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イニスフリーが仕掛ける体験の楽しさ。同じ再上陸組「NYX」との共通点は?

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前回紹介したNYX Professional Makeup(ニックス プロフェッショナル メイクアップ・以下NYX)同様に、この春、東京・表参道に新店舗をオープンし、日本に再上陸を果たしたことが話題となったのが韓国発のスキンケアブランド「イニスフリー(innisfree)」だ。背景はまったく異なるが、奇しくもこのタイミングでの日本展開には、どちらにも綿密な戦略がある。

2013年に韓流ブームとともに日本でEC展開を試みたイニスフリー。が、当時は本来のブランドのよさがなかなか浸透せずに無念の撤退だった。そして今年、満を持して日本への再上陸を果たした。いまK-Beautyといえば、メイクアイテムが主要だが、イニスフリーはスキンケアブランド。再上陸に込めた思いを、マーケティングチーム・谷川麻弥加氏に伺った。

「前回の日本でのローンチは、韓国、中国に続き3カ国めだった。当時は海外ローンチの経験があまりなく一度諦めざるを得なかったが、その後、知見を重ねて世界11カ国でローンチを成功させた。とくに中国、ニューヨークでの成功をふまえ、3大マーケットのひとつとして日本市場の分析も重ねていたこともあり、今回の日本再上陸に踏み切った」

ニューヨークでのローンチは、東京での再スタートの直前、2017年末だ。ニューヨークではスキンケアでの売上が好調だという。K-Beautyのトレンドが成功の要因につながっているのだろうか。

「韓国でうまくいったことを他国で行なったとしても、必ずしもうまくいくとは限らない。日本は韓国の隣の国とはいえ、売れるカラーなども異なり、販売手法ももちろん変わってくる。また、K-Beautyといえばメイクアイテムのイメージが強いが、イニスフリーはスキンケアブランドでもある。スキンケア、メイク、ライフスタイルなどと網羅的にアイテムをそろえているので、K-BeautyのトレンドにのってブランドをPRすることはあまり考えていない。それよりも、イニスフリーというブランドの本来の世界観への認知を高めることが最優先だと思っている」

K-Beautyという枠にとらわれないのは、中国やニューヨークでの展開にも通じる。それぞれの地域性を考えローカライズするのだ。中国でも米国でも、モデルやインフルエンサーをその地で起用し、カラーバリエーションを変化させるなどの施策をとった。ただ、どの国に展開しようともぶれないのは谷川氏のいうとおり、イニスフリーの世界観である。

韓国コスメのスキンケアの素晴らしさもアピール

「韓国の女性がきれいなのはどうしてだろう? と考えたときに、ベースとなる肌のスキンケアに気を使っているから、というのをイニスフリーを通じて広めていく。K-Beautyというジャンルにとらわれず、日本でもスキンケアブランドとして根づかせていきたいと考えている」

スキンケアが強いブランドとして、いまのトレンドを体現するアイテムもしっかりもっている。いま、韓国ではCICA(シカ/ラテン語で再生を意味する)クリームというアイテム群が人気だが、それに該当するのがビジャ シカバームだ。日本での販売もしているが、日本での薬機法のもとでは商品本来の良さをきちんと訴求するのが難しく、今後の課題ではあるという。

その意味で、今回の日本展開における主力商品としているのは、グローバルでも知名度が高い「グリーンティーシード セラム」だ。

韓国・チェジュ島の原料を生かし、プチプラながら素材の質のよさ、しっかりした製造工程をもつスキンケアブランドとしての認知度アップとしてもっともふさわしいアイテムとして打ち出していくという。

イニスフリーのソーシャル戦略はローカライズ

日本でのブランド認知を高めるためには、もちろんSNSを使ったデジタル戦略は欠かせない。

「デジタルは、グローバルで統一した世界観を保ちながら、地域性を同時に出していく。基本は、インスタグラムとインフルエンサーマーケティング。インスタグラムからECへの売り上げも大切だが、それよりもイニスフリーの世界観を知っていただくことに重きをおく、というのが本国からのオーダーでもある。インルフエンサーのキャスティングについては、ローカルで選んでいる」

K-POP人気には頼らず、スキンケアブランドとしての訴求

また、プロモーションでは、最初の日本展開時のようにアイドルを起用することはないという。

「アイドルは新陳代謝も早く、これまでを振り返ってもK-POPの流行は波がある。その波に乗っているときはいいが、一旦ひいてしまったときにブランドも一緒に消えてしまうというのは避けたい。また、K-POP好きの方だけではなく、より多くの方にブランドを知っていただきたいことから、今回はアイドルではなくインフルエンサーの起用にこだわっている」

そのインフルエンサーの起用法を具体的に聞いてみた。

「ローンチのタイミングでは、ある程度のディレクションは出したが、それはあくまでも最初のブランドイメージが大切だと考えたためだ。今後は、ただインスタグラムに投稿してもらう、というだけでなく、一緒にアンバサダーのような形で、ブランドを一緒に育てていけたらと考えている」

K-Beautyの枠にとらわれない展開ではあるが、一方で韓国発ブランドの「らしさ」は大切にしていくという。

スピード感と、ユーザーとの交流を重要視

「ティントやクッションファンデなどのトレンドを生み出す力、カルチャーを生み出すスピード、開発のスピードなど、K-Beautyらしいところは最大生かしていきたい。同時に、グローバルで成功したスキンケアブランドとしてのイメージも大事にしたいので、そこはバランスを見てやっていきたい」

スピーディに、顧客の声を第一に、という点においては、「いまほしい」や「いま売れている」の声を瞬時に察知し、店舗の品揃えに反映している。そしてこの春、韓国では、ユーザーの声をもとにリップを商品化した。

「韓国で4月にローンチしたリップは、SNS上の声と、ビューティコミュニティの1万5千件のコメントをひろって開発されたもの。この季節に何色のリップをつけたい? というユーザーの意見を反映した商品だ」

さらに5月にもユーザーの声からできたリップをローンチ予定で、いずれ日本でもこのような取り組みができたら、と谷川氏は話す。さらに、「プチプラ」というジャンルでの戦い方を伺ってみた。

「プチプラとは、『affodable(手が届く価格)』ということだと捉えている。それに対して、イニスフリーは『reasonable(適切な価格)』だと考えている。単に価格が安いということではなく、価格と品質が見合って、手に取りやすい商品だ。店頭でカウンセリングを受けることができるというのも、いわゆるプチプラというジャンルとは異なると考えている。顧客の声に対応して商品を開発していく、というのも他との差別化になっている」

4月27日には、原宿・竹下通りに2号店をオープン予定のイニスフリー。ここではVRを設置し、ブランドの生まれたチェジュ島の風景やブランドストーリーを体験できる。

一方、1号店である表参道の店舗では、イニスフリーの商品を使ったスキンケアやメイクのレッスンが開催されたり、容器のリサイクルを受け付け、店舗で使えるポイントを付与したりという試みがある。集まったリサイクルボトルを使ったワークショップなども考えており、意識の高いユーザーに店舗に足を運んでもらう仕掛けを今後行っていくという。デジタルとリアルの流れをうまく回していくことが、今後のイニスフリーの成長に寄与するに違いない。

ソーシャルとリアル店舗で、体験の共有をしてもらう

NYXとイニスフリーの再上陸には、いわゆるコスパのよいブランドという以外に2つの大きな共通点がある。ブランドの世界観を店舗でしっかりと表現し、ユーザーが店舗に足を運びたくなる仕掛け、ソーシャルで広めたくなる仕掛けをつくっていることだ。

1度目の日本展開では、本来の良さがなかなか伝わりにくかった両ブランドが、SNS時代により、伝えたかった本質が広がりやすくなったというのは確かにある。が、それだけではない。ソーシャルでどのような体験を伝えてもらうのかを明確に見据えていることが最大のポイントだ。

思わず伝えたくなる体験を、ブランドの世界観とあわせてどう展開するのか。どのブランドも悩むことが、NYXとイニスフリーは2度目の日本展開で、すでにはっきりと手中におさめているのを感じた。どちらも、これからが本格展開なのだ。

Text: 編集部






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