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仏ブランドが強い理由のひとつ、1500の企業が集うコスメティックバレーの存在

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フランスの化粧品産業の国内年間売上高は300億ユーロ(約3兆8700億円)、雇用者150,000人を誇る。国内産業のうち輸出額では航空産業につぎ第2位となり、フランスにとって競争力のある重要な産業だ。それを支える強力な基盤が、コスメティックバレーだ。

世界最大手ロレアル、LVMH、シャネル、ロクシタンなど、有名企業が注目を集めるフランスだが、国内の化粧品企業の8割は中小企業。大小とりまぜてこれらの企業を牽引しているのが、コスメティックバレーと呼ばれる拠点である。

IT企業などが集まる米国のシリコンバレーを模して英語で名付けられたこの組織は、フランス中部のシャルトル市を中心に化粧品に関わる企業が集まった世界最大級の化粧品産業集積地だ。フランスの化粧品産業の発展のために、1994年にアソシエーションとして設立されたが、2005年に仏政府から「競争力産業クラスター(競争力拠点)」に認定されたことにより、著しく発展を遂げた。

写真/ コスメティックバレーの本部はユネスコ世界遺産の
シャルトル大聖堂の目の前。ロゴマークはピンクの牡丹を採用

このクラスターの目的は産業・研究・教育が共同して研究開発を促進し、フランスブランドを強めながら国際競争力を高めることだ。大手化粧品企業の工場を誘致することにより、原料、処方、生産、パッケージ、検査・分析など化粧品関連企業が次々に集まり、現在1500企業、9つの大学、4つの高等研究機関、約8200人の研究者が働く。化粧品研究でも世界一のネットワークを誇り、320の研究開発プロジェクトに、4億ユーロが投資されている。
このコスメティックバレーに所属する大手企業・ブランドは下記の通りだ。仏国内ブランドだけでなく、アメリカ、アジア企業もここに拠点をおくことで、さまざまなネットワークが活用できる。

ゲラン、ロレアル、クラランス、資生堂、シスレー、シャネル、カルバンクライン、ディオール、ニナリッチ 、コティ、メイベリン、ジョンソン&ジョンソン、アモーレ・パシフィック、プロクター・アンド・ギャンブル、セフォラなど(順不同)。

シャルトルを中心にスタートした理由

1970年代の仏政府の地方分権化により、パリ周辺に製造拠点を置いていた多くの香水・化粧品企業がパリを離れることとなった。その時、パリの南西90kmに位置するシャルトル(ウール=エ=ロワール県)の経済開発委員会のトップだったジャン=リュック・アンセル氏が、大手香水ブランド「ゲラン」代表のジャン=ポール・ゲラン氏に工場移転を提案。1973年ゲラン社が工場をシャルトルに移したことから、サプライヤーなど関連企業が次々に集まり、クラスター形成が始まった。

その後も同氏の誘致によりディオール、ロレアルグループなど有力企業が工場進出。資生堂も1991年にジアンにフレグランス工場、1999年にはオルレアンにスキンケア工場を作り、主にヨーロッパ向けの製造拠点としている。

仏政府から競争力産業クラスター(競争力拠点)に認定された2005年以降、コスメティックバレーは拡大。現在、サントル=ヴァル・ド・ロワール、イル・ド・フランス、ノルマンディの3つの地域圏に広がり、国、3県、25自治体から助成を受けている。3つの飛行場、ル・アーブル港を抱え、海外市場に向けた航空・海上・鉄道の輸送インフラを備える。現在の代表はLVMHの事務総長も務めるマルク=アントワーヌ・ジャメ氏。ノルマンディ地域圏、ヴァル=ド=ルイユの市長でもある。産学連携で戦略的に経済成長、雇用創出に取り組んでいる。

研究開発プロジェクトから生まれるイノベーティブな製品

コスメティックバレーでは、高等研究機関、研究所、メーカーなどが連携した320の研究開発プロジェクトが進んでいる。なかでも原料に関する興味深い企業を紹介したい。

化粧品に特化した成分を開発するIFF Lucas Meyer Cosmeticsは、4年の歳月をかけて髪のメラニン色素の合成を助けて色素沈着を促進させ、白髪となるのを妨ぐ成分を開発。2018年4月にアムステルダムで開催された化粧品原材料に関する国際見本市「In-Cosmetics Global」に出展し、Green Ingredient部門で銀賞を受賞した。また、同時期に発表された化粧品に関する情報サイトCosmeticsDesignによる「Beauty Industry Award」ではヘアケア部門で金賞を受賞している。

すでにヘアケアブランドPhytoの製品に特許成分として配合され、2018年4月に製品化されている。「白髪を防ぎ、いつまでも若々しくいたい」というニーズは大きい。今後も市場需要の高いイノベーティブな成分開発が期待される。

Phytoから発売の「Phyto RE30」
出典:Phyto

「メイド・イン・フランス」のブランド力を高める

フランスの化粧品産業で特筆すべきことは、前述のとおり1500の企業のうち、8割が中小企業、または10人以下の小さな企業ということだ。一部の大手企業は独自に販売網を作り、製造拠点も作れるが、中小企業にとっては困難な事である。

特に、今後成長が期待できるアジア市場への進出は中小企業にとって課題となっている。そこで、コスメティックバレーはフランスというブランドをフックに、中小企業の海外進出、ビジネスマッチング、またテクノロジーを用いたスタートアップの支援に力を入れている。

「フランス化粧品の優位性は、革新性、効能、安全性、環境への配慮、良質な自然原料など。これらを適切に伝え、フランスブランドの価値を高めていく」と国際関係部のディレクターのセゴレーヌ・ルルートル氏はメイド・イン・フランスが中小企業の海外展開の強みになることを強調する。

美化された情報で国のイメージを高めるのではなく、革新的で確かな製品力・開発力に基づいたフランスの真の価値を伝えていくという。

コスメティックバレー国際関係部ディレクターの
セゴレーヌ・ルルートル氏(著者撮影)

具体的な海外進出の施策としては、オランダ、中東、中国、香港などの国際見本市への出展を斡旋し、巨大ブースを設置してフランス企業のプレゼンスを高めていくことがひとつ。また、2015年からコスメティックバレー主催の国際化粧品見本市「Cosmetic 360」をパリで開催している。

ここでは大手企業だけでなく、原料、処方、パッケージなど専門性の高い中小企業がそれぞれのイノベーティブな製品やサービスを発表し、ビジネスチャンスを広げる機会を創出している。次回はこの国際化粧品見本市、Cosmetic 360 について詳しく紹介する。

Text: 谷 素子(Motoko Tani)
Top image: 4kclips via Shutterstock.com

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