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セフォラの超・顧客中心主義【前編】~「試せる」から「コミュニティ」まで

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前回、前々回とLVMHの全体戦略デジタル戦略について紹介したが、今回は、LVMHの成長の牽引役、美容業界のデジタルリーダーといわれているセフォラについて前後編で取り上げる(後編はこちら)。セフォラが徹底した顧客中心主義だというのは業界ではよく知られていることだが、テクノロジーの力を使って、さらに顧客心理や行動も追及しながら、売上を生み出す仕組みとしている点に注目したい。

セフォラは、パリで1969年に香水専門店として創業し、その後複数のショップを展開。店舗では、顧客自身が香水を比較し選ぶ環境を提供することを徹底した。背景には、当時主流となりつつあった百貨店で、高級化粧品ブランドが販売員にコミッションを支払い、ブランドを顧客にプッシュする売り方に疑問を感じていたからだ。また、ブランドごとにカウンターがあり、いろいろなブランドを比較しにくい問題もあり、それらを解決しようとしたスタイルだった。その後順調に成長し、フランス国内に54店舗を持ち、フランスの香水小売市場の約8%を占めるまでになった。その成長にLVMHが目をつけ、1997年に2億6,200万ドルで買収された。

LVMHのもと、「購入前に自由に試せる」を軸に、香水だけでなく、化粧品も取り扱うようになり、1998年にニューヨークに進出。だが、最初の数年は、当時米国高級化粧品市場の44%を占めていたエスティ ローダーグループの商品をセフォラは取り扱うことができなかった。エスティ ローダーは、セフォラをニッチプレイヤーとみており、顧客は百貨店で化粧品を買うものだと信じていたからといわれる。

このような既存ブランドからの反応をみて、セフォラは、あまり知られていない数百のブランドと関係を築き、彼らの商品を売ることにした。ネームバリューのない企業でも、セフォラがいいと思う商品を取り扱い、彼らの製品をどのように売りだしたらより売れるのかのアドバイスまでする、いまの言葉でいうインキュベーターの役割も担ったのだ。

これは、現在まで少しずつかたちを変えながら続いており、セフォラからヒットし成長していったブランドは、Urban Decay(2012年にロレアルが買収)やToo Faced(2016年にエスティ ローダーが買収)、ヘアケアブランドのOUAI (2016年にローンチし、翌2017年には20億円を超える売上だったといわれる)など、枚挙にいとまがない。このような取り組みが新しいビューティーブランドを引きつけ、セフォラのメインユーザーである化粧品好きな25〜35歳女性の、より新しくよりよいものを試してみたいニーズを満たしている。現在のセフォラのインキュベーションについては、2018年現在、4つの領域に分かれ、プロダクトからハードウェアデバイスまでをカバーしている。別の機会に詳細を紹介したい。

こうして様々なブランドを集めて、口紅は口紅、アイシャドウはアイシャドウと同じカテゴリーのものをずらっと並べ、顧客が自身で自由に比較したり試したりできるようにした。また、販売員の待遇をコミッション制にはせず、顧客からの質問に答えられるように幅広いブランドの知識を教育したスタッフをそろえた。顧客が楽しい時間を過ごせるように、白と黒を基調に赤をアクセントに使ったポップな色調や音楽で店舗を演出。百貨店には行かない若い顧客の獲得に成功した。

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