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哔哩哔哩(ビリビリ)大好き、中国の「親日女子」インフルエンサーの日常

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前回の記事で、日本企業が中国人女性にアプローチする際には、「富裕層」「中間層」という広域で曖昧な属性よりも、「親日」という属性の層にターゲットを絞るほうが効率のいいことを提案した。今回はそんな「親日女子」がSNS上でどのようにネットワーキングや情報収集をしているのか、愛好するソーシャルメディアはどんなものかという観点から、親日女子像をさらに深掘りしていきたい。

親日女子はどこにいるのか?

まず、ひとことで親日女子といってもレベルがある。最初は日本のアニメが好きなことが入り口になるケースが大部分で、次にドラマ、映画へと進み、第2段階として日本語を少し勉強して、日本の情報番組やバラエティを視聴するようになる。この頃になると日本の文化や芸能人にも詳しくなるため、日本人の好むメイクやファッションなどへの興味も増し、ついには日本に旅行するという感じでステップアップしていく。

Image: Frankie Guarini via Unsplash

「アニメ好き」というステージにいる親日女子は恐らく中国全土にいるだろう。しかし、メイクやファッションに興味を持ち、実際に日本に行くというアクションを起こすディープな親日女子は、北京や上海を中心とする沿岸部の方が圧倒的に多い印象である。これは、生活環境、可処分所得、ビザの取得のしやすさなど、さまざまな要因によると思われる。

中国の人気ソーシャルメディアで日本を検索

親日女子だからといって、普段の生活は同年代の中国の若い女性と特別変わるところはなく、何から何まで日本一辺倒というわけでは決してない。日本の「韓流好き女子」が、平均的な会社員としての暮らしをしつつ、年2回はソウルに行ったり、少しだけハングルが読めたり、韓国で流行っているアプリをダウンロードし、かなりマイナーなKポップアーティストまで追えているのと同じニュアンスと考えればわかりやすいだろう。

親日女子のSNSの使い方も一般女性と大きな違いはない。朝起きたら、まずは、LINEにあたる「微信(ウェイシン/WeChat)」のチェック。最新ニュースはツイッターに近い「微博(ウェイボー/Weibo)」や、AIによるニュース配信アプリ「今日斗条(ジンリートウタャオ)」でチェック。通勤の地下鉄内で「天气预报(ティアンチーユーバオ)」アプリで今日の天気を調べ、ランチは出前アプリ「美团外卖(メイトゥアンワイマイ)」で注文。TVをリアルタイムで見ることはほとんどなく、お気に入りの番組は無料動画サイト「爱奇艺(アイチーイー)」で見る。それから中国版インスタといわれる「小红书(シャオホンシュー)」で友達のリコメンドにコメントしたりという一日だ。

写真:上海在住の親日女子のひとり、高さん。日系企業に勤務し日本には年に2~3回は遊びに行く。日本語も堪能で、好きな日本語のギャグは?と聞くと髪をかき分けながら「らーめん、つけ麺、僕イケメン♪」とやってくれた。(著者撮影)

「港区女子」まで知っている! 興味の広さと検索スキルの高さに注目

さて、「親日女子」の場合は、これらのサービスを利用する際、彼女たち独自の行動が2つ加わる。1つは微博、微信、小红书、あるいは検索エンジン「百度(バイドゥ)」などで、たとえば「日本 化妆品 胶原蛋白(日本 化粧品 コラーゲン)」などのように「日本」をキーワードに入れた検索をひんぱんに行っていること。そしてもう1つが「哔哩哔哩(ビリビリ)」と呼ばれる動画共有サイトの閲覧である。

日本好きなら日本に関して検索するのは当たり前と思うかもしれない。だが、親日女子は驚異的なまでに日本のさまざまなコト、モノに興味を持っており、その検索パワーと件数、分野の幅広さは無視できない。

化粧品、食べ物、美容家電などの商品から、W不倫を描いた「昼顔」のような中国では制作許可が下りそうにないタイプのドラマ、最近では「港区女子」という言葉に興味を持つ女性もでてきている。その一方で、自撮りが満喫できそうな日本の田舎の風景が美しい場所や、北京や上海で本格的な日本食が食べられる店も知りたがる。とにかく非常に多岐にわたっているのだ。彼女たちは「親日」でもあり「知日」でもあるといえる。

こうした欲求に応えるように、実は中国には「知日」に関するメディアは驚くほど存在しており、微信の公式アカウントだけでもいくつもある。

まず、歴史も古く、幅広い層に読まれているのが、そのものずばりのメディア名である「知日」。書き手には中国に15年以上住む日本人ライターも含まれる。「松下電器100年の歴史」から「日本のアイドル史」みたいなものまでさまざまなテーマを扱う。テーマは硬軟両方あるが、いずれも骨太でしっかりした内容と構成だ。

ライトなもので人気なのが「日语学习(日本語の学習)」で、これは、日本のドラマや映画に出てきたちょっとした台詞を紹介している。たとえば「こうやって、あなたのことをかんがえて、いきているなんて、きっとあなたはわからないでしょう」というカナ書きの日本語の文があり、それに対する中国語訳「一直爱恋着你 像这样,满脑子都是你 这样生活着 你一定不知道吧?」が掲載されている。はたして親日女子に、この言葉を現実に使う機会があるのかどうかはわからないが、日本語を学ぶ以外に、こういう言い回し自体を楽しんで読んでいる。

旅行に関するものであれば「日本轻奢游(気軽に贅沢な日本旅行)」「日本旅游攻略(日本旅行の攻略ガイド)」、買い物や日本の商品に関するものであれば「日本窗(日本の窓)」「日本药妆(日本のドラッグストア)」など、どれも日本人である筆者が読んでも読みごたえのある充実した内容だ。これらはたくさんある日本を知るためのコンテンツのほんの一部に過ぎない。

Image: Joe Green via Unsplash

親日女子が検索するときは同時に、これらの「知日コンテンツ」の記事や、あるいは実際に日本に旅行に行った人の詳細な体験談などをクリッピングする。彼女たちは商品の購入や、あるいは旅行先を探すとき、こうした役に立ちそうな情報を事前に集め、自分なりに分析して決めているのだ。つまり、インバウンドや自社製品への集客を求める日本企業は、検索された時の受け皿としてきわめて質の高い情報を用意しておく必要があるということだ。

実は、この背景には笑い話にもならない一例がある。あるサプリに興味を持った中国人女性が色々検索した結果、そのサプリの日本のオフィシャルサイトのページにたどりついた。そこには中国語訳のページも載っていた。ところがその中国語があまりにもお粗末で、彼女はこのウエブサイトや商品を偽物だと思いこみ、結局購入しなかったというのである。残念ながら、この手の話は少なからずよく聞く。親日女子をはじめとする中国の若年層女性は総じて検索スキルが高いことを日本企業も意識すべきだろう。

日本人ユーチューバーの動画ファンも数万人

さて、もう一方の哔哩哔哩について説明しよう。中国には動画サイトがいくつもあり、老舗の「优酷(ヨウクー)」をはじめ爱奇艺、「腾讯(テンシュン)」「乐视(ルーシー)」などがしのぎを削っている。これに続くのが哔哩哔哩や「PPTV」で、さらに各ポータルの「视频(ビデオ)」が後続する。各サイトはオリジナル番組や独占放送でライバルに勝とうとしている。たとえば、最近急成長中の爱奇艺は海外ドラマや外国映画の独占放送が充実していると評判だ。

さて、それでは「哔哩哔哩」はどうなのか?ここの強みは「二次元」つまりアニメに強い点だ。そして、日本のアニメを多数流した結果、多くの日本のアニメ好きが集まった。日本のアニメ好きのなかには、実写の日本ドラマや映画が好きな人も大勢いる。視聴者の声に応えて日本のドラマや映画はもちろん、TVのバラエティ番組や情報番組、さらには日本のユーチューバーの動画までがコンテンツに揃うようになった。それが現在の哔哩哔哩である。

Image: Freestocks.org via Unsplash

では、実際に哔哩哔哩をスマホで視聴してみよう。(といっても、2018年5月現在、日本の携帯端末から哔哩哔哩をダウンロードすることはできないため、中国の端末が必要になる。)哔哩哔哩にアクセスすると「分区(カテゴリー)」というページがでてくる。この中の「时尚(ファッション)」を選ぶ。その先さらに細かく分かれているが、「美妆(上手なメイク)」を選んでみると、メイクアップのチュートリアル動画が膨大に表示される。

実はこのなかにたくさんの日本人ユーチューバーの動画が集められているのだ。とくに人気なのが「河西美希」「吉田朱里」「菅本裕子」の3名。もともと日本でも人気の高い彼女たちだが、中国でも彼女たちの動画は1本につき数千から多い時で4万近くも視聴されていて、親日女子の間における認知度がきわめて高い。

ちなみに彼女たちの所属事務所のひとつに確認したところ、「中国進出はまだ行っていない」とのこと。この時点では少なくとも彼女たちの動画は許可を得ずにアップされていると思われる。これをどうとらえるかはそれぞれだが、恐らく哔哩哔哩と直接交渉して正当な対価で正式にライツを貸し出すのが正解だろう。各社とも独占配信できる優良コンテンツを喉から手が出るほど欲しがっている。海賊版がばっこしていた10年前以上の中国ならともかく、現在の中国はその潤沢な資金で正当な使用料を支払う準備があることが、実はあまり知られていない。

また、中国人女性にリーチしたいと考える企業にとっても、灯台下暗しで、日本人コンテンツのスポンサーをするほうが意外と近道になる可能性があるのは面白い。中国人に人気のあるユーチューバーやタレントを起用して、少しだけ中国人向けにローカライズした動画を制作すれば大きなヒットにつながるかもしれない。

断トツの影響力を誇る親日女子とは

『瑞麗』専属モデル果果さん。オフィス兼エステサロンにて(著者撮影)


彼女のオフィスは北京の超一等地の国貿エリアにあり、
東京で言えば丸の内にあたる

最後に非常に影響力のある親日女子のひとり、果果(グオグオ)さんを紹介しよう。彼女は中国で最も売れているファッション雑誌「瑞麗(ルイリー)」の専属モデルだ。彼女にインタビューすると、尊敬語、謙譲語、丁寧語を使い分ける、その日本語の流暢さに驚く。彼女ももともとは親日女子の1人として日本に憧れ、日本のアニメやドラマ、映画を楽しみ、進路を決めるにあたり、決心して日本の大学に進学した。4年間の日本での大学生活で、現在の日本語レベルと日本人女性を思わせる雰囲気を身につけた。そして、卒業の直前に友達にすすめられた「瑞麗」のカバーガールオーディションを受け、15万人の応募者のなかから、みごと本選に勝ち残り専属モデルとなった。

「瑞麗」の専属モデルといえば、アンジェラベイビー、楊幂(ヤンミー)などの大スターもここからスタートしている。果果の動画配信アカウントは登録しているファンだけで13万人。瑞麗の撮影の合間に専属モデル仲間との様子を放送した回は100万人以上の視聴者を集めた。


果果さんが販売している商品の一部


業務用の美容機器も販売している

そんな彼女は、日本と欧米の高額な高級化粧品だけを扱うセレクトショップと、エステサロンのオーナー社長でもある。日本まで買い付けに行き、自分自身で試し、本当に納得したものだけを販売している。だから、彼女の言葉には説得力があり、高価な商品でもどんどん売れていく。彼女はインフルエンサーとしてさまざまな宣伝活動も引き受けるが、「最低1か月以上、自分で試用して納得できた商品に限る」という条件を出している。彼女のような親日女子を味方につけていくこともインバウンド戦略の大きなヒントになるかもしれない。

Text&photos: 杉山顕太郎(Kentaro Sugiyama)Top Image: rawpixel via Unsplash


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