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パリ初開催のBeautyTech Meetup、 キーワードは「コミュニティ」と「社会的使命感」

◆ English version: @BeautyTechParis shows us a sneak peek into the future of cosmetics and fashion industry: Clean and Sustainable Beauty
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仏ロレアル出身の女性投資家、オディール・ルジョル(Odile Roujol)によって設立された世界初のビューティテック・コミュニティ「@BeautyTechSF」。すでに成功している起業家がスタートアップにアドバイスするなど、起業家同士や投資家が情報交換できる場を作ることを目的に、2017年4月にサンフランシスコでスタートした。2018年1月にサンフランシスコで催されたミートアップや、4月の東京でのミートアップの様子は本サイトですでに紹介した。今回は5月24日に初めてパリで開催されたBeautyTech Meetup in Parisの模様を3回に分けてレポートする。

パリといえば、美容とファッションの流行発信地。ロレアル、LVMHグループなど大手化粧品企業やラグジュアリーブランドがひしめくフランスでビジネスチャンスをつかんだ若い起業家たちがパネリストとしてステージに立ち、成功&失敗体験、投資家とのエピソードなどを率直に語った。

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会場風景。100人あまりの参加者が集った

会場となったのは、50人以上の企業家で構成されるインキュベーターグループ50 Partenersのコワーキングスペース。スタートアップ、投資家、大手化粧品企業の幹部など100名が集まり熱気に包まれるなか、登壇イベントが下記の3部構成で行われた。

第1部 化粧品業界の傾向とビジネス・エコシステム
第2部 2人の起業家のビジネスモデルと今後の展望
第3部 5人のスタートアップのビジネスモデルと社会へのインパクト

まずは第1部の登壇者を紹介する。

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オディール・ルジョル(Odile Roujol)
@BeautyTechSF主催者

シリコンバレーの女性投資家。化粧品会社ロレアル傘下のランコムのCEO、仏大手通信会社Orangeのデータ&戦略ディレクターなどを経て、2016年よりサンフランシスコに在住。翌年@BeautyTechSFを設立し、ニューヨーク、ソウル、東京など世界各地でミートアップを開催。すでに400 名を超える起業家、投資家が参加している。50 Partenarsの一員でもある。

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ロール・ブガン(Laure Bouguen )
Hokaran創業者

26歳の若い起業家。ブルターニュ地方で祖母が大麻草を栽培していたことから、幼い頃から大麻草の健康に良い効能を知っていた。薬学研究者、農学者、栽培者とともにフランスで初めて大麻草を配合した化粧品を開発。2017年に起業し、セフォラのアクセラレータープログラムやロレアルの支援を受けながら、さらなる展開を目指す。商品はECサイトのほか、自然派製品を扱うNature & Découvertes 90店舗、Chez Birchboxで販売。

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ネリー・ピット(Nelly Pitt)
BeautyMix創業者

2018年に弟とともに起業。自分に合う敏感肌用の化粧品が見つからないという消費者の声から、天然原料を使ったオリジナルの化粧品を自宅で作れる小型の美容器を開発し、スキンケア、ヘアケア、メイクアップ製品がボタンひとつで作成できるコスメDIYを提案。2017年にコスメ業界のスタートアップコンクールStart-in-Cosmeticで入賞後、セフォラから商品化へのサポート、技術面ではフランス高等教育研究機関エコール・ポリテクニークの協力を得て開発を進める。BeautyMixは2018年12月発売予定。

モデレーターはネット業界の成功起業家で構成される50 Partenersの創業メンバー、ヴィルジニー・オガニュールが務め、和やかな雰囲気の中、「現在の化粧品業界の大きな傾向」について語られた。

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パネルディスカッションの模様

まずは、フランスとシリコンバレーの事情をよく知るルジョルが、美容業界におきている2つの潮流を指摘した。「今の傾向(を言い表わすキーワード)はなんといっても“コミュニティ”。ミレニアル世代の起業家はソーシャルメディアを通じてつながり、それぞれの経験をシェアしあっている。2つ目は、起業家がビジネスを立ち上げた動機が、環境、社会、健康に関心があり“人々の暮らしを良くしたい”という想いからで、社会的使命感を持っている点。」と語り、サンフランシスコのミートアップの登壇者だったティナ・シャーキーを例にあげた。

「彼女は7,000万ドルの資金調達に成功し、食品、化粧品、日用品などを扱うECサイトBrandlessを創業。お金にあまり余裕がなくても、健康に気を使って暮らしていきたいとの声に応えて、商品は3ドル均一、すべてケミカルフリーで、そのほとんどがオーガニック製品というビジネスを実現している。ロビー活動もせず、体に有害な成分を全く使用しない商品を提供するのは、企業努力が必要」として、「良いことをしたい」という動機が強いことは、ミートアップを開催したNYやソウルでも同じく感じたという。

ブガンは、商品のトレンドは「クリーン」「パーソナライゼーション」「マルチタスク」にあるとする。オーガニックなど自然由来で高い効果をもたらす素材を使用し、一人ひとりの細分化した悩みに対応したアイテム、また、1つの製品に複数の機能をもたせるアイテムが見られる。これらはより高いパフォーマンスを発揮する成分の研究やフォーミュラの開発を推進しているという。さらに、小さなブランドの成功要因として、成分、生産、流通過程などのトレーサビリティを明快にできて、創業者の思いや起業ストーリーをダイレクトに伝えやすいところと分析した。

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登壇者。左からロール・ブガン、ネリー・ピット

さらに、ピットが、イノベーションは大手企業だけが成しえるものではなく、小さな企業からも、今までにないニッチでユニークな製品が生まれていることを付け加えた。

続いて話し合われたのは、「フランスとシリコンバレーのビジネス・エコシステムの強みの違い」について。フランスのビューティテック系スタートアップと言えば、今年1月にラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES」で注目を浴びたことでも記憶に新しい。それから半年をへてフレンチ・テック業界、とりわけスタートアップの動向はどのようになっているのだろう。

ブガンが、スタートアップが最も頭を悩ませる問題、資金集めについてストレートに語った。「大手企業は何百万ユーロの資金を1ヶ月あれば集められる。でも、小さな企業にとっては大変なこと。今、テクノロジー関連企業は投資を受けやすいけれど、将来性があるのはテックだけではない。年商100〜200万ユーロ以下の化粧品のスタートアップをサポートするシステムが必要」と、会場に集まったインキュベーター、投資家に強く訴えた。

それを受けて、フランスとシリコンバレーの双方に詳しいルジョルは、「実はそれはシリコンバレーも同じである」と明かす。「投資家は500万ドル以上の収益をあげる企業には興味を示すが、それ以下には厳しい状況。ただし、シリコンバレーの強みはコミュニケーションのアクセシビリティが高い」と声を大きくした。

一般にPay it forward(ペイフォワード)と呼ばれるが、誰かから受けた親切を別の誰かへの新しい親切でつないでいく意識が高く、シリコンバレーでは、著名な投資家も含め、誰もが気軽にカフェで30分ほど話を聞いてくれ、助け合う風土があるという。「競合でもたとえ知らない人でもLinkedInでコンタクトすれば必ず会ってくれる」ので、日常的に色々な分野の人やメンターと会い、悩みを相談し、解決策を模索しながらビジネスモデルを磨き上げていくそうだ。そして、フランスでもこうしたアクセシビリティをもっと高めていくべきだと述べた。

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真剣に耳を傾ける聴衆

フランス中部シャルトルにある世界最大の化粧品産業クラスター「コスメティックバレー」は、大手化粧品メーカーをはじめ、大学、研究機関、工場、サプライヤーなどが集積したビジネス・エコシステムが整った環境だ。そこで開発を進めるピットは、フランスらしさについてコメントし、「フランスは独特のsavoir-faire(ノウハウ・技術)やsavoir-vivre(ライフスタイル)が根付いていて、すべてのものにCulture(文化)が現れている。私は大学でエンジニアリングを学ぶ理系だったけれど、哲学の授業も受けてきた。そういった背景が、化粧品や高級品にフランスらしさ、“フレンチ・タッチ”を生み出す」と語った。

フレンチ・テックはフレンチ・タッチ。なるほど確かに、伝統のオーガニック原料へのこだわりや、地に足のついた生活と身の回りのことからインスピレーションを得るところなど、今回登壇したスタートアップのビジネスにもフレンチ・タッチが随所に感じられた。長い時間をかけ育まれてきた自国の文化や歴史がおのずと染み付いているフランスでは、最先端テクノロジーも企業家たちも例外ではない。

次回は、美容・ファッションの分野で成功している2人の起業家のビジネスモデルを紹介し、その次にはフランスの新星スタートアップ5社が登場したセッションをレポートする。

Text: 谷素子(Motoko Tani)

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