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ジャック・マー会長の野望、すきまを狙う新興企業、ASEAN各国のEC事情

◆ English version: Who will conquer the USD 11 Billion e-commerce market in Southeast Asia?
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前回はアリババがシンガポールを最初の足がかりに、産学官を巻き込む統括的なアプローチで6億人超の東南アジア市場での覇権を狙う戦略と、それに対抗するアマゾンの動きを紹介した。今回は、実際にASEAN各国でどのような動きがあるのかみてみたい。中国勢、そしてスタートアップも含め部分的にはさまざまなプレイヤーがひしめく。

東南アジアはまるで10年前の中国のよう

インターネットの整備やスマートフォンの普及率、物流システムや倉庫の確保、電子決済システムの浸透度合いなど、ASEAN各国の現状に差はありつつも、日々刻々とその状況は変化しており、インフラの整備もそこそこに、ECの利用者のほうが激増しているのは事実だ。とくにスマートフォンの普及とともにECが活発化するASEANの姿は、10年前の中国をみるようだという識者も多い。

アリババが東南アジア市場に本腰をいれたのも、豊富な資金力に加え、この市場が抱える課題をすでに母国でクリアした経験からくる自信も大きいはずだ。実際、企業として蓄積してきたノウハウが活用できると踏んで、東南アジア市場に目をつけた中国企業はアリババだけではない。アリババとアマゾンの2強を追いかける他企業からの動きも目が離せない。

アリババのジャック・マー会長は、2016年にマレーシア政府の「デジタル経済アドバイザー」となり、翌年はインドネシア政府からも「Eコマース・アドバイザー」に任命された。フィリピンでは、財務省と連携してフィンテックの技術協力や人材育成をしている。また、マレーシアやタイでは国際物流拠点建設の大型プロジェクトを発表した。

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ASEAN各国がアリババと国家レベルでの提携をこぞって推進する理由は、自国の経済や社会のデジタル化を包括的に進めるうえでの助言が欲しいのと、マー会長が提唱する「世界電子商取引プラットフォーム(eWTP)」構想に賛同しているからである。eWTPの実現に向け、物流ハブ、電子サービスプラットフォーム、電子決済、融資、IT人材育成などに取り組みながら、各国間で異なる商慣習といった障壁を取り除いて越境ECを構築することで、地場の中小企業や個人が世界の市場へ進出する機会を確立できれば、所得を引き上げ、ひいては国力を高めることが可能になる。

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Image: nikfrdszrsln_ via Unsplash

その取り組みが最も具体的に進んでいるのがマレーシアだ。アリババの国際物流拠点が、2020年の完成を目指し、クアラルンプール国際空港そばに建設される計画が発表されたのをはじめ、政府と共同で中国国外では初となるeWTPのデータ処理を手掛けるデータセンターの開設に着手、さらには、中小企業の電子商取引を支援するネットワークも立ち上げた。

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