじめたのは、設立から4年目のことだ。サティス製薬のビジョンは「1人でも多くの女性に正しい綺麗を」。このビジョンを達成するためには、OEMのポジションから多くのブランドを生み出すのが得策と判断した。しかしながら、大手化粧品ブランドとそれを製造する会社との関係性は強固で入り込む余地がない。そこで、既存ブランドではなく、新たにブランドを立ち上げようと考えている企業や起業家、つまり異業種参入やスタートアップなどゼロベースで化粧品開発に取り組む企業向けのOEM事業に特化する決断をした。

新規参入×D2Cで高い商品競争力を実現

サティス製薬がパートナー企業との取り組み時に求める条件は、新規参入企業であるのと同時に、D2Cビジネスであること、そしてビジネスの志への共感性だ。

D2Cに特化することで、3つのメリットがあると山崎氏はいう。

1つ目は、製品の品質競争力が高められること。D2Cを主軸におくことで、「原価は〇〇%以下に抑えなければならない」といった業界の常識にとらわれない原価設計が可能になる。また、D2Cブランドは流通コストが抑えられるなど、P/L設計そのものに自由度があるため、「STAR製品」と呼ばれる戦略商品には原料に思い切ったコストを掛けるなど、チャンスが広げられる。

社内には、「STAR製品」
開発専門の部署もある

2つ目は、製品情報を顧客に直接届けられることだ。第三者が介入することで発生する情報乖離リスクをさげ、顧客の期待値を適正にコントロールできる。ブランドと顧客が信頼関係(エンゲージメント)を高める基本は、言行一致であること。つまり、広告で言っていることと、製品が体験させてくれることが一致することである。情報乖離を防ぐ取り組みは、地味のようでエンゲージメント向上に大きく貢献する。

そして3つ目は、顧客からのダイレクトなフィードバックが得られること。新しい製品が市場で成功するにあたって重要なのは、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)で、製品を市場にすり合わせていく必要がある。D2Cブランドは、顧客のフィードバックをもとに製品をアップデートしていけるため、PMFが高速に、かつ正確に実行できるメリットがある。売上データとは別の切り口で検証することができ、もしそこに乖離があればスピーディに修正することもできる。

サティス製薬の特徴は、このD2Cの強みを一緒に伸ばしていくところだ。作って終わりではなく、メーカーとつねに並走しながらPDCAを回し続けることで、顧客満足度の高い、よりよい製品をつくることができる。これを山崎氏は、「通常のOEM製造は船に荷物を積む仕事だが、一緒に船に乗り込んで航海にでるのがサティス製薬のやり方」と話す。

一般的に、スタート当初から順調にのびてきたスタートアップがある時点で直面する売上の壁、いわゆる「D2C死の谷」は3~5億円といわれており、それを越えるために、ロジスティックスやマネジメントの人件費といったコスト比重が大きくなり、経営が立ち行かなくなるケースも少なくない。現在、600社を超えるサティス製薬のパートナー企業の3年生存率は約20%といい、平均よりは高いものの8割近い企業は3年で事業から撤退してしまうという現実がある。そこでサティス製薬は、パートナー企業が利用できるさまざまなプラットフォームを用意して、何度でも化粧品製造にチャレンジできる土台を用意している。そのひとつが、「アジャイルプロジェクト」と呼ばれるものだ。

スタートアップが100万円以下でトライできる仕組み

「アジャイルプロジェクト」は、パートナー企業が小ロット、低コストでテスト販売をしながら、購入者の声や皮膚データをもとに処方を改良し、エンドユーザーの満足度を高速で高めていく一連の開発手法を指す。通常、1回の化粧品開発費用が300〜500万円近くするところを、サティス製薬では100万円以下でワントライが可能。さらに、在庫管理から発送業務までの一連の業務をサティス製薬に集約させることで、一般的に15〜20%と言われているフルフィルメントコストを10%近くまで圧縮することができる。先に述べたユーザーアンケートの設計や分析機能も組み込まれており、将来的にはマーケティングオートメーションを見据えた仕組みへと進化させていきたいと考えている。

そのほか、江東区門前仲町にある研究所では、D2Cに関するノウハウを共有するセミナーを頻繁に開催し、研究所内にあるライブラリースペースをパートナー企業にコワーキングスペースとして開放している。「業界誌や技術書、参考文献、他社製品、容器見本など、化粧品開発に必要な情報は、ほぼすべてここで入手することができる」と山崎氏がいうように、パートナー企業は、開発する化粧品の構想をここでじっくりと煮詰めることができる。

パートナー企業に開放されている
コワーキングスペース

ミッションから導きだされた3つのKPI

サティス製薬がOEM事業に特化し、自社ブランドをもたない理由は明快だ。「1つの会社がブランドシェアを拡大するには限界がある。OEMという手段を用いて、世の中のさまざまな課題解決に取り組むパートナー企業と共創し、自分たちの技術を製品を通して届けることが、先に述べたビジョンの実現につながっていく」と山崎氏。

そのため、社内で設定しているKPIもユニークだ。特定のブランドだけが成長している状態は好ましくないと考え、製品を通してどれだけエンドユーザーとの「タッチポイント」(当社製品を使用した人の数)を作れたか、1年で取引が発生した「アクティブブランド数」は増えているか、ブランドのコンセプトに沿った製品を同社が一気通貫で提供すべく「インストアシェア率」(パートナー企業の製品をすべてサティス製薬が担っていれば100%)を維持できているか、の3つの指標で、パートナー企業をどれだけパワフルに支えられたかを測っている。

OEM製造企業として、エシカルなモノづくりにもコミット

2019年3月、サティス製薬はOEM事業の一部を分割し、新たに日本ビューテック株式会社を設立した。製造企業として自然環境をはじめとした社会課題に向き合い、製品ロスや包材の大量消費を削減し、持続可能性を重視した内容物の開発など、グローバルなトレンドでもあるエシカルな製品開発に特化したOEM事業を強化していく。また、収益を「ビューティテック」(ここではビューティ産業がゼロエミッションに進化するためのテクノロジー)にも積極的に投資し、完成したテクノロジーは、世界のモノづくり企業へフリーライセンスで提供をしていく予定だという。

サティス製薬は、化粧品製造業の新しいビジネスモデルを創造するインキュベータでありながら、その取組は、OEM事業の範囲を超えて、スタートアップを支えるアクセラレータプログラムのようでもあり、プラットフォーム化することで一種の経済圏をつくりあげようとしていると捉えることもできる。6月7日には、約35億円の資金調達を発表しており、その勢いはますます加速しそうだ。

Text: 小野梨奈(Lina Ono) Photos: 株式会社サティス製薬提供
Top image: totojang1977 via shutterstock

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