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シャネルやゲランなどの遠隔サービスが再ロックダウンのフランスで顧客に寄り添う

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パンデミックの第2波により、再びロックダウンとなったフランスでは、ランコムやディオール、シャネルが美容部員によるカウンセリングやコーチングサービスを強化。クラランスやゲランのようにバーチャル店舗をオープンする動きもある。大手美容ブランドによる、さらに進化した遠隔サービスの実態を紹介する。

再ロックダウンでは「商品受け取り」がOKに

フランスでは、2020年10月末から12月中旬まで2度目のロックダウンとなり、生活に必要不可欠な業種を除いて、商業施設は再び一時的な休業を余儀なくされた。3月中旬から5月上旬の1度目のロックダウン時には、デジタル化が急速に進み、eコマースをはじめ、非接触や遠隔サービスでの対応が急務となった。同時に、未曾有の事態に対して、化粧品メーカーが製造ラインを変更して消毒ジェルを生産して寄付したり、インスタグラムなどのSNSプラットフォーム上でストレス緩和のヨガレッスンを開催するなど、自社の売上よりも社会やコミュニティーに寄り添う連帯精神がみられた。

2度目のロックダウンでは、外出制限下でも経済活動を継続すべく、店舗は閉店していても商品を受け取る専用カウンターだけはオープンを認め、オンライン決済後に商品を実店舗で受け取るClick & Collectや、電話注文によるCall & Collect(または配送)のサービスが加速。美容大手企業では電話やビデオによるカウンセリング、3Dバーチャルブティック、パーソナルショッパーサービスなど、自宅にいながら買い物が楽しめる体験や、よりパーソナルなサービスの提供が進んだ。

2度目の外出制限下(10月末〜12月中旬)で展開された、フランス美容大手企業の多様な遠隔サービスを紹介する。

ランコムのビデオカウンセリングはARバーチャルメイクを使用

ロレアル傘下のランコムは、新型コロナウイルス感染症の発生時から、美容部員がどのように消費者に寄り添えるかを考え続けている。日本では消費者とのコンタクトを維持するために、予約なしで受けられる文字チャットで美容部員と遠隔対面するオンライン相談が4月から始まったが、フランスでは11月から30分間の無料ビデオカウンセリング(E-コンサルテーション)がスタートした。

同ビデオカウンセリングでは、リアル店舗を訪れた時のように美容部員に自由に質問ができる美容相談と、冬をテーマにした美容アドバイスの2コースが用意されている。

予約はWebサイト上から4つのステップでできる。まず、上述の2種から体験したいコースを選ぶ。すると、美容部員の一覧が顔写真と名前付きで表示される。スキンケア、メイクアップ、フレグランスなど専門分野も表記されており、自分が助言を受けたい分野の担当者を選択する。次に日にちと時間を指定し、最後に自分の名前、メールアドレス、電話番号を入力すれば完了だ。当日、指定されたリンクにアクセスすると、チャットボットが現れる。ボット上でいくつかの質問に回答すると担当者が画面上に登場し、個別のアドバイスが受けられる。

このビデオカウンセリングの1番の特徴は、ロレアル傘下のModiFaceのAR技術によるバーチャルメイクトライオンを活用しながらカウンセリングが提供される点だ。ユーザーは美容部員の指示に従って、オンライン上でファンデーションやアイメイク製品などの色合いを自分の顔にのせて確認できる。また、コロナ禍で、マスクの常時使用やストレスによるダメージを緩和するスキンケアの重要性がさらに高まっていることから、将来的には、オンライン上で肌状態を診断するYouth Finderを使用しながらの遠隔カウンセリングも可能になるという。

さらに、予約の際に、美容部員の顔や名前が表示されることも注目に値する。リアル店舗で自分が話しやすく感じる美容部員に声をかけるように、オンラインでも心理的に安心できる担当者を選ぶことができる。また、美容部員が自宅から予約者にコンタクトするのも特徴だ。つまり、消費者と同様にテレワークの状況に身を置いてプライベートな空間と時間を共有することで、遠隔でも消費者と心を通わせる工夫がなされている。

WhatsAppなどで店頭からライブ感あふれるディオールのデジタル接客

一方、2020年2月中旬にWebサイト上で「メゾン クリスチャンディオール」の3Dバーチャルブティックをオープンして新たなショッピング体験を提案したLVMHグループのディオールも、30分間、1対1のショッピングサービスを行っている。WhatsAppもしくはFaceTimeを使用して、ライブでユーザーの買い物を手伝うものだ。美容部員は休業中の実店舗の化粧品カウンターから、スマートフォンで実際の商品の色合いなどを映しながら接客する。ショッピングサービスは、ディオール製品とメゾン クリスチャンディオールの製品の2コースを展開している。

なお、Webサイトの予約画面には「商品購入は義務ではない」と記されているほか、任意で店舗(担当者の名前も記載)を選ぶことができるため、店舗が再開したのちに訪れて、オンラインと同じ担当者から接客を受けることも可能だ。デジタルだけで完結するのではなく、リアル店舗と連動した顧客体験の提案とデータの一元化が期待できる。

シャネルはメイクアップアーティストがメイク法を個別に指南

2019年1月にNYでOMO型ストア「Atelier Beauté CHANEL(アトリエ ボーテ シャネル)」をオープンするなど、デジタル施策を積極展開しているシャネルは、美容エキスパートによる30分間のビデオコーチングを開催している。専用サイトで希望のコース、日程、時間を選ぶと、コーチング用のリンクが送られてくる。アイケア、スキンケア、メイク、ファンデーション、アイメイクの5つのテーマがあり、スキンケアでは製品の使用法をアドバイス、メイクでは同社のメイクアップアーティストが効果的なテクニックを伝授する。

消費者の手元にシャネル製品がない場合は、手持ちの他ブランドの製品を使ってのレクチャーもできる。同社の予約サイトにも「ビデオによる個別コーチングは無料で、商品購入は義務ではない」と明記されており、誰でも気軽に予約できるよう配慮がみられる。

クラランスは遠隔コーチングの充実化とバーチャル店舗をオープン

春のロックダウン時に、いち早く電話を使用した15分間コーチング「Clarins & me」をスタートしたクラランスは、電話コーチング5種に加え、新たに20分間のビデオコーチングも7種のメニューを揃えてスタートした。メイクやスキンケアなど、具体的なテクニックを見る方がわかりやすいものがビデオのメニューに含まれている。また、15分間の電話で行うパーソナルショッパーサービスも開始し、12月はクリスマスプレゼントとしてクラランス商品を選ぶためのアドバイスが提供されている。

さらに、以前から実店舗で行なわれている20分間の無料コーチング体験も「Clarins & me」の画面から予約ができるようになり、顔を見せずに助言をもらいたい人は電話で、実際に自分の肌を見せながら相談したい人はビデオで、あるいは美容部員によるリアルなアドバイスを受けたい人は実店舗でのコーチングを予約するというように、消費者の希望に合わせた選択肢が用意されている

また、クラランスは10月末にはWebサイト上にバーチャルブティックをオープンした。この仮想店舗が革新的なのは、既存店の再現ではなく、まだ現実には存在しない未来のブティックを作り上げ、これから展開する新サービスをいち早く垣間見できるところにある。同社は2020年1月に「消費者とともに未来のブティックを創る」というコンセプトで、パリでポップアップストア「クラランス・ラボ」を開設した。この新バーチャル店舗は「クラランス・ラボ」で得られた消費者の反応やフィードバックから着想を得て開発したという

バーチャル店舗での新サービスをみてみよう。たとえば、店内入口には同社製品の原料に使用される208種の植物がディスプレイされ、スマートフォンでスキャンすると植物の原産地や美容効果などの情報が得られる。また、スパが発祥の同社独自のハンドマッサージ「クラランス タッチ」を自宅で再現するためのマッサージの力加減を体得するデジタル装置を、近い将来に実現するサービスとして展示するなど、仮想空間での体験を通してビジターの好奇心を刺激しながら、同社製品を深く理解するための工夫がある。

さらに、このバーチャル店舗中央には看板商品である「オー ディナミザント(Eau Dynamisante)」と植物オイル「トニック(Huile Tonic)」の詰め替えコーナー「Eco Bar」を設けているのもみられる。実店舗に上記商品の空ボトルを持っていくと、店員が回収してリサイクルに回し、その場で新しいボトルに商品が詰められて、20%割引価格で購入できるシステムを紹介するものだ。Eco Barは10月末からフランスの2店舗で先行してスタートしている。ロックダウンの時期と重なったため、本格的な運用はこれからとなる。

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パリ近郊のNeuilly-sur-Seine店に
設置されたEco Bar
 画像提供:Clarins

また、バーチャル店舗では「Clarins&Me」の予約や肌診断、メイクアップのARシミュレーションに誘導されるほか、一部のスキンケアやファンデーションの試供品を無料(送料別)でリクエストできる。

各コーナーに配置された動画は8〜20秒ほどの短いものが多いため、複数のアイコンを気軽にクリックできる。さらには、訪店中にアンケート画面が現れて、ユーザーに質問を投げかけるなど、今後の展開や改善のための情報収集にも抜かりがない。こうして消費者の声を反映した最新の実店舗が、2021年以降、ドバイ、香港、中国、パリにオープン予定だ。

ブランドの歴史と創造性を効果的に伝えるゲランのデジタル体験

LVMH傘下のゲランも、30分間の電話による1対1の美容コーチングを行っており、予約時に任意で店舗も選べる。また、Zoomを利用して、ブランドの原点であるフレグランスの歴史、高級スキンケア「アベイユ ロイヤル」の2つのマスタークラスを開催しているほか、パリ本店をめぐる45分間のバーチャルツアーも開催している。

12月10日に行われたライブ配信では、クリスマスのイルミネーションが美しいシャンゼリゼ大通りの中継から始まり、本店に足を踏み入れると、ディレクタークラスの複数の社員が、本店の建物や香水ボトルの歴史、パーソナライゼーションなどについて説明するホスピタリティにあふれた構成だった。

また、同社はWebサイト上でパリ本店を再現した3Dバーチャルブティックもオープンした。歴史的建造物に指定されたパリ本店の建物や美しい内装をバーチャルで360度見渡しながら、ナポレオン3世の皇后の逸話や、芸術品と呼ぶべき特別ボトルの制作の背景などを知ることができるのは、1828年創業の老舗ならではの見せ方といえる。

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ゲランのバーチャルブティック

バーチャル店舗では、実際に訪店した際と同様に、季節の限定品の紹介に加え、商品の歴史や内容成分、フレグランスのボトルのパーソナライズなどのサービスも動画や文字情報で説明されるほか、Rouge Gシリーズでは口紅の色合いやパッケージデザインをARシミュレーションでき、上記のマスタークラスの予約も可能だ。

さらに、ゲラン5代目調香師であるティエリー・ワッサー(Thierry Wasser)氏がフレグランスの原料を求めて旅をする動画では、香水づくりの舞台裏が公開されている。そこには同社の伝統と卓越したサヴォワール・フェール(創造性に富んだ技術やノウハウ)、調香師の情熱が現れており、あわせて原料調達における透明性も効果的に伝えられている。

デジタル化が進むほど求められる、人と人とのつながりや信頼関係

新型コロナウイルスの世界的流行を契機に、大手化粧品ブランドでは遠隔カウンセリングや3Dバーチャルブティックを実装しており、個別サービスの進化が加速している。こうした流れに伴い、デジタル接客からスムーズに決済へつなげる工夫が必要になるが、同時にデジタルのショッピング体験を実店舗でのリアルな接客に連携させていくことも重要だ。その意味で、今後はすべてのチャネルの顧客データを統合して、オンライン、オフラインを問わず、顧客ごとにカスタマイズした体験を提供することがスタンダードとなるだろう。

外出自粛などで、人と人との直接的な接触が少なくなるなかで、デジタルはブランドと消費者が親密な関係を築く媒体としても発展している。遠隔サービスを通して、どのように消費者に寄り添って心理的な距離を縮めるかが、信頼を勝ち取るカギとなりそうだ。

Text: 谷 素子(Motoko Tani)
Top image: Clarins 提供

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