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仏シャネルが描く、テクノロジー時代のラグジュアリーな世界観モデル

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2つのインスタグラム・アカウントの開設、ECサイトとの戦略的パートナーシップの締結、そして、AR技術を活用した新ブティックのオープン計画。ラグジュアリー・ブランドの頂点に立つシャネルが、2018年に入り大きくデジタル化への攻めの姿勢をみせている。

SNSでファンの獲得と顧客のロイヤリティーを維持

2018年1月、シャネルはビューティプロダクツに特化した新しいインスタグラム・アカウント@Chanel.Beautyを開設した。これは、シャネルの美容部門の顔であるグローバル・クリエィティブ・メイクアップアーティスト、ルチア・ピカの世界観を発信するもので、彼女の美的インスピレーションの源をみせることにはじまり、具体的なメイクアップのコツやポイントを披露する画像や動画、さらには、シャネル・アンバサダーのクリステン・スチュワートやリリー=ローズ・デップも登場する豪華なコンテンツで、もちろん、新商品情報やチュートリアルも満載だ。

続く2月には、コミュニティベースのインスタグラム・アカウント@WeLoveCocoを開設。こちらは@Chanel.Beautyとはうってかわり、「シャネルを愛するすべての美容好きと美容業界で働く人々が自由に集い、つながる場所」と位置付けて、可愛いセルフィーやお気に入りの製品フォトなど、ユーザーからの投稿だけで構成されるアカウントだ。

シャネルがこのようなインスタグラムでの展開をはじめたのは、今の消費者は10年前とは異なり、敷居が高いラグジュアリー・ブランドを崇拝するという態度でブランドとは接していないと理解しているからだと考えられる。消費者が求めているのは、自分の好きなブランドとダイレクトにつながることであり、より親密でパーソナルな対応を受けることなのである。しかも、人々がアプローチの手段として、まずソーシャルメディアを選ぶ傾向に拍車がかかっている。

その意味で、綿密にキュレーションできるインスタグラムはブランド独自の伝統的な価値観やステータスを損なうことなく、消費者とのつながりも深められる。しかし、それだけではまだ足りない。ソーシャルメディアで大きな存在感を示し急成長しているGlossierColourPopのような、創業時点からECなどデジタルによる販売とPRを行なっている、いわゆるボーンデジタルの新興コスメブランドのフォロワー数は数百万単位で、@Chanel.Beautyとは一桁違う。だから、シャネルは2つめのアカウント@WeLoveCocoを立ち上げたのだ。ちなみに@WeLoveCocoのフォロワーは約5万4,000人(2018年4月現在)である。

ボーンデジタルブランドの著しい台頭ぶりは、実際に数字としても現れている。コンサルティング会社マッキンゼーの調査レポートによると、全体で2,500億ドル(約26兆円)とされる美容産業のグローバルマーケットだが、メイクアップコスメ部門でみると2008年から2016年の8年間の年平均成長率は、シャネルが含まれる既存高級ブランド枠が4.9%なのに対し、ボーンデジタル枠は15.7%で、マーケットシェアは10%に拡大、既存ブランドの4倍の早さで成長している。

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