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世界でも類のない「皮脂RNAモニタリング」技術、花王のパーソナライズサービス構想

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2020年11月21日、花王株式会社は皮脂から採取したRNAを網羅的に解析する独自技術「皮脂RNAモニタリング」を応用した、美容カウンセリングサービスのテスト運用を開始した。生まれながらの肌の性質を決定する不変のDNAではなく、さまざまな環境要因で変化するRNAをモニタリングし、そこにAI技術を組み合わせることで、外的要因や生活習慣などで日々変化する肌内部の状態を精度高く予測することが可能となる。新しいパーソナライズへのアプローチとして世界を独走する可能性を秘めたRNAモニタリング技術について、花王株式会社 生物科学研究所 大矢直樹氏と、同社 スキンケア研究所 天野恭子氏に話を聞いた。

皮脂RNAモニタリングで環境要因などで変化する肌状態を把握

「RNAモニタリング」とは、2018年11月に花王が発表した5つの革新的技術の1つで、皮脂のなかに存在する人のRNA(リボ核酸)を網羅的に分析する独自の技術だ。

RNAは、DNA情報にもとづき、酵素やホルモンをはじめとした体内でさまざまな働きをするタンパク質を生み出す元となる分子である。DNAは、その人固有のものとして一生変化しないのに対し、RNAは、体の部位や組織ごとに種類や量が異なるほか、その時の体調や環境によって日々変化する性質をもつ。DNA解析からスキンケアをパーソナライズするサービスは存在するが、DNAは生まれながら持つ肌の性質を捉えるのに対し、RNAはさまざまな環境要因で日々変化する肌状態を知るのに有用であるという点で、大きな違いがある。

図 BeautyTech様-1

皮膚から採取可能な生体試料

しかし、皮膚のRNA情報を取得するためには、皮膚を外科的に切り取るなど侵襲性の高い生検が必要で気軽に採取できるものではなく、また、皮膚にはRNAを分解する酵素(RNase)が豊富に存在しているため、分析可能なRNAを皮膚から回収することは難しいと考えられてきた。

そこに突破口を開いたのが、長年、皮膚科学研究を続けてきた花王である。皮脂腺が皮脂を分泌する際に、細胞内の全成分をすべて放出する特殊な機構(全分泌機構)があることに着目。皮脂のなかには、脂質だけではなく、細胞内成分の1つであるRNAも含まれているのではないかと予測して研究を続けた結果、皮脂中にRNAが安定的に存在していることを発見した。

さらに、最先端の解析装置と解析方法を用いることで、皮脂中にある約1万3,000種のRNA発現情報を解析できる独自の技術「皮脂RNAモニタリング」を確立することに成功した。タンパク質解析では、可溶化の課題などもあり、RNAほどの網羅性を発揮することは難しい。

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