見出し画像

3回目のFaB Tokyoで起業家たちが語るフェムテック、D2C、海外市場開拓

◆ English version: Femtech, D2C and overseas market exploration focal points at FaB Tokyo’s 3rd meetup
New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

2019年12月13日、FaB Tokyo主催の第3回ミートアップイベントが東京・青山のピースオブケイクを会場に開催された。投資家をモデレーターに、東京をベースにするスタートアップ7社が3つのパネルディスカッションに登壇。セッションの1つは英語で行われ、80名近くの多様性ある参加者を集めた。

今回のミートアップは、佐賀県を拠点に、フランスのCosmetic Valleyをはじめとする海外産業クラスターと提携し、日本企業のグローバルビジネスサポートを推進するジャパン・コスメティックセンター(JCC)が協賛。そのミッションや現在進行中のプロジェクトを紹介するプレゼンテーションや、ブースを設置しての案内も行われた。

また、会場を提供したピースオブケイクからも、クリエーターがコンテンツを投稿するプラットフォームであるnoteの企業向けサービスと、スタートアップ向けの特別プランについて説明があり、コミュニティ全体で起業家をさまざまな角度から応援し、ともに成長を目指して積極的に参与する意思が感じられたのも特徴だ。

会の冒頭、FaB(Fashion and BeautyTech )東京支部のチャプターヘッドで、サンフランシスコを拠点に北米向けに日本のコスメを販売するECサイトCosme Huntを運営する高橋クロエ氏が、美容とファッション業界において新しい価値を創造する投資家とスタートアップのコミュニティFaBについて説明。

元ランコムCEOのオディール・ルジョル(Odile Roujol)氏が発起人としてスタートしたFaBがわずか2年弱で、米国各地のほか、パリやロンドン、上海、ソウルなど世界15都市にチャプターを持ち、延べ3,000人を超える参加者規模に成長したことを紹介した。

画像11

高橋クロエ氏

各都市で開かれるミートアップにはそれぞれの土地柄がにじみでる。ここ東京でもそれは例外ではない。欧米とは異なり、ジェンダー分野などで、まだまだ保守的な面の強い日本の社会においてサービスを拡げていくことの難しさや、製品づくりへの飽くなきこだわり、投資家との関係や海外戦略について交わされた率直な意見から、日本のスタートアップの志の高さと問題意識が浮かび上がる。

画像11

日本のフェムテックはこれからが勝負

「日本のFemtechトレンド」と題したパネル1。モデレーターのグローバル・ブレイン株式会社プリンシパルの皆川朋子氏は、ベンチャーキャピタリストとして世界のフェムテックトレンドについて説明。とくに米国でのサービスの多様さにふれた。

その反面、「生理の話や自分の体についてなど、日本では、たとえ女性同士であってもオープンに話すのにはためらいや抵抗が強い。また、婦人科を気軽に訪れにくい風潮もある」と語るのは、生理を軸に女性のライフスタイルに関わる情報や記事を発信しながら、生理関連用品などを販売するメディアコマース「ランドリーボックス」CEOの西本美沙氏だ。

女性の体の悩みや妊娠、出産への価値観は千差万別だが、ほかの人との意見交換ができないがために、一人で悶々と悩んでいるケースも少なくない。だから「情報を可視化して共有する」プラットフォームとしてランドリーボックスを立ち上げた。

画像2

西史織氏(左)と西本美沙氏

同様に、女性が自分の体を知ることは重要であるにも関わらず、情報が少なすぎるとするのが、企業ユーザーと医療機関をつなぎ卵子凍結保存サービス「Stokk」を運営する、ステルラ代表の西史織氏である。米国ではFacebookやアップルなど卵子凍結にかかる高額な費用のサポートを社員の福利厚生の一環とする企業が増えており、社員の満足度の向上や離職率の低下など、人材確保の観点から企業にとってもプラスになっていると西氏は話す。

日本でも、「キャリアを優先して、今は子どもをつくりたくないが、将来的には欲しい」という人にとって、卵子凍結はキャリアプランを含めた人生設計をより柔軟にし、かつ自分の意思にもとづいた計画を可能にしてくれる。また、不妊治療が必要になった場合にも大きな助けとなる。現状は法的整備もまだ不十分な段階だが、日本企業の福利厚生に卵子凍結が当たり前のこととして組み込まれる日をStokkは目指している。

一方、世界初のIoTオーダーメイドサプリメントサーバーを開発・販売しているドリコスでは、ユーザーそれぞれの生理周期のホルモンバランスや生活習慣、悩みと同期した配合のサプリを専用本体がその都度調合し抽出する、女性向けサービス「fem server」の提供を開始する。先ごろ行った、クラウドファンディングのMakuakeでの先行予約販売ではスタート直後の1時間で目標金額を達成したという。

画像3

皆川朋子氏(左)と竹康宏氏

同社の創業者兼CEOの竹康宏氏は、「サプリメントサーバーの顧客に女性が多く、生理の不調を和らげるサプリが欲しいとのリクエストに応えて開発した」と、ユーザーの声が起点だったことを明かす。「アップルウォッチをはじめ、日常生活の生体データをトラッキング管理するデバイスはたくさんあるが、提案される(体調の)改善方法は自己管理にまつわるものが多く“それができればとっくにやっている”とソリューションまでいきつかない。その意味で、きちんと解決法までをサービス提供しているところは少ない」と竹氏は話し、一人ひとり異なる悩みの解決に日々寄り添い、サプリメントという具体的な「ケア」をその場で提示できるのがドリコスのユニークな強みであると強調した。

画像4

D2Cは既存ビジネスのカウンターカルチャー

続いてのパネル2では「ファッションと美容D2Cスタートアップがスケールアップするには」をテーマに、メンズスキンケアブランド「BULK HOMME」を展開する株式会社バルクオム代表取締役CEO 野口卓也氏と、日本最大級のメガネ・サングラスのECストアおよび福井県鯖江製のオリジナルブランドの製造販売を手がけるオーマイグラス代表取締役社長の清川忠康氏が登壇。両社はそれぞれ創業から7年、9年という、日本のD2Cでは“中堅”といえる存在で、ここまで拡大した裏側にある資金調達や人材採用など、ビジネスマネジメントに関して率直な発言がなされた。

画像5

野口卓也(左)と清川忠康氏

野口氏は「逆に聞きたいのだけれど」と前置きし、投資する側からすれば“D2Cのスケールアップ”というのはどのくらいの規模に成長することを指すのかと、モデレーターを務めたベンチャーキャピタルW ventures代表の東明宏氏に問いかける。日本においては一般的に「投資する側からすれば、上場を目指せる規模として、数十億の売上げで数億円くらいの利益を出すイメージだ」と東氏は答え、もちろん、大企業に巨額買収されるエグジットプランもあると付け加える。

また、資金調達の可否は企業の存続をも左右する。野口氏はエクイティだけがファイナンスの道ではなく、デット(負債・銀行からの借り入れ)も選択肢にいれるべきとする。清川氏は自身の経験から、少なくとも50人以上の人に会って事業説明をすべきと話し、野口氏も「10人、20人で諦めていてはダメ」と同意、熱意とフットワークがあれば、可能性をみてくれる投資家や金融機関担当者に出会えると両氏は示唆する。

画像6

スタッフの採用に関しては、オーマイグラスは、マネージャー層は内部から登用している。かつては外部の業界経験者を迎えたこともあるが、「新しい常識を打ち立てメガネ業界を変える」という自社の哲学が浸透しにくかったという。

野口氏も「自分のやりたいことをカタチにする、既存の事業アイディアに対するカウンターカルチャーがD2C。(採用者には)スキルを教えていけばいいので、カルチャーファースト」と、企業の理念を共有できる人材を集めて育てるとする。そして、「最初から世界一のメンズコスメブランドを目指している。今まで誰もやったことのない道筋で大きくなろうとしているわけだから、業界経験者の意見は参考にならないことも多い」とD2Cとしての自負をみせる。

画像7

モデレーターの東 明宏氏(左)

今後は大企業発のD2Cブランドも増えて競争が激しくなることが予想されるが、どう対処していくのか。「アセットを持っているブランドとは競合しない場所で違うゲームをやればいい」と話すのは清川氏だ。たとえば、高額な賃料が発生するいわゆる“一等地”ではなく、あえて外したところを拠点に独自の発信スタイルを貫くことで個性をだすなどが考えられる。

「(他企業には)アフィリエイトなどきちんと実行しているところはあまりない」という野口氏は、これまでバルクオムがやってきた、丁寧かつ綿密に考え抜かれたデジタルマーケティングを続けることで十分な勝算があるとの見方を示した。

独自性のあるアイディアは世界でも受け入れられる

今回のミートアップではFaB Tokyo初の試みとして、「グローバルに活躍する日本のスタートアップ」と題した英語によるパネルディスカッションも行われた。モデレーターをつとめたのは、WiL のパートナー、梶原奈美子氏だ。

画像8

左から、梶原奈美子氏、
酒井里奈氏、そして橋本舜氏

登壇者の1人で、休耕田を活用して栽培したオーガニック米を原料にプレミアムエタノールの製造販売をするファーメンステーション代表取締役の酒井里奈氏は、日本と海外の大きな違いはサステナブルやエシカルに対する意識の高さだという。とくに、気候変動や海洋汚染など環境問題に取り組む動きが市民レベルのアクションになっている欧米では、クリーンビューティに大きな注目が集まっている。そんななか、ほとんどの化粧品に含まれる原料のエタノールをオーガニック素材で提供する同社の試みは高く評価されており、いくつかの大手海外化粧品ブランドからアプローチを受け、商談も進行中だ。

ファーメンステーションは日本の発酵技術を利用しており、アップルサイダーを作ったりんごの搾りかすからエタノールを抽出し、ルームフレグランス・スプレーに使用するなどの商品化もしている。海外で定着したヘルシーで高品質という日本製品のイメージに加えて、こうした廃棄物を再利用するサステナブルな生産体制が、グローバルへの進出を後押ししているようだ。

現在は製造設備のキャパシティーから供給量に限界があるので、今後は自社の開発技術を国外での生産に活かすことも考えている。ただし、日本を拠点に美容系事業と投資を行なっているヨーロッパから参加した起業家からは「海外では、商品そのものがというより、日本のものづくりの姿勢や作業に手間を惜しまない態度などが尊敬され、価値だとされている。“日本で作る”という点を手放すべきではないと思う」との意見も出された。

画像9

一方、26種のビタミンやミネラル、タンパク質や食物繊維など体に必要な栄養素をバランスよく1食分に含めたパンやヌードルである「Nutritionally-balanced Staple Food」という、米国にこれまでになかったコンセプトの食品を持ち込んでオンラインでの販売を開始したのがベースフードである。代表取締役の橋本舜氏もまた、米国人の食のヘルシー志向や大都市でのラーメンブームが、第一弾商品として投入したBase Noodlesの好感触につながっているとみている。

米国進出にあたり、ベースフードはサンフランシスコにオフィスを開設して3人の現地スタッフチームを抱えた。いずれも、ベースフードのコンセプトに共鳴して自ら進んで参画したメンバーだといい、彼らの持つ米国でのネットワークがビジネスを展開するうえで重要な役割を果たしていると話す。州ごとに異なるなどレギュレーションが複雑で、ビジネスをするうえで頭の痛い問題だが、そのような場面でも米国社会の事情に通じた現地社員の存在に助けられている。

画像10

最後に、梶原氏より海外進出を志向する日本のスタートアップへのメッセージを求められた両氏。創業当初から海外への展開を考えていた橋本氏は「Go abroad and meet people. Their feedback is very precious.(海外に出て、人々に会うべきだ。彼らのフィードバックはこのうえなく貴重だ。)」とエールを送る。

酒井氏も同じく「In the world, a huge market is there. Some will say to wait until you are really ready but it may be too late.(世界には大きなマーケットが広がっている。準備がしっかり整うまで待った方がいいという人もいるかもしれない。でも、それでは遅すぎる。)」と語り、まずは動いてみようと挑戦を呼びかけた。

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
撮影:中山実華 (C) MIKA NAKAYAMA 

ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
21
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp