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アモーレパシフィック、睡眠×化粧品・健康食品でパーソナライズの新市場開拓

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アモーレパシフィックは、2022年10月20日、韓国・仁川市の同社R&Iセンターで、AIベースのスリープテックソリューションを提供する国内スタートアップのAsleep(エイスリープ)と業務提携を結んだ。アモーレパシフィックが開発する化粧品や健康食品に睡眠研究やデータを融合させることで、睡眠市場における競争力を強化していく狙いだ。韓国の睡眠市場の現状とAsleepが保有する技術とともに、協業に至った背景とその目指すところをレポートする。

世界トップクラスの"睡眠不足国家"である韓国

韓国は世界トップクラスの“睡眠不足国家”だというOECD(経済協力開発機構)の調査結果がある。2014年に行われた国別の一日平均睡眠時間調査によれば、韓国人の平均睡眠時間は主要調査対象国18カ国のなかで最も短い7時間49分(調査国平均は8時間22分)だ。この傾向には現在でも大きな変化はなく、より良い睡眠に対する潜在需要は高い。近年では睡眠と経済学という言葉を掛け合わせた「スリーポノミクス」というキーワードもビジネスシーンで頻繁に使われ始めている。

韓国睡眠産業協会によると、10年前に約4,800億ウォン(約502億円)だった韓国睡眠市場の規模は、2022年に3兆ウォン(約3,100億円)台まで拡大しているという。不眠症や睡眠障害を患う人が増加しており、熟睡を促すための商品需要の高まりが加速していることが市場拡大の背景にある。韓国健康保険審査評価院によれば、睡眠障害で病院を訪れた患者は2015年に約45万人だったが、2020年には約67万人で毎年増えている状況とされる。

韓国大手ECのひとつMarket Kurly(マーケットカーリー)は、2022年1〜7月の睡眠関連製品の販売量が、昨年同期比7.5倍に増加したと発表している。とくに本格的な猛暑が始まった同年7月には、寝具類の販売量が前月比3.3倍増加した。Gmarket(ジーマーケット)など他のECの発表でも、布団や睡眠灯、アロマキャンドル、湿度調節機器など睡眠グッズの売上が軒並み好調という。もともと韓国社会では、長時間労働やハードワークが企業文化として定着しているが、これに加えて近年では、気候変動による温暖化、パンデミックによる生活環境やリズムの変化といった要因が、より良い睡眠を求める人々の欲求をさらに刺激している。

アモーレパシフィックは、韓国国内、そしてグローバル市場においても拡大している“熟睡需要”に新たなビジネス機会を見出しており、競争力確保という文脈で今回のAsleepとの提携が実現した。

MOU(M&Aを前提とした基本合意書)を締結したアモーレパシフィックとAsleep
出典:アモーレパシフィック プレスリリース

AIで寝息から睡眠状態を判断するAsleepと提携

Asleepは、人工知能(AI)やビッグデータ技術を活用し、睡眠中の寝息の音を分析することで睡眠段階を診断する独自技術を保有している。スリープテック関連企業は、ウェアラブルなどの専用デバイスとともにサービスを提供することが多いが、Asleepの技術は診断の際に特別なハードウェアを必要とせず、スマートフォンに内蔵されたマイクを通して精密な測定が可能である点が特徴だ。室内外の騒音や布団が擦れる音などと寝息を完全に分別することが可能で、音から睡眠状態を分析するAI技術としては世界トップクラスという評価を受けている。

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