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とまらない進化、ビューティ・ファッション・リテールテックスタートアップ【CES2019】

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大手3社の動向進化を遂げるスマートミラー・バーチャルメイクと2回にわたり紹介してきたCES2019動向。3回目は、注目のビューティテックスタートアップと、周辺のファッションやリテール関連のテック製品を取り上げていく。

細分化する肌分析ソリューション

前回の記事でも、CES2019におけるビューティテックトレンドは「肌分析」と「パーソナライゼーション」にあると紹介したように、これらの分野に注力するスタートアップがいくつも見られた。各社ともユニークなソリューションやアプローチを提案し独自性に富むのも特徴だ。

2015年に、サムスン電子の社内アクセラレーションプログラム「C-Lab」からスタートした韓国発のlululabは、AIを活用した肌分析&商品提案サービス「LUMINI」シリーズを企業向けに開発・提供する。同社は2017年3月に、22番目の事例としてサムスン電子からスピンオフして独立した。現在LUMINI、LUMINI KIOSK、LUMINI UVという3つのプロダクトがあり、LUMINIは今夏セフォラで取り扱いが始まる予定。各プロダクトは皮膚科、スパ、コスメストア、ショッピングモールなどでの活用が見込まれる。

製品の活用が見込まれる売り場等
出典:lululabパンフレット

たとえばKIOSKは、端末の前に立ち、性別、生年月日を入力した後、1枚写真を撮るだけで、わずか10秒ほどで肌分析の結果を表示する。

項目は、シワ、シミ、赤み、毛穴、皮脂、ニキビだ。肌年齢や総合評価のほか、各項目に対して10点評価で数値として示したり、最も不安要素が高い箇所を知らせたりする。また結果に応じておすすめのスキンケア商品が表示されるので、その場でクレジットカード決済での購入も可能だ。

一方、小型デバイスのLUMINIでは、正しくケアをして状態が改善した場合と、ケアを怠り状態が悪化した場合の、それぞれの肌状態を予測した画像も見せる。スキンケアアイテムを販売するときの説得材料として機能しそうだ。

LUMINIとスマホアプリ

驚くのはその精度である。同社は前回紹介したスマートミラー「CareOS Artémis」同様、CES Innovation Awards 2019を受賞しているが、そのほかに、COSMOPROF Awards Asia 2018でも企業向けスキンケア製品部門で第1位を獲得した実績がある。実際に試してみると、確かにその成績もうなずけるほど精度が高い。

個人的な体験になるが、これまで数多くのAI肌分析サービスを試してきたが他のサービスでは比較的「肌状態が良い」という結果を提示されることが多かった。しかし実際には、極度の乾燥や鼻から頬にかけての毛穴の開きなど、長年肌に対してさまざまな悩みを抱えており、それらの「良い」診断結果にはどこか納得できていなかった。実際サロンなどに行くと、早急に対処が必要だと言われることも多々あり、それまでの肌診断と自分自身の実感にはかなり乖離があった。

しかし、LUMINIは一番の悩みである毛穴について、最高値10に対し1.1という低い回答を提示した。はじめてこのような実感値に近い数字が出たことから非常に納得感があった。この判定にもとづき、「あなたに一番あう効果的な商品はこれ」とレコメンドされれば、非常に説得力があるだろう。肌分析の次の段階として製品提案をする場合は、やはりその精度とその結果による本人の納得感が肝心だと今回の体験を通じて身をもって感じた。

特にケアが必要な箇所は、赤丸でマークされる

同社のサイト上には、まだ言語が反映されていないものの「日本語ページ」ができており、近い将来日本進出も視野に入れていると思われる。

CESで初お披露目となったフランス発のClarticiは、肌状態を分析するデバイス「ICI」と連携するスマホアプリ、結果に基づき成分が調合される専用の保湿液と美容液、袋を開封すると微弱な電流がながれる特殊なフェイスマスクを提供する。同社が取得した特許技術により、マスクは肌への成分吸収率を上げスキンケア効果を高める仕様になっているという。

肌分析デバイスICIとスキンケアセット

肌分析デバイスICI

毎日スキンケア前にICIを使用すると、その日の肌状態に合わせたスキンケアの最適量をスマホアプリ上で知らせてくれる方式だ。

フェイスマスクのパッケージは、ファイルケースの
ようなデザインが特徴

Clarisonic、HiMirror はフェイシャルブラシを出展

ロレアルグループの「Clarisonic」は、2018年9月に発表したスマート洗顔ブラシ「Mia Smart」を展示した。

Mia Smartは専用のスマホアプリと連携して使用する。2つのクレンジングモード(デイリー、ジェントル)に加え、引き締め、アイマッサージなどが行えるスマートモードを搭載。スマホアプリと同期させると、各パーツの洗い方や所要時間などがガイドされる。担当者に日本での販売予定について尋ねたところ、「前向きに検討したい」としつつも、かつて競合が多く日本市場から撤退した経験があることから、現時点では不明とした。

連携するスマホアプリ画面

日本進出も果たしている「HiMirror」の開発会社は、主力製品のスマートミラーに加え、携帯用の保湿スプレーデバイス、フェイシャルマッサージ器、フェイシャルクレンジングブラシ、電動歯ブラシなどの美容家電を紹介した。各製品のIoT化と、スマートミラーとの連携も期待したいところだ。

「ショッピングの未来」を見せたJD.com

中国の京東(ジンドン)が運営する大手ECサイトJD.comは、「Delivering the future of Shopping(ショッピングの未来を届ける)」と題して、スマート自販機、VRによるバーチャルドローン配送体験、都市部で活躍するデリバリーロボット、ARフィッティングルームなど、これからのショッピング体験を大きく変えるであろう、さまざまなソリューションを示した。

都市部で活躍するデリバリーロボ。
オフィスビルや居住スペース、ユーザー
が指定したピックアップポイント等に
荷物を届ける。顔認証によって
扉が開く仕組み

ドローン配送体験ができるVRゲーム。手元のリモコンで操縦する

顔認証と電子タグ等を利用したスマート自販機。
自動的にユーザーが認識され、扉を開けて
商品を取り出すだけで決済まで完了する

ビューティの領域ではすでにARメイクアップで三越伊勢丹と提携したり、店頭向けのARサービスを展開しているJD.comだが、CESではファッション店舗向けのAR フィッティングルームを紹介した。

はじめに性別と自身の肌色を選び、両手と両足を開いた状態でカメラに全身を読み込ませると、自分の顔と体型を反映させたアバターをすぐにつくりあげる。実際のイメージに近いヘアスタイルに変更も可能だ。すべての操作は手を動かすことで行い、指定された箇所に数秒手をかざすだけで、次々と洋服を変えられたり、前のメニューに戻ったりができる。

また後ろから見た状態も常時画面上に表示されているので、自分で360度回転する必要はない。アバターの動きにややぎこちなさはあるものの、改善は時間の問題だろう。“自分に似たバーチャルキャラクター”を使うのに比べ、はるかにリアリティがあることから、顔や体型を分析し、AIが似合う洋服を提案できるようになれば、このバーチャルトライの潜在力と可能性はさらに広がりそうだ。

香港発、AI無人ポップアップストア

香港を拠点にするPopSquareが公開していたのは、AI無人ポップアップストアだ。

2017年創業の同社は、コンピュータビジョンと機械学習で無人店舗をサポート。世界中のブランドの店舗運営コストと運営効率の改善を目標に掲げている。これまでに15の地域で200以上のブランドが参画したテスト運用を行ってきたが、2019年からアジア市場向けに本格的に発売を開始するという。

同サービスの特徴は、コンピュータビジョン、IoT、ビッグデータ等を使用した、独自開発のビデオ分析システム「PopSense」が、無人店舗の周囲1〜4メートル以内のトラフィックデータを収集できることにある。あわせて、内蔵HDカメラにより、無人店舗に近づき商品を手にとった消費者の行動を捉え、顔認識技術により性別や年齢層のほか、服装データなどの情報を取得する。

こうしたマーケティングデータを活用することで、より効率的な店舗運営に役立てるとしている。また「Ask Designer」モバイルアプリによって、タッチスクリーンを通じて、遠隔地にいるデザイナーと消費者間の対話を実現する。つまりわざわざ海外に行かなくても、オフィスにいながらにして潜在顧客を掘り出し、さらには接客をも可能にするというわけだ。

すでにPopSenseが利用された事例としては、クラフトビールの試飲&販売イベントや、香港の音楽祭「Clockenflap」とコスメショップ「Facesss」がコラボした、化粧品の試用スペース「beYOUty Station」などがある。

音声で各自のヘルスケアをサポート

人の顔のような愛嬌のある見た目が特徴の「Pria by Black + Decker」は、音声でコントロールする(タッチ操作も可能)、投薬とヘルスケアのサポートデバイスだ。スマホアプリと連携して使用する。

同デバイスのなかには最大28回分の薬を入れることができ、投薬スケジュールを設定しておくと、リマインドアラームで知らせたり、1回に必要な分の薬を出したりする。また、通院予定の通知や、今日の運動目標、適量の水分を飲んだかなどの管理も行うほか、慢性病などのリスク回避を目的に、保存された各種データの分析もする。なにか心配事があるときは、簡単な音声コマンドと内蔵カメラで、家族や介護者にすばやく連絡を取ることもできる。

個人の健康管理はプライベートな領域であり、心理面でもセンシティブな側面を伴うので、いくらデバイスとはいえ、しつこく投薬を促すなど介入しすぎると当事者の気分を害し、結果としてマイナスに働くこともある。同デバイスは、音声操作という手軽さと、愛らしい見た目で“邪魔だと感じられないように”人々の健康をサポートすることを目指している。人生100年時代といわれる昨今、人々のヘルスケアにいかに自然に寄り添うかは大きな課題だ。同社のようなアプローチは、今後も増えてきそうである。

心拍数やストレスレベルなどを衣服で計測

カナダ・トロント発のスタートアップからは、繊維をとおして人々の様々な生体情報をモニターする「SKIIN」が出展された。同サービスは、ポロシャツや下着などを着用しているだけで、血圧、ストレスレベル、呼吸パターン、歩数、妊娠中の母親と胎児の心拍数といった身体情報を計測するほか、膝の痛みを軽減するサポーターや、体温や活動状態の測定をもとに身体に最適な温度になるよう自動的に熱を持つ衣服といったものも検討されている。

使い方は、まずSKIIN Smart Podsと専用ベルトをBluetooth経由でユーザーのスマートフォンと連携する。それから繊維を計測可能な状態にするため、Smart Podsを専用の衣服と接続。これだけで情報の収集が可能になる。

衣服から収集されたデータはクラウド上に保存され、かかりつけの医師や家族、またスポーツ選手であればトレーナーなどとシェアできる。衣服は、頭部用やつま先までカバーするデザインなど多様なパターンで考案中だ。

刺激しあうスタートアップと大手が進化を生む

CESに出展している各種スタートアップのプロダクトを見たり、担当者と話をすると、大手企業に引けを取らない技術力と斬新なアイディアで、市場を獲りにいこうとする「攻めの姿勢」を感じる。もちろん、大手企業もこうしたスタートアップの勢いに触発され、前回の記事で紹介したように、「パーソナライゼーション」や「D2C」に注力を始めたことは言うまでもない。双方が良い形で刺激し合うことで、ビューティテック、ファッションテック、リテールテックは加速度的に進化するはずだ。2019年は、大手とスタートアップがそれぞれの良さを活かしあう方向で、買収や提携事例がますます増えていく予感がする。

Text&Photo:公文紫都 (Shidu Kumon)

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